EVO 2015
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Gaming

プロゲーマー梅原大吾に7の質問

新章を迎えた梅原大吾が今週末ライブストリーミング番組を開始する。今回は彼本人にストリーミングを始める理由、格闘ゲームコミュニティの重要性とそこへ向けた本人の尽力などについて話を聞いた。
Written by Michael Martin
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梅原大吾

梅原大吾

© Alex Rubens/Red Bull eSports

世界最強の『ストリートファイター』プロゲーマーと評価されるウメハラこと梅原大吾(Mad Catz所属)が新章を迎えた。自分に数々の栄光をもたらした『ウルIV』から先日リリースされた最新作『V』へ活躍の舞台を移したのだ。大幅な進化を遂げたこの最新作は格闘ゲームコミュニティに新しい視点を授けることになるが、コミュニティとトーナメントシーンの発展を促すために、ウメハラ本人も進化を遂げなければならない。
その進化のひとつが、 2016年2月21日日曜日午前11時(日本時間)にスタートするライブストリーミングだ。このストリーミングでウメハラは『ストリートファイター』シリーズを通じて培ってきたトップレベルの知識とテクニックを惜しげもなく披露してくれる予定だ。
今回はウメハラ本人にストリーミングを始める理由、格闘ゲームコミュニティの重要性とそこへ向けた本人の尽力などについて話を聞いた。
ウメハラ選手はかつて配信やTwitterの活用に対して消極的だったと思いますが、最近は以前よりもテクノロジーを活用して格闘ゲームコミュニティに積極的に関わろうとしています。心境の変化の理由を教えてください。
格闘ゲームコミュニティが年々大きくなる一方で、長年解決されないままになっている問題がひとつあると思います。それは上位陣の顔ぶれが変化していないことです。これは世界に共通する格闘ゲーム界の問題です。その大きな理由は、ほとんどのプレイヤーが有益な情報をも手に入れる方法がないために、質の良い対戦ができずに這い上がれないでいることにあると思うのです。
このままではコミュニティが縮小してしまう恐れがあります。それを回避するためには情報格差を無くし、より多くのプレイヤーにチャンスを与えることが必要です。つまり、自分の知識を共有して、皆のレベルを高めるということ。これに一番有効なのは実戦の配信ではないでしょうか。
自分も含め、トッププレイヤーがこれをすることは一時的には損に思えるかもしれないですが、問題を根底から解決し、将来につなげるためには必然だと考えます。心から業界の発展を願う人たちと協力してこの配信を成功させたいと思って意欲に沸いています。
あなたは米国人プレイヤーと日本人プレイヤーのスキルの差を縮めるために力を貸したいとしていますし、個人的には日本国内で出版されている本も英語版を出版して頂きたいと思っているのですが、その差を縮めるために、あなたの個人の考え方や格闘ゲームにおける哲学をどう活かせるとお考えですか?
『ストリートファイターⅤ』という新しいゲームを攻略する過程を世界のユーザに対して配信していきながら、自分なりの問題解決の方法や上達のプロセスを共有したいと思います。そうすることで問題にぶつかっても諦める必要などないんだ、とわかってもらえれば良いなと考えています。
幸い自分の周りには、この考えに賛同してくれる友人プレイヤーがたくさんいます。彼らにも積極的に配信に協力してもらいながら、「あきらめずに立ち向かう」姿勢やその喜びを伝えたいと思っています。
対戦を有利に進めるために、どのように相手を分析したり、相手のクセを見抜いたりしているのでしょうか?
僕は「クセ」というものはあまり意識しないです。まず相手の戦略を読みます。戦略によってそれぞれの行動が変わってくる。だから、戦略を見抜く事で自然に相手の行動が予想できるのです。
世間の大半はあなたが『V』をプレイすると予想していました。『V』のトーナメントに向けての自信のほどは?
今回の配信で自分の練習法や戦略を公開するわけですから、他選手にウメハラ攻略の練習をさせているようなものかもしれないですね。ですので、多少勝率が下がるかもしれない。自虐的かもしれない。それでも、多くの勝利をすることでプロの存在感を見せたいと思っています。地道に少しずつでも前進することが僕のモットーです。 チャレンジが大きいほど毎日が楽しくなります。
時代の変遷と共に、欧米では多くのアーケードが姿を消しました。先日、日本を訪れたのですが、日本のアーケードも人がまばらでした。私の知っている限り、『V』はアーケードで稼働しません。これはシリーズ史上初めてのことです。また、日本国内の他のトッププレイヤーの皆さんから伺った話も踏まえますと、若い世代のプレイヤーはアーケードシーンに参加していないように思えます。これが日本の格闘ゲームコミュニティにどのような影響を与えると思いますか? また、コミュニティを代表するトッププレイヤーのひとりとして、どのような形でこの部分に力を貸せると考えていますか?
僕はアーケード全盛期にゲームに出会いました。ですので、アーケード育ちの自分にとってネット対戦というのはどこか物足りないと感じます。相手の顔が見えて、気配を感じられる環境は特別です。
ですが、効率良く上達をする上でネット対戦は必要で、プロである以上好き嫌いを言うわけにはいかないと思っています。効率化を好む時代の流れには逆らえないが、格闘ゲームがコミュケーションの手段だという事実はいつまでも変わらない。配信を通して多くの人にゲームを身近に感じてもらいながら、オフラインのイベントも多数企画し、格闘ゲーム本来の楽しさを伝えていきたいと考えています。
イベントを楽しむウメハラとボンちゃん

イベントを楽しむウメハラとボンちゃん

© @Ohsuakira

コミュニティへのサポートで思い出しましたが、あなたはCapcom Cupの賞金をEVO Scholarship Fund(EVOが設けている奨学金制度)へ寄付しました。寄付をした理由を教えてください。
個人的にプロゲーマーにはどんどんお金を稼いで欲しいと思っています。ですので、間違っても賞金を寄付などしないでほしいです(笑)。
僕が寄付をしたのには個人的な理由があります。『ストリートファイターIV』は僕が格闘ゲームに復帰するきっかけになり、言ってみればプロゲーマーになるきっかけも作ってくれました。また、コミュニティに支えられながら、これまでとても貴重な経験をさせてもらいました。だから、その『IV』の締めくくりとなる最後の大会でコミュニティに対してなんらかのお返しがしたかったんです。
もし賞金を獲得したら寄付をしよう、と大会前日に思いついたのですが、それならばEVOの奨学金制度しかないと思いました。EVOもまた自分にとっては特別な大会で、EVOがなければプロゲーマーになることは絶対になかったと言い切れますから。そのふたつの特別な物にお返しをするには寄付という形しか思いつかなかったんですよ。
思いついても賞金を手に出来なければ実現できなかったので、Capcom Cupの結果には満足しています。
あなたは本を出版していますし、あなたの素晴らしいプレイは若い世代のプレイヤーがシーンに参加するきっかけとなってきました。最近ではあなた自身が漫画にもなりましたね。あなたがメインとして使ってきたリュウ・殺意リュウと共に今回フィギュア化されたことについてどう感じていますか?
嬉しい… のかな?(笑)。こっぱずかしいですけども。とりあえずは、ありがたいなあ、今後も頑張っていこう、という気になれました。そういう意味で感謝しています。ありがとうございます!
ゲスト: ときど / ハイタニ / sako / ヌキ / ふ~ど / 吉祥寺ケン / ハメコ