雪の上を走るマシンとしては、長年の改良を重ねてきたスノーモビルこそが最適だと言われるが、果たして本当にそうだろうか? 世界には独創的なアイディアを持つ発明家がおり、彼らは雪上を疾走するためのユニークなマシンの数々を生み出してきたのだ。
ファンの推進力を利用したスキーマシンから美しいデザインが映えるコンセプトマシンまで、今回は独創的な雪上マシンたちを紹介していこう。
Skibob/スキーボブ
製造:Stalmach/Brenter社
形式:バイク型スキー
出力:人力
価格:1200ユーロ(約15万6000円)から
クール度:7
これは自転車からタイヤを外した代わりにスキー板を装着したマシンであり、現在では世界選手権が開催されるほどの人気を博している。
コンセプト自体は1949年に考案されたものだが、実用化されて世界に広まったのはここ10年ほどのことだ。ライダーの両足にはショートスキーが装着されており、これを利用して斜面での方向転換を行う。
Ripsaw EV2/リップソー EV2
製造:Howe & Howe Technologies社
形式:デュアル・トラック式戦車
出力:600馬力
価格:27万ユーロ(約3510万円)
クール度:10
元々は軍事用の高速型戦車として開発されたこのマシンは、ごく限られた台数が市販ヴァージョンとして売られている。
6.6リッターのディーゼルエンジンを搭載した3.5トンのこのマシンは、キャタピラーの特性を活かした転舵性能と約37度もの斜面までなら楽々と登坂できる性能を持ち合わせている。最高速度は104km/hで、ラバー製の履帯はどんな悪路でも走破できる。
TH!NK Frost/TH!NK フロスト
デザイナー:アンデルス・グロスリー
形式:コンセプトカー
出力:非公開
価格:非公開
クール度:10
ノルウェーの電気自動車メーカーのためにひとりの学生がデザインしたこのマシンが実際に完成すれば、究極のスポーツカーが生まれることになる。
左右対称のボディデザインは氷の塊からインスピレーションを得たもので、ライトの存在感を打ち消すためにクレバス状のデザインを取り入れている他、車輪は奇抜な三角形をしている。尚、「インフォメーション・ホース」と呼ばれる機能により、ドライバーはリアルタイムで天気に関する情報を入手できる。
Mountain Horse/マウンテン・ホース
製造:Timbersled社
形式:ソリ式ダートバイク
出力:ベース車両によって異なる
価格:4850ユーロ(約63万円)※改造費のみ。ベース車両は別途
クール度:8
この改造キットを使えば、普通のダートバイクが雪上用マシンに変身し、モトクロスライダーは雪に覆われた斜面を最高速度140km/hで疾走できるようになる。
これはスノーモビル改造の第一人者、アレン・マグナム氏が発案したもので、バイクは通常のスノーモビルよりも重量が軽く敏捷性にも優れているそうだ。この改造キットは発売から5年を経ており、すでに多くの愛好者を生み出している。
Snowbird 6/スノーバード6
製造:スティーブ・ブルックス&グレアム・ストラッフォード
形式:アルキメデス・ポンプ式車両
出力:不明
価格:不明
クール度:6
1960年代にロシアの宇宙開発局によって生み出されたこの珍しいスクリュー駆動車は、凍土シベリアのスターシティ(訳注:ロシアの宇宙飛行士訓練施設)の宇宙飛行士回収用に製作された車両だ。
この写真の車両は2002年にベーリング海を横断するために使用されたもの。このミッション中、このマシンは水上に浮かび、氷山を登り、氷塊の上を走り、そして氷の破片をかき分けるなど、あらゆる走行条件をクリアしたそうだ。しかも、マイナス40℃を下回る極寒の中での挑戦だった。
Arctic Air boat/アークティック・エアボート
製造:Airboats社
形式:軽量ボート
出力:70馬力
価格:3万8600ユーロ(約502万円)
クール度:7
この革新的なボートはまるでEverglades社のファンボートをSAS(特集空挺部隊)ヴァージョンに仕立てたようなルックスで、氷上を100km/h以上のスピードで疾走できる。
ポリエチレンを使った斬新な製造技術によって組み立てられたこの軽量ボートは全長4m、重量はわずか250kg。3つのカーボンファイバー製ブレードで構成されたファンを回転させてその推進力で前進する。このエアボートはフィンランドの消防隊をはじめ、いくつかの個人オーナーにも納入されている。
Snow Crawler/スノー・クローラー
デザイナー:ミシャル・ボニコウスキ/Mindsailors社
形式:スノーモビル・コンセプトモデル
出力:非公開
価格:非公開
クール度:8
これがスノーモビルの未来の姿なのか? モノコック状のキャビンから前方に張り出した2本の操舵用スティック、そして電気モーターによって駆動される三角形の駆動セクションを持つこのマシンはまるでジェームズ・ボンドの最新作の世界から飛び出してきたかのような印象を抱かせる。
現段階ではコンセプトカーに過ぎないそうだが、是非実用化してもらいたいものだ。
Snow Glider/スノー・グライダー
製造:Václav Zahrádka社
形式:ファン駆動スキービークル
出力:ファンの大きさによって異なる
価格:8000ユーロ(約104万円)から
クール度:8
チェコの親子によって開発されたこの軽量マシンは雪上を120km/hのスピードでかすめ飛べる。
彼らは独自の設計思想に基づいたこのマシンで、スキー・トーイングとハイスピードなレースを組み合わせた新たなスポーツを生み出そうとしている。実際にこのマシンを見てみたいという人は、彼らのウェブサイトをチェックしてもらいたい。
Antarctic Snow Cruiser/アンタークティック・スノークルーザー
製造:シカゴ・イリノイ工科大学 装甲技術科(当時)
形式:ファットホイール式人員輸送車
出力:当初の目標に達せず
価格:15万ドル(1939年当時)
クール度:4
総重量37トン、全長16.7mのこの正真正銘のモンスターマシンは今も南極大陸のどこかに存在しているはずだが、意図的に氷の中へ埋められたのか、海の底へ葬り去られたのかは定かではない。
1939年に実走テストのために南極へ持ち込まれたこのマシンだったが、クレバスを渡れるように4輪にはめられた直径3mの溝無しタイヤはグリップ力をまったく発揮できず、ディーゼルと電気を組み合わせたエンジンが出力不足であることも露呈した。結果、南極探検基地として固定使用する他に使い道はなかった。