MIYACHI
© Suguru Saito
ミュージック

MIYACHIインタビュー「こどもみたいにラップが好き。でもたのしいだけじゃ音楽は時代を越えない」

シンプルなビートの上で64小節ものあいだひたすらスピットする【Red Bull 64 Bars】。このロングヴァースに挑んだMIYACHIに、ヒップホップとの向き合い方についてストレートに切り込んだショートインタビュー。
Written by Tasuku Amada
読み終わるまで:5分Published on
 
— Red Bull 64Bars、挑戦してみてどうでしたか?
MIYACHI「たのしかった。今回、64Barsに参加できるのがすごくうれしくて、しっかり準備してきました」
— 64小節のリリックにはどんな思いが込められている?
MIYACHI「書くときはいつも、そのとき人生でなにが起こってるか、どんな気持ちになってるか、っていうことが全部入る感じ。それに、今回METくんのビートに深みがあって、聴くと人生のことをいろいろ考えちゃうビートだったから、そういうこともちょっと入れられたと思います」
MIYACHI - Red Bull 64 Bars

MIYACHI - Red Bull 64 Bars

© Suguru Saito

— 音楽をつくる上でいちばんこだわっていることは?
MIYACHI「僕は、まじで、ラップが好きなラッパーだから。リリックもどうやったらもっとレベルアップできるか、いつも勉強してる。
あとはやっぱり、いつも自分らしくいることにこだわってるかな」
MIYACHI - Red Bull 64 Bars

MIYACHI - Red Bull 64 Bars

© Suguru Saito

— MIYACHIさんにとっての“自分らしさ”とは?
MIYACHI「今ではラッパーとして、たとえばアパレルのブランドからナイスな洋服をもらったり、ちょっとお金使ってチェーンを買ったりとかできるようになったけど、そういうのを全部無くして考えたときに、それでも残るものがMIYACHIらしさだと思うし、いちばん大事なものだと思う。しいて言うなら、こどもみたいな感覚、かな。いろいろ深く考えることももちろんあるけど、ふざけたりもすることはいつも大事にしてます」
— MIYACHIさんはラップしてるとき、たのしいですか?
MIYACHI「たのしい。ラップはたのしいけど、音楽業界のなかで仕事としてやらなきゃいけないこととかはたのしくないね。でも音楽をつくることは楽しいから、そのバランスが大事。
別に音楽業界が悪いとは思ってないよ。でも、僕がラップをしてる理由は、音楽業界でやっていくため、ではないから」
MIYACHI, MET

MIYACHI, MET

© Suguru Saito

— ピュアな気持ちで作品をつくるのと、それを世の中に届けるために音楽業界のシステムに乗っかっていくことは、少し別の話ですよね。ではMIYACHIさんにとってラップとはどんな存在のものですか?
MIYACHI「小さい頃、ニューヨークで生まれ育ったときにはまわりに自分と似てる子はいなかったんです。アジア人は少ないし、日本人はもっと少ない。自分にとってのホームはどこなんだ? っていう気持ちは小さい頃からずっとあるから、ラップをするのは『おれはここにいるよ』っていう表現なんです。それをみんなに見てほしいって思ってる」
— ラップをすることは、自分の居場所をつくること、に近い?
MIYACHI「うん。みんなの前に強く立って、『おれはここにいるんだ』って。自分でKING MIYACHIって名乗ってるのは、そういう理由。別におれがキングでおまえはおれの下、ってことを言いたいんじゃなくて、おれはパワフルでキングなんだ、って気持ちをこどもの頃から強く持ってる」
MIYACHI - Red Bull 64 Bars

MIYACHI - Red Bull 64 Bars

© Suguru Saito

— これから一生ラップをやってると思いますか?
MIYACHI「んー。お金を稼ぐために一生こつこつやってるのはちょっと、さびしいかな。もし、たのしくできないなら、やらなくてもいい。
やっぱりNazとかJay-Zとかをいま見ると、ラップはまだやってるけど、たぶんほかのビジネスも成功してお金の心配がもう消えて、プレッシャーも消えて、そこからたのしくなるのかもしれないから、そこまで行けたら最高だね。そのレベルにまで上がれるように超頑張りたい」
— 今の日本のヒップホップシーンに対して思うことは?
MIYACHI「常にチェックしてます。すごくペースが早いし、若い子もみんなうまくなってる。僕は全部チェックして、自分が一緒に曲をつくったらどうなるか考えるのがたのしいし、もっと日本のラッパーやトラックメイカーと一緒にやりたいです」
MIYACHI

MIYACHI

© Suguru Saito

— MIYACHIさんにとって、ラッパーの理想像とは?
MIYACHI「音楽自体の良さと、メッセージの強さ、そのふたつがあることかな。それがないと、曲は残らない。たとえば、2Pacはもうこの世にいないけど、まだみんな2Pacのことを話たり、彼が残した曲を聴いてる。なんでかというと、音楽が深くてメッセージが強いから。やっぱりそれが大事なんだと思う」
— MIYACHIさんはリリックにメッセージを詰め込んで、でもユーモアも忘れないですよね?
MIYACHI「そう。それは最初からあるし、これからも変わらないと思うから、心配しなくていい(笑)。でも、ふざけてるだけだったら、20年30年経ったとき、その曲は残らないから。
どうしたらもっといい音楽、もっと伝わるメッセージを込められるか、それはこれからもチャレンジっていうか、がんばりたいことかな」
 

Red Bull 64 Bars - INTERVIEW