Top rising artists to watch in 2018.
© Ashlan Grey/Jaesung Lee/Brock Fetch/Ryan Farber/Abraham Recio
ミュージック

2018年に注目すべきアーティスト 23組

2018年の音楽シーンで大きな飛躍が期待されるニューカマーたちを一挙に紹介する。
Written by Red Bull Music
読み終わるまで:25分Published on
  
ホワイトノイズのように混沌している現代の音楽シーンの中で、新人アーティストが成功するためには何が必要なのだろうか? 毎日のようにおびただしい量の新しい音楽がメディアを埋め尽くしている今、無名という壁を越えるためには特別なきっかけが必要だ。そこで、我々は現在の音楽シーンを見回し、2018年に音楽の新たな境界を押し広げるはずのニューカマーをピックアップすることにした。一夜にしてバイラルヒットとなったアーティストがいる中で、よりトラディショナルなルートで着実に人気を獲得しているアーティストもいる。テクノからトラップ、ストックホルムからソウルまで、あらゆるジャンルと地域を網羅しながら、2018年に注目すべきアーティスト23組をSpotifyプレイリストと共に紹介しよう。

Kodie Shane

Kodie Shaneが注目されるきっかけとなった「Drip on My Walk」は楽しげなバブルガム・バウンスだったが、Lil Yachty率いるSailing Teamのファーストレディ(あるいはただの遊び仲間?)の彼女は相当キレる頭の持ち主だ。現在19歳の彼女が幼少期から音楽業界を知っていたというのもその理由のひとつだが(彼女のおばCherrelleは「Saturday Love」で知られるアーティストで、Kodieの父親はそのバックグラウンドヴォーカルを務めていた。また、彼女の姉はガールグループBlaqueで活動していた)、最大の理由は、彼女がシリアスに自分の音楽に対して取り組んでいるからだ。周りの同年代が恋を楽しんでいる間、彼女のメロディとリズムのセンスはアトランタのスタジオの中で磨かれてきた。これらの資質に、キャンディのように甘い歌心のあるラップと「Sad」のようなよりディープで感情的な楽曲を書き分けられる能力が組み合わさることで、彼女は数多の新世代ラッパーの中で傑出した存在となっている。言うまでもないが、自信の大きさも特徴のひとつだ。最近の傑作「Start a Riot」で彼女は「Imma knock it out the park when I hit it, Lord(わたしがラップをかませば全員ノックアウトよ)」と豪語しているが、その自信は彼女自身の力で勝ち得たものだ − 彼女はまだ負けを知らない。(Rebecca Haithcoat)

BROCKHAMPTON

BROCKHAMPTONは控えめなアプローチができるほど気が長い性格ではないようだ。彼らのグループ名・ソングタイトル・アルバムタイトルなどは全て大文字で書かれている。2000年代初頭にラップ系メッセージボードを通じて結成されたBROCKHAMPTONは、地理的に離ればなれだった時期もあるが、この14人の大所帯バンドは非常にクリエイティブな集団で、ラップではなく、アートワークや写真、ミュージックビデオだけを担当しているメンバーもいる。2017年の彼らは、Viceland(米国のTVチャンネル)のリアリティ番組出演に加え、たった6カ月で『SATURATION』3部作や多数のミュージックビデオをリリースするなど、かつてOdd Futureが切り開いた道を怒涛の勢いで駆け抜けていった。カリスマ性に溢れるKevin Abstractをフロントマンに据えるBROCKHAMPTONの全てのリリースに、クレバー&アグレッシブで、時にニヒリスト的なリリックをモッシュ必至の熱いビートと共に詰め込んでいる。好戦的になりがちな楽曲とバランスを取るためか、BROCKHAMPTONは「FACE」や「SUMMER」など、ソフトでより繊細な曲も書いており、既存のラップの枠組みに抗おうとしている。彼らの4枚目のアルバム『TEAM EFFORT』は年内のリリースが予定されているが、絶え間ない彼らの勢いはさらに増しそうな予感がする。(Max Bell)

Ravyn Lenae

Ravyn Lenaeが「Greetings」を書いたのは高校2年の時だったが、このアトモスフェリックなR&Bトラックは、のちに彼女が高い評価を得ることになるデビューEP『Moon Shoes』にも収録されている。彼女はかき集めた300ドルをスタジオ代に充ててこの曲をレコーディングした。高校卒業の年になると、彼女はAtlantic Records(『Moon Shoes』をリイシューしたレコード会社)と契約を交わし、同じシカゴ出身の同年代アーティストMick JenkinsやNonameと共同作業をするようになった。2017年にリリースされたソウルフルなフォローアップEP『Midnight Moonlight』で、宇宙に魅せられている彼女はダイナミックな新人としての存在感を確立し、KelelaやErykah Baduと並列で語られるほどのドリーミーでエレクトロニックな新曲の数々を世に送り出した。水瓶座の彼女は、誕生月をニューアルバム『Crush』のリリースと共に祝うことになる。このアルバムはKendrick Lamarも手がけるヒップホッププロデューサーSteve Lacyがプロデュースを担当している。新たに歳を重ねるが、それでもまだ10代だ。(Tasbeeh Herwees)

Valee

シカゴ産ヒップホップの動向に注視している人なら、すでにValeeの名前は聞いたことがあるはずだ。彼の名をまだ聞いたことがなかったとしても、Pusha Tの「Valeeが次だ」というコメントを紹介すれば十分だろう。Valeeが注目されるきっかけとなったのは、2016年にセルフプロデュースで制作して2017年にブレイクした「Shell」で、彼はこの勢いを借りてG.O.O.D. Musicと契約した。誰にも似ていない独特の声とフローを持つValeeは、相棒ChaseTheMoneyが手がけるムーディなビートの上で、鮮やかな描写のリリックを息継ぎなしで容赦なくバウンスさせる。Z Moneyとのコラボでバイラルヒットとなった「Two 16s」は彼のラップスキルの真価が確認できる好例だ。"大人になれないガキ" をポエトリーに昇華させたこのトラックは完全なる一発録りで、彼は自分が好むおびただしい数のブランドネームをライムの中に盛り込んでいる。彼の作品は決して現代のヒップホップの未開拓地を切り拓いているわけではないが、 "ストリート・ラグジュアリー" を完全に自分のものにしており、彼のフック、リズム、サウンドはイミテーションがのさばるヒップホップシーンの中で突出した存在感を放っている。(Alex Herrmann)

Jorja Smith

Jorja Smithは今年1月初めにStormzyをゲストに迎えた感涙必至のバラード「Let Me Down」をリリースし、いきなり大きな存在感を示した。この20歳の英国人シンガーは持ち前の強力なヴォーカルを前面に押し出しており、その幅広い感情表現は彼女自身が強く影響を受けたと公言する故Amy Winehouseを彷彿とさせる。多様なジャンルを歌いこなす彼女の力量は実にダイナミックだ。昨年、Drakeは南アフリカのプロデューサー / DJであるBlack Coffeeが手がけたトライバルなハウストラックで彼女を客演に迎えた。そのDrakeのアルバム『More Life』のリリース後まもなく、Smithは英国のグライムプロデューサーPreditahと組んでガラージ色の強いクラブバンガー「On My Mind」をリリースしている。アーティストのキャリア初期にはちょっとした躓きが見られるのが普通だが、Smithに関して言えば、彼女は最初から素晴らしい歩みを見せている。(Troy Kurtz)

Gus Dapperton

Gus Dappertonほどしっかりと自分を客観視できているアーティストは稀だ。身長6フィート(約183cm)の彼は独自のスタイル(タートルネックのシャツ、米国のTV司会者Sally Jessy Raphael風の眼鏡、パステルカラーのコーディネートと特徴的なざんぎりヘア)を持っており、弱冠20歳にしてDIYロックシーンを奇妙で素晴らしい領域へと押し進めている。2017年にリリースされた4曲入りEP『Yellow and Such』では、Mac DeMarco的なレイドバックしたバイブスと1990年代ヒップホップ・スロージャムを思わせるきらびやかなグルーヴがあまりにもシームレスに融合されていたため、逆に不安を覚えたほどだ。しかし、これこそがDappertonのアーティストとしての才能であり、様々な影響源を雑多なままにまとめ上げてみせる彼は境界線を曖昧にする次世代アーティストの代表格だ。しかも、彼はいとも簡単にそれをやってのけている。

Billie Eilish

この突如として現れたZ世代(Gen-Z / ポストミレニアル世代)のクイーンが持つ素晴らしい才能は誰もが称賛している。昨年12月に16歳になったばかりのBillie Eilishは、喪失や怒りを軸に据え、そこに脆さと自信を絡み合わせた曲を手がけている。ロサンゼルスの音楽一家に育ったEilishは11歳で初めて曲を書き、14歳でInterscopeと契約を交わした。彼女の官能的なヴォーカルにはクラシックソウル的デカダンが感じられるが、ぎらついたエレクトロニックなビートが彼女を最先端のサウンドに寄せている。彼女の楽曲「Bored」はNetflixの人気番組『13の理由』にも登場し、「Bellyache」のミュージックビデオは公開10カ月で840万回以上も再生されている。彼女は昨年夏にデビューEP『Don't Smile At Me』をリリースしたが、収録された9曲はそれぞれ多様な個性を持ちながらも高度なまとまりを見せていた。Eilishの2018年は2月にヨーロッパ9カ所を巡るツアー(全てソールドアウト)で始まるが、夏にはさらに大きなステージへ活躍の舞台を広げる予定だ。(Kat Bein)

Steve Lacy

現代の若手ミュージシャンにとって、年齢や予算はもはやかつてほどの障害ではなくなっている。弱冠18歳のSteve Lacyはその好例だ。過去3年間、彼はギターとGarageband、iPhoneアプリだけで制作した素晴らしく中毒性の高いローファイR&BをSoundCloud上で発表してきた。The Internetのグラミー賞ノミネートアルバム『Ego Death』でエグゼクティブプロデューサーを務め、その極めて精巧なリフで作品に華を添えて以来、彼は引っ張りだこの存在となっている。2017年にはKendrick Lammer「PRIDE」やJ. Cole「Foldin Clothes」などで共同プロデューサー / 共同作曲者にクレジットされた。また、自身初のソロ作品、その名も『Steve Lacy's Demo』もリリースしている。この6曲入りEPには「Looks」のようなオルタナティブファンクや「Dark Red」のような感傷的なラブソングが併存しており、ロック / ポップ / R&Bの境界線を曖昧にする内容になっていた。『Steve Lacy's Demo』には彼の幅広い感性とスムーズなヴォーカル、確かなソングライティングが見事に提示されている。これら全てが、The Internetの次作、さらには今後のソロ活動への期待をいっそう高めている。(Max Bell)

CupcakKe

「Deepthroat」や「Vagina」などのバイラルヒットシングルで流れを掴み、2017年にリリースしたアルバム『Queen Elizabitch』で大きな話題を生み出したシカゴ出身のCupcakKeは、大胆不敵さが持ち味のラッパーだ。CupcakKeはミソジニスト的な言葉を逆手に取り、ダンサブルなトラックと素晴らしいミュージックビデオに転換してみせている。しかし、彼女のビートはバウンシーだが、リリックには彼女の個人的体験に関わるシリアスな問題が反映されている。『Cum Cake』に収録された「Pedophile」では性的暴行被害をテーマにし、また『Queen Elizabitch』に収録された「Biggie Smalls」では肥満者への差別やボディポジティビティ(ありのままの自分の体型を受け入れる考え方)について言及している。彼女のSNSフィードはCupcakKeの明確なスタイルとセンスを愛するファンたち(CupcakKeは親しみを込めて彼らを「slurpers」と呼ぶ)からの称賛コメントで溢れている。2018年の年明けにリリースされたセカンドアルバム『Ephorize』には、LGBTQや自己愛、セクシュアリティにまつわる問題を扱った曲が収録されている。彼女のアーティストとしてのたゆまぬ成長ぶりを示しているこの作品は、2018年における彼女の存在感をさらに大きくするだろう。(Emily Berkey)

Yaeji

筆者が初めてYaejiの音楽に出会ったのは、YouTubeのアルゴリズム化されたおすすめリストに表示された彼女とMall Grabの未発表コラボ「Magic Mountain」がきっかけだった。それから1年後、Spotifyが自動的に薦めてきた「New York 93」(Baba Stiltzによるリミックス)で彼女の名前は再び筆者の目に触れることになった。人工知能のおかげでYaejiを知ったと考えると少し気味が悪いが、テクノロジーがちゃんと仕事をしていることに感謝しておこう。現在24歳のYaejiはニューヨークと韓国・ソウルで育ったが、彼女の音楽には両都市の文化が並列で表出している。彼女のトラックはアンダーグラウンドなハウスとヒップホップを巧妙にミックスしたものだが、彼女の音楽を際立ってダイナミックにしているのは韓国語と英語を自在に織りまぜるそのスタイルだ。彼女のDIYスタイルにはビジュアルアーティスト / DJとしてのパッションが垣間見え、最近彼女が披露したBoiler Roomでのパフォーマンスは、この謙虚なポップスターを形成した広範な影響源が昇華された見事な内容だった。(Troy Kurtz)

IDK

メリーランド州出身のラッパーIDKの曲を聴くと、彼には自分の視野がクリアに見えていることが分かる。その明晰さはラップと日常会話の両方で感じられる。彼はヒップホップの "モブキャラ" になるためにこのシーンにいるわけではない − 彼は "スター" を目指しており、シリアスなリリック、鋭いメロディセンス、物語性のあるソングライティング、そしてファンとの密接な関係など、そのために必要なツールを備えている。昨年リリースされたディープな「IWASVERYBAD」やDenzel Curryとの衝撃コラボ「No Wave」のあと、彼はファンが感想を直接テキストメッセージで送れるように自分の電話番号を公開した。彼はファンから送られてくるメッセージに目を通し、日々ソーシャルメディア上でファンと繋がっている。そしてこれが、トラックの生き生きとしたストーリーとファンを結びつける助けになっている。彼のリリックの中には、米国的な社会構造で自分の居場所を見つけようとしている彼自身の経験を反映したものもある。その感性は時に爆発的、時にリラックスした内省的な形でそのプロダクションに表出しており、"IDK" というアーティストの人格を形成する無知 / 知の二重性を浮き彫りにしている。(Alex Herrmann)

Sonder

プロデューサーのAtuとDpat、シンガーのBrent Faiyazの3人によるR&BトリオSonderは、2年前に煙が充満した車に乗ってシーンに登場し、それぞれ10分超のスモーキーでむせ返るような3曲を放って "スローバーナー" の意味を更新した(編注:R&Bのスローバーナーとは、聴くほど中毒性が増す楽曲を指す)。しかし、昨年リリースされたEP『Into』では、スモーキーさは吹き飛んでおり、曲は短くまとめられ、クリスピーなダブルタイムのハイハットや即興的なギターフレーズなど、GinuwineやTimbalandなどの影響が強く感じられた。ベッドルームのサウンドトラックにぴったりの「Searchin」はまるで故Aaliyahの未発表曲のようにも聴こえ、ジェントルで眠気を誘う「Care」はJoeやJodeciなどのアルバムのアウトロでもおかしくない。彼らが見せる1990年代中期〜2000年代前半の R&Bへの偏愛ぶりは、オリジナリティ喪失のおそれもあったが、官能性を特長として打ち出し、それをオールドスクールなスムーズネスで磨き上げることで、方向性の変化をそのあるべき姿 − エキサイティング − にしている。(Rebecca Haithcoat)

Amber Mark

Amber Markの傑作デビューアルバム『3:33 AM』は全体的に悲痛なムードに覆われた作品だったが、その中で傑出したヒットは癖になるほど快活で明るい曲で、「Lose My Cool」は快活なピアノに悲しみと怒りを表現したリリックを乗せていた。この若き女性R&Bシンガーは、実母が死去した直後から『3:33 AM』に収録する7曲の制作に取りかかった。1年前、彼女はこのアルバムの3曲目に収録されることになる「S P A C E」をSoundCloudにアップしたが、この時点ではまさかこの曲がBeats 1の看板DJ、Zane Loweの耳に止まり、再生回数10万を超える話題の1曲になるとは彼女自身も予想していなかったはずだ。その数カ月後、彼女は『3:33 AM』をリリースした。感情的なカタルシスを表現したこのアルバムは、葛藤と喪失について歌った美しいバラードに満たされており、そのメロディの多くは生前の母とインドを旅行した際に思い浮かんだものだ。(Tasbeeh Herwees)

Mija

この25歳の若き才能は "Skrillexが発掘した" と言われているが、Mijaが2010年に地元フェニックスのショーで "Skrillexをゲストに呼んだ" が正しい。Skrillexが運営するレーベルOWSLAとの繋がりを得て、この派手に染めた髪を持つ若き才能は、スタイルを自在に行き来するミックスと、Lil Jonをフィーチャーしたダビーな「Crank It」、甘いグリッチが冴え渡る彼女自身のEP『time stops』、ドラムンベース仕立ての「Secrets」などのジャンル分け不能な楽曲群によって彼女自身のソニックエンパイアを作り上げた。2016年のツアー「FK A GENRE」では、A-Trak、Anna Lunoe、Tokimonstaなど多彩なサポートアクトを迎えていた彼女は、同年にファッション界にも進出したが、彼女にとっての最大の転機となったのは2017年末にヴェールを脱いだ彼女自身によるダークで危うげなプロジェクトだ。そのシングル「Bad For U」では、幽玄でソウルフルなヴォーカリストKelli Schaeferをフィーチャーし、今後リリースされるEP『How to Measure the Distance Between Lovers』の先行カットとなるこの曲は、Mijaがリリックの作詞とヴォーカルも務めている。これは、今まで存分に自らのテイストを示してきたMijaは、セカンドフェーズでより飾らない自分をさらけ出す用意ができているようだ。(Kat Bein)

Smerz

共に25歳のCatharina StoltenbergとHenriette Motzfeldtには、"当惑するものなど何もない" らしい。この自信に満ちた言葉は、アナログテープのヒスノイズと808ドラムをまとった最新シングル「Have Fun」の歌詞の一部で、この親友同士には積極的にリスクを負う心構えがあることを雄弁に語っている。StoltenbergとMotzfeldtの2人はスウェーデンのオスロの高校で出会ったあと、正式な音楽教育を受けるために学校の推薦を受けてデンマークへ移住し、学校の課題だったAbleton liveの使い方を手探りで学ぶと、自主退学してSmerzとしての活動に専念した。彼らの歪んだポップミュージック解釈はテクノとR&Bの実験的なブレンドで、Kelelaのようなレフトフィールド系R&BよりもAphex Twinからの影響が色濃く出ている楽曲の方が多い。彼らの大胆なDIYプロダクションは昨年XL Recordingsの目に留まり、Adele、Frank Ocean、Radioheadなどを含むトップアーティストたちのレーベルメイトになった。常に軽やかなクールさを奏でるこのデュオは、2018年のサウンドを牽引する存在になるだろう。(Troy Kurtz)

Cuco

Cucoはロサンゼルス在住のチカーノ系プロデューサー / ミュージシャンで、シンセを多用して丹念に作り込まれたビートの上でさりげなく歌うスタイルが持ち味だ。現在19歳の彼は、英語とスペイン語を自在に使い分けながら、リラックスしたスタイルと共にセンシティブで心温まるロマンチックなストーリーを紡いでみせる。2016年の『Wannabewithu』と2017年の『Songs4u』は、彼が言うところの "オルタナティブ・ドリームポップ" 的なサウンドを体現しているアルバムで、地元ロサンゼルス以外でのショーでも軒並みソールドアウトになるほどの人気を獲得した。今年2月に自身初の北米ヘッドライナーツアーを控えている彼は、その後もCoachellaやThe Governers Ballなどのビッグフェスへの出演が控えている。また、2018年中にはサードアルバムが届けられる予定だ。(Emily Berkey)

Camp Cope

Fun.が昔懐かしのガレージバンドのようなサウンドのオーストラリア出身のガールズバンドとして生まれ変わるなら、Camp Copeのようなバンドに違いない。ダイナミックでアリーナ受けするポップバラードは持っていないが、その穴はタイトに刻まれたサウンドと聴き手の背筋をまっすぐに伸ばしてくれる真摯なリリックが埋めてくれる。「Keep Growing」を聴けば、それほど遠くない昔 − 全員がタフな時間を過ごしていたが、世界全体は今のニュースほど酷くなかった時代 − を思い出す。Camp Copeは、今よりももう少しお互いを愛していた、もっと素敵な日々が待っているはずだと臆面なく考えていたあの時代を筆者に思い出させてくれる。(Coty Levandoski)

Baba Stiltz

Baba Stiltzが1年で最狂のテクノアンセムをリリースし、フルレングスのアンビエント作品を手がけ、Drakeの楽曲をプロデュースしたとしても、全く驚きではないだろう。ストックホルム出身で現在24歳のBaba Stiltzは、既成概念にとらわれない創作を続けてきた。彼にとっては、次に何をやるべきか構想を練るよりもスウェーデンの天気を占う方がよほど簡単なタスクのように思える。幼稚園児の頃から作曲を始め、青年期の5年間はプロのバレエダンサーを目指してトレーニングを積んだ彼は、最終的に音楽制作へフォーカスするのだが、最近Boiler Roomで披露したセットからも分かる通り、いまだに折を見てはダンスしている。長年のコラボレーターであるYung Leanと共に制作を続けるStiltzは、昨年OVO(Beats 1の人気番組)でも取り上げられ、最近もスウェーデン版グラミー賞にもノミネートされたばかりだ。彼が手がける全作品にはエレクトロニックなタッチが加えられているが、今年リリースが噂される新作EPの内容は全く予測不可能だ。(Troy Kurtz)

Injury Reserve

アリゾナ出身のトリオがヒップホップシーン屈指のフレッシュなサウンドを生み出しているというのは、インターネット時代ならではの流れだろう。Injury Reserveは長期的なクリエイティブなコラボレーションの良さを活かしている。プロデューサーのParker Coreyは、彼が手がける冒険的で不揃いなビートとパーフェクトにマッチする2人のラッパー(Ritchie With a T とStepa J. Groggs)を見つけ出すことに成功している。彼らは「Oh Shit!!!」や「See You Sweat」のようなアップテンポバンガーで心地良さと野性味を両立させつつ、論争を引き起こした「Colors」やキャリア初期の傑作「Ttktv」などの楽曲では陰鬱で内省的なトラックの上で詩的な世界観を披露している。彼らは2015年以来、毎年欠かさずアルバムかEPをリリースしているが、ほとんどハズレなしだ。リリースを重ねるごとに彼らの "ブルーカラー・ラップ" には磨きがかかっており、プロダクションとリリックの両面にさらなる実験性が持ち込まれている。今年彼らがどんな作品を展開しようと、彼らはヒップホップシーン屈指の先進的なアクトとして正当な評価を手にするはずだ。(Alex Herrmann)

Superorganism

昨夏にSuperorganismが「Something For Your M.I.N.D」のミュージックビデオをリリースした直後、音楽メディアはニュージーランドで出会いロンドンへと移住したこの国際的DIYポップ集団の奇妙で魅力的なストーリーをこぞって取り上げた。多くの良質なポップミュージックと同様、Superorganismが手がける作品は野心的だが簡潔で、音楽を作る喜びに満ちあふれたプロダクションを抽象的なリリックが支えている。Superorganismの楽曲は、英国のJools Hollandの番組から、ビデオゲーム『FIFA 2018』のサウンドトラックに至るまでのあらゆるメディアにフィーチャーされ、彼ら自身は世界各地のフェスティバルラインナップに名を連ねている。特殊なコラボレーション環境と見逃し厳禁の多幸感に溢れたライブの組み合わせは、2018年の大ブレイクを約束するレシピだろう。(Tim Dunham)

Avalon Emerson

2015年にAvalon Emersonがサンフランシスコのテクノシーンを離れ、栄華を誇るベルリンのクラブカルチャーに身を投じた時、彼女はまだソフトウェアエンジニアの仕事を維持していたが、エレクトロニック・プロデューサー / DJとしてのキャリアも軌道に乗りつつあった。ハードなテクノとマジカルなメロディという彼女の才覚を融合した進歩的なEPを数枚リリースすると、瞬く間に彼女のDJのニーズが高まり、二足のわらじを履く生活は終わりを告げた。世界中のプロモーターが彼女の正確無比なDJセットに注目しており、その結果、彼女は2017年に合計100以上のクラブやフェスティバルで出演を重ねた。しかし、ダンスミュージック・シーンのライジングスターという彼女のステータスを確実にしたのは、ベルリンのクラブBerghainの上階Panorama Barで披露された9時間にも及ぶクロージングセットだった。今年前半はしばらくスタジオで過ごすそうだが、春にはCoachellaの出演が控えており、2018年のさらなる活躍に注目が集まる。(Troy Kurtz)

Mall Grab

"ロウハウス(ローファイハウス)" とビットコインに一体どのような関連性があるというのだろう? 両者の関連性は皆無だ。しかし、何かつけて否定的な人や専門家が、両者をやがて消えゆく一過性のトレンドと穿った意見を述べていることを踏まえると、インターネット上で急速に発展したロウハウスとビットコインには生き残れる可能性があると言える。オーストラリア・ニューカッスルに住むハウスプロデューサーMall Grabは「Feel U」や「Can't(Get You U Outta My Mind)」などのトラックによってロウハウスシーン初のYouTube視聴回数100万回突破を記録した。Mall GrabというDJネームはもともと "イケてないボードの持ち方"(ボードのトラックをつかむ持ち方)を意味するスケートボード用語だが、彼のプロダクションにも同様に無頓着で呑気なダンスミュージック解釈が存分に表れている。臆面もなくたっぷりと含ませたアナログテープのサチュレーションノイズと絶妙なサンプリングチョイス(Alicia Keys、Kanye、OutKastなど)を武器に彼の人気は急騰しており、2017年には世界各地で100以上のギグをこなした。自らが育ったサブカルチャーとしてのロウハウスシーンをはみ出す存在になる可能性もあるが、Mall Grabが自らのキャリアを賭けるだけの値打ちがあるグルーヴを手に入れているのは確かだ。(Troy Kurtz)

Clairo

Clairoの音楽が属する場所を特定するのは難しいが、「Pretty Girl」は『High Maintenance』(米国HBOが放送しているコメディドラマシリーズ)のSpotifyプレイリストには確実にフィットするだろう − 知らない人なら聴いてみたいと思い、知っている人はまた聴きたくなる、ブルックリン産チルウェーブ的パーフェクトな小曲だ。彼女は14歳の頃からSoundCloudに自作曲をアップしており、そのアレンジは一聴すると至ってストレートだが、聴き込んでいくと、第三次世界大戦が始まったが自分たちにできることは何もないからとりあえずポーチに座るかのような、ある種の無関心と緊迫感が併存しているこの詩人の囁きを覆うサウンドが、実は巧妙に練られていることが分かってくる。Chance The RapperのマネージャーZane LoweなどもTwitterを通じて彼女について言及していることを踏まえると、Clairoが近々ブレイクすると考えているのは我々だけではないようだ。(Coty Levandoski)