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【Red Bull Bike Express】:走行中の列車の上でMTBスロープスタイル!

世界初!! ポーランド人MTBライダーのダビド・ゴジェックが走行中の列車の上でのライディング&トリックメイクに挑んだビッグプロジェクトを動画とインタビューでチェック!
Written by Maciej Świerz
読み終わるまで:8分Published on
走行中の列車の上でバイクに乗ることを想像してみよう。奇天烈なアイディアに思えるかもしれない。しかし、ダビド・ゴジェックにとっては、バイクの限界をプッシュするいつもの1日に過ぎなかった。
今回の独占インタビューで、このポーランド人BMX / MTBフリースタイルライダーは、このアイディアが生まれた経緯や実際の挑戦で一番難しかった部分などについて語ってくれている。ゴジェックのキャリア最高難度プロジェクトとなった【Red Bull Bike Express】の内側を早速チェック!
【Red Bull Express】を成功させたダビド・ゴジェック

【Red Bull Express】を成功させたダビド・ゴジェック

© Bartek Woliński

走行中の列車の上でMTBのライディングというアイディアは、絶対に不可能だと思っていましたが、最高の形で可能にしました!

− まるでビデオゲームから抜き取ったような動画ですが、走行中の列車に設置したトラックでのバイクライドは本当に可能なのでしょうか?

ダビド・ゴジェック: 可能ですね。興味深いことに、かなり上手くいきましたが、想像していただけるように、通常のスロープスタイルトラックでのライディングよりかなりリスキーです。自分専用の列車と運転手、トラックを用意できたとしても、真似はしないでください。

「よい子は真似しないでください!」

「よい子は真似しないでください!」

© Bartek Woliński

− そのようなライディングを成功させた世界で唯一の人物になった気分はいかがですか?

特別な気分ですね。ライディング中も特別な感覚でした。というのも、私の周囲は何も動いていなかったからです。動いていたのは私の下に置かれていたトラックだけでした。ですので、頭の中で上手く処理できず、慣れていく必要がありました。不自然でしたし、驚かされる瞬間がいくつもありました。

最初のラン2本はかなり動揺しましたね。現実とは思えませんでした。また、列車が走行していたレールが完全に平坦ではなく、上下に少し揺れていました。このような要因によって、トラック上では説明しがたい感覚を得ることになりました。序盤は船酔いと飛行機酔い、高山病を組み合わせたような症状になりましたね。

− 今回のアイディアが生まれたきっかけを教えてください。

正直に言いますと、最初はあまり乗り気ではありませんでした。イメージできなかったからです。長年に渡り、シモン(兄)と私は不可能だろうと思っていました。ライディングが可能だとしても、満足できるトリックメイクはできないだろうと考えていました。さらに、可能であることが判明したあとも、自分たちがイメージするようなビジュアルになるかどうかという疑念がありました。

ですが、最後はプロジェクト全体が私たちの想像を遙かに上回りました。トラックの完成度、私のライディング、準備作業を含むすべてが、予想していたよりも断然良かったです!

出発進行!!

出発進行!!

© Bartek Woliński

トラックの完成度、ライディング、準備… すべてが想像よりも遙かに上手くいきました!

− 今回の動画は、宙づりになっているあなたの下を列車が通過しているようにも見えます。通常のライディングの正反対ですよね。

その通りです。今回のプロジェクトはまさにそのような感じでした。今回のライディングで初めて “後方へ移動” したのは興味深かったですね。今回のライディングで初めて “後方へ移動” したのは興味深かったですね。想定していたよりも高くなったジャンプもありました。

走行中の列車の影響で、列車の横に立っていた人には、私が飛び出したランプよりも後ろに着地しているように見えるときもありました。混乱しましたが、動画を視聴すれば分かると思います。

− 学生時代は物理が得意でしたか? あなたが宙づりになるためにはどのような原理や法則が適用されるのか理解していましたか?

私は物理や数学については特に調べませんでしたが、今回のプロジェクトに関わってくれたスタッフたちは、自分たちが何を相手にしているのか理解していました。通常のライディングの正反対でしたので、かなりクレイジーな経験になりました。私が “宙づり” になり、トラックがその下を通過するわけですからね。

その中で、私は面白いことに気が付きました。空気抵抗がなかったのです。理論的には、空気抵抗がなければ難易度は下がるわけですが、実際はその真逆でした。通常では、空気抵抗によって空気のトンネルが生まれることで、私はトラックから外れることなく、左右に身体を移動させずにライディングできるのです。

幸運なことに、今回の本番では、向かい風だったので空気抵抗を得ることができたため、通常のライディングに近い感覚が得られました。リハーサルでは風が弱かったり、風向きが異なったりしたので、トリックメイクが難しかったです。

以上を踏まえるとよくやったと思います。普段は空気抵抗について文句を言っていますが、実際はこれがないとジャンプやトリックメイクができないことを学びました。

スーパーマンで車両を跳び越えるゴジェック

スーパーマンで車両を跳び越えるゴジェック

© Bartek Woliński

− 一番難しかったパートを教えてください。

一番難しかったのは、ランに含まれているすべてのトリックをパーフェクトにメイクすることでしたね。編集なしのノーカット版を公開したいと考えていたので、ミスはできませんでした。トラックの幅が狭く、少し揺れていたので、列車から落ちる心配もありました。落ちていたら大変なことになったと思います。

− そのような状況でのライディングだけでも難しいですが、そこにトリックメイクも加えようと思ったのはなぜですか?

最高のトリックを動画に入れ込みたかったからです。列車の上でのライディングだけでもクールですが、十分ではありません。ですので、ランに組み込めるトリックについて時間をかけて考えました。

動画の最後にバックフリップをメイクしていますが、それならその前にフロントフリップを入れようと思いました。その方が見栄えが良いですからね。また、同時にダブルテールウィップも思いつきました。派手なトリックを入れたいと思っていましたし、トラックの幅が狭かったので、ストレート系のトリックが最適だったからです。

サイドローテーション系は難しいので、360を組み合わせることは諦めました。危険度を高めることなくライディングが面白く、バラエティに富むようにトリックを選びました。

世界初を成功させて満足げな表情を見せるゴジェック

世界初を成功させて満足げな表情を見せるゴジェック

© Bartek Woliński

最高のトリックを含めたいと思っていました。列車の上のライディングだけでもクールですが、十分ではありません

− 走行中の列車は世界初のトリックメイクに理想的な環境だったのでしょうか? 動画の最後にフラットからバックフリップをメイクして、フラットでのランディングに成功しています。

列車が走行中だったので、あそこでメイクしなければチャンスを逃してしまうと思ったので、メイクしただけです。

− なるほど、そういうことだったのですね。

真面目な話をしますと、あのトリックは昔からメイクしたいと思っていました。MTBでは前例がなかったので、トライしたいと思ったのです。

本番の数日前から準備を始めましたが、想像していたよりも難しいことが分かりました。実際に列車を見てみると、ステア(階段)が思っていたよりも高かったのです。もちろん、サイズは事前に確認していましたが、実物がイメージとは異なるときは良くありますよね。

フラットでのランディングは衝撃がかなり大きかったので、すべての関節が痛みましたが、誰もメイクしたことがないトリックをメイクして、プロジェクトに味付けをしたいと思っていました。

自分ではなくトラックが移動することが特別な感覚を生み出す

自分ではなくトラックが移動することが特別な感覚を生み出す

© Tomek Ustupski

タイミングをパーフェクトに合わせる必要があった

タイミングをパーフェクトに合わせる必要があった

© Bartek Woliński

− 特に苦労したフィーチャーまたはトリックがあれば教えてください。

なかったです。フィーチャーの難易度はどれも同じで、ビルドのクオリティは高かったですね。特に驚くことはありませんでした。スピード不足でペダリングを強いられるシーンはいくつかありましたが、ペダリングも難しくなかったです。そもそもバイクにペダリングは付きものですしね。

− プロジェクトの準備にはどのくらいの時間がかかりましたか?

アイディアが生まれてから実行に移すまで約1年半かかりました。本番の1年前にリハーサルをして、リハーサルのあとはトラックのデザインと準備に費やしました。トラックはポーランド最高のトラックデザイナーたちが3週間朝から晩まで取り組んだ結果です。彼らは私が快適に感じながら自信を持ってライディングできるようにハードワークをしてくれました。

あとは、本番前の数日を使って練習をしました。かなり複雑なプロジェクトだったからです。列車を借りて、その上にスロープスタイルトラックを建造して、線路の一部を通行止めにするなんて何日もできませんからね!

− バイクには特別なチューニングをしたのでしょうか? 移動しているトラックでトリックメイクできるように特別仕様のバイクを使用したのでしょうか?

今回のバイクは、コンペで使うものと同じです。合板に最適なタイヤを選択しました。あとのコンポーネントはあらゆるコンディションで実証済みのものを選びました。カラーリングだけ列車に合わせた特別なものになっています。

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ダビド・ゴジェック

洗練されたトリックとコンボでBMXとMTBを股にかけて活躍するポーランド人トップライダー

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