UKレイブシーンから生まれたドラムンベースは、様々なサブジャンルに細分化されている。ドラムンベース初心者が、テックステップとハーフタイムの違いや、ジャンプアップとリキッドの違いを理解するのは難しい。今回は、各サブジャンルの違いと特徴を理解するためのガイドを用意した。
Autonomic / オートノミック
ドラムンベースの歴史の中に一瞬だけ存在したAutonomicサウンドは、D-BridgeとInstra:mentalが短期間提供していたポッドキャストから生み出された(このポッドキャストは『FabricLive. 50』にも繋がった)。豊かなシンセサウンドとエレクトロからの影響、そしてミニマリスト的なビートは、ドラムンベースを新たな地平へ向かわせた。
ベストサンプル:D-Bridge & Instra:mental ft. Skream「Acacia Avenue」
Brazilian aka Sambass / ブラジリアン aka サンベース
ドラムンベースが2000年代初頭に躓いた時、ブラジル人アーティストたちがこのジャンルに太陽とファンクを再び持ち込んだ。DJ Marky、Patife、Bungle、L-Side、S.P.Y、XRSがドラムンベース特有のビートとベースを犠牲にすることなくブラジルのサンバとソウルを組み合わせた、非常に中毒性の高いオリジナルのドラムンベースサウンドを打ち出した。DJ Marky & XRS ft. Stamina MC「LK」はポップチャートにさえ食い込んだ。
ベストサンプル:Fernanda Porto「Sambassim(DJ Patife Remix)」
Breakcore / ブレイクコア
ドラムンベースシーンの周縁で産声を上げたのがBreakcoreで、過激なドラムエディットとアブストラクトなエレクトロニック・サウンドが特徴だ。Squarepusher、Jega、Aphex Twinなどによって生み出されたあと、Shitmat、Kid606、Venetian Snares、DJ Scotch Eggなどのアーティストたちによって、奇抜なスタイルとして確立された。
ベストサンプル:Kid606「Who Wha Kill Sound?」
Darkcore / ダークコア
音楽史の中では、恍惚感溢れるハードコアレイブとヘヴィなジャングルのサウンドシステムの間に位置しているDarkcoreは、それまで存在したどのサウンドよりもムーディーでタフなサウンドを打ち出した初期ドラムンベースだ。Goldie、4Hero、DJ Crystlなどが、ドラムンベース特有と言えるビートチョップと陰鬱なテクスチャを世に送り出す助けになった。
ベストサンプル:Rufige Crew「Terminator」
Halftime / ハーフタイム
Drumstep(ドラムステップ)とも呼ばれるHalftimeは、文字通りBPMを半分にしてヒップホップへの接近を図っているサウンドが、ベースとエレクトロニック・サウンドはドラムンベースらしさが維持されており、独特の酩酊感と攻撃性が打ち出されている。Om Unit、Dub Phizix、Fracture、Moresounds、Kromestar、Ivy Labなどのアーティストによって確立されたHalftimeは、ダブステップとトラップから大きな影響を受けているが、ブレイクビーツ、エフェクト、ベースラインなどはドラムンベース直系だ。
ベストサンプル:Dub Phizix & Skeptical ft. Strategy「Marka」
Intelligent / インテリジェント
ハードなドラムンベースのオルタナティブサウンドと呼べる、ドリーミーでアンビエントなIntelligentは、LTJ Bukemと彼が運営するレーベルGood Looking Recordsの所属アーティストたちによって生み出された。デトロイトテクノとUKハウスの浮遊感に影響を受けているIntelligent(Artcore / アートコアとも呼ばれる)は、高速ブレイクビーツに温かみのあるベースと優雅なパッドを組み合わせている。このサウンドを「軽い」と嘲笑する人もいるが、その親しみやすさとメロディセンスは多くの音楽ファンをドラムンベースシーンに引き込むことになった。
ベストサンプル:LTJ Bukem「Horizons」
Jump Up / ジャンプアップ
Jump Upは、余計な部分をそぎ落としたダンスフロア直球のラフなドラムンベースだ。獰猛だがフックのあるエレクトロニック・ベースサウンドに跳ねるビートを組み合わせているこのサウンドには勢いがあり、スピード感も楽しいが、ドラムンベースの純粋主義者たちからは、シンプルすぎるという理由から見下されている。しかし、DJ HypeやTwisted Individualのようなこのサブジャンルのトップアーティストたちは、ドラムンベース黎明期からシーンに貢献しているベテランだ。また、最近はTurnoやVoltageのような新世代アーティストたちがフレッシュなサウンドを打ち出しており、再び勢いを取り戻しつつある。
ベストサンプル:Turno「The Invaders」
Jungle / ジャングル
様々なダンスミュージックに継続的に影響を与えているJungleは、大地を揺るがすような強烈な低音、レゲエのサウンドシステムのダブエフェクト、スピード感溢れるブレイクビーツ、しわがれ声のダンスホールMCのサンプル、ハードコアの残り香を組み合わせたサウンドで、アンビエントなパッドと甘いヴォーカルが加えられることもある。Special Requestのようなアーティストたちが、最近このサウンドの潜在能力を改めて引き出している。
ベストサウンド:Leviticus「Burial」
Liquid / リキッド
スムーズなドラムンベースと言えるLiquidは、クリアなビート、ファンキーなリフ、ハウス的アプローチ、Fender Rhodes、ジャズサンプルが特徴だ。Alex ReeceとWax Doctorによって生み出されたこのサウンドは、Fabioの運営するレーベルCreative Sourceが重用し、その後、Hospital RecordsからリリースされたHigh Contrastのアルバム『True Colours』、マンチェスター出身の故・Marcus Intalex、そして多作で知られるアイルランド人プロデューサーCalibreによってブレイクした。Hospital RecordsはLiquidの代名詞となり、この煌びやかだがリアルなサウンドの確立に貢献した。
ベストサンプル:Marcus Intalex & ST Files「Universe」
Neurofunk / ニューロファンク
Neurofunkは、無機質なメカニカルなサウンドが特徴的なアンドロイド・ダンスミュージック。圧迫感のあるディストピアなバイブスとエクスペリメンタルなリズムを打ち出しているこのドラムンベースの最新進化形は、CriticalやEatbrainなどのレーベルや、Nosia、Phace、Current Valueなどのトップアーティストたちがプッシュしている。
ベストサンプル:Phace & Current Value「Wild Thing」
Techstep / テックステップ
1990年代後半、ドラムンベースは商業的な成功を収めるようになっており、Goldie、Roni Size、Photekのようなビッグアーティストたちが自分たちの音楽性を薄めることなくブレイクを果たしていた。Techstepはその時代に生まれた、アンダーグラウンドの姿勢を徹底的に貫いた完全武装の骨太なドラムンベースサウンドだ。メロディを排除し、悪夢のようなサイボーグサウンドとテクノの影響を取り入れていた。パーフェクトなビートとダークなムードと共にドラムンベースを新しい方向へ向かわせたそのサウンドは、Ed Rush & Optical、Bad Company、Doc Scottなどのトラックで確認できる。最近、Techstepは復活を遂げており、さらにハード&ヘヴィで反復性を強めたマイクロジャンル、Skullstep(スカルステップ)も生まれている。
ベストサンプル:Bad Company「The Nine」