このような坂を累積標高8,848mに達するまで登り下りを続ける
© Sir Guy Litespeed
サイクリング
ロードバイク:エベレスティング基礎知識
坂バカ必読! 累積標高がエベレストと同じ8,848mに達するまでバイクで坂を登り下りするワールドワイドチャレンジの基本を学ぼう!
Written by Lucy Grewcock
読み終わるまで:8分Updated on
エベレスティング(everesting)の基本コンセプトは実にシンプルで、バイクに乗り、累積標高がエベレストと同じ8,848mに達するまで坂の登り下りを繰り返すだけだ。
しかし、現実を言えば、これはサイクリストの肉体と精神を限界まで追い込む無慈悲な耐久バトルで、このチャレンジに成功したサイクリストは、HELLS 500クラブの殿堂入りメンバーという栄誉が得られる。
今回は、エベレスティングの内容、参加方法、サイクリストたちが直面するチャレンジの大きさなどについて、英国で最も豊富なエベレスティング経験を有するひとりと自認するサー・ガイ・ライトスピード(『アーサー王物語』の円卓の騎士の名前をもじって彼のサイクリスト仲間がつけたニックネーム)に話を聞いた。
エベレスティングは、気軽にトライできる最大のバイクチャレンジかもしれない!

エベレスティングの歴史

このような坂を累積標高8,848mに達するまで登り下りを続ける
このような坂を累積標高8,848mに達するまで登り下りを続ける© Sir Guy Litespeed
1994年、ジョージ・マロリー(1920年代に英国エベレスト遠征隊に参加した同名登山家の実孫)がオーストラリアのドナ・ブアン山をバイクで10回登頂して、累積標高8,848mを記録すると、2014年にメルボルンを拠点にしていたサイクリストグループ、HELLS 500がこのマロリーの記録に触発されて公式チャレンジを設定した。
その後、HELLS 500の創始者アンディ・ヴァン・ベルゲンが、同じ志を持つ “エベレスター” たちの交流を促し、ヒルクライムの公式ルールを制定し、成功者をホール・オブ・フェイム(殿堂入り)メンバーとして表彰することを目的に、公式ウェブサイトeveresting.ccを立ち上げた。
サー・ガイ・ライトスピードのようなエベレスティングマニアたちは、立ち上げ当初から挑戦を続けている。
「僕が初めてエベレスティングの存在を知ったのは2014年で、初挑戦は失敗に終わった。これまで僕はエベレスティングを5回達成しているけれど、そのうち4回は英国で達成している。おそらく、僕は英国で最も多くエベレスティングを達成した人物だと思う」

エベレスティングに挑戦するには

同じルートの1スティントで累積標高8,848mを記録するというルールが守られている限り、世界のどの山(丘)でもエベレスティングは可能だ。1スティントは、休憩は認めるが、睡眠は認めないことを意味する。
一般的なアテンプトにかかる所要時間は24時間前後だが、時間を問わずチャレンジを完遂するだけで大きな功績と言える。初挑戦時は安全にフィニッシュすることだけを考えるべきだ。
エベレスティングに成功したあとは、その記録をeveresting.ccにアップロードできる。それが認められれば、ホール・オブ・フェイムに名を連ねることになり、その証明として誰もが羨むグレーストライプのジャージが進呈される。
まだエベレスティングが達成されていない山は無数に存在するため、今こそエベレスティングに挑戦するべきだが、そのためには公式ルールに従う必要がある。
ドリンクに電解質を入れ過ぎてしまい、疲労困憊になったり、泣き出したり幻覚症状を起こしたり、嘔吐したりするライダーがいる
サー・ガイ・ライトスピード

エベレスティングのルール

A cyclist climbing a road late into an Everest attempt.
Typical Everesting attempts take around 24 hours© Everesting.CC
正式な記録として認められるためには、以下の公式ルールに従う必要がある:
  • 累積標高8,848m(29,029フィート)を記録する
  • ひとつの山(丘)の同じルートを使用する
  • 下りも登りと同じルートを使用する
  • 途中で睡眠を取ってはならない — 1スティントで完遂すること
  • 食事・水分補給・充電の休憩時間は総合タイムに含まれる
  • 登りは毎回必ず頂上へ到達すること
  • 安全に下り、無事に自宅へ戻ること
  • タイムリミットはなし
ひとつでも違反すれば失格となるため、ルールブックは事前に熟読しておこう。

エベレスティングの難易度は?

自分のアテンプトを記録するプログラムも用意されている
自分のアテンプトを記録するプログラムも用意されている© Sir Guy Litespeed
「間違いなく、エベレスティングはすごくハードだ」とガイは注意を促す。
「フィジカルの要求度が高く、メンタルもチャレンジングだ。大半のサイクリストにとっては、20〜24時間が必要になる。6,000m地点までは脚力でクリアできるけれど、残りの2,848mはメンタルが必要になる。全身が『もうやめてくれ』と悲鳴を上げ始めるからさ!」
「アテンプトを事前申告する必要はないから、エベレスティングの成功者数と失敗者数の比率を知ることはできない。でも、失敗率はかなり高いと思う。僕でも毎回苦労している。これまで複数回成功しているけれど、エベレスティングに挑む直前は毎回恐怖を感じているよ」
エベレスティングは誰でも自由に参加できるが、成功確率を高めるためにはプランを立てる必要がある。
「僕のエベレスティング初挑戦は、ロジスティック面のプラン不足やルートの選定ミス、ロケーションの知識不足が原因で失敗に終わった。向かい風に阻まれてしまったんだ」とガイは自身の経験を振り返っている。

エベレスティングの注意点

携行キットは入念に選択すること
携行キットは入念に選択すること© Everesting.CC
  • キット:携行するキットは、ヒルクライム中心のロングライドで何回も使ってきたものを選ぼう。使ったことがない、または機能が分かっていないバイク、ウェア、ライト、サイクルコンピューターは選ばないようにしたい
  • ベースキャンプ:ベースキャンプは、補給所、非難場所、キッチン、ワークショップ、クローゼット、病院などあらゆる機能を兼ねることになる。ワゴン車などの自動車、あるいはテントを使う場合は、設置場所を入念に考えて、自分とバイクの調子を維持するために必要なアイテムを揃えておこう
  • 栄養・水分補給:ドリンクに電解質を入れ過ぎてしまい、疲労困憊になったり、泣き出したり、幻覚症状を起こしたり、嘔吐したりする人がいる。事前にテストした補給戦略を用意する必要がある
  • 安全確保:エベレスティングでは、限界ギリギリのライディングと深刻な睡眠不足に対応しなければならない。夜間は危険度が高まるので、ライトや安全装備、緊急連絡先、携帯電話の受信状況などについて考慮しておこう
  • 電子機器の充電:約24時間ライディングを続けるため、GPSデバイスやライト、その他電子機器が問題になる可能性がある。ここでも「入念に戦略を立てて、事前に試しておく」というガイのマントラに従おう。
  • ゲームプラン:ガイが勧めるのは、アテンプトを複数に分割するアプローチだ。「8,848mは過酷な距離だけど、1,000mを8回と考えれば取り組みやすくなる。同じように、100周は途方もなく思えるけど、10周を10回と考えればなんとなくできそうな気がする。セット間で自分にご褒美をあげたり、友人に参加してもらったり、オーディオブックを聴いたりするのも効果的だ」
  • 挑戦するタイミング:英国の場合、冬などのかなり難しい気候でもエベレスティングが達成されているんだ。僕は日照時間が長い方が好きだから、5月から7月の間が理想的だ。この季節の英国は気温も低過ぎず、雨や風も少ない

ロケーションの選び方

英国にはエベレスティングに適した山や丘がふんだんに存在する
英国にはエベレスティングに適した山や丘がふんだんに存在する© Sir Guy Litespeed
「エベレスティングの素晴らしさは、どの山や丘でチャレンジしても良いところにある。だから、天候さえ良ければどこでもエベレスティングにパーフェクトと言えるんだ」とガイは語り、初挑戦は地元に近い山や丘を選ぶよう勧めている。
地元はプランを立てやすく、練習やロジスティック管理も楽で、土地に明るいことがアドバンテージになる。
ガイは次のように付け加える。
「最も大事なのは、実力に合ったロケーションを選ぶことだ。大半のサイクリストには、勾配が6%〜8%で、一定の登坂が2〜3km続く場所が良いだろうね。勾配がカギだ。緩やかすぎると走行距離が伸びてしまう。逆にきついと距離は短くなる一方、体力を消耗してしまう」
エベレスティングはメンタルゲームの側面も非常に強いため、メンタルに与える影響を踏まえて選ぶことも重要だ。「個人的には、本物のエベレストや、ウェールズのストゥワラン・ダムのような美しくて特別な山でトライしてみたいね」とガイは語っている。

エベレスティング力を判断する方法

エベレスティングに向けてトレーニングを重ね、計画を立て、あらゆる行程に習熟していく中で、「挑戦の準備が整った」と判断するにはどうしたら良いのだろうか? ガイはその基準を次のように提案している。
「先に述べた通り、エベレスティングには累積標高6,000mまで登れるフィジカルと、そこから先をクリアできるメンタルが必要だ」
「つまり、第一条件として、距離250km累積標高6,000m10〜12時間で "快適に" 走れる必要がある。これが可能なら、エベレスティングを完遂できるだろう。これが僕の判断基準だね」
ガイのウェブサイトには、これまでの彼のエベレスティングやその他の壮大なサイクリングチャレンジがまとめられている他、エベレスティング初心者のための専門的アドバイスも掲載されている。
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