サッカーファンと解説者は選手たちの才能をどれだけ正しく評価できているのだろうか?
ほぼ毎シーズン、中堅クラブに所属する誰かしらがインターナショナルレベルの試合で素晴らしいパフォーマンスを見せて話題になったあと、高額の移籍金でチャンピオンズリーグ常連のビッグクラブへ移籍しているように思える。
しかし、誰もが素晴らしい活躍を続けるわけではない。
今回は2007年まで時間を遡り、18歳以下という若さでビッグクラブデビューを果たした選手をピックアップしつつ、その後の明暗を追ってみることにした。
2007年:セオ・ウォルコット
当時:アーセナル
現在:エヴァートン
ファーストチーム出場数が13しかなかったセオ・ウォルコットがサウサンプトンからアーセナルに移籍した2006年夏、この選手は大きな話題になった。
アーセナル移籍後のウォルコットは世間からの注目に相応しい才能の片鱗を見せたが、怪我も重なって安定したパフォーマンスを見せられず、結局、移籍当時の期待を上回ることはできなかった。
しかし、2018年1月のエヴァートンへの移籍は本人に何かしらの刺激を与えたようで、シーズン途中での移籍ながら、新天地でいくつかの素晴らしいパフォーマンスを見せた。
2007年:アレッシャンドレ・パト
当時:ACミラン
現在:天津権健
16歳で母国ブラジルの名門SCインテルナシオナルのファーストチームデビューを果たしたアレッシャンドレ・パトは、このクラブには1年しかいなかったが、27試合出場12ゴールを決め、さらにはFIFAクラブワールドカップでも活躍したことで、ACミランへ移籍した。
移籍後しばらくは期待通りの活躍を見せ、SCインテルナシオナル時代と変わらない得点力も誇っていたが、複数の怪我に悩まされ、退団後は地元ブラジルへ戻った。
まだ28歳のパトは、現在はアクセル・ヴィツェルと共に中国の天津権健に所属している。天津権健移籍前のチェルシーへのレンタル移籍とビジャレアルへの完全移籍が共に期待以下に終わったため、ヨーロッパのクラブへ復帰する可能性は低いだろう。
2007年:ボージャン
当時:バルセロナ
現在:アラベス(ストークからのレンタル移籍)
誰もがボージャンに期待していた。17歳でバルセロナのファーストチームデビューを果たした彼は、チームメイトだったリオネル・メッシと比較される存在となり、さらにはメッシが持っていたリーグ戦最年少出場記録を更新することにもなった。
しかし、バルセロナがペップ・グアルディオラ監督と共に力をつけていく中、ボージャンは出場機会を中々得られなくなり、最終的にこれが理由でASローマへ移籍した。
しかし、ASローマ移籍後のボージャンはバルセロナ時代のような輝きを放てず、その後もACミラン、アヤックス、ストークと渡り歩くことになった。
ストークには2014年から所属しているが、レンタル移籍で2度外へ出されており、2017-18シーズンもレンタル移籍先のアラベスでプレーした。類い稀な才能を持つウインガーだが、世間からのプレッシャーが大きすぎたのだろう。
2007年:エデン・アザール
当時:リール
現在:チェルシー
2011年にリールがフランス国内2冠を達成できたのは、当時18歳だったエデン・アザールの活躍が大きかった。よって、彼がビッグクラブへ引き抜かれるのは時間の問題だった。
2012年夏にチェルシーへ移籍して以来、ウエストロンドンの人気クラブで6シーズンを過ごしてきたアザールは、その間にこのクラブが生み出した全てのハイライトに貢献しており、その中にはプレミアリーグ優勝2回とUEFAヨーロッパリーグ優勝1回も含まれている。
2017-18シーズンはマンチェスターのレッド&ブルーの後塵を拝し、さらにはレアル・マドリードへの移籍も噂されていることから、ベルギーが誇る天才のスタンフォードブリッジでの日々は終わりを告げる可能性がある。
2010年:ハメス・ロドリゲス
当時:FCポルト
現在:バイエルン・ミュンヘン(レアル・マドリードからのレンタル移籍)
FCポルトは隠れた才能を掘り起こすことで良く知られているが、その最高の例のひとつと言えるのが、ハメス・ロドリゲスだ。
FCポルトからモナコへ移籍したあと、コロンビア代表として2014 FIFAワールドカップで大車輪の活躍を見せると、8,000万ユーロ(約105億円)でレアル・マドリードへ移籍した。
スター揃いのレアル・マドリードで不安定な3シーズンを過ごしたあと、バイエルン・ミュンヘンが2シーズンのレンタル移籍でロドリゲスを獲得。ロドリゲスはバイエルンで徐々に本来の調子を取り戻し、レアル・マドリード以前の輝きを放つようになった。
現在26歳のロドリゲスはフィジカルのピークを迎えつつあり、また、バイエルンでは得意としてきたトップ下よりやや下がった位置で黙々とプレーを続けているので、彼が世界を驚かせたあのフォームを取り戻す可能性は高いと言えるだろう。
2010年:ルーカス・モウラ
当時:サンパウロFC
現在:トッテナム
ルーカス・モウラが世界から注目されるきっかけとなったのは、3シーズン所属した地元サンパウロFCでの活躍だった。その活躍が認められたモウラは、2013年に4,500万ユーロ(約60億円)でパリサンジェルマンへ移籍した。
この移籍金は当時のパリサンジェルマン史上最高額だったが、モウラは徐々にクラブ内での居場所をなくしていき、その結果、自分のスピードとスキルを活かすべく、2018年1月の移籍市場最終日にトッテナムへ移籍した。
現在25歳のモウラは、マウリシオ・ポチェッティーノ監督から100%信頼されているわけではなく、レギュラーを獲得できていない。
しかし、パリサンジェルマンでのラストシーズンで見せたような得点力を再び示すことができれば、プレミアリーグの他のクラブから危険人物としてマークされるようになるだろう。
2011年:ガブリエウ・ピリス
当時:ユヴェントス
現在:レガネス
今回のリストの中で最も知名度が低いブラジル人MFガブリエウ・ピリスはユヴェントスで5シーズンを過ごしたが、毎シーズンレンタル移籍で外に出され、結局一度もユヴェントスでプレーすることなくレガネスへ完全移籍した。
プロ・ヴェルチェッリへレンタル移籍が決定した時のガビリエウはまだ18歳で、『FIFA 13』では総合88まで伸びるようになっていた。その後も、ペルカーラやリヴォルノなど下位クラブでプレーを続け、2016年にスペイン、リーガ・エスパニョーラ1部のレガネスへ移籍した。
現在24歳のガブリエウ・ピリスはレガネスでレギュラーの座を獲得しており、クラブのランクは下がったがようやく自分の居場所を見つけたように見える。
また、これに伴ってEAも『FIFA』シリーズの彼に修正を加えており、現在は総合81に下げられている。
2013年:ザカリア・バカリ
当時:PSVアイントホーフェン
現在:デポルティーボ・ラ・コルーニャ(バレンシアからのレンタル移籍)
2013年に17歳と196日でハットトリックを決めてエールディビジにその名を刻みつけたザカリア・バカリには明るい未来が待っていると思われた。
しかし、素行が悪く、怠け癖があったことからPSVアイントホーフェンの首脳陣に見限られてユースレベルに落とされ、その後、リーガ・エスパニョーラのバレンシアへ移籍。しかし、ここでも2シーズンで出場5試合に終わっており、神童と呼ばれていた頃の才能は全て失われてしまったかのように見える。
2017年にバレンシアからレンタルの形でデポルティーボ・ラ・コルーニャへ移籍したが、デポルティーボの降格が決まったため、才能を再び示せるチャンスはこれまで以上に少なくなるだろう。
2013年:ユーリ・ティーレマンス
当時:RSCアンデルレヒト
現在:ASモナコ
ここ5年の「神童リスト」の名前が載り続けているユーリ・ティーレマンスが移籍金2,500万ユーロ(約31億円)でASモナコへ移籍した2017年夏、世間の彼への期待はかなり大きかった。
しかし、この移籍は世間の予想とは異なり、彼がステップアップするきっかけにはならなかった。
まだ21歳の彼から「神童」という称号を奪ってしまうのはアンフェアになってしまうが、彼が最高の選手のひとりに数えられるためには、もう少し高いレベルでプレーする必要があるのはサッカーファンなら誰でも分かるはずだ。
幸運なことに彼にはまだ十分な時間が残されている。
2015年:ゴンサロ・ゲデス
当時:ベンフィカ
現在:バレンシア(パリサンジェルマンからのレンタル移籍)
2017年1月に移籍金3,000万ユーロ(約39億円)でベンフィカからパリサンジェルマンへ移籍したゴンサロ・ゲデスだったが、同年夏にネイマールとキリアン・エムバペが加わると、出場機会を得るのが難しくなった。
結果、ゲデスは荷ほどきもままならないうちにバレンシアへレンタル移籍。バレンシアでの彼は4ゴール・9アシストを記録する活躍を見せ、バレンシアのリーグ4位に大きく貢献した。
この活躍により、ゲデスが2018年夏の移籍市場で注目を集めることが予想されている。パリサンジェルマンが呼び戻さないなら、ヨーロッパ圏内のビッグクラブへ移籍する可能性が高い。
現在21歳の彼が期待に応えるための時間はまだ残されている。
2016年:レナト・サンチェス
当時:バイエルン・ミュンヘン
現在:スウォンジー(バイエルンからのレンタル移籍)
ユーロ2016で優勝を経験したレナト・サンチェスはベンフィカからバイエルン・ミュンヘンへ移籍したが、バイエルンでは厳しい時間を送った。
ブンデスリーガ最強クラブでスーパースターたちに囲まれていた彼の先発出場の機会は限られていたため、2017年夏に出場機会を求めてスウォンジーへレンタル移籍した。
しかし、弱冠20歳のサンチェスは強いフィジカルが求められるプレミアリーグに馴染めていないため、1シーズンでプレミアリーグから去るのではないかと噂されている。
プレミアリーグからの離脱は彼にとってやや後退となるが、まだ若いサンチェスが輝く時間は十分に残されている。