F1
フェルナンド・アロンソの “笑える” 名場面 ベスト7！
本人はいたってシリアスなのになぜか笑ってしまう。フェルナンド・アロンソの悲哀とユーモアを象徴する7つの場面を紹介。
2001シーズンにF1デビューして以来、フェルナンド・アロンソはその妥協なき態度と無慈悲なレーススタイルで若手ドライバーの急先鋒として扱われてきたが、時としてシリアスすぎると言われることもあった。
しかし、不振のFerrariで王座に見放され続けてきた数年間、そしてさらに深刻な不振にあえぐMcLarenで数年間を過ごしてきたことで、フェルナンドの内面は軟化してきた。リラックスしたベテランF1ドライバーへと変化してきているのだ。狼のように鋭敏でスマートなレーススタイルはもちろん今も変わらず健在だが、その一方でピットからの無線指示を鵜呑みにしない一種のわがままさも感じられる現在のフェルナンドは、最もファンを楽しませてくれる存在のひとりになっている。
これまで輝かしいF1キャリアを築いてきた彼のキャリア終盤が今の低迷のまま終わってしまうとしたら残念だが、このMcLaren Hondaのエースは近年のF1界で最も「笑える」名場面をいくつか生み出してきた。今回は、ファンの心を鷲づかみにしたフェルナンド・アロンソの名（迷）場面を以下に紹介しよう。
1.「報いだ」（2017シーズン イタリアGP）
9月初旬に開催されたイタリアGP決勝、Renaultのジョリオン・パーマーとポジション争いを展開していたアロンソは、シケインをショートカットしてゲインを得たパーマーに対してスチュワードがたった5秒加算のペナルティしか科さなかったことに憤慨。その後、無線を通じてパーマーがレースをリタイアしたことを伝えられたアロンソだったが、彼の口をついて出たのは「報いだ（Karma）」という一言だった。短くも辛辣な表現だ。
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2.「GP2エンジン！」（2015シーズン 日本GP）
McLarenへ移籍してからアロンソの中でずっとくすぶり続けてきた不満が、シーズン最低のチームパフォーマンスとなった日本GPでついに爆発した。Hondaのホームレースでポイント圏外のレースを強いられる体たらくに、アロンソは無線を通じて「みっともない。すごく恥ずかしいよ」と不満を伝えると、「GP2エンジンだよ、GP2！」と吐き捨て、最後には言葉にならない叫び声で悔しさを表現した。当時のMcLarenのボス、ロン・デニスもさすがにこれは容認できないと思ったのか、レース後のインタビューで「（アロンソのレース中の発言は）私のチームのドライバーに求めるプロフェッショナリズムに沿うものではなかった」とコメントしてアロンソに釘を刺した。
2015年日本GP：Sauberに先行されアロンソの不満が爆発
© LAT Images
3. デッキチェア（2015シーズン ブラジルGP）
予選中に壊れるようなマシンを用意した不甲斐ないチームに中指を立てるよりも効果的に怒りを伝える方法とは、マシンを降りてコース脇のデッキチェアに寝そべり、日光浴を決め込むことだ。アロンソが2015シーズンのインテルラゴスでの予選中に見せた行動は、「（本来なら予選アタックしているはずの自分が）なぜこんなところで暇つぶししているんだ？」というメッセージを極めて明確に伝え、瞬く間にインターネットミーム化した。#PlacesAlonsoWouldRatherBeというハッシュタグが流行したことを覚えているだろうか？
4.「まるでアマチュアだ」（2015シーズン カナダGP）
2015シーズンのカナダGPがスタートしてからわずか24周後に燃費セーブを無線で指示されたアロンソは、あたかもダーツで射抜かれたかのような苦しい口調で「いやだ。絶対にいやだ」と返答した。それでも引き下がらずに燃費セーブを懇願するエンジニアに対して、アロンソは「（燃費以前にマシンは）すでに大きな問題を抱えていて、こんな状態でドライビングしていてはまるでアマチュアだ。だから今は自分のポジションを守ることに集中し、燃費のことはあとで考える」と突き放した。結局アロンソはこのレースをリタイアし、第5戦スペイン・第6戦モナコに続く3戦連続リタイアを記録した。
5.「君のユーモアセンスは好きだよ」（2015シーズン ロシアGP）
2015シーズンのロシアGP決勝中盤、無線を通じて「君はWilliamsのフェリペ・マッサを相手に最終順位を争うことになる」と伝えられたアロンソはそのメッセージを否定。彼は「君のユーモアセンスは好きだよ」と返してエンジニアとの通話を打ち切った（このシーズン、Williamsの平均レースペースは常にMcLarenのそれをはるかに上回っていた）。彼は結果的にマッサに順位を奪われたが、ポイント獲得まであと一歩の11位でフィニッシュし、苦難の続くシーズンの中でわずかながらの励みを得た。「これから先のシーズン、こんな日曜日がもっと過ごせるといいね」とアロンソはレース後に無線でチームに伝えたが、残念ながら、彼とMcLaren Hondaの苦難はそのあとも続いた。
2015年ロシアGP：「君のユーモアセンスは好きだよ」
© LAT Images
6.「あとは君がやってくれ」（2017シーズン ロシアGP）
レースを戦っている最中にマシンの信頼性に起因するトラブルと格闘するならまだしも、フォーメーションラップの時点でエンジン温度が許容レベルを超え、レーススタートさえできない時の苛立ちは計り知れない。これこそまさに2017シーズンのロシアGPでアロンソが体験したことで、彼のMCL32はグリッドに辿り着く前に停止した。エンジニアから「（リセットボタンを）3回押してくれ、頼む」と伝えられたアロンソは愛想を尽かした様子でこう答えた。「もうやった。あとは君がやってくれ」
2017年ロシアGP：「あとは君がやってくれ」
© LAT
7. カメラクルーに転職（2016シーズン ブラジルGP）
2016シーズンのブラジルGPは前シーズンのデジャヴのような展開になり、アロンソはまたフリープラクティス中にコースサイドにマシンを停めた。しかし、アロンソは12ヶ月前に楽しんだデッキチェアでの日光浴よりも積極的な行動に出た。セナSに配置されていたFOMの中継用リモートカメラを拝借し、そのセクションを通過するライバルたちの姿を撮影しようと試みたのだ。彼のカメラの腕は決して褒められたものではなかったが、その行動がチームに対して示したメッセージは明確だった。「今の僕はカメラを持っている方が貢献できる」というわけだ。