「いずれ一大勢力になるだろう」
これはあのティム・ケーヒルがニューヨーク・レッドブルズに所属していた2014年にMLS(メジャーリーグサッカー)の未来について語ったコメントだ。そしてこのコメントから8年が経った今、MLSは世界で最も視聴されているサッカーリーグのひとつになっている。
贔屓のチームと選手を目の前で楽しめるサッカー専用スタジアムの建造がMLSの人気拡大の一翼を担ってきた。現在、サッカーのために建造または改修されたスタジアムは全米に28個存在する。そのうち5個はここ5年以内に新たに建造されたもので、今後もその数は増え続ける予定だ。
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米国のサッカースタジアム ベスト10
急成長を続けているプロサッカーリーグを体験したいなら、現地を訪れるのが一番だ。そこで今回は米国内のサッカースタジアムの中からベスト10をピックアップして紹介する。
レッドブル・アリーナ
- 所在地:ニュージャージー州ハリソン
- ホームクラブ:ニューヨーク・レッドブルズ | NY/NJゴッサムFC
2010年に建造された収容人数25,000人のこのスタジアムは、サッカー専用としては全米6位の規模を誇る。このMLSニューヨーク・レッドブルズとNWSL NY/NJゴッサムFCのホームスタジアムは、ニューヨークシティから11kmほど離れているニュージャージ州ハリソンのリバーエンド地区に位置する。
このスタジアムは米国のコンサルティング会社J.D. Powerによる「ファンが最も楽しめる会場ランキング」で2度首位を獲得しており、かつてニューヨーク・レッドブルズに所属していた元米国代表GKルイス・ロブレスは次のように評している。
「レッドブル・アリーナはファンが近い距離で楽しめる環境であると同時に、選手たちがくつろげる環境でもあります。私はMLSでこのスタジアムよりもピッチが整っているスタジアムを知りません」
尚、ニューヨーク・レッドブルズとNY/NJゴッサムFCの試合の他に、米国サッカー男子・女子代表の公式試合も開催されている。
プロビデンス・パーク
- 所在地:オレゴン州ポートランド
- ホームクラブ:ポートランド・ティンバーズ | ポートランド・ソーンズ
ポートランドのダウンタウンからほど近いプロビデンス・パークはMLSポートランド・ティンバーズとNWSLポートランド・ソーンズのホームスタジアムだ。1893年に “マルトノマ・フィールズ” という名称で建造されたこのスタジアムはMLSで最も長い歴史を持つ専用スタジアムでもある。
2011年に球技専用に改修されて以来、ティンバーズは収容人数25,218人のこのスタジアムで開催されてきたすべての主催試合でチケット完売を記録している。また、ソーンズも2019年にチケット完売を記録してNWSLの観客数最多記録を塗り替えている。
ちなみに、プロビデンス・パークはサッカーの神様ペレの現役最後の試合、1977年の北米サッカーリーグ決勝ニューヨーク・コスモス対シアトル・サウンダーズが開催されたスタジアムとしても知られている。試合はペレが所属していたコスモスが2-1でサウンダーズを下して優勝した。
チルドレンズ・マーシー・パーク
- 所在地:カンザス州カンザスシティ
- ホームクラブ:スポルティング・カンザスシティ | カンザスシティ・カレント
カンザスシティのヴィレッジ・ウェストエリアに位置するチルドレンズ・マーシー・パークはMLSスポルティング・カンザスシティとNWLSカンザスシティ・カレントのホームスタジアムだ。
2011年にライブストロング・スポルティング・パークとして建造された収容人数18,467人のこのスタジアムは「ファンのため」が念頭に置かれているため全席がルーフ下に位置している。また、このルーフは観客の声援を反響させるため、アウェイチームを萎縮させるのにも役立っている。
メルセデスベンツ・スタジアム
- 所在地:ジョージア州アトランタ
- ホームクラブ:アトランタ・ユナイテッドFC
2017年にジョージア・ドームの代替施設として建造されたこのスタジアムは同年に創設されたアトランタ・ユナイテッドFCの本拠地だ。アトランタのダウンタウンに位置する収容人数71,000人のこのスタジアムはMLS屈指の熱狂的な雰囲気が楽しめることで知られており、MLSの観客数最多記録を幾度となく更新している。
アトランタ・ユナイテッドFCのサポーターたちは地元愛が非常に強く、同クラブをMLS史上唯一「1シーズンのホーム試合平均観客数が50,000人を超えるクラブ」にしている。また、このスタジアムはルーフ下にLEDディスプレイとしては世界第9位の大きさを誇る360°LED “Halo” が設置されていることでも有名だ。
ルーメン・フィールド
- 所在地:ワシントン州シアトル
- ホームクラブ:シアトル・サウンダーズ | OLレイン
アトランタ・ユナイテッドFCがMLSの観客数最多記録を更新する前は、シアトル・サウンダーズの本拠地ルーメン・フィールドが記録を保持していた。2002年に建造されたルーメン・フィールドは2009年からシアトル・サウンダーズがホームスタジアムとして使用しており、熱心なサポーターのおかげで2009シーズンから2016シーズンまでMLS平均観客数1位を誇っていた。
MLSの試合では収容人数37,722人のこのスタジアムの大半が埋まるが、両ゴール裏がルーフなしのデザインになっているため、訪れた観客は周辺の景色も楽しめる。北側にはシアトルのダウンタウン、南側には標高4,392mのレーニア山が望めるルーメン・フィールドは2026年ワールドカップの会場のひとつに選ばれている。
スバル・パーク
- 所在地:ペンシルバニア州チェスター
- ホームクラブ:フィラデルフィア・ユニオン
収容人数18,500人はMLS最少クラスだが、他の部分では他のスタジアムにまったく引けを取っていないのがスバル・パークだ。デラウェア川沿いに位置するこのスタジアムはMLS屈指の美しい景観を誇っており、一度足を踏み入れれば、多くのサッカーファンから愛されている理由が理解できるはずだ。
尚、フィラデルフィア・ユニオンのサポータークラブのひとつ、Sons of Benはこのスタジアムの2,000シートを確保しており、MLS最高のサポータークラブを自負している。
バンク・オブ・アメリカ・スタジアム
- 所在地:ノースキャロライナ州シャーロット
- ホームクラブ:シャーロットFC
MLSの成長と米国におけるサッカー人気上昇を体験したいなら、30番目のクラブとして新たに創設されたシャーロットFCのホームスタジアムよりも適したロケーションを探すのは難しいだろう。
このスタジアムで開催されるMLSの試合は観客数が38,000人に限定されるが(NFLのカロライナ・パンサーズの試合では最大収容人数74,867人まで使用される)、シャーロットFCのサポーターたちはこのクラブを全力で応援しており、デビューシーズンとなった2022シーズンは平均35,000人以上を集めてMLS2位を記録した。尚、こけら落としでは74,479人を集めてMLSホーム開幕戦観客数最多記録を更新した。
ディグニティ・ヘルス・スポーツ・パーク
- 所在地:カリフォルニア州カーソン
- ホームクラブ:ロサンゼルス・ギャラクシー
スター性において、ロサンゼルス・ギャラクシーの歴史に匹敵できるMLSのクラブはほとんど存在しない。デビッド・ベッカム、ズラタン・イブラヒモビッチ、スティーブン・ジェラード、ランドン・ドノバンなどはLAギャラクシーでプレーしたレジェンドたちのごく一部だ。
収容人数27,000人のこのスタジアムを本拠地にしているLAギャラクシーはMLSの古豪で、MLSプレーオフ優勝5回とサポーターシールド(レギュラーシーズンで最も優秀な成績を収めたチームへ贈られる)獲得4回はMLS最多記録となっている。
尚、ディグニティ・ヘルス・スポーツ・パークは複合施設のため、サッカースタジアムの他にも収容人数8,000人のテニススタジアムや陸上競技場、収容人数2,450人のベロドロームなどが置かれている。
バンク・オブ・カリフォルニア・スタジアム
- 所在地:カリフォルニア州ロサンゼルス
- ホームクラブ:ロサンゼルスFC | エンジェル・シティーFC
ロサンゼルスFCの創設に合わせて2018年に建造されたこの収容人数22,000人のスタジアムはロサンゼルスのダウンタウンに位置しており、大都市ならではの雰囲気が味わえる。
魅力的な外装を誇るこのスタジアムはファンに楽しんでもらうことにフォーカスしているため、全席がピッチから41m以内に設置されており、最短距離は3.6mしかない。このため、このスタジアムを訪れた観客はどこに座ってもトップレベルのサッカーを至近距離で味わえる。
現在はNWSLのエンジェル・シティーFCもホームスタジアムとして使用しているバンク・オブ・カリフォルニア・スタジアムは、2028年ロサンゼルスオリンピックの男女サッカー会場に使用されることが予定されている。
エクスプロリア・スタジアム
- 所在地:フロリダ州オーランド
- ホームクラブ:オーランド・シティSC | オランド・プライド
サッカーを周辺の美しい景色と一緒に楽しめるスタジアムを探しているなら、オーランドのエクスプロリア・スタジアムがおすすめだ。
MLSのオーランド・シティSCとNWSLのオーランド・プライドが本拠地として使用しているこの収容人数25,500人のサッカースタジアムはオーランドのダウンタウンからほど近く、ありとあらゆる魅力を備えている。快適な気候、ヤシの木、そして色鮮やかなカルチャーはMLSの他のクラブに引けを取らない。
このスタジアムのもうひとつの魅力は、温暖な気候ゆえに男女サッカー米国代表の冬季開催地として機能しているところで、2021年から代表Aマッチが7試合も開催されている。これはエクスプロリア・スタジアムでは1年を通じてトップレベルのサッカーが観戦できることを意味している。
最後に
今回紹介した10スタジアムなら米国最高のサッカー・エクスペリエンスが得られるはずだ。MLSではスタジアム観戦の良さへの理解が年々深まっているため、現在はサッカー専用スタジアムでの開催が常識となっている。
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