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BMXレーシングとは?
BMXレーシング(バイシクルモトクロス・レーシング)は予想不可能なレースが展開される観戦向きの自転車競技だと、オーストラリアを代表するBMXレーサー榊原爽は説明している。では、なぜ予想不可能なのだろうか?
その答えは、同時にスタートしたライダー8人がジャンプ・ローラー・コーナーが配置されている全長300〜400mの専用オフロードコースを走り、その中のトップライダーが勝利を収めるというこの競技のフォーマットにある。
このようなBMXレーシングの1レースは30〜40秒で決着がつく。しかし、レースで勝利を収めるためには年単位の努力が求められる。
「BMXレーシングは非常に複雑なスポーツですね」と榊原は説明を続ける。「レーストラックを駆け抜けるために必要なスキルを手に入れるためには、ストレングスやパワー、反射神経まで様々なエリアを鍛える必要があります」
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起源
BMXレーシングは1970年代初頭に始まった。榊原がさらに説明する。「BMXは、モトクロスモーターバイクを購入できる金銭的余裕がなかったモトクロスファンのキッズ2人によって生み出されました。彼らはダートトラックを自作し、モトクロスモーターバイクのライディングテクニックを真似しながらそこを自転車で走っていたのです」
BMX発祥の地は米国・南カリフォルニアとされている。同地域に住んでいたロン・マックラー(1969年頃からBMXレースを主催)やスコット・ブライトハウプト(13歳からBMXレースに出場)のようなローカルライダーたちが競技としてのBMXレーシングを確立させ、米国内での人気を高めたあと、海外へ広めていった。
この頃のBMXレースバイクは、20インチホイールのSchwinn Sting-Ray(シュウィン・スティングレイ)をベースにしていた。このタイヤサイズは現在も引き継がれているが、フレームデザインは1980年代から大きく進化している。
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レースの特徴
では、BMXレーシングのレースは何が魅力なのだろうか? 榊原は「激しさですね」と回答し、次のように続けている。
「BMXレーシングはアクション満載です。ライダー8人がトップを競い合います。また、一瞬も目を離せないほどハイスピードです。リプレイをチェックしなければ何が起きたのか理解できないときもありますね」
さらに言えば、1レースは1分以内で終了し、コンマ数秒で勝者と敗者が分かれるときもある。榊原が続ける。
「同じ能力のライダーが同じレースに出場するときは少なくないですが、同じライディングを続けられる安定感と、プレッシャーをはねのける強いメンタルを備えているライダーが勝つときがあります。スピードが優れているだけでは勝てないときがあるのです」
ライダー側からの意見として、榊原はどのレースもスタートゲートが落ちるたびに「アドレナリンが全開になり、直感で走っている」と説明している。
「スタートゲートが落ちる瞬間からフィニッシュラインを越える瞬間まで、脳ではなく身体が自分を支配します。その日のためにトレーニングを積んできたので、あとは直感に任せるだけなのです。フィニッシュラインを越えた瞬間、意識が戻ってきます。そして “今のは何? 最高に気持ち良かった!” と思うのです。私はこのフィーリングが大好きですね」
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初心者に必要なもの
BMXレーシングに挑戦したいなら、まずはBMXフリースタイル用バイクとBMXレーシング用バイクの違いを理解できるようになる必要がある。榊原が説明する。
「もちろん、最初に必要になるのはBMXです。レーシング用とフリースタイル用がありますが、レーシング用はタイヤが細く、車高が低いです」
車高が低ければそれだけ空気抵抗が減りスピードを出しやすくなる。タイヤが細いのはフリースタイルほどトラクションが必要ではないからだ。フリースタイルではトリックメイクや着地でバイクを安定させる必要があるが、レーシングでははそれほど必要ではない。
そして、当然だが、BMXを手に入れたあとは安全に練習を重ねる必要がある。
「顔までカバーできるフルフェイスのヘルメットとロングスリーブシャツ、ロングパンツ、グローブが必要になります。ですが、フリースタイルほど落車はしませんね。フリースタイルでは新しいトリックを学ぶために何回も落車する必要があります。失敗を繰り返しながら限界を徐々に押し広げていくのです。ですが、レーシングで新しい何かにトライするときは、基本的には自分の能力の範囲内になります。ですので、フリースタイルほどクラッシュは起きません」
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注目ポイント
では、BMXレーシングでは何を意識して練習すれば良いのだろうか? レーシングでは、トリックメイクによるスコア獲得よりもフィニッシュラインを誰よりも先に通過することが重要だ。
しかし、それでも、榊原はBMXレーシングにおけるスキル的な見所や練習に持ち込めるテクニックをいくつか紹介してくれた。
「誰もが最初に学ばなければならないテクニックのひとつがパンピング(日本では長年 “プッシュ” と呼ばれてきた)です。パンピングは、両腕と両脚を上下動させることでBMXに勢いをつけて、フロントホイールとリアホイールを接地させたままジャンプやローラー、コーナーを抜けていくテクニックです。ペダリングはしません。体重移動だけでスピードを得るのです」
パンピングを身に付けたら、次は2種類の基本テクニックを学ぶことになる。
「その次はマニュアルですね。これはウィーリーに似ていますがペダリングはしません。あとはジャンプです。これら2つはパンピングと組み合わせることもできます。パンピングと組み合わせられるようになれば、次のレベルへステップアップできます」
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注目ライダー
お気に入りのライダーを持っておけばBMXレーシングの観戦がさらに楽しくなる。榊原が、近年世界から注目されている男女ライダーをピックアップしてくれた。
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視聴・観戦方法
《動画》
BMXレーシングとそのカルチャーは昔からフィルマーや映像作家から注目されてきたため、数十年をかけて数多くのアイコニックな映像作品が作られてきた。Red Bull TVにも秀作がいくつも収録されている。
《イベント》
BMXレーシングがどのようなスポーツで誰が活躍しているのかを理解したあとは、実際にイベントを観戦したい。榊原は次のように説明する。
「普段はUCIワールドカップと呼ばれるインターナショナルサーキットをチェックしています。昨シーズンはオーストラリアで4ラウンドが開催されました。ヨーロッパと米国でも数ラウンド開催されましたし、南米でも開催されました。最高に面白いですよ。YouTubeでライブストリーミングされているので、フォローも簡単です」
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