Sebastian Vettel and Kimi Raikkonen drive during the 2012 Bahrain Grand Prix.
© Clive Mason/Getty Images
Motoring

F1ドライバーが語る“最難関コーナー”ベスト10!

F1ドライバーたちも手強さを認める世界各地の難関コーナーを10個集めて、架空の超難関サーキットを作り上げてみた!
Written by Eddy Lawrence
読み終わるまで:10分Updated on
「ほぼ全開で飛び込めるかどうかだ」、「いやいや、トリッキーな駆け引きが全てだよ」 − 全てのレースファンは “スリリングなコーナー” についてそれぞれ独自の意見を持っている。
しかし、世の中には、長年F1を戦ってきた歴戦のドライバーでさえも恐怖で震え上がらせる(少なくとも神経質にさせる)コーナーが存在する。
現役 / 元F1ドライバーたちのコメントを引用しながら、彼らでさえも恐怖させる世界10カ所の “最恐コーナー” を紹介しよう。
(編注:以下のインフォグラフィック上の各番号にマウスオーバーすると、サーキット&コーナー名と英文での説明が表示されます)
01

1. ターン11(バーレーン)

この悪名高いオーバーテイク・スポットには非常に独特なチャレンジが潜んでいる。
ギアを4速に落として回るこの左コーナーではエントリーと出口できつい減速Gがかかるが、ドライバーは繊細なブレーキタッチとアクセル操作を維持しながらマシンをコントロールし、上り坂になったスローな出口区間でのスピードロスを抑えていかなければならない。
マーカス・エリクソン(元Sauber):
「このサーキットには独特の難しさがあって、周辺の砂もその要素のひとつだ。風向きや天候によっては、砂が路面コンディションを大きく左右することもある」
「バックストレートの先にあるターン11は非常にテクニカルな左コーナーで、シーズン中でも屈指の難関だ。ターン11ではいくらかオーバーテイクのチャンスもあるので、個人的に楽しみにしている」
2018年からF1カレンダーに復帰するポールリカール

2018年からF1カレンダーに復帰するポールリカール

© Florent Gooden/DPPI

02

2. シーニュ(ポールリカール)

長きに渡るブランクを経て、あの超高速コーナーが2018年のF1カレンダーに戻ってくる。シーニュはおそらく世界最速のコーナーで、現行F1マシンなら340km/hもの高速で進入することが予想されている。
コース幅が広く、緩やかに右へカーブしていくこのコーナーはオーバーテイクのビッグチャンスを生むが、シーニュ直後にはシビアなブレーキングゾーンが待ち受けているため、勇気あるドライバーのみがここでのオーバーテイクに成功するだろう。
ロマン・グロージャン(元Haas):
「メインストレートの中間に追加されたシケインがオーバーテイクをしやすくするはずだ。その直後にある非常に大きなブレーキングゾーンに向けて、全開で通過することになる」
「直前のシケインでのブレーキング時にディフェンスラインを選べば、そのあとの立ち上がりが苦しくなるから、後続のドライバーが全速で飛び込めばもうひとつのオーバーテイクのチャンスが生まれる。2台が並んでシーニュに飛び込むシーンもあるかもしれないね!」
03

3. オー・ルージュ(スパ・フランコルシャン)

最大斜度18%を誇るこの世界的に有名な左・右・左の複合コーナーは、ドライバー視点では頂点がブラインドになっているため、クレストを越えてからでないと自分のラインが確認できない。
フェルナンド・アロンソ(Alpine):
「プラクティス、予選、レースを問わず、ドライバーはオー・ルージュへ進入するたびに非常に特別な感覚を味わう。F1の中でオー・ルージュと比較できるコーナーはない。坂を駆け上がる間は強烈な縦方向のGが身体にかかるのに、丘の頂点でそれが急に抜けるのは奇妙な感覚だ」
「丘の頂点の先がブラインドで見えないので、オー・ルージュをクリアするには直感を頼ることになる。しかも、ラップタイムに大きく影響するセクションなので、毎回正確にクリアする必要がある」
シルバーストンでバトルを展開する2台のRed Bull

シルバーストンでバトルを展開する2台のRed Bull

© Getty Images / Red Bull Content Pool

04

4. コプス(シルバーストン)

エントリー側がブラインドで、また最低でも7速・280km/hもの高速でエイペックスをかすめることになるこの右コーナーは、マシンのダウンフォース量が増加した2017シーズン以降、さらなる高速化を遂げている。さしものルイス・ハミルトンもコプスは注意深く対応していかなければならないようだ。
ルイス・ハミルトン(Mercedes):
「コプスはめちゃくちゃ高速になるだろうね。過去(2016シーズン以前)のレギュレーションに比べてシルバーストンがどれだけ高速化するかは誰にも分からない」
「コプスは2016シーズンでもすでに強烈だった。肉体的に厳しいものになる。コプスの体感Gフォースは最低でも1Gは上がるだろうし、下手すれば2G上がるかもね。かなり楽しくなるんじゃないかな」
(編注:このコメントは2017シーズンのイギリスGP以前のもの)
セルジオ・ペレス(Red Bull Racing):
「僕が走るのをすごく楽しみにしているサーキットがあるとしたら、それはシルバーストンさ。コプスを全開でクリアできるかどうかが楽しみで仕方がない。レースウィークエンドで数台のマシンがコプスを全開で抜けるかもしれないな。どうなるか楽しみだ」
セパン・インターナショナル・サーキット

セパン・インターナショナル・サーキット

© Force India

05

5. ターン15(セパン)

マレーシアGP名物となっている2本の長いストレートを繋ぐこのタイトなヘアピンは、2016年のコース改修によって難易度が高まった。
出口へ向かうにつれて外側のバンクがきつくなっていくため、このコーナーはオーバーテイクの駆け引きとタイム短縮の両方でトリッキーだ。
一筋縄ではいかないキャンバー変化が存在するため、速いタイムを狙うドライバーはアウト側のラインを選ぶ必要があるが、オーバーテイクの機会を窺うにはオーソドックスなイン側のラインを選ぶ必要がある。
ダニエル・リカルド(McLaren):
「セパンのターン15はシーズンで最も魅力的なコーナではないけれど、チャレンジングというのは評価できるポイントだね」
「イン側のラインを選ぶと、逆バンクになっているせいでアンダーステア気味になってしまうけれど、アウト側のラインだと最短距離を走れなくなってしまう。必ずしも楽しいコーナーではないし、路面が剥離するとかなりグリップに苦しむ」
ジョリオン・パーマー(元Renault):
「(改修によって)面白さが少し増したという意味では、主催者は悪くない仕事をしたね。でも、オフキャンバーになっているから、ブレーキングが難しくて常にフラストレーションが溜まる。ブレーキのロックアップや出口でのホイールスピンなどのミスが簡単に起きてしまう」
「苛立ちを感じるコーナーだけれど、テクニカルな視点から見れば興味深い。このコーナー独特の特徴のおかげで、何度走ってもパーフェクトにクリアできたという感覚は得られない。やや厄介なコーナーだからね」
06

6. マゴッツ&ベケッツ(シルバーストン)

ドライバーへの肉体的な負荷とテクニカルな要求度が最も高い複合コーナーとして広く知られているマゴッツ&ベケッツセクションは高速左コーナーと高速右カーブ、2速落として旋回するもうひとつの右カーブで構成されている。
ジョリオン・パーマー(元Renault):
「マゴッツ&ベケッツはほぼ全開のままクリアするひと繋がりのコーナーと言えるね。最後に待ち構える右コーナーはさすがに全開にはできないけれど、出口へ向けて正しいラインをトレースするためには妥協するしかない」
カタルーニャのドライバーとマシンへの要求度の高さは年間トップレベル

カタルーニャのドライバーとマシンへの要求度の高さは年間トップレベル

© David Ramos/Getty Images) // Getty Images / Red Bull Content Pool

07

7. カンプサ(カタルーニャ)

ジェットコースターさながらのF1サーキットでは、気絶するほどの強烈なGフォースがつきものだ。
6速全開でクリアする右コーナー、カンプサは、完全なブラインド状態でエントリーしたあと、急峻な上り坂のセクションを抜けたあと同じく急な下り坂の出口へ向かうレイアウトになっているので、ドライバーが脱出ラインを見誤れば、簡単にアウト側の人工芝へはみ出してしまう。
マーク・ウェバー(元Red Bull Racing):
「まるで身体が押しつぶされそうなほどのGフォースがかかる。高速コーナーの旋回中、ドライバーには横方向のGがかかり、肋骨や尻、首などがシートの端まで押し付けられる。ドライバーはこの感覚に慣れなきゃいけない。負荷は徐々に強くなり、コーナーの途中で頂点に達する」
「一方、ブレーキペダルを強く踏むと、Gフォースレベルが急激にかかったり抜けたりする。コーナーを旋回する時とは全く異なる感覚だ。ハードブレーキング時のGフォースのかかり方はかなり急激だけれど、抜ける時もまた急激なんだ」
08

8. ターン8(イスタンブール・パーク)

全長640mを誇るこの右コーナーは、開催地だった当時はF1カレンダー最長コーナーとして知られていた。
イスタンブールのターン8は合計4つのエイペックスを備えており、最低速度のエイペックスでも260km/h以上で旋回する。ドライバーの身体には最大4.5GのGフォースがかかり、その強烈な負荷はロケット発射時のGフォースも凌ぐ。
これほどのGフォースが人間にかかると、脳の血液が不足し、視界の色調が失われる。グレイアウトと呼ばれるこの現象は、モータースポーツやRed Bull Air Raceを戦うアスリートにはおなじみだ。
セバスチャン・ベッテル(Aston Martin):
「ターン8は素晴らしいコーナーさ。僕たちは毎年全開でクリアしようとトライしていた。高速だけどバンプが多くて、マシンがどこに飛んでいくのか分からない。意を決して飛び込んで、ベストラインをトレースできるように祈るのさ」
ベルギーGP伝統の舞台、スパ・フランコルシャン

ベルギーGP伝統の舞台、スパ・フランコルシャン

© Dean Mouhtaropoulos/Getty Images

09

9. プーオン(スパ・フランコルシャン)

長きに渡りF1ファンのお気に入りのひとつに数えられているプーオンは、ドライバーにパーフェクトなライントレースを要求する無慈悲なコーナーだ。
このダブルエイペックスの左ロングコーナーは、高難度の下り坂のエントリーセクションから始まる。2つのエイペックスを確実に押さえ、スロットルを全開にしながら爽快な感覚が得られる出口へ向けてマシンを正しいラインに乗せていく。
ルイス・ハミルトン(Mercedes):
「グリップレベルの限界を探りながら繊細にスロットルを操作しつつ、ステアリング抵抗によるスピード損失をできる限り抑える必要があるプーオンは素晴らしいコーナーさ。上手くまとめられた時は最高の気分が得られる」
「本当の限界を実感できるセクションだし、F1マシンでここを走る気分は格別さ。毎年ここで走るのを楽しみにしているよ」
鈴鹿は世界的なモータースポーツ聖地のひとつ

鈴鹿は世界的なモータースポーツ聖地のひとつ

© Getty Images/Clive Rose

10

10. 130R(鈴鹿サーキット)

F1屈指の難関サーキットと言われ、数々のレーシングゲームにもフィーチャーされてきた鈴鹿の中で特にファンの注目を集めているコーナーが130Rだ。
130Rは曲率半径130mという事実に由来しており、このダブルエイペックスの左コーナーはモータースポーツ界最速・最恐コーナーのひとつとして知られている。
F1では約305km/hのエントリースピードで進入するため、ドライバーの体には3.5Gの負荷がかかる。チャンピオンシップの行方を左右する数々の名勝負の舞台となってきた鈴鹿を象徴する名所だ。
ロバート・クビサ(元Alfa Romeo):
「130Rはとにかく最高さ。7速全開でステアリングを切り込んでいくから、ドライバーとマシンは完全に限界へ達する。上手くクリアできれば、本当に素晴らしい気分が得られる」
セバスチャン・ベッテル(Aston Martin):
「決して楽に抜けられない。エキサイティングなコーナーだけど、以前より楽にクリアできなくなっている」

関連コンテンツ

マックス・フェルスタッペン

F1最年少優勝記録を含むいくつもの記録更新を続けながらドライバーズタイトル4連覇を達成したオランダ人ドライバー

オランダオランダ
プロフィールを見る