ケントン・クールは英国で最も大きな成功を収めている登山家のひとりで、世界最高峰クラスの全ての山を登頂した経験を持つ。また、彼はエベレスト、ヌプツェ、ローツェの3峰を一気に攻略した世界初の登山家でもあり、エベレストの最高地点に12回(世界記録)も登頂した。
つまり、ケントンは8,848mを登り切るために何が必要なのかについて熟知している人物なのだ。ケントンは「登頂日のバックパックはほとんど空に近い状態なんだ。なぜなら、重い荷物に余計なエナジーを使いたくないからさ。でも、ウェアはエベレスト攻略のためにしっかりと準備している。ウェアが登頂の成否を決めることになる」とコメントしている。
そのケントンに地球最高峰の頂上に到達するために必要なアイテムを紹介してもらった。
1:サーマルワンピース
僕はサーマルワンピースを着て、腹部に冷気が入り込まないようにしている。ズレ上がりも防げるしね。僕のお気に入りのブランドはIcebreakerだ。オーガニックなメリノウールのサーマルだから、汗を逃がしつつ、暖かさをキープしてくれるんだ。
2:フレッシュなソックス
僕は登頂日に新しいソックスをおろすんだ。手足、特に指先と足先は高地で最もダメージを受けやすい。おろしたてのソックスは足先の温度をキープしてくれる。このようなソックスが、凍傷で足の指を失ってしまうかどうかを決める可能性があるんだ。
3:パワーストレッチ
僕はPolartec Power Stretchを脚部に使っている。厚さが2mmしかないから、タイツを履いているような感覚なんだ。
4:フリース
フリースは不可欠だね。特に珍しいアイテムではないけれど、気温がマイナス36度前後まで落ち込む山頂を目指す時にレイヤーとして着込んでおけば、大きな助けになるんだ。
5:エクスペディションスーツ
エクスペディションスーツは腕と足が自由に動かせる寝袋みたいなものだね。分厚いほどベターで、グースダウンなら冷気をシャットアウトできる。英国なら800~900ポンド(約12万円~13万6,000円)くらいから手に入る(The North Faceも優れた製品を発売している / Himalayan Suit)けれど、予算を投じてもっと優れたスーツを手に入れることも可能だ。グースダウンなどを使用している製品なら、200ポンド(約15万円)以上になるし、製品到着まで2ヶ月くらいかかるけれど、自分の体型に合わせて作ってくれる。スーツのフィット感は非常に重要だから、このようなサービスは有り難いね。スーツを着込むとミシュランマンのようなルックスになるけれど、エベレスト登頂における最重要アイテムだ。
6:ブーツ
エベレストを制覇するためにはビッグブーツが必要になる。アウターとインナーに分かれていて、スキーブーツみたいなんだ。僕はLa SportivaのOlympus Mons Evo(オリンポス モンズ エボ)を使っているよ。宇宙服のようなルックスだけど暖かいし、ウエイトレシオ(重量と保温性と耐久性のバランス)も優れている。グローブを外さずに簡単に履ける点もポイントが高い。価格は600ポンド(日本正規価格:13万円税別)だけど、エベレストに5~6回は挑戦できるよ。
7:グローブ
僕はBlack Diamondのダウンタイプを使っているけれど、一番かさばる製品は使っていない。少し動かしにくいからね。でも、2番目のサイズでも十分に分厚いから問題ないよ。
8:使い捨てカイロ
ハンドウォーマータイプの使い捨てカイロはエベレスト登頂必須アイテムの中で一番安いけれど、休憩時にグローブやコートに入れておくと大きな助けになるんだ。
9:バラクラバ
バラクラバ(目出し帽)は絶対に必要だ。通常はこの上にウールのハットをかぶることになる。
10:アイスギア一式
エベレストは雪と氷に囲まれているから、クランポン、アイスアックス、ハーネスが必要になる。僕はBlack Diamondで揃えているよ。超軽量だからね。
11:ヘッドライト
これも絶対に必要なアイテムだ。エベレスト登頂は夜中にスタートするからね。
12:必需品を詰め込んだ軽量のバックパック
登頂日のバックパックはなるべく軽量に抑えたいけれど、食料から酸素まで、全ての必需品を入れておく必要がある(僕はグローブのスペアも入れている)。まず、水か温かい飲料が入った1ℓフラスク(1ℓでは十分ではないけれど、僕は水分補給よりも軽量を重視している)と食料を入れる。食料はエナジージェルのような凍ってしまうものではなくて、ドライフルーツやチーズを選んでいる。標高が高い場所では食欲を失ってしまうことが多い。僕もチョコレートを食べたくなくなる。でも、刺激的な食べ物が欲しくなるから、ポテトチップス(プリングルズ)を入れているよ。
あとは、4kg酸素ボンベを2本(エベレストは高いので、クライマーの大半は酸素マスクを装着している)を持って行く。それと、高山病対策の薬(デキサメタゾンなど)やトラマドール(オピオイド系鎮痛薬)、医療テープなどを入れた救急キットも用意しているよ。カメラも入れるね!
13:無線
天候の変化や登山の状況など、あらゆる情報をベースキャンプと無線で報告し合うことが重要だ。
14:ラストアイテムは…
ネズミのぬいぐるみ、ストライピーマウスだね。子供の頃からずっと一緒なんだ。登山や探検に必ず連れて行くよ。