それなりのサッカー選手になりたければ、まずスタミナをつける必要がある。
なぜなら、プロサッカー選手は1試合平均で約10kmを走っているからだ。しかし、ただ肺活量を増やせばOKというわけではない。モダンサッカーは飛躍的に進化しており、これまで以上に大きな肉体と大きなパワー、大きな爆発力も求められるようになってきている。
そこで今回は、モダンサッカーに対応できる肉体を手に入れるためのヒントを紹介しよう。
1:スタミナをつける
まずランニングできるトレッドミルやオープンスペースを用意しよう。インターバルトレーニングは伝統的なスタミナ増強メソッドではない。プレミアリーグで活躍するトップレベルの選手たちはインターバルトレーニングを取り入れて、最速のハイテンポダッシュとジョギングを組み合わせることで、VO2 Max(最大酸素摂取量:運動中に体内に取り込まれる酸素の最大量)を増加させているのだ。VO2 Maxが増えれば、その分だけスタミナがつき、長時間走り続けることができるようになる。
トレーニング:ジョギング4分・ハイテンポダッシュ4分を1セットとし、これを4セット繰り返す。ハイテンポダッシュにはコーンを置いたフットワークドリルも組み込もう。
2:ダッシュスピードを高める
これまで、スピードはサイドの選手だけに求められるものだった。しかし、今はあらゆるポジションの選手にスピードが求められるようになっている。また、スピードはキャリア終盤で特に重要になってくる。これはリオ・ファーディナンドをはじめとする偉大な選手も認めるところだ。
ダッシュのトップスピードを高めておくことは、ライバルたちから頭ひとつ抜けることに繋がるので、スレッドプル(ソリを牽くダッシュ)とパラシュートスプリントを取り入れて、脚の筋力を高める努力をしてみよう。
負荷を大きくした状態で等尺性収縮運動と伸張性収縮運動を行い、ハムストリングと大腿四頭筋の筋力をつければ、あっという間にスピードスターになれるだろう。
トレーニング:50mのスレッドプル(またはバンジーコード)を5セット。セットを終えるごとに30秒休憩しよう。
3:瞬発力をつける
エデン・アザールのようなスター選手はまるで瞬間移動しているかのように見える爆発的な瞬発力を備えている。しかしながら、たとえそれが天賦の才能に見えたとしても、実は見えないハードワークによるところが大きい。彼らは自らを鍛えることで瞬発力を得ているのだ。
瞬発力のトレーニングは並大抵の精神力では不可能で、最大限の努力と優れたテクニックも必要になるが、相応しい報酬が待っている。そう、誰もが恐れる爆発的な瞬発力を備えた10番になれるのだ。
そのためには、スクワット・スラスターやバーピー&タックジャンプなどのプライオメトリクス・エクササイズに、プライオメトリクス・ボックスジャンプなどのジャンプスクワットを組み合わせよう。これを続ければ、すぐに対戦相手の裏に抜けられるようになるはずだ。
トレーニング:シングルレッグ・ボックスジャンプを片脚10セットずつ行い、1週間ごとにボックスを高くしよう。
4:切り返しのスピードを高める
スピードがあるのは素晴らしいことだが、それが直線に限定されるのであれば、サイド専門家になってしまう。サッカー選手を自負するなら、どのスピードで走っていても自由自在かつ瞬時に切り返して方向転換ができなければならない。しかも、怪我をする危険性を感じさせず、ボールもしっかりとコントロールできる必要がある。
スラロームやシャトルランなどの伝統的なコーンドリルが、サッカー選手の敏捷性(アジリティ)を高めるのに最も簡単な方法だが、ボールの存在を忘れてはならない。試合の局面を変えることができる本物の選手は、ボールをコントロールしたままトップスピードで切り返すことができる。
トレーニング:10~20個のコーンをジグザグに配置し、ボールを使ったスラローム(往復)を遅めのスピードから始めて、1往復するごとにスピードアップしよう。
5:強靱な体幹を手に入れる
全身を最大限活用しているサッカー選手は誰かと考える時に、リオネル・メッシを外すことはできないだろう。小柄ながら優れたボディバランスとスピードでDF陣を切り裂いたり、弾き飛ばしたりしているこの希代の10番は、同じポジションのライバルたちよりも一段上に位置している。
しかし、メッシのような低い重心は誰もが持っているものではない。彼よりももう少し身長がある選手はどうしたら良いのだろうか? その答えは「強靱な体幹を手に入れる」だ。
しかし、シットアップやクランチを始める前に、バランス能力を鍛えるエクササイズをトレーニングに組み込むことが安定した体幹を手に入れる最適な方法だということを知っておく必要がある。Bosuボールに乗ったスクワット、Tバーロウを使ったルーマニアンデッドリフト、またはTRXを使用したプランクジャックなどのエクササイズを取り入れれば、体幹が鍛えられてボールを激しく奪い合う状況で安定して踏ん張れるようになる。
トレーニング:上に紹介したエクササイズをそれぞれ6回行う。ひとつのエクササイズを終えたら3秒休憩する。
6:筋力をつける
あとで文句を言わないと約束できるなら、筋力トレーニングを無視しても構わない。ただし先に言っておくが、スポーツ科学の進化により、モダンサッカー界はオリンピックリフティングや一般的な負荷トレーニングのような筋力トレーニングが効果的であることに気付いている。
スクワット、デッドリフト、ランジなどの大型の複合運動は瞬発力、スピード、敏捷性に大きな効果をもたらし、さらには体幹にもある程度の効果をもたらす。しかし、筋力トレーニングをする最大のメリットは怪我の予防だ。正しい負荷トレーニングを取り入れれば、靱帯や腱、骨格構造を強化することができる。
トレーニング:1週間でデッドリフト、スクワット、ランジを各6回5セットこなすようにしよう。
7:リカバリーの時間を設ける
試合と試合の合間にトレーニングを次から次へとこなすタイトなスケジュールが組まれていることを踏まえると、モダンサッカーの世界に身を置く選手たちは十分に休めていないと思うかもしれない。しかし、実際はリカバリーの時間が十分に与えられている。リカバリーはトレーニングの重要な一部として扱われるべきで、正しく休めばピーキングを防ぐことができる。
リカバリーを助けるトレーニングを取り入れることはマストだ。特に、フォームローラーは筋膜の硬化や遅発性筋肉痛(DOMS:Delayed Onset Muscular Soreness)の予防に優れている。また、正しい栄養補給をするように心がけ、試合後のストレッチも忘れないようにしよう。
忘れずに:トレーニングを終えたあとは10分間のストレッチ、または下半身のフォームローリングを行おう。