「タフネス」にも色々な種類がある。マラソンのようなシンプルな「タフネス」もあれば、「正気か?」と思ってしまうような「タフネス」もある。つまり、宇宙に届くのではないかと思えるほど延々と登坂が続く300kmのマラソンがあれば、猛暑の中を走るマラソンがあり、マイナス20度の極寒の中を走るマラソンもあれば、毒蛇に出会う可能性と圧倒的な湿度が待ち構えるジャングルのマラソンもあるという訳だ。ウルトラマラソンの世界へようこそ。今回はベテランウルトラランナー、フレドリック・ウルマヴィストに地球上で最もタフなウルトラマラソンを紹介してもらった。
全米で最もタフなウルトラマラソン
Hardrock Endurance Run 100
距離:160km
登坂:10000m
場所:米国・コロラド州
注意:高度・荒野・嵐・崖
タフネス指数:8
レース名の「100」に惑わされてはいけない。これはキロではなくマイルだ。米国で最もタフな100マイルマラソンとして知られるHardrock 100は標高約3500mの高地で開催される。地形は非常にテクニカルで、嵐にもよく見舞われるため、オーガナイザーは「登山能力・サバイバル能力・ナビゲーション能力がこの耐久レースでは重要だ」と説明している。尚、ランナーは石の上に描かれた羊の頭「Hardrock」にキスをしてゴールとなる。
野生のウルトラマラソン
Jungle Marathon
距離:254km
登坂:なし
場所:ブラジル
注意:沼・蛇・蚊・ヒル・ワニ・泥など
タフネス指数:9
フルマラソンを1回こなすだけでも大変だが、このマラソンはジャングルの中でフルマラソン6回分を走る。ランナーたちはアナコンダやワニ、ピラニアなどが潜む川や沼など、厳しいジャングルの中を6ステージ、254kmを走ることになる。出場ランナーのひとりは、「それが魅力なんだ」とコメントしている。
ランナーたちはジャガーに追われ、猿の叫び声に起こされ、アリやハチに噛まれることになる。また、言い忘れたが、クモや蚊、サソリも潜んでいる。それでも挑戦したいという人は、今年10月に開催されるので、是非登録してもらいたい。
寒さを愛するランナーのためのウルトラマラソン
MONTANE® Yukon Arctic Ultra
距離:700km
登坂:6000m
場所:カナダ
注意:低体温症・凍傷・疲労
タフネス指数:9
このレースは世界で最も寒く、最もタフなウルトラマラソンとして知られている。時として恐怖さえ感じる極寒と、足下が不安定なコース、そして最長700kmという超長距離が特徴だ。ランナーたちは必要な食料と道具を積んだソリを引かなければならず、平均気温はマイナス12度から25度と非常に低いため、生き残るだけでも十分自慢できる。160kmコースに出場したヤコブ・ハストルップは「冷え込んだ夜間はミスが許されない」と警告している。
コースがないウルトラマラソン
Dragon’s Back Race
距離:300km
登坂:15000m
場所:ウェールズ
注意:テクニカルな地形・雨・寒さ・方向感覚・羊
タフネス指数:9
1992年にスタートしたこのレースは長期休止のあと、20年後の2012年に復活した。100回以上のウルトラマラソン出場回数を誇るあるベテランウルトラランナーはレース後に、「Dragon’s Back Raceは今まで挑戦したどのウルトラマラソンよりもタフだった」と振り返っている。コースが指定されていないこのレースで、ランナーたちは時として視界不良になるウェールズの荒野をできる限り直線に走らなければならない。
狂気のウルトラマラソン
The Grand Raid Réunion / Diagonale des Fous
距離:164km
登坂:9917m
場所:レユニオン(インド洋)
注意:落差・長距離登坂・火山岩・天候変化
タフネス指数:8
このレースは「Diagonale des Fous」(狂気の登坂)という名前がすべてを物語っている。全長164kmのこのノンストップウルトラマラソンには登坂9917mが含まれる。豪雨と霧、そして高温の熱帯気候の中、ごつごつとした火山岩の上を走らなければならないこのレースが神格化されているのも納得の話だ。ベテランウルトラランナーのひとりは、「高所恐怖症の人はやめた方がいい。本当に怖いセクションがある」と助言している。
ドMのためのウルトラマラソン
Tor des Géants
距離:336km
登坂:24000m
場所:イタリア
注意:天候変化・睡眠不足・幻覚症状
タフネス指数:9
「TDG」、または「Tor」として知られているこのレースはベテランランナーにさえも恐れられているが、その理由は全長336km、登坂24000m、標高2000m級20峰という数字を見れば明らかで、最短記録3日間というこのタフなレースを完走できるランナーは50%しかいない。天候は時として最悪となり、強風、低温、雨、みぞれ、雹、雷が襲い、長く暗い夜が待ち構える。また、睡眠不足と幻覚症状に苦しめられる時もある。美しい夜明け、満点の星、サプライズ、怒り、恐怖、孤独、涙、そして喜びさえも味わえるこのレースに興味を持った人は是非登録してもらいたい。
「最高にハイ」なウルトラマラソン
La Ultra – The High
距離:333km
登坂:5000m x 3セクション
場所:ヒマラヤ(インド)
注意:高山病・酸欠・高山・暑さ・寒さ
タフネス指数:8
「標高」でヒマラヤに敵う場所はない。このワンステージ制のレースは「The High」の愛称で親しまれている。ランナーたちは333kmを72時間以内で走らなければならず、高山病にかかる可能性も高い(最悪の場合死に至る場合もある)。また、途中には5000mの登坂が3セクション待ち構えている(レースには222kmと111kmのショートコースも用意されている)。エクストリームなレースであるため、オーガナイザーは他のランナーとの競争は推奨していない。レース中に見られる絶景は汗を流し苦しむだけの価値がある(はず)。
www.thehigh.in
レジェンドになれるウルトラマラソン
Spartathlon
距離:246km
登坂:1200m
場所:ギリシャ
注意:疲労・猛暑・非情な切り捨て
肉体の強さと耐久力の究極の試練と言えるSpartathlonは世界で最も権威のあるウルトラマラソンのひとつであり、トップランナーたちの目標だ。アテネからスパルタまでの全長240kmを走るこのワンステージ制のレースを完走できるランナーはわずか40%しかいない。彼らにとって大きな障壁のひとつとなっているのがタイムだ。36時間以内にゴールしなければ容赦なく切り捨てられるため、ランナーたちはほぼ休みなく走り続けることになる。このレースはギリシャのレジェンドになるための試金石であり、ゴールできればレジェンドたちに肩を並べることになるが、写真のようなタトゥーを入れるかどうかは本人の意志に任せたい。