Coach Clem says barefoot running significantly improves your balance
© Madison Garner
ランニング

ベアフットランニング:5つの効果

いつものランニングに刺激を加えたい? プロコーチがランニングシューズの代わりに裸足で走ることで得られるメリットを教えてくれた。
Written by Charlie Allenby
読み終わるまで:6分Published on
マラトンの戦いでギリシャがペルシャに勝利したことを伝えるべく伝令フィリッピデスがアテネからスパルタまで走ったとき、彼はカーボンプレート入りランニングシューズを履いていなかった。
ゼロドロップシューズと “ナチュラルランニング” ムーブメントが生まれる2,000年ほど前の長距離走は裸足だったという伝説は、超軽量フォームと反発力に優れたミッドソールがなくても長く走れることを示している。
現在、“ベアフットランニング” ムーブメントが本格的な勢いを得てきており、Vivobarefoot(ヴィヴォ)やMerrell(メレル)のようなブランドが “ベアフット / ゼロドロップ” シリーズを展開して、ランニングシューズの特徴のひとつ “足の保護性能” をある程度維持しながら、厚底抜きのランニングエクスペリエンスをシミュレートしている。
ベアフットランニングでより効率良く走れるようになりました
コーチ・クレム
しかし、ベアフットランニングはエリートランナーだけのものではない。コーチ・クレム(Coach Clem)として知られるプロフィットネスコーチのトム・クレミンソンは熱心なランナーだったが、ラグビーで深刻な怪我を連続で負ってしまったあとランニングをするたびに激しい膝の痛みと闘わなければならなくなった。
これが原因で数年間ランニングから離れたあと、ランニングに再び目を向けたときに彼が出会ったのが、ベアフットランニングだった。コーチ・クレムは次のように語っている。
「ランニングを科学的に理解するようになりました。簡単に説明すると、足は全身を支える基盤です」
「ランニングでは最低でも体重の2倍の衝撃がかかりますが、足のアーチはその衝撃を吸収するためにあります」
「ですが、シューズを履いてアーチがカバーされることで、私たちの歩き方とストライドに変化が起きます。オーバーストライド(必要以上の歩幅)とヒールストライク(踵からの着地)が起きるのです」
「この変化により、着地の衝撃が膝と臀部まで伝わってしまうのです。私の膝に問題があったのではなく、ランニングシューズによって衝撃が伝達していたことが問題だったのです」
ランニングでは体重の2倍の衝撃を受ける

ランニングでは体重の2倍の衝撃を受ける

© Madison Garner

ベアフットランニングとの出会いから3年が経った今、コーチ・クレムは裸足でのハーフマラソンデビューを終えており、すべての痛みは過去のものとなっている。しかし、コーチ・クレムは、ランニングシューズを替えて、トレーニング量を維持しても問題解決にはならないと考えている。
「人間は生まれた直後に歩けるようになるわけではありませんよね。歩けるようになるまでは学習を積み重ねる必要があります。ベアフットランニングも同じです」
「すぐにベアフットランニングに切り替えてもストライドは大きいままですし、ヒールストライクも続けるでしょう。結果的に、普通のランニングシューズのクッション性能なしで衝撃を受けることになります」
このように警告する彼は、徐々に慣れていくことが重要で、ベアフットランニング / ゼロドロップシューズで歩くことから始めたあと、段階的にランニングへ進むべきだと続けている。
コーチ・クレムは、ベアフットランニングには耐えて挑戦する価値があるとし、膝の痛みの先にいくつものメリットを見出している。今回は、彼がベアフットランニングで得られた5つの効果を紹介する。
01

足が強くなる

“足” から得られる恩恵についてはあまり考えたことがないかもしれないが、足底が強くなり、身体の基盤がしっかりすれば、 本記事で紹介しているような様々な恩恵が得られるようになる。コーチ・クレムはひとつ目の効果を次のように説明している。
「リヴァプール大学の研究は、裸足で日常生活を半年間送ると足の筋力が約50%高まるという結果を導き出しています。また、同研究は、この筋力アップがより健康的なバランスと歩き方の助けになる可能性があるとも結論づけています」
02

ランニングフォームが向上する

ベアフットランニングは、足のアーチを使った着地を促し、ヒールストライクおよびヒールストライクが原因の怪我を防ぐことができる。しかし、コーチ・クレムは、ベアフットランニングはランニングフォームの向上にも寄与できると考えている。
「私はベアフットランニングでより効率良く走れるようになりました。ストライドが完全に変わりましたし、ケイデンス(1分間で足が着地する回数)も高まりました。ストライドはかなり小さくなりましたね。リラックスしながら前傾姿勢が取れるようになりました」
03

柔軟性が向上する

「ベアフットシューズで歩き始めてから得た気付きの中で最も奇妙だったのは、足が縦横ともに大きくなったことでした」とコーチ・クレムは語っている。彼は、これは普通のシューズの締め付けがなくなって足の靱帯と腱がリラックスできるようなり、さらには地面の凹凸によって足裏がマッサージされた結果と考えている。
また、これらの変化は下半身全体に好影響を与えており、足首から上も恩恵が得られている。コーチ・クレムは「足の靱帯と腱が緩んだことで、全身の柔軟性が大きく高まりました」と続けている。
04

バランスが向上する

ベアフットランニングの恩恵の多くは時間をかけなければ得られないものだが、コーチ・クレムは初日から得られるものがひとつあるとしている。それはバランスの向上だ。
ベアフットランニングで多くの恩恵を得ているコーチ・クレム

ベアフットランニングで多くの恩恵を得ているコーチ・クレム

© Madison Garner

「バランスが素晴らしく向上しました。バーベルを使ったスクワットやデッドリフト、ランニングはもちろん、日常のアクションすべてが突如として簡単になったのです」
こう語る彼は、バランスの違いを分かりやすくシミュレートする例として、裸足での前方ジャンプ片足着地を挙げている。
「これをしてみると、普段の足首と足が着地するときにどれだけ安定しているのかと、どちらもほとんど揺れずに身体が安定することが分かるはずです。次に、ヨガマットなどを何回か折り曲げて敷き、ランニングシューズのクッションの代わりにします。その上で同じジャンプをしてください。足首と足をかなり動かさなければ身体が安定しないことが分かるはずです」
05

環境と繋がれる

裸足でのウォーキングやランニングは、水ぶくれ、切り傷、痛みを想起させるかもしれないが、コーチ・クレムは、真実は真逆だとしている。
「芝生と土が近くにあるなら、その上を裸足で歩いてみてください。自分を取り巻いている環境をより深く理解できるようになります。ランニングと自分がより深いレベルで繋がれるようになるのです」
実際、コーチ・クレムは足裏が変化を敏感に感じ取れるようになっているため、都市部でのランニングを退屈に感じるときもあるようだ。彼は次のように続けている。
「街中の通りを歩いていれば、マンホールの感触が得られますし、トレイルを歩けば、足の裏に当たる小枝や土、木の葉、小石などが感じられます。環境の一部になれるのです」
脊髄損傷の治療法発見に貢献できるチャリティーランイベント【Wings for Life World Run 2022】は5月8日開催! 参加登録はこちら>>
▶︎世界中から発信される記事を毎週更新中! 『新着』記事はこちら>>

関連コンテンツ

Wings for Life World Run 2022

世界最大規模のランニングイベント、Wings for Life World Run(ウィングス・フォー・ライフ・ワールドラン)は、通常のマラソンやランニングイベントにはないゲーム性の高い独自のルールで進められ、車椅子の使用者も参加できる。世界規模のチャリティイベントとして、参加費用をすべて研究団体に寄付し、ランナーたちは脊髄損傷の治療というゴールに向かって進む。

Worldwide
イベントをチェック