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フリーランニング
【フリーランニングとは?】新世代アーバンスポーツ初心者用ガイド
フリーランニングとは一体何なのか? パルクールとの違いは? トップアスリートは? 初心者のための基本情報と基礎知識を紹介!
Written by Ben Johnson
読み終わるまで:9分Published on
フリーランニングの名称は知らなかったかもしれないが、どこかで必ず一度は見たことがあるはずだ。
ハリウッド映画やテレビのアクションシーンで見たことがある、ドミニク・ディトマソパシャ・ペトクンスのようなアスリートのクリップ、もしくは【Red Bull Art of Motion】のような大会やイベントの様子をソーシャルメディアで見たことがある人は少なくないだろう。世界中の都市で積極的に活動しているコミュニティが存在するため、生で見たことがある人もいるかもしれない。
コミュニティが積極的に活動を展開している背景には、フリーランニングの注目度の高まりがある。フリーランニングは現在売り出し中のアーバンスポーツで、インターネットやスマートデバイス、ソーシャルメディアと共に成長を続けている。
そして、急成長している今こそ、このスポーツを学ぶ最高のタイミングと言える。今回はフリーランニングの基本を紹介しよう。
フリーランニングは毎年順調に成長しているグローバルスポーツ
フリーランニングは毎年順調に成長しているグローバルスポーツ© Nuri Yılmazer/Red Bull Content Pool
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フリーランニングとは何か?

その答えは名称にある。フリーランニングとは都市に住む何百万もの人たちのためにデザインされている世界を “自由に走り回る” スポーツだ。
突き詰めれば、フリーランニングは好きなように都市を移動するというひとつのアートで、設けられている制限は自分の想像力と身体能力だけだ。このスポーツでは、ジャンプフリップスピンドロップギャップジャンプなど、都市をスピーディーかつエキサイティングに移動できるムーブである限り、何でも認められる。
すでに作り込まれている環境をユニークかつクリエイティブに移動する手段、それがフリーランニングなのだ。
世の中のイメージ通りのフリーランニングを披露するディトマソ
世の中のイメージ通りのフリーランニングを披露するディトマソ© Craig Kolesky/Red Bull Content Pool
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フリーランニングの歴史

映画、メートル法、料理と同じく、フリーランニングもフランスとの縁が深い。
現在フリーランニングと呼ばれているものは、移動の効率と肉体への自信を高めるために用意されていた軍式運動トレーニングおよび障害物コースにルーツを見出すことができるが、アクションスポーツとして開花したのは1990年後半のパリ郊外だった。ヤマカシ(Yamakasi)が地元の団地やショッピングセンターで “パルクール” を提唱したことがすべての始まりになった。
設立者のひとり、ダビド・ベルの父親が取り組んでいた軍式運動トレーニングと格闘技の規律・哲学に触発されて活動を始めたパルクール集団ヤマカシは、都市の構造から自分たちを解放し、エレガントさを保ちながら自分たちの好きなように都市を移動する方法を生み出した。
私たちが知っている屋根から屋根へのビッグジャンプ、複数階を飛び降りるビッグドロップ、踏み外したら命を落とすビッグギャップはどれもヤマカシが花の都の郊外で初めて成功させたものだ。
そして、ベルが “マンパワー(Manpower)” と呼ばれるスポットで屋上から屋上へのビッグジャンプを成功させたビデオクリップがフランスとヨーロッパのテレビ局で放送されたことで彼らはフリーランニング史上初のバイラルヒットを生み出し、世界中にパルクールフォロワーを生み出すことになった。
トルコ人フリーランナー / パルクールアスリートのハザール・ネヒールは次のように説明している。
「あの映像はバイラルヒットという言葉が存在する前のバイラルヒットでした。フランスの全テレビ局で放映されました。非常に素晴らしいクオリティだったので、パルクールアスリートたちはシェアしながら、このスポーツをプッシュし続けていきました」
フランスで生まれたパルクールは瞬く間に世界へ広がった
フランスで生まれたパルクールは瞬く間に世界へ広がった© Rutger Pauw/Red Bull Content Pool
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パルクールとフリーランニングは同じなのか?

答えは “イエス” でもあり “ノー” でもある。これでは答えになっていないと思う人がいるのは当然だが、説明していこう。
パルクールがすべての始まりとなり、メインストリームで知られるようになった結果、似ているアクティビティはすべてパルクールとひとまとめに呼ばれるようになった。しかし、パルクールとフリーランニングには大小いくつかの違いが存在する。
まず、元ヤマカシのセバスティアン・フォーカンがフリーランニングというワードを考案し、自分なりのパルクールを表現していこうとした。パルクールではスピードと効率が重視されるため、アスリートたちはランニングとジャンプを組み合わせながら “常に前進” していくが、彼から始まったフリーランニングではどのようなムーブでも構わない
フリップ、スピン、ツイスト、さらにはチャーリー・チャップリンの映画やビデオゲーム、B-Boyバトルで見られるムーブでも、メイクできる限り認められるのがフリーランニングの大きな特徴のひとつだ。
コロンビア・ボゴタでパフォーマンスするパシャ・ペトクンス
コロンビア・ボゴタでパフォーマンスするパシャ・ペトクンス© Maximiliano Blanco/Red Bull Content Pool
船の上でパフォーマンスをするノア・ディオルジーナ
船の上でパフォーマンスをするノア・ディオルジーナ© Samo Vidic/Red Bull Content Pool
また、フリーランニングはロケーションの自由度も高い。基本的にはパルクールと同じでコンクリートジャングルがメインロケーションだが、この枠から飛び出して、フリーランニングを想定外のロケーションで完全に新しい形で披露するアスリートやイベントが増えている。
例としては、1980年代のレトロビデオゲームを再現したジェイソン・ポール人間ピンボールと化したパシャ・ペトクンス、そして2021年には停泊中の船上で開催されたフリーランニングシーン最大のイベント【Red Bull Art of Motion】などが挙げられる。
ネヒールが適切にまとめている。「フリーランニングに決まったルールは存在しません。これが魅力です。誰もが自由に動き、それぞれのユニークなスタイルをアピールできます。この特徴がこのスポーツをフレッシュに保っています」
つまり、フリーランニングはパルクールの派生形で、カルチャーを共有しており、両者の境界線がぼやけるときがままあるという意味では “イエス” だが、完全に同じではなく、言い方を変えただけでもないという意味では “ノー” だ。
フリーランニングに決まったルールは存在しません。これが魅力です。誰もが自由に動き、それぞれのユニークなスタイルをアピールできます
ハザール・ネヒール
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デジタル世代のスポーツ

10歳から20歳までの自分の成長の幅とスピードを振り返ってみよう。それが、フリーランニングの成長の幅とスピードだ。私たちのスマートフォンやラップトップの中で他のスポーツでは見られない素晴らしい形で進化を遂げている新しいスポーツがフリーランニングなのだ。
フリーランニングはインターネットと一緒に成長してきた初めてのスポーツと言える。世界レベルの人気爆発を促し、テクニックを圧倒的なスピードで進化させてきたのが、このスポーツとデジタルの直接的な繋がりだ。
英国のフリーランニングシーンに長く携わってきたパルクール史研究者ジミー・ザ・ジャイアントは「フリーランニングはインターネットカルチャーと深く繋がっています。フリーランニングのコミュニティは常にインターネットの周辺に位置してきました。黎明期からそうなのです」と説明している。
ビデオカメラの低価格化がDVD黎明期およびダイヤルアップ接続のネット掲示板時代におけるパルクールの人気獲得の助けになった。しかし、世界が本格的にフリーランニングを知ることになったのは、2005年のYouTubeの登場によるデジタルビッグバンだった。
フリーランニングがグローバル化した瞬間があるとするなら、このときがまさにそうだった。突如として、誰もが簡単にオンラインでコンテンツを視聴できるようになった結果、多くの人がこのスポーツに取り組むことになり、さらにはトリックとスポットのオンラインデータベースとしても機能したことで、このスポーツのレベルをワープ速度で高めることにもなった。
さらにはスマートフォンの急速な進化4Gの登場、もうひとつの革新的プラットフォーム、インスタグラムの登場(2013年)が立て続けに起きたため、フリーランナーたちはそれまでは考えられなかったほど簡単に自分たちがやっていることを世界にアピールできるようになった。スマートフォンかGoProをポケットに入れて外へ飛び出すだけで良くなったのだ。
また、スピーディかつスリリングで少し危険に見えるが感情移入できるフリーランニングはパーフェクトなソーシャルメディアスポーツでもある。そのため、このスポーツの人気が爆発し、ディトマソのようなアスリートがインスタグラムの投稿で何万もの “いいね” を獲得しているのはまったく不思議ではない。
尚、ジェイソン・ポールが空港でパフォーマンスを披露した動画はレッドブル動画の最多視聴回数を誇っている。下のクリップを見ればその理由が理解できるはずだ。
4分Last Call For Mr. Paul -エアポートアクション-飛行機の離陸時刻に遅れそう、そんな経験はないだろうか?もちろんトップアスリートも例外ではない。最終アナウンスが流れる空港、じりじりと迫り来るタイムリミットがジェイソン・ポールを追い詰める。コンベアベルト、ラゲージトロリー、エアポートバギーなど、空港全体を惜しみなく使った大迫力のフリーアクションが満載。くれぐれも真似だけはしないように。(日本語字幕)
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日本語 +9
ネヒールは次のように語っている。「フリーランニングはインターネットとソーシャルメディアがなければ今の位置にはいませんでした」
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チェックすべきフリーランナーは?

ジェイソン・ポール:フリーランニングのレジェンドでもあるドイツ出身のポールは、【Red Bull Art of Motion】の複数回制覇から非常にクリエイティブで面白い動画シリーズの制作まで、このスポーツに関するすべてを成し遂げてきた。インスタグラムアカウントはこちら>>
ドミニク・ディトマソ:現在最もプログレッシブなフリーランナーのひとりに数えられているオーストラリア出身のディトマソがこれまで手がけてきた動画はどれも見逃し厳禁だ。インスタグラムアカウントはこちら>>
ハザール・ネヒール:自国トルコのフリーランニングシーンをプッシュしている女子最大の才能と人気を誇るフリーランナーのネヒールは、ハリウッド映画『6アンダーグラウンド』での演技で【Taurus World Stunt Award】にノミネートされた実績を持つ。インスタグラムアカウントはこちら>>
パベル・“パシャ” ・ペトクンス:オリジナリティとユーモアセンスをフリーランニングに求めているなら、ラトビア出身のパベル・“パシャ” ・ペトクンスをフォローすべきだろう。【Red Bull Art of Motion】を2回制しているパシャは唯一無二の存在だ。インスタグラムアカウントはこちら>>
クリスティアン・コバレフスキ:【Red Bull Art of Motion】現男子王者のポーランド人フリーランナー、コバレフスキはフリーランニングに最も多くの努力を費やしているアスリートのひとりで、海に浮かぶ船の上でも岩に囲まれた森の中でも自由にパフォーマンスすることができる。インスタグラムアカウントはこちら>>
ノア・ディオルジーナ:2021年に【Red Bull Art of Motion】最年少優勝記録を更新したディオルジーナは、世界の女子フリーランニングシーンに向けて自分の存在をアピールした。今後の活動に注目したいフリーランナーだ。インスタグラムアカウントはこちら>>
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Pavel ‘Pasha’ Petkuns is a Latvian freerunner and Red Bull Art of Motion champion who believes that the sky really is the limit.

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