小野光希流! プロのカラダのつくりかた。
© Jason Halayko
スノーボード

小野光希流! プロ(スノーボーダー)のカラダのつくりかた。

小野光希が世界の最前線で戦うために行う【カラダ作り】のこだわりを栄養・トレーニング・回復のカテゴリー別に伝授。トップアスリートを目指す方はもちろん、普段の我々が使えるヒントやアドバイスもこぼれ落ちています!
Written by Tatsuya Yamashiro
読み終わるまで:15分Updated on
01

《栄養》運動後は30分以内に栄養補給がキホン!

ーーまずは、カラダを支える『栄養』についてお聞きしたいのですが、毎日の食生活で意識していることはありますか?
小野光希(以下:光希)アスリートとして当たり前のことですが、肉・魚・野菜をバランスよく摂るようにしています。なかでも野菜を重点的に摂るようにしてます
ーーやはり、野菜は重視しているんですね。でも、バランスの良い食生活という当たり前のことが一番難しかったりしませんか……。僕の場合、学生時代の野球部の時なんて欲求に負けていつも肉ばっかりになっていました(苦笑)。特に10代でそれが出来るのはすごいです。普段と試合前とで食生活に差別化してますか?
光希「試合前後も変わらず、一年を通してそのスタンスは変わりませんね。オフシーズンもオンシーズンも一定でいることで、常にバランスを崩さないように出来ますし、それが結果的に良いパフォーマンスに繋がると思うので。でも、海外で生活する時は、野菜不足になりがちなんですよね。そういう時は、自分で補うようにしています
野菜

野菜

© Markus Spiske (unsplash)

ーー自分で補う? 具体的にはどのようにして補っているのでしょうか。
光希「足りない栄養は、自炊して作っちゃったりします! 日本だと管理しやすいのですが、特に海外だと中々普段の栄養が摂りずらくて。そういった時には海外にあるものを無理やり買って食べるのではなく、自分のモチベーションと健康を保つ為にも、自炊が大切になってくるんですよ
ーー自炊もするんですね、素晴らしいです。例えばどういった料理をするんでしょうか? また、遠征先で自炊するにも限界があったりすると思うのですが、必ず持っていくものってありますか?
光希「和食を作ることが多いですね。やっぱり私は日本人だし、自分のパフォーマンスを保つ意味でも欠かせないんです。なので、遠征先に持っていくものとして、お味噌汁は絶対必須です。肉体的にも精神的にも安心できる瞬間が、私のなかでは凄く大切なんです。それがあるかないかで試合にも影響している気がします
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ーーおー、なるほど。国内に居る時と変わらず、いつものパフォーマンスを保つ為に日本のソウルフードはやはり必須なんですね、参考になります。最近の10代は男女限らず健康と美容に気を遣う傾向にあるといったデータがあるようです。光希選手もそういったケアは意識されていますか?
光希「意識していますね。お菓子が好きだったんですが、最近は食べないようにしています(笑)。美容にも健康にもあまり良くないものが多い気がして。その変わり、甘いものが食べたくなったらフルーツで補うように調整しています
ーー甘いものは誰しもが食べたくなる時があるし、それをフルーツに置き換えるっていうのはすごく良いですね。試合後のご褒美みたいな、そういったものは何かありますか?
光希「ありますね! アイスクリームが大好きなので、毎回食べます。栄養っていうよりは、どちらかというと精神的な部分ですね。やっぱり試合ごとの切り替えは大切なので、それでメンタルをケアしている感じです
ーーその気持ちの切り替えが、光希選手の次のパフォーマンスに繋がっているんですね。試合後もそうですが、練習後など疲労困憊の時に、手軽に栄養をリカバリーする食べ物はありますか?
光希「練習後は、ゼリーをよく食べています。 以前、栄養士さんに自分の食生活を見てもらったことがあったのですが、その時までは運動した後、30分以内に栄養を補給したほうが良いって知らなくて。それを教えてもらってから、今では必ず30分以内に栄養をリカバリーするようにしています
ーー栄養をただ摂るのではなく、栄養も摂るタイミングがカラダ作りに大切になってくるんですね。17歳(2021年の取材当時)という成長真っ只中で、特に意識していることはありますか?
光希「私の場合は、どんなに練習や試合で疲れてても、しっかり食べることくらいですかね。後は逆に食べすぎないことです! やっぱり体重の変化でパフォーマンスが変わることがあるので、毎日体重を測ることはもちろん、食べる量も徹底しています
ーーでもお腹が空いていてどうしても食べたい時ってあるじゃないですか。そういう我慢できない時はどうコントロールしていますか? 何かコツがあれば教えてください。
光希「コツは……。ご飯のことを考えないことですかね。他のことして気を紛らわす(笑)
ーーそれが中々普通の人にはできないんです……。その我慢強さが最高のパフォーマンスに繋がっているのかもしれませんね。
02

《トレーニング》腹筋強化で“絶対に転ばない体”を得る!

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ーー続いて、『トレーニング』についてお聞きしたいです! 小学校五年生でプロの資格をとられたと思うのですが、小さい頃はどのようなトレーニングをしていたのでしょうか?
光希「大会で表彰台にのるか、スノーボード協会のポイントランキングで上位に入ればプロの資格が取れるので、それを目標に最初は頑張っていました。小学5年生まではトレーニングというよりは、ただひたすらスノーボードをしていた感じです。毎週土日の朝9時から夜8時まで練習場に行って、ずっと滑っていましたね
ーーかなりの練習時間ですね! 子供の頃は特に遊びたい気持ちが勝っちゃうと思うんですよね。辛くなかったのですか?
光希「そうでもなかったですよ。というのも、当時選手を育成するコースに入っていて、周りの選手も同じような環境で滑っていたので
ーーそうすると、その練習自体がトレーニングになっていたのはもちろん、純粋にスノーボードが好きで“スノーボードを楽しむ” というトレーニングにもなっていたのかもしれないですね。今、毎日欠かさず行っているトレーニングはありますか?
光希「ストレッチです。寝る前にやることで朝起きた時の目覚めが良いんです。ベッドの上で開脚して足を伸ばしたり、あと上半身のストレッチも必ずやりますね
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ーー具体的にはどのようにして? いろんなストレッチの方法があるとは思いますが、光希選手流の目覚めが良くなる簡単なストレッチを教えてください!
【上半身全体が楽になり、目覚めが良くなるストレッチ】
  • STEP 1 まず、ベッドの上で横向きになる。
  • STEP 2 自分の右足首を、左手で持つ。
  • STEP3 そして左肩をぐっと自体重で床に近づけるように圧をかけて10秒キープ。
(レップ:左右3回ずつ/セット:2)
ーー実際にやってみるとかなり気持ちいいですね。明日から実践します。光希選手の普段の生活リズムが全然想像つかないのですが、朝は普段何時に起きているのでしょうか?
光希「日によりますが、だいたい出発の2時間前に起きるのがルーティーンになっています
ーー食生活と同じでそういった面でもルーティーンを大切にしているんですね。資料には身長が154cmと記載がありますが、これはスノーボード競技において有利なんでしょうか? それとも不利ですか?
光希「どうだろう、どちらでもないと思います。身長が低いことで強いてデメリットをあげるとしたら、カラダが小さい分、迫力がないように見えてしまう。同じ技で同じ高さを飛んでいても、ポイントが違ったりすることもあるんですよね。そこに壁を感じる時もあります
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© Jason Halayko / Red Bull Content Pool

ーー出来ることなら大きくなりたいですか?
光希「それは思いますね。でも背が低くても世界でトップを取っている人は沢山いるので、それを理由にはしたくないです
ーー勝手なイメージですが、“背が低いほうが回転しやすそう”なんて思ったりしたんですが。
光希「私も最初はそう思ってました(笑)。でも、大きい人でもすごい人は沢山いるので、あまり関係ないと思います
ーーなるほど。そこまで身長とパフォーマンスのクオリティは比例しないということですね。光希選手の同世代の人でも大きくなりたい人とか沢山いると思うのですが、光希選手が大きくなる為に努力していることはありますか? 例えばさっきのストレッチの話のような。
光希「私の場合は普段の生活にスポーツが自然と密にありますが、とにかく運動することですかね。あと、シンプルですがよく食べてよく寝ることだと思います
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ーーそれこそ、栄養・トレーニング・回復。この3つの要素を意識することが大切ということですね! 成長が著しい今の年齢ならではの悩みがあれば教えてください。また、その解決方法があれば。
光希「んー、やっぱり体重の変化ですね。オンシーズンとオフシーズンで随分と変わりますし、遠征先では食べていないつもりでも、2kgぐらい増えていたりすることもあるんです。それを改善する為にお腹一杯になるまでは食べないようにしているのと、体重をアプリで管理していることです
ーー競技の特性上、夏と冬で体重の管理をするのは難しそうですね……。体重を管理するおすすめのアプリがあれば教えてください。
光希「“スマートダイエット”というアプリです。体重を管理するだけのアプリが多い中、このアプリでは体重、体脂肪、その日の体調を管理出来るんです! 良いところが、カレンダーを使って日頃の変化を一覧で見れるのと、グラフで分かりやすく教えてくれるので毎日の日課になっています
ーーこれは良さそうですね! このアプリはハーフパイプの中で主流なんですか?
光希「いや、身近で使っている人は聞いたことがないです。 そもそも毎日体重を気にしているのは私だけかもしれません(苦笑)
ーー体重管理は、光希選手にとってパフォーマンスを向上させる為に特別なことなんですね。先程、ストレッチの話をお聞きしましたが、ハーフパイプ競技って筋力も凄く大切になってくるのかなと勝手に思ったのですが、ウエイトトレーニングはいつ頃から始めたのでしょうか?
光希「ウエイトは高校生になってからなので、15歳で始めました。きっかけは、ナショナルチームの合宿で、(自宅から程近い)国立スポーツ科学センターに行ったんです。そこは毎年いろんな競技のアスリートが来る場所で、強化指定選手になるとその合宿に呼ばれてフィットネスチェックやメディカルチェックが受けられるんです。その時に専属のトレーナーさんに見てもらったら“どう?”って提案されて、それがきっかけでウエイトを始めて、専属のトレーナーさんも就くようになりました
ーーナショナルチームの合宿地が自宅から近いなんて良いですね。そこで信頼できる専属のトレーナーさんにも出会えるなんて素敵な話です。具体的にはどういったトレーニングをされていますか?
光希「スクワット、デッドリフト、懸垂、腕立て、腹筋、体幹トレーニング、リバースランジ(直立した状態から後ろに足を引き→しゃがみ→元の直立状態に戻る)など、総合的にやっています。自宅では、トレーナーさんに筋トレのメニューを作ってもらって実践していますよ。特に海外から帰ってきた時は、2週間の自主隔離があるので、その時はひたすらやっていました
ーー自宅でもかなりトレーニングをされているんですね。 簡単に出来る筋力トレーニングがあれば教えて下さい。
【腹筋強化のストレッチ】
  • STEP 1 仰向けに寝る。
  • STEP 2 両足を上げて両手が足につく状態にもっていく。
  • STEP3 カラダがVの字になるようなイメージで、つま先タッチ。
(レップ:左右3回ずつ/セット:2)
光希「これがシンプルなんですが、かなり苦しくて、腹筋にすごく効きます。これを実践してから、“あっ腹筋割れたかも!” って始めて思えました。トレーニング機材も必要ないので本当にオススメです
ーースノーボーダーは、体幹がとにかく強いという印象なのですが、光希選手もそうだったりします?
光希「そうですね。周りをみてもスノーボーダーは体幹が強い人が多い気がします。着地する時に衝撃がかなりあるので、体幹はとても大事ですね
小野光希流! プロのカラダのつくりかた。

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ーー体幹を鍛えるトレーニングがあれば教えてください!
光希「なんだろうな、それこそ腹筋とか、足を鍛えることですかね。先程説明したVの字の腹筋トレーニングも体幹にすごく良いと思います
ーーいろんなトレーニングがあるなかで、特に意識して鍛える部位はどこですか?
光希「足とお尻周りの筋肉ですね。スクワットやバーベルを持ってリバースランジを重点的にやっています。それと、“スノーボーダーで不足しがちな筋力は上半身”だとずっと言われているんですね。なのでトレーナーさんに見てもらってから、上半身もかなりゴツくなったと思います。あと、上半身のトレーニングを始めてから回転力が増しました
ーー下半身だけではなく、上半身のトレーニングも大切になってくるんですね。ハーフパイプという競技において、筋力を鍛えることと、柔軟性を鍛えることはどちらのほうが重要だと認識していますか?
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光希「んーー。筋力も大事ですが、どちらかというと柔軟性ですかね。やはり怪我しないことが第一なので
ーー新しい技やパフォーマンスを上げるためのトレーニングでもあるけど、怪我をしないカラダを作るという意味合いも、光希選手のなかで毎日のトレーニングにかなり含まれているんですね。自宅のトレーニングで役立つオススメのギアがあればお聞きしたいのと、そのギアを使ってどういうトレーニングをしているか教えてください。
光希「トレーニング用のバイクを置いていて、それで体力トレーニングをしてますね。そのマシーンには心拍数が測れたり速度の表示もあるんですが、適度に重い負荷をかけて心拍数が基準値を越えない程度に30分を1日1回やっています。最近では慣れてきて、より負荷をかけているので、体力がかなりついたかなと思います
ーーこれからシニアの舞台でガシガシ戦っていくかと思いますが、どのようなカラダ作りを目指していく予定ですか?
光希「月並みですが、“絶対に転ばないカラダ”を目指していきます。
03

《回復》睡眠前に行う3つのお約束

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© Jason Halayko

ーー最後に、『回復』についてお聞きしたいのですが、疲労の蓄積を改善する為に、どのようなことを実践していますか?
光希「電動のマッサージガンを使っています。この機械は元々チームで何台かあって借りていたんですが、すごい良くて自分で買っちゃいました。HYPERVOLTというブランドのもので、強力な振動によって、調子の悪い部位をマッサージしてくれるんです。片手で簡単に出来るので重宝しています
プロのカラダのつくりかた。

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© Jason Halayko

ーー電動のマッサージガンは、トップアスリートで流行っているという噂を聞きました。スノーボード界でも主流なんですね。毎年プレーをしていくなかで、コンディションが悪い時がどのアスリートにもあるかと思います。そんな時はどう改善して、乗り越えていますか?
光希「カラダが重い時はアイシングですね。私の場合はだいたい足がダルくなるんですが、その時は氷を専用の袋に詰めてサランラップでぐるぐる巻きにして、30分放置しています。これを寝る前にやると大分楽になりますよ。他の選手だったら氷の水風呂に浸かっている人もいるんですが、それは流石に勇気がいるのでムリ(苦笑)
Ice bath

水風呂

© Inpho Photography

ーー氷の水風呂は確かにハード過ぎますね……(笑)。光希選手の方法は手軽で誰でも実践しやすいし、特にサランラップで巻くっていうのは、かなり効果ありそうですね。 寝る前にアイシングとストレッチをして、最後にマッサージガン。その3つを実践するとコンディションがかなり良くなりそう! そのほかに光希選手流の回復方法はありますか?
光希「お風呂が好きなのもあって、よくお風呂に浸かります。長い時は1時間とか。回復の意味合いもありますが、自分のモチベーションを上げる為にも欠かせないです
ーーその時は頭の中を無にする感じですか?
光希「いや、逆に自分の趣味の時間にしています。携帯を置いて韓流ドラマを観たり、You Tubeを観たり、スノーボードと関係のない時間の使い方を意識してやっています
ーースノーボードを忘れる時間っていうのも大切で、それがリフレッシュになり、クオリティアップに繋がっているんですね。ストレス解消はどうしてますか?
光希「ひたすら寝ることです。最高で14時間くらい寝たことがありました(笑)
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ーー歳を重ねると段々寝れなくなったりするので、体力がある証拠だと思います。季節によって変えている回復方法はありますか?
光希「年中変わらないですね。逆に変えてしまうと自分のパフォーマンスに影響が出てしまうので、常に一定でいられるように心がけています。暑いのがすごく苦手なので、常に携帯の扇風機を持ち歩いたりするくらいですね
ーーやはり寒い方が好きなんですね! 栄養・トレーニング・回復で一貫して参考にしている人はいますか?
光希「特にいません。でも栄養士さんやトレーナーさんに聞いたことは、何でもチャレンジしています。それが駄目だったら、今度はそれを自己流にアレンジしてみたり
ーー信頼できる周りから聞いたことは何でも試してみながら、最終的には自分に合ったカラダ作りに調整する“自己流”がベストということですね。カラダ作り全般で意識してされていることはありますか? 例えば瞑想をやるなど。
光希「大会前日の就寝前、瞑想ってほどではないですが、スノーボードのことも他のことも一切考えないように、頭の中を一旦無の状態にします。たまにそれが出来ない時もあるんですが、そういう時は逆にイメージトレーニングをしますね。良いパフォーマンスをした映像を何本か観て、良いイメージで大会に挑むようにしています
ーーそれが結果的にカラダ作りにも繋がっているということですね。ありがとうございました! インタビューは以上になります。
光希「ありがとうございました!
  
  
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