ジムセッションのあと、食事までどれくらいのインターバルを空けるべきなのだろうか? ハードワークを台無しにしないおやつはあるのだろうか? 周囲のクレイジーなジムマニアたちに合わせて何となくプロテインシェイクを飲んでいないだろうか?
フィットネストレーニングの栄養管理についての疑問は尽きないように思えるが、それは決して悪いことではない。
正しい食事はエクササイズでかけられた負荷に身体がスムーズに適応する助けになる。リカバリースピードが速まり、筋力や持久力のゲインが大きくなるのだ。
トレーニング後の水分補給や栄養補給を怠ってしまうと筋肉痛が生じたり疲労が残ったりしてしまうので、次のセッションで本来のパフォーマンスを発揮できなくなる。上手くリカバリーできれば、それだけハードなトレーニングが可能になる。
『ワークアウト前の栄養補給ガイド』に続き、今回も元ボディビルチャンピオンの英国人栄養士アニタ・ビーンがワークアウト後の栄養補給について知っておくべきポイントを解説してくれた。
リカバリー時の栄養補給が大切な理由
エクササイズを行うと体内のグリコーゲン貯蔵量が減少し筋繊維が破壊されるので、これらを正しく補って回復させる必要があります。
ワークアウト後に正しい栄養補給を行えば、エナジーの再補給と筋肉の修復・増強のスピードアップが促されるので、次のワークアウトでより優れたパフォーマンスが発揮できるようになります。
リカバリー3原則
毎回のワークアウト後に従うべき、以下の「リカバリーに欠かせない3つのR」を覚えておくと良いでしょう。
- Rehydrate(水分補給)
- Refuel(エナジー補給)
- Rebuild(筋肉の修復)
1:水分補給
エクササイズ後に補給すべき水分量は、ワークアウトで失った水分量で決まってきます。
まずはトレーニング前・後の体重を測定してみましょう。トレーニング後の体重減1kgにつき水1.2~1.5ℓを補給するのがベストです。
失った体重(水分)が比較的少ないなら水だけで十分に補えますが、多いなら水の代わりにスポーツドリンクなど電解質を含んだドリンクを飲みましょう。あるいは塩分を含んだ食事(例:チーズサンドウィッチ)と水の組み合わせも同様に効果的です。水だけよりも水分保持力が高まります。
2:エナジー補給
炭水化物を摂取してグリコーゲン貯蔵量を補充しましょう。トレーニングの強度が高く、長時間になるほど、より多くの炭水化物で補う必要が出てきます。
ランニングやサイクリング、スイミングなどの高強度・持久系エクササイズは、ウォーキングやジョギング、ヨガなどの低負荷アクティビティ、あるいはウエイトトレーニングやテニスなどの休息を含むストレングス・断続性アクティビティなどよりも多くのグリコーゲンを消費します。
言い換えるなら、ストレングス系ワークアウトよりもエンデュランス系ワークアウトに取り組んだあとの方がより多くの炭水化物を補給する必要があるのです。
3:プロテインによる筋肉の修復
プロテインはダメージを受けた筋繊維を修復し、新たな筋組織の生成をサポートします。
プロテインはプロテインシェイク以外でも補給できます。乳製品や豆乳も筋肉のリカバリーに効果を発揮することが複数の研究によって明らかになっています。
良質なプロテインまたは完全なプロテイン(8種類の必須アミノ酸をすべて含む)に加え、アミノ酸ロイシンを豊富に含む食品を摂取するのが理想です。
牛乳、卵、ヨーグルト、大豆などはこれらの条件を満たしていますし、次のワークアウトに向けた筋肉のリカバリーを促進してくれます。
エクササイズの種類や強度にもよりますが、ワークアウト後に摂取する食事や軽食には体重1kgあたり0.25~0.4gのプロテインが含まれていることが望ましいですね(例:体重60kgならプロテイン15~24gを摂取)。複数の研究結果では、プロテインによる筋肉生成を引き起こすにはこれが適量とされています。
とはいえ、これらの研究の大半は体重86kgの成人男性が被験者ですので、自分のワークアウトメニューと体重に合わせてプロテイン補給量を調整するべきです。
ストレングス系 / 全身系ワークアウトは、エンデュランス系ワークアウトよりもプロテインを多く補給する必要があります。とはいえ、基本的にはワークアウト後はプロテイン20~40gを補給しておけば良いでしょう。
尚、プロテイン20gを補給するには、卵3個 / 牛乳500㎖ / 裏ごししたギリシャヨーグルト250g / ホエイパウダー25gが必要となります。
食事のタイミング
ワークアウト間に24時間以上のインターバルを設けているなら、ワークアウト直後に食事をする必要はありません。
プロテインはワークアウト直後に補給しなくても問題ありません。プロテインは長期的なリカバリーと筋肉生成で重要な役割を果たします。
ワークアウト後の食事タイミングは空腹感に応じて決めましょう。空腹なら軽食や食事を摂ってください。ワークアウトから24時間以内に十分なカロリーと炭水化物、プロテインを摂取できていれば、次のワークアウトに向けて筋肉は正しくリカバリーされるでしょう。
ですが、1日2回のトレーニングセッションを組んでいる、または次のトレーニングセッションまでのインターバルが8時間未満なら、直後2時間の “リカバリータイム” をうまく活用する必要があります。
エクササイズ直後はカフェインもグリコーゲン補給を促進してくれます。絶対に必要ではないですが、カフェインを含んだドリンクを飲むのはグッドアイディアでしょう。
エンデュランス系トレーニング後に素早くリカバリーしたいなら、終了後の4時間は1時間ごとに体重1kgあたり1.0~1.2gの炭水化物を摂取して、グリコーゲン生成率を最大限まで高めましょう(例:体重60kgなら炭水化物60~72gを摂取)。
フレーバーミルク300㎖とバナナ1本で炭水化物60~72gが摂取できます。次のワークアウトに向けてグリコーゲン貯蔵量を満タンにする助けになるでしょう。
理想のメニュー
水分・プロテイン・炭水化物(そしてその他の栄養素)で構成されている牛乳や豆乳は、水分補給・グリコーゲン補充・筋肉の生成を同時に促進してくれるのでパーフェクトに近いリカバリードリンクと言えます。
《リカバリーに適している食事の例》
朝食:牛乳とヨーグルトにひと晩浸けたオーツ(大麦)にスライスしたバナナを加え、新鮮なベリーやローストアーモンドを適量添えたもの。または、ポーチドエッグとアボガドを載せたトーストならストレングスワークアウト後のリカバリーに必要な栄養素を補える
昼食:フムス、ファラフェル、あるいはツナやアボガド、ハナダイコン、ビートルートなどを挟んだピタパン
夕食:チキン入りのタイ風グリーンカレー もしくは黒豆とサツマイモのカレー
《リカバリーに適している軽食の例》
ミルク&バナナ:どのタイプのミルクにもエクササイズ後の筋肉適応を最大化するのに必要なプロテインが含まれている
フルーツ&ヨーグルトのスムージー:ギリシャヨーグルト(プレーン)大さじ3杯、バナナ1本、数種類のベリーと牛乳150㎖をミキサーにかける
ヨーグルトボウル:ボウルに盛り付けたギリシャヨーグルトにベリーやナッツ、シード類をトッピングする