Gaming
2010年代(2010年~2019年)はレーシングゲームにとって素晴らしい10年だった。
テクノロジーとサービス(次世代機、高速インターネット、VRなど)が進化していく中、人気シリーズの続編や新規タイトルが次々とリリースされ、素晴らしい車両や息を呑むような景色、激しいレースを楽しむことができた。
英国の田園風景からモナコのタイトなコーナーまでをドライブできるようになった今、2010年代の10年間にリリースされた数々のレーシングゲームを振り返り、その中からベスト10をピックアップして紹介することにした。
『Forza Horizon 4』
- 開発:Playground Games
- プラットフォーム:Xbox One / PC
2018年はゲーミングシーン豊作の1年だったが、『Forza Horizon 4 / フォルツァ ホライゾン 4』は最優秀タイトルのひとつに数えられるクオリティを誇っており、2010年代ベストレーシングゲームにも間違いなく含まれる。
この評価はこのシリーズのファンにとっては驚きでも何でもないだろう。『Forza Horizon』シリーズはXbox One史上最高のレーシングゲームシリーズであり続けており、そのゴージャスなオープンワールドと豊富な車種はペトロールヘッズを魅了してきた。
しかし、『Forza Horizon 4』はさらにレベルアップしており、季節が変化する美しい英国を舞台に設定している。冬になれば湖が凍るこの作品の天候は予測不可能で、その気まぐれぶりは現実世界の英国そのものだ。
優秀な機能群と美しい景色をふんだんに用意しているこの作品はこのシリーズを世界的に有名にしたゲームプレイを維持することでゲーミング史に残る美麗レーシングを実現している。
『Forza Horizon 4』は豊富なコンテンツだけでも十分にレコメンドに相応しいが、この作品は究極のレーシングゲームに近い存在と言っても良いだろう。このゲームをプレイすれば二度と同じ視点から英国の田園風景を見ることはできなくなる。
『マリオカート8』
- 開発:任天堂
- プラットフォーム:Wii U / Nintendo Switch
任天堂のカートレースシリーズのようにひとつのジャンルを独占しているゲームシリーズはほとんど存在しない。
『マリオカート』シリーズが本格的な競合に直面したことはない。ライバルになろうとする作品群(『クラッシュ・バンディクー レーシング ブッとびニトロ!』や『チームソニックレーシング』など)を任天堂は狙いすましたミドリこうらでコースアウトさせてきた。
それでも、任天堂は兜の緒を緩めることなく進化を続けている。3DSでリリースされた『マリオカート7』では空が飛べるようになり、『マリオカート8』ではHDグラフィックスと反重力エリアが追加され、メビウスの輪のようなドライビングができるようになった。
そして、Nintendo Switchでリリースされた『マリオカート8 デラックス』はバトル戦用スタジアムなど細かい修正が加えられ、1990年代以来最高のカウチマルチプレイヤーレーシングゲームになった。
“1990年代以来” が『マリオカート』と『マリオカート64』のどちらを意味しているのかは、皆さんの判断に任せたい。
『DiRT Rally』
- 開発:Codemasters
- プラットフォーム:PC / Mac / PS4 / Xbox One
ラリーゲームは2010年代前半にやや方向性を見失ってしまったと言っても差し支えはないだろう。コリン・マクレーをフィーチャーした『Colin McRae Rally』シリーズを終わらせたCodemastersは『DiRT』シリーズと『Grid』シリーズでよりアーケードな方向性を打ち出していった。
しかし、その迷いは2015年にリリースされた本格路線復帰作『DiRT Rally』で断ち切られた。
無情だがそれゆえに楽しいこのラリーシミュレーションのすべてがパーフェクトに噛み合った瞬間は最高に楽しくて最高にリアルだ。マスターしなければならないステージ数は膨大で、収録ラリーカーは1960年代から現代まで網羅している。
しかし、『DiRT Rally』が評価されているのは “ラリーゲーム” としてだけではない。Codemastersが レーシングシミュレーションの定義を徹底的に見直したこの作品は2010年代ベストレーシングゲームのひとつに数えられている。
現実世界のレーシングファンは自分たちのマシンを細部までカスタマイズしていくが、彼らはレーシングシミュレーションでもそうしたいと考えている。
そのため、Codemastersは『DiRT Rally』を早期アクセスでリリースしたあと、コミュニティの意見を取り入れながら長い時間をかけてアップデートを重ねてから製品版をリリースした。この開発プロセスは当時の他の家庭用ゲーム機版タイトルでは採用されていなかった。
『Project CARS』
- 開発:Slightly Mad Studios
- プラットフォーム:PS4 / Xbox One / PC
2015年のサプライズヒットとなったのが、クラウドファンディングで開発された『Project CARS / プロジェクトカーズ』だ。しかし、Slightly Mad Studiosが手がけたこのタイトなレーシングシミュレーションゲームをプレイすれば、彼らが成功を収めたのは当然だということが理解できる。
余計な機能がない『Project CARS』はレーシングの核となる部分に拘っており、タイヤの疲弊やダメージなどのディテールをリアルに再現しつつ、分かりやすいキャリアモードを用意している。
また、レースウィークエンドは最初から最後までフルに楽しめるようになっており、AIがドライブするライバルたちを相手にするレースはチャレンジングだ。
余計な機能がなくシンプルな『Project CARS』を「磨き上げが足りない」とジャッジしてしまうのは間違いだ。グラフィックスは美しく、定期的なアップデートによって様々な問題が解決されている。
続編の『Project CARS 2』はこのオリジナルをベースに開発されており、こちらも素晴らしいクオリティに仕上がっているが、今回のリストに相応しいのは新規レーシングシリーズを市場に持ち込むことに成功したオリジナルだ。
レーシングを愛する人にとって『Project CARS』は天恵だった。
『Assetto Corsa』
- 開発:KUNOS Simulazioni
- プラットフォーム:PC / PS4 / Xbox One
ファッションからスポーツカーまでイタリアの職人技は様々なジャンルで世界的に有名だが、同国に拠点を置くKUNOS Simulazioniはレーシングシミュレーションの匠だ。
『Forza』シリーズがMicrosoftの高額予算の結果なのだとすれば、『Assetto Corsa / アセットコルサ』はレーシング愛の結晶だ。KUNOS Simulazioniはスタッフ全員がレーシングの大ファンで、その愛は本社をACIヴァッレルンガ・サーキット内に置くほど大きくて深い。
彼らは情熱だけで小規模なPCレーシングゲームを家庭用ゲーム機へ移植したあと続編まで開発しているが、どの作品もクラシックマシンでシルバーストンやレッドブル・リンク、ラグナ・セカなどの有名サーキットを走ることができる。
VRヘッドセットを購入すればVRプレイも楽しめるこのシリーズは熱狂的なファンを抱えており、オンラインコミュニティを訪れれば大量のMODを手に入れることができる。『Assetto Corsa』はレースでの勝利を目指すゲームではない。レースを徹底的に楽しむためのゲームだ。
『グランツーリスモ6』
- 開発:Polyphony Digital
- プラットフォーム:PS3
「少ない方が良い時もある」という表現は、Polyphony Digitalのフラッグシップレーシングシリーズ『グランツーリスモ』にはまったく当てはまらない。
ドライビングのあらゆる側面を貪欲に再現しようとしている『グランツーリスモ』シリーズはディテールに拘るドライビングファンにとって至高の作品であり続けている。
特に、2013年にリリースされた『グランツーリスモ6』の車種や機能、ドライビングエクスペリエンスの豊かさは当時リリースされていた他のほぼすべてのレーシングシミュレーションゲームをバックミラーの遙か彼方へ追いやった。
細かい修正点は別として、『グランツーリスモ』シリーズのゲームプレイとハンドリングは常にリアルであり続けてきた。「上手くいっているなら変える必要はない」というわけだ。しかし、『グランツーリスモ6』にはそれまで見たことがなかった機能が大量に追加された。
車種は120台が新たに追加され(収録台数は約1,200台)、レーストラックも追加された(現実世界のレースファンに愛されているシルバーストンやブランズハッチを含む)。
また、カテゴリーも複数用意されており、NASCARからアイスレースまでが楽しめる。『グランツーリスモ6』は「多い方が良い時もある」を信じる人たちが作り出した作品で、それゆえに突出している。
『Forza Motorsport 7』
- 開発:Turn 10 Studios
- プラットフォーム:Xbox One / PC
『Forza Motorsport 7 / フォルツァ モータースポーツ7』のリリースに先駆けて、このゲームのXbox One Xとの相性、スケール感、グラフィックスは、Microsoftのフラッグシップレーシングゲームシリーズ最新作の真の実力を示していると喧伝されたが、これは嘘ではなかった。
『Forza Motorsport 7』はただの最新作ではなかった。ネイティブ4K・フルHDR 60fpsを実現するこの作品は、ダイナミックな天候変化やその影響、美しい風景がとんでもないレベルで再現されていた。しかし、何よりも嬉しかったのは、プラットフォームを問わずこのゲームのすべてが素晴らしいクオリティを誇っていたところだった。
長年愛されてきたクラシックからカルトマシンまでをカバーする大量の車種、車両と景色の恐ろしいほどのディテール、ホイールが外れてしまうまで走り続けられるだけの膨大な数のレーストラックが特長の『Forza Motorsport 7』は、見目麗しく奥が深いレーシングゲームだ。
また、セールスポイントとしてアピールされていたダイナミックな天候変化はレースに大きな影響を与えるようになっており、ベテランレーシングゲームファンにもチャレンジングなゲームプレイを提供する。
簡単にまとめて言えば、『Forza Motorsport 7』を上回るのは難しい。間違いなく2010年代ベストレーシングゲームのひとつだ。
『F1 2019』
- 開発:Codemasters
- プラットフォーム:PC / PS4 / Xbox One
真実を言ってしまえば、『F1』シリーズはどれをプレイしても基本的なゲームプレイは同じだ。
こう書くと、遠回しに批判しないでダイレクトに批判すれば良いじゃないかと思うかもしれないが、我々は批判したいわけではない。
F1のハンドリングとフィーリングをマスターしたCodemastersが "各種ドライビングエイドのオンオフだけで難易度を調整できる完ぺきなシステム" を何年も前に作り上げてしまったということを言いたいだけだ。
つまり、ドライバーとマシンを毎年更新する以外にいじるところはないというわけだ。しかし、実はいじれるところがまだひとつ残っていることが『F1 2019』で明らかになった。
それがストーリーモードだ。このモードではF2ドライバーとしてスタートし、F1チャンピオンを目指すことになる。
このモードとファインチューンされたマルチプレイヤーモードが中心に置かれている『F1 2019』は史上最高のF1ゲームであると同時に、2010年代ベストレーシングゲームのひとつだ。
『The Crew2 - ザ クルー2』
- 開発:Ubisoft
- プラットフォーム:PC / PS4 / Xbox One / Google Stadia
シンプルな話だ。
オープンワールドレーシングを本格的に楽しみたいなら『Forza Horizon 4 / フォルツァ ホライゾン4』をプレイすれば良い。オープンワールドレーシングを車やバイクだけではなく飛行機やボート、モンスタートラックでも楽しみたいなら『The Crew2 - ザ クルー2』をプレイすれば良い。それだけだ。
Ubisoftは米国全土をひとつのマップに落とし込んでいるため、プレイヤーは自分の好きなビークルで自分の好きなエリアを走ることができる。言うならば『STEEP』のモータースポーツ版だ。
(リリースから1年半以上が経過しているためプレイしている人は少ないかもしれないが)マルチプレイが推奨されており、ラリーレイドからドリフトまでを含む様々なチャレンジが用意されているので、AIやフレンドと壮大なスケールのレースを楽しむことができる。
また、Google Stadiaローンチタイトル群の中のベストタイトルのひとつでもある。
『グランツーリスモSPORT』
- 開発:Polyphony Digital
- プラットフォーム:PS4
世界的大ヒットとなった『グランツーリスモ6』から4年、PS4初の『グランツーリスモ』シリーズへのファンへの期待は高かった。しかし、そのような期待に慣れているPolyphony Digitalは『グランツーリスモSPORT』で見事にその期待に応えるばかりか、その期待を大きく超えてみせた。
さらなるディテールと車種、激しいレースが収録されているこの作品は、『グランツーリスモ』シリーズが7作目にして “まだ始まったばかり” であることを強烈にアピールした。
最大の特長は前作のクイックマッチを進化させたスポーツモードで、これは “アドバンスドマッチメイキング” システムを採用して同レベルのドライバー同士が競い合えるようにしているオンラインモードだ。また、『グランツーリスモSPORT』はレーシングゲームのesports化にも大きく貢献した。
美しいグラフィックスと圧倒的なディテールへの拘りは長年に渡り『グランツーリスモ』シリーズのトレードマークだったが、 “世界最高のレーシングゲームのひとつ” という評価を確実にしたのはこの『グランツーリスモSPORT』だった。
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