カイトサーフィンは最もクールなウォータースポーツのひとつだが、始め方がさっぱり分からないという人は少なくないはずだ。
このスポーツはどこで学べるのだろうか? またマスターするまでにどのくらいの時間が必要なのだろうか?
そこで、英国人インストラクターのルーク・デニーと3度のワールドチャンピオンを誇るトップコーチとして知られるカースティ・ジョーンズにビギナーに役立つ情報を教えてもらうことにした。
2人のアドバイスを参考にしてカイトサーフィンを始めてみよう!
2分
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カイトサーフィンって?
カイトサーフィンは風の力を利用するウォータースポーツで、カイトとサーフボードを組み合わせて水面を進んでいく。
“サーフィン” が名称の一部になっているが、波は絶対条件ではない。カイトサーフィンは、波が荒い海やビッグウェーブで楽しめる一方、鏡のように波が静かなラグーンでも楽しめる。必要なのは風と水だけだ。
カイトサーフィンは非常に楽しく、奥が深いウォータースポーツだ。
基礎を学び、風を受けて、アップウインドが取れるようになったら、スピードアップやジャンプ、フリースタイルトリック、ビッグウェーブなどに取り組んだり、海岸沿いのダウンウインドを楽しんだりできる。
最初に必要なスキルは?
多くのビギナーにとっては、ボードスポーツやウォータースポーツ、カイトに初めて触れる機会になるはずなので、いちからのスタートになる。
カースティ・ジョーンズは「カイトを空に上げたり、ウォータースポーツをやったりした経験がない人は多いわ。ウェットスーツを着たことがない人もいるわね」とコメントしている。
あえて必要な条件を挙げるとするなら、「海で問題なく泳げる」だろう。
求められるフィットネスレベルは?
カイトサーフィンに最高レベルのフィットネスは必要ない。また、カイトは軽量なので筋力も不要だ。
しかし、平均レベルのフィットネスがあれば、スピーディに上達する助けになるだろう。水上でのスタミナと怪我の予防にも繋がるはずだ。
レッスンは受けないと駄目?
レッスンは必ず受けよう。カイトサーフィンを熟知しているどのカイトサーファーも初心者用レッスンは不可欠だと言うはずだ。
尚、優秀なインストラクターなら、カイトサーフィンにすぐ慣れることができる上に、安全確保の知識とテクニックも教えてくれる。安全に関する知識がなければ、自分だけではなく、水上と海岸の全員を危険に晒してしまう。
レッスンはどこで受けられるの?
日本を含む世界各地にカイトサーフィンスクールやインストラクターを見つけることができる。その多くはオンラインから予約可能で、平日・休日の両方に対応している。集中レッスンを用意しているスクールもある。
また、長期休暇を使って海外旅行がてらカイトサーフィンを学びたいなら、カイトサーフキャンプに参加してみよう。
西アフリカ・ダフラのHeliophoraや、ドミニカ共和国・カバレテのDare2Flyをはじめ、エジプトやブラジル、スリランカ、カリブ海など、カイトサーフキャンプも世界各地に用意されているので、ネットで調べてみよう。
カイトサーフィンのスクールやインストラクターの選び方は?
ルーク・デニーは次のようにアドバイスを送る。
「コース修了前後に様々な経験を積んでいるインストラクターの方が、安全に、そして問題なく教えることができるはずです」
「また、インストラクターは、教えたいという情熱を持っている必要もあります。情熱がなければ、ビギナーが必要としている世話や注意、自信を提供できないでしょうね」
「どこで学んだら良いのか分からない人は、友人や他のカイトサーファーにレコメンドしてもらいましょう」
コース修了前後に様々な経験を積んでいるインストラクターの方が、安全に、そして問題なく教えることができるはずです
海外でカイトサーフィンを学ぶなら、インストラクターとのコミュニケーションに注意し、使用するギアについて遠慮なく質問するようにしよう。ルーク・デニーが説明を続ける。
「新しいギアを学ぶ時は、できる限り状態の良いギアを選びましょう。また、ビギナーにはライフジャケットとヘルメットが必ず手渡されるべきです。平均以下のクオリティのギアを使ったレッスンは推奨できませんね」
レッスンに必要なギアは?
インストラクターやスクールからギアが提供される。あらゆるタイプの参加者、そしてあらゆるタイプの天候に対応できるように、様々な種類のカイト、ボード、安全器具を揃えている。
ただし、ウェットスーツを持ち込まなければならないケースもあるので、インストラクターやスクールに確認しよう。
また、日焼け止めも忘れないようにしたい。海外のスクールに参加している時は特に注意が必要だ。水をはじく日焼け止めクリームやラッシュガード、キャップ、サングラスなどを持ち込もう。
レッスンでは何を学ぶの?
通常の初心者用レッスンは以下の3つの基礎で構成されている。
- 地上でのカイト操作:カイトの上げ下ろし / コントロール
- 水上でのカイト操作:ボディドラッグ / コントロール / カイトの上げ下ろし
- ウォータースタート / ライディング(プレーニング)
この3つの基礎の中には次の細かい項目も含まれている。
- 安全にカイトサーフィンができるエリアの判断
- 風の向きや強さの理解
- 潮の流れや危険の判断
- コンディションに合わせたギアの選び方
- ギアのセットアップ / チューニング / パッキング
- 安全確保 / セルフレスキュー
- ボードスタート(ボードの乗り方)
- ライディングのキープとスピードコントロール
- アップウインドの取り方
- 水上でのルールやマナー
ひとりでライディングできるようになるまでに必要な時間は?
ルーク・デニーは次のように説明している。
「大抵の場合、ボードに乗ってライディングができるようになるまでに必要な時間は10〜12時間ですね。言い換えれば、3レッスン分というところです」
「もちろん、人によってはもう少し時間が必要でしょう。ですが、ウォータースポーツ経験者でマンツーマンのレッスンを受けるのなら、1日で学べる可能性があります」
ウォータースポーツ経験者でマンツーマンのレッスンを受けるのなら、1日で学べる可能性があります
「全てのレッスンを修了すれば、自分で判断し、自分で安全にトレーニングできるだけの知識とスキルが身につくはずです。たとえば、ロケーションの状況判断や、天候、波、潮の状態やその強さの判断、あらゆるコンディションでの安全確保の方法などが理解できるでしょう」
レッスンを十分に受けたと判断するタイミングは?
ジョーンズが説明する。
「まずは、資格を有しているインストラクターからOKをもらう必要があるわ。ひとりでやれる、ひとりでギアを借りられるレベル(IKOならレベル3)に達していることを示す証明書を受け取って」
「あとは、インストラクターから許可を得ていても、自分に自信がなければ意味がないわ。だから、不安に感じている時や、新しいロケーションを訪れた時は、一度レッスンを受けるのがグッドアイディアよ」
デニーも同意する。
「最終判断は参加者とインストラクターの間で下されます。単独のカイトサーフィンは、100%の自信がない限りやってはいけません。自信がない時は、追加でレッスンを受けたり、誰かに見てもらったり、リフレッシャーコースで学んだりしてください」
初心者が直面するチャレンジは?
多くのビギナーが最初に直面するチャレンジは、自信を得ることと、ギアを信頼することだ。
最初はカイトを握っている状態を不安に思うかもしれないが、優れたインストラクターなら、リラックスさせてくれるはずで、最近のカイトサーフィンギアの安全性についても例を出しながら教えてくれるだろう。
自信に関しては、自信を得るまでに時間がかかる人もいるということを覚えておこう。ジョーンズは「最初のレッスンに参加するのを決めた時が最大のチャレンジだったっていう人もいるし、心配し過ぎない方がいいわね」とコメントしている。
また、カイトの操作やボディドラッグは比較的簡単にできるようにかもしれないが、コンディション別のカイトのコントロール、ボードの乗り方、アップウインドの取り方に関しては、できるようになるまである程度の時間と我慢が必要になるのを覚悟しておこう。
デニーはもうひとつ別のチャレンジについて言及している。
「風の強さと方向が天気予報とは完全に異なる時があります。これをチャレンジとして捉える人がいますね。このスポーツ特有の不確実性に振り回されてしまうビギナーは少なくありません」
「ですので、僕はレッスンを受けてもらう前の段階で、この点についてしっかり説明するようにしています」
ビギナーが買うべきギアは?
すぐにギアを買う必要はない。優れたインストラクターやスクールならギアを提供してくれるからだ。ジョーンズは次のように説明している。
「レッスンをひと通り受ければ、自分に何が必要なのかが具体的に見えてくるわ。たとえば、ひとりで楽しめるようになれば、必然的に通うロケーションが決まるわけだけど、カイトのサイズはロケーションの特徴で変わってくるの」
「あと、エントリーレベルを急いで買っても、すぐに自分がそのレベルを超えてしまう可能性もあるわね」
「シートハーネス、大きめのボード、ライフジャケットがビギナー向けのギアだけど、すぐにウエストハーネス、小さいボード、インパクトベストへ切り替えたくなるかもしれない。でも、パーツを交換したり、ギアを売ったりもできるから」
実際は、全レベルのカイトサーファーに対応しているカイトの種類は多い。
最も一般的なデザインのカイトには、空気注入式のリーディングエッジ&バテン、ブライダルラインが用意されており、ブライダルラインをコントロールバーに接続するようになっている。
ビギナーならスペシャルなデザインのカイトを手に入れる必要はない。
モダンな “普段使い” のカイトは、ボウ型かデルタ型が多い(どちらもビギナー向き)。他には、パワーと揚力に優れたC型カイト、ハイブリッド型(C型とボウ型の中間)、フォイルカイト(ハイドロフォイルカイトサーフィンで使用するタイプ)などがある。
自分専用のカイトを買う時は、インストラクターからアドバイスをもらってから選ぼう。複数のカイトサイズを買う余裕がないなら、コンディションに合わせて他のサイズのカイトをレンタルするようにしよう。
カイトサーフィンのギアは軽量で持ち運びも簡単だ。マイカーがなくても、バスやタクシーで問題なく運べるので心配ない。
ビギナー用ギアリスト
- カイト(風力によって必要なサイズが変わる)
- コントロールバー&ライン(カイトに合ったサイズと長さを選ぶ)
- ボード(ビギナーは大きめのサイズが向いている)
- シート / ウエストハーネス(シートハーネスの方が学ぶのが楽)
- ボードリーシュ / ナイフ(安全のため)
- ライフジャケット(カイトサーフィン用はコントロールバー用にギャップがある)
- ヘルメット(カイトサーフィン専用)
- ウェットスーツ(冬や寒冷地用)
中古品でも問題ない?
ボードは中古でも構わないが、カイトやコントロールバー、ラインは新品を揃えたい。ジョーンズが説明する。
「常に新製品が開発されているの。カイトは特にそうね。ギアは毎年進化しているから、可能なら信頼できるショップや人物から最新のギアを新品で手に入れるべきね」
資金に余裕があるなら、まずはトップレベルのカイトとコントロールバーに投資してください
デニーが続ける。
「1年前のモデルがセールになっていることがあります。1年落ちのモデルでも十分に新しいですし、安全性も高いので、優れた選択肢のひとつと言えます。資金に余裕があるなら、まずはトップレベルのカイトとコントロールバーに投資してください」
ひとりでカイトサーフィンをするためにはライセンスが必要?
カイトサーフィンをするのにライセンスは必要ないが、他人を怪我させてしまったり、ボートや車、カイトサーフィンギアにぶつけてしまったりする可能性はゼロではないので、第三者損害賠償保険に入っておくことを推奨したい。
また、ロケーションによってはカイトサーフィンの許可が必要なので、新しいロケーションを訪れる時は忘れずにチェックしよう。
ビギナーでも楽しめるクラブはある?
デニーは「地元のビーチでレッスンを受けたなら、そこのインストラクターに尋ねてみるのが良いでしょう。同レベルの仲間を紹介してくれる可能性があります」と回答している。
または、ネットで検索しても良いだろう。面白いイベントやアクティビティを企画しているグループ(地元からは多少離れているかもしれないが)や、行きたかったロケーションに一緒に向かえる仲間が見つかるかもしれない。
初レッスンに向けたアドバイスは?
ジョーンズは次のようにアドバイスを送る。
「リラックスして、筋力じゃなくて感覚でカイトと風をコントロールして。緊張したり、力が入ったり、焦ったりしてしまうと、直感が鈍るし、成長できなくなるわ」
また、カイトサーフィンでは我慢も重要だ。ジョーンズが続ける。
「カイトサーフィンはステップ・バイ・ステップで学んでいって。どのステップも成長には重要だし、練習を重ねる必要があるの」
ルーク・デニーはIKOとBKSAの資格を持つプロインストラクター。英国でカイトサーフスクール “Kitesurfkings” を経営しながら、世界各地でトレーニングキャンプを実施している。
カースティ・ジョーンズは公式資格を持つカイトサーファー / ウインドサーファー / ヨガコーチで、プロカイトサーファーとしても活躍中。世界各地でカイトサーフィンのワークショップ、マンツーマンコーチング、イベントなどを企画している。