探検
山頂から海底まで！ 常識を超えた世界各地の驚くべき宿泊施設を紹介。
アドベンチャーの世界に生きる冒険家たちが求める宿泊施設は、ふかふかのタオルや豪奢なルームサービスを備えた高級ホテルではない。彼らは、むしろ人間に踏み荒らされていない文明から離れた場所であればあるほど泊まりたいと思うのだ。高い山の頂上であろうと、深い海の底であろうと、自然と一体化できる場所こそが彼らにとって最高の宿泊施設なのだ。今回我々が選び出したのは、世界各地に点在する10ヶ所のエクストリームな宿泊施設の数々。これらは5つ星ホテルのような豪華さとは無縁かもしれないが、50億もの満天の星空を眺めながら眠りにつけるなど、プライスレスな体験ができる場所ばかりだ。
1.スカイロッジ（ペルー）
「聖なる谷＝ヴァレ・ウルバンバ」とも呼ばれるペルーのクスコ。この谷底を400m下に見下ろす岩壁に張り付くような形で位置しているのが、完全なる透明カプセル型ロッジ「Skylodge」だ。この “天空のロッジ” に辿り着くこと自体がすでにアドベンチャーを必要とする。ヴィア・フェラータ（壁面に設置されたワイヤーロープ。はしごなどを使ってクライミングするための設備）を使って登攀した先にある就寝用カプセルには、専用バスルームとダイニングルームが備え付けられている。岩壁に張り付いたカプセルの中で壮大な景色を楽しみながら食事を摂り、チェックアウト後はジップラインを使って山を下ろう。
宿泊料金： ダブルルーム1泊1名あたり£335（約48,700円）/ ヴィア・フェラータおよびジップライン使用料金込み、夕食・朝食付き
2. ピク・デュ・ミディ・デ・ビゴール（フランス）
冠雪した山の頂上で、満天の星空に抱かれて眠ってみたいと思ったことはないだろうか？ フランス・ピレネー山脈にある標高2,877mのピク・デュ・ミディには、西洋で最も高い場所に位置する天文台がある。長年にわたり、この天文台は宇宙観測および地球環境の研究者のみが立ち入ることができたが、現在では一般公開されている。客室は全11室が備えられており、宿泊客は息を呑むような満天の星空を目にすることができる。
宿泊料金： ダブルルーム1泊1名あたり£337（約49,000円）/ 夕食・朝食付き
3. カンバーランド・キャバーン（米国・テネシー州）
世界広しと言えども、寝室に辿り着くまでに大量の汗を流さなければならない宿泊施設はここぐらいだろう。テネシー州にあるカンバーランド・キャバーンでは20フィート（約6m）ほどの木製はしごを降り、狭い通路とぬかるんだ地面を這って抜けてようやく寝室にたどり着く。宿泊客には、鍾乳石が天井から垂れ下がった10エーカー（約40㎡）の部屋があてがわれる。朝食が提供されるのはボルケーノ・ルームと呼ばれる地下333フィート（約101m）の空間だ。鍾乳洞でのキャンプには虫に悩まされることがなく、雨の心配もないという利点がある。運が良ければ、地元のブルーグラスバンドの演奏を洞窟内のホールで楽しむこともできる。
宿泊料金： 1泊1名あたり£36～52（約5,200円～7,500円）/ 朝食付き
4. アイス・ホテル（スウェーデン）
北極圏の真っ只中で、完全に氷だけで作られた文字通りの「アイス・ホテル」に宿泊できることを知っているだろうか？ スウェーデンの北極線上約200kmの場所に実在するこのホテルは、建物全体が巨大な氷塊だけで作られている。もちろん就寝用ベッドも氷を削り出して作られたもので、1杯飲みたい気分の時は氷のカウンターを持つ「アイス・バー」でウォッカショットをあおることが可能で、その気になれば併設の「アイス・チャペル」で最高にクールな結婚式を挙げることさえ可能だ。ホテル館内の温度はおよそ−5°Cから−7°C。就寝用の寝袋は完全な極地探検仕様なので、寒くて眠れないことはないのでご安心を。2017年は当ホテル初めての試みとして通年営業を始める予定なので、白夜のシーズン（夏至の前後）にここを訪れてみるのも一興だ。
宿泊料金： ダブルルーム3泊1名あたり£900（約131,000円）/ 朝食付き
5. マンタ・リゾート（ザンジバル）
先ほど山頂や天空のロッジでの宿泊を提案したばかりだが、今度は逆に海底で魚たちに囲まれて眠るのはいかがだろう？ インド洋に浮かぶザンジバル・ペンバ島には、あるひとつの特徴で世界的にその名を知られるホテルがある。そう、この「マンタ・リゾート」には海底客室があるのだ。海に浮かぶ3階建のホテルはペンバ島で伐採された堅木を使ってスウェーデン人が施工したもので、海底にベッドルームが備えられた客室からは珊瑚礁が360°で楽しめる。しばらく外を眺めていれば、タコやトランペット・フィッシュ、その他様々な海の生物たちが客室の様子を覗きに来るはずだ。
宿泊料金： ダブルルーム1泊2名あたり£1,100（約160,000円）
6. イルリサット / グリーンランド
グリーンランドに雪が降る中、イグルー（氷のブロックを重ねて作ったドーム状の家）で眠ってみたくはないだろうか？ 大自然を愛し、文明からの隠遁を好む人には、この「ホテル・アークティック」はまさにうってつけの宿泊施設だ。グリーンランド東部、イルリサットに位置するアルミニウム製イグルーを備えたこのホテルはディスコ湾を一望できる海沿いに建っている。イルリサットは有名な極地探検家クヌート・ラスムッセン（「エスキモー学の父」と呼ばれ、北西航路をヨーロッパ人として史上初めて犬ゾリで横断した）の出身地としても知られている。イグルーの窓からは、静かに動く氷山や、凍てつく海で潮を吹き上げるクジラなどを目にすることができる。
宿泊料金： ダブルルーム1泊2名あたり£218（約31,700円）
7. ビヴァッコ・ゲルヴァスッティ（イタリア）
一般的な山小屋は必要最低限しか揃っていない宿泊施設だが、少なくとも風雨をしのぎ過酷な山の天候から身を隠すことを可能にしてくれる。だが、イタリアのドロミーティにあるこの山小屋は従来のそれとはひと味もふた味も異なる。このビヴァッコ・ゲルヴァスッティなる宿泊施設は、海抜2,835mの険しい山肌に建っており、冬季はスキーを使ったアクセス以外は不可能だ。2つのドミトリーには自炊可能なホットプレートを備えたランチルームや、衛星回線を使ったインターネット環境を完備。電力供給は全て太陽光発電でまかなわれている。文明から完全に隔離されているわけではないが、静かなひと時を送るには理想的な場所だ。
宿泊料金： シングル1泊1名あたり£9（約1,300円）
8. フリー・スピリット・スフィア（カナダ）
ツリーハウスで過ごしたいという夢は誰しも子供の頃から思い描いているはずだ。カナダ・ブリティッシュコロンビア州にあるフリー・スピリット・スフィアは、そんな夢を叶えてくれる宿泊施設だ。ここでは、原生林に囲まれた球形のツリーハウス群が用意されている。現在、宿泊用に提供されているツリーハウスは3室。各室にはベッドと座るためのわずかなスペースがあるほか、コーヒーなどを淹れるための設備も備えられており、朝目覚めて清冽な空気を楽しみながらコーヒーを愉しめるようになっている。
宿泊料金： ダブルルーム1泊1名あたり£104（約15,100円）より
9. ホテル・エベレスト・ビュー（ネパール）
1953年にエドモンド・ヒラリーとテンジン・ノルゲイの2人が史上初めてエベレスト登頂を果たした時、それからわずか18年後に一般人がホテルの窓からこの世界最高峰を望むことになるとは想像もつかなかったはずだ。「ホテル・エベレスト・ビュー」は標高3,380mに位置する世界で最も高い場所にあるホテルとして1971年開業し、2004年にはギネス記録に認定されている。このホテル最大にして唯一のセールスポイントは、全室からエベレストを望める “マウンテン・ビュー” だが、このホテルへのアクセス方法も容易ではない。このホテルへ辿り着くまでには、合計3日間ものトレッキングを要するのだ。チベット地方は地震が頻発する地域で、雪崩や吹雪の危険も覚悟しなければならない。しかし、言うまでもないことだが、そのような苦難を乗り越えてでもこのホテルを訪れる価値はある。
宿泊料金： ダブルルーム1泊£195（約28,400円）
10. フライパン・タワー（米国・ノースカロライナ州）
ノースカロライナ州の沿岸から沖合32マイル（約51.5km）の場所に忽然と現れる「フライパン・タワー」（形状がフライパンそっくりに見えるためこう呼ばれる）は、元々は米国沿岸警備隊の灯台として使用されていた施設だ。この海域はかつて “大西洋の墓場” なる異名をとり、その危険な海流により多数の船が沈没事故を起こしてきた。2004年に沿岸警備隊の専用設備としての役目を終えた後、リチャード・ニールという人物が85,000ドル（約9,850,650円）という破格でこの灯台を購入し、温水シャワー・電力・娯楽室などの設備を備えたホテルとして営業を開始した。ブラックシーバスやシイラ、果てはイトヒキアジなどが多数生息するこのクリアで美しい海域は、釣り好きには最高のフィッシングスポットだ。
宿泊料金： ダブルルーム2泊1名あたり£479（約70,000円）/ 毎食付き