ブラジルが生んだテクニカルスケートマスター、フェリペ・グスタヴォ
© Jonathan Mehring/Red Bull Content Pool
スケートボード

ブラジルが生んだテクニカルスケートマスター、フェリペ・グスタヴォ

強豪揃いのブラジルでフェリペ・グスタヴォが父のサポートを受けながらプロスケーターになるまでの道のり。
Written by Matsui Hiroki
読み終わるまで:7分Published on
ペドロ・バロスルアン・オリベイラティアゴ・レモスレティシア・ブフォーニボブ・バーンクエストなどなど、名前を挙げればキリがないが、世界のトッププロスケーターを古くから数多く輩出している国、ブラジル。そんなブラジル出身のプロスケーターの中で今回紹介するのは、現在、Plan Badidas Skateboardingなどのビッグカンパニーからもサポートを受けるテクニカルマスター、フェリペ・グスタヴォ
ブラジルが生んだテクニカルスケートマスター、フェリペ・グスタヴォ

ブラジルが生んだテクニカルスケートマスター、フェリペ・グスタヴォ

© Jason Halayko/Red Bull Content Pool

フェリペを全力でサポートした偉大なる父の存在

彼はブラジルの首都ブラジリア出身の28歳(2020年1月現在)。幼少期はブラジルの少年スポーツの王道であるサッカーに熱中し、スケートボードには目もくれなかった。彼のスケート熱に火がついたのは、年上の兄達がスケートボードにのめり込む姿を見たことがきっかけ。彼らの姿を見て次第に自分もやりたくなり、7歳の時に本格的にスケートボードを始めた。サッカー少年だった頃からアスリートとしての才能を周りから認められていたフェリペは、スケートでもその運動センスを発揮。凄まじい速度でトリックを習得していった。
ブラジルが生んだテクニカルスケートマスター、フェリペ・グスタヴォ

ブラジルが生んだテクニカルスケートマスター、フェリペ・グスタヴォ

© Jonathan Mehring/Red Bull Content Pool

そんなスケートボードに明け暮れる日々を過ごし始めた息子達を影で支え続けた男、それは父親である。政府機関で働くお堅い父親ではあったが、スケートボードに対する理解は周りの誰よりも深かった。フェリペは当時を振り返って「兄弟を率先してスケートパークに連れて行き、常に応援してくれたのは父親だった。それが何より大きかったね」と語る。
父のサポートがいかに大きかったかを物語るエピソードを一つ紹介しよう。2007年、16歳のフェリペはプロスケーターへの登竜門とも言われるフロリダ州タンパで行われる世界最大のアマチュアスケート大会のひとつ、Tampa Amへ参戦することになった。フェリペの世界大会初出場に際し、航空券と滞在費を捻出する必要があった。そのために父親は、所有している車を売り航空券と滞在費に充ててしまったのだ。そしてこの大会こそがフェリペのスケートキャリアを大きく左右することになる。
ブラジルが生んだテクニカルスケートマスター、フェリペ・グスタヴォ

ブラジルが生んだテクニカルスケートマスター、フェリペ・グスタヴォ

© Emil Sollie / Red Bull Content Pool

フェリペは自身初の世界大会というプレッシャーの中、集中力を切らさない滑りをキープし、ノーミスでフィニッシュ。世界中が注目するこの大会で見事ゴールドメダルを獲得したのだ。ブラジルから来た少年は一躍世界中から注目され、ここから彼の人生が大きく動きはじめた。
Felipe Gustavo Tampa Am 2007 1st place Winning Run
  • まだ幼さ残る16歳のフェリペ・グスタヴォがTampa Am 2007 1st placeで魅せたウィニングラン。0:01〜 1トリック目のダウンレールでのKickflip b/s Smith Grind(※1)から始まり、0:27〜 Bigspin f/s Board Slide(※2)、0:53〜 ラストトリックのKickflip b/s Nose Grind(※3)など、高難易度トリックを連発し、この大舞台をノーミスでフィニッシュ。多くのプレッシャーに打ち勝ちゴールドメダルを獲得した大会。

より高みを目指すため、故郷・ブラジルを離れ新天地へ移住!

Tampa Am後、彼は一つの大きな決断をする。家族、友達が住むブラジルを離れ、本格的にプロスケーターへのチャンスを掴む為のカリフォルニアへの移住だ。通っていた高校を中退しスポンサーを探し始め、2007年のうちにカリフォルニア州コスタメサへ移住。やると決めたらしっかり考え実行へ移すこの行動力にはただただリスペクト。
その後もMaloof Money Cup Amなど多くのアマコンテストで好成績を残し、スケートマガジンでもフェリペ・グスタヴォの名前をよく見るようになった。そして2010年、スケート界のレジェンド、ダニー・ウェイ率いるスケートデッキカンパニー、Plan Bのアマチームに加入。中国、ロサンゼルス、バルセロナなどへシューティングに行き、自身初のフルパートを発表。そして2013年には念願のプロチームへと昇格した。
Felipe Gustavo FINALLY Goes Pro with Plan B685
上の動画は、Plan Bから初シグネチャーモデルが出た時の映像。夢が叶った瞬間の男泣きシーンにはやはりグッとくるものがある
コンテストの活動も忙しくなり北アフリカで行われたMaloof Money CupDew TourTampa Proなど、世界各国で行われるプロコンテストのレベルでも好成績を残し続けるフェリペは、ついに世界中のスケーターに知られる、名実ともに世界トップクラスのスケーターになった。彼のテクニカルなスケートスキルはこれからも世界中のスケーターを魅了し続けることだろう。
Felipe Gustavo | Run & Gun
最後は、上で紹介する、フェリペ・グスタヴォのスケートスキルが存分に楽しめるBerrics主催の企画『RUN&GUN』の動画で締めたい。
24時間以内に60秒のライントリック(※4)にトライし、投票により勝者を決定する本企画で、フェリペは一切手を抜くことなく高難易度のトリックを連発し世界の視聴者を驚かせた。ダウンレールでのNollie Kickflip f/s Nose Slide(※5)から始まりそのままダウンレッジでNollie Kickflip b/s Nose Slide 270 Shove-It out(※6)、ピクニックテーブルでのSwitch b/s Tailslide(※7)からのSwitch Front Flip(※8)などのテクニカルラインでFelipeはビューワーの心をガッツリ掴み優勝。賞金$25,000を獲得!
(※1)Kickflip b/s Smith Grind キックフリップをした後、背中側のダウンレールに後ろのトラックをかけ、ノーズを落とす形でグラインドするトリック。
(※2)Bigspin f/s Board Slide デッキをバックサイド方向に360度回転させながら体を180度回し、そのままフロントサイドでボードスライドさせるトリック。
(※3)Kickflip b/s Nose Grind キックフリップからバックサイド側のカーブに前トラックだけでグラインドをさせるトリック。
(※4)Line Trick ワンスポットで単発のトリックをするのではなく、複数スポットで連続してトリックをメイクするトリックシークエンスのこと。
(※5)Nollie Kickflip f/s Nose Slide ノーリーキックフリップをしてフロントサイド側にあるレールやカーブにノーズをかけスライドさせるトリック。
(※6)Nollie Kickflip b/s Nose Slide 270 Shove-It out ノーリーキックフリップをしてバックサイド側にあるレールやカーブにノーズをかけスライドさせた後、デッキを270度横回転させてアウトするトリック。
(※7)Switch b/s Tailslide メインと逆のスタンスでアプローチし、背中側のカーブやレールにテールをかけスライドさせるトリック。
(※8)Switch Front Flip メインと逆のスタンスでフロントサイド180にキックフリップを入れるトリック。
(了)
◆Information
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