クライミング
インタビュー:クリス・シャーマ
トッププロクライマーがクライミングや自分のビジョンについて語った。
Written by Kevin McAvoy
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オマーンでのクリス・シャーマ
オマーンでのクリス・シャーマ© Klaus Fengler/Red Bull Content Pool
世界最高のロッククライマーのひとりとして知られているクリス・シャーマには、トップアスリートに求められる風格が備わっている。自分の類い希なる才能を自覚していると同時に、自分のエゴよりもスポーツへの情熱を大事にしている人物だ。非常に気さくで控えめな性格のシャーマは、自分をこの地位まで育ててくれたクライミングというスポーツの楽しさを世界の人たちに知ってもらいたいと考えている。
より多くの人たちにクライミングの楽しさを知ってもらいたいという理由から、シャーマは水上でセーフティなしのフリークライミングを行うユニークな大会Psicobloc Mastersを仲間と共に立ち上げており、2014年はユタ州・ユタオリンピック公園で開催した。今回は彼にクライミングの魅力などについて話を聞いた。
あなたにとってクライミングとは?
クリス・シャーマ:クライミングは素晴らしいスポーツであると同時に自分の人生でもある。僕はクライミングを通して世界を見ているね。僕の人生のすべては、何かしらの形でクライミングと繋がっているんだ。
クライミングを実際にやる時の感覚について話すと、クレイジーなムーブをしながら上に登っていくのは本当に素晴らしいよ。ルート制覇にはかなりの集中が必要になるから、自分のすべてを完ぺきにコントロールしなければならない。いわゆる「ゾーンに入る」感覚が簡単に得られるね。
Red Bull Creepers 2014のクリス・シャーマ
Red Bull Creepers 2014のクリス・シャーマ© Sebas Romero/Red Bull Content Pool
あなたは米国とスペインで育ちました。
僕は人生の半分を米国、半分をスペインで過ごした。今はバルセロナに住んでいるよ。スペインは最高だね。車で30分も走れば、クライミング向きのスポットが沢山ある。僕はそこでクライミングをしているんだ。
米国には3週間から1ヶ月滞在して、イベントを開催したり、仕事をしたり、家族に会ったり、クライミングをしたりする。僕のスポンサーはすべて米国企業だから、米国にいる時は本当に忙しいよ。スペインでは自分のプロジェクトに集中しているんだ。
クライミングをする人が増えるほど、世界は良くなると思う
南カリフォルニアにあるあなたのクライミングジム、Sender Oneについて教えてください。
去年、あるグループと組んでSender Oneをオープンしたんだ。ずっと前からの僕の夢だった。というのは、僕もジムでクライミングを始めたからね。僕たちはジムでクライミングを始めた第1世代なんだ。僕がクライミングを始めたジム、サンタクルスのPacific Edgeでは数多くの人たちに出会い、励ましてもらえた。本当にラッキーだったと思う。彼らは僕を大会に送り込むために募金もしてくれたんだ。
だから自分でもジムを始めて、クライミングをサポートして、多くの人たちに参加してもらいたいと思っている。クライミングは本当にポジティブで健康的なスポーツだよ。クライミングをする人が増えるほど、世界は良くなると思う。
Red Bull Creepersでのクリス・シャーマをチェック!
4分The best action from Red Bull Creepers in SpainThe best action from Red Bull Creepers in Spain
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クライミングの大会についてはどう感じていますか?
若い頃は沢山の大会に出たよ。いつも楽しかったけれど、いつだって僕にとって最高のクライミングはロッククライミングだった。難しいルートに挑むのを一番楽しみにしていた。
でもロッククライミングで厄介なのは、僻地に行かなければならないということなんだ。山でも森でも、人が周りにいないから孤独なんだよ。だから大会はどちらかというとクライミングをみんなとシェアし、このスポーツを称えるお祭りのようなものだって考えている。出場者の大半は友人だし、単純に楽しんでいるんだ。
大会は決まった時間にクライミングしなければならないし、プレッシャーが良い意味でも悪い意味でもかかる。僕の場合はプレッシャーが常に味方についていたけれどね。ある程度のプレッシャーは自分のベストを引き出してくれるんだ。
オマーンでのクリス・シャーマ
オマーンでのクリス・シャーマ© Klaus Fengler/Red Bull Content Pool
Psicobloc Mastersに参加していますが、その理由とこのイベントの目的について教えてください。
以前、マドリッドで開催されたRed Bull X-Fightersに参加したけれど、あれは見事にイベントをショーに変えているよね。僕たちもそれをやろうとしているんだ。もちろん、トップクライマーに参加してもらう公式大会だけど、同時に面白い内容にして、クライミングを世界に示してみんなに理解してもらいたいと思っているんだ。
ディープウォーターソロは12年前にマジョルカで試してから一番気に入っているスタイルだよ。ロープやマットなどのセーフティなしで20m以上もクライミングできるのは素晴らしいし、自分の限界まで挑戦できる。ある意味究極のスタイルだと思う。もちろん、フリーソロが最も純粋なクライミングのスタイルだと思うけれど、落ちたら死んでしまう。だからフリーソロではちゃんとコントロールできる状態にしておかなければならないから、必ず自分の限界より下のレベルで挑戦することになる。
僕は自分の限界に挑むことがクライミングの真髄だと思っている。どこまで難しいことに挑戦できるのかを見極めるってことがね。
でも、Psicobloc Mastersでは水が保護してくれる。フリーソロと同じ自由度だし、セーフティもないけれど、限界に挑める。巨大なオーバーハングをクライミングしたり、ムーブを試したりしても、何度でもやり直せる。僕は自分の限界に挑むことがクライミングの真髄だと思っている。どこまで難しいことに挑戦できるのかを見極めるってことがね。
だからマジョルカでのクライミングのあと、「これが僕の進む次のステップだ。こういうクライミングの大会が開催できたら、みんな感動するだろう」って思った。Psicobloc Mastersはクライミングの認知度をこれまで以上に高めるチャンスなんだ。
僕たちの目標は、ワールドツアーを開催することだ。2010年にスペイン・ビルバオで初開催して、2013年はソルトレークシティで開催したし、2014年はユタで開催した。すべて上手くいったよ。クライミングの認知度は中々高まらない。クライミングの大会は展開がゆっくりで退屈なんだ。でも、水上でのフリーソロは、クライミングを知らない人が見ていても凄く楽しいと思う。知らない人でもすぐに何が起きているか理解できるはずだ。クライミングを見ていて楽しいスポーツに変えられたと思っているよ。
Red Bull Creepersを制したクリス・シャーマ
Red Bull Creepersを制したクリス・シャーマ© Sebas Romero/Red Bull Content Pool
クライミングシーンの成長についてはどう感じていますか?
クライミングは良い時代を迎えていると思う。メジャーなスポーツとして認知されるところまで来ていると思うよ。クライミングが人間に良い影響を与えていると僕は信じているし、今のシーンの状況、そしてそこに自分が関われていることは嬉しい限りだね。業界も成長しているし、彼らがサポートするプロアスリートの数も増えている。だから成長は続くと思うよ。
Psicobloc Mastersの他の計画はありますか?
ヨーロッパでプロジェクトに取り組むつもりだよ。スペインに高難易度のルートがあるんだ。そこに取り組むつもりさ。かなり挑戦的なプロジェクトになると思う。あとはジムやクライミングのプロジェクトが複数あるし、ハリウッド映画のクライミングのスタントマンもこなす予定だよ。
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