Ultrarunner Florian Neuschwander during running training.
© Janosch Abel
ランニング

【ハーフマラソンを完走するには?】プロからのアドバイス おすすめ10選

ビギナーランナーにとってハーフマラソンは大きなチャレンジだが、パニックに陥る必要はない。トレーニングが楽しくなり、完走もできるようになるプロアスリートからのアドバイスを紹介しよう!
Written by Henner Thies
読み終わるまで:13分Published on
ビギナーランナーにとってハーフマラソンデビューは間違いなく大きなチャレンジだ。そこまでのプロセスは自分をコンフォートゾーンの遙か外へと連れ出すことになる。
では、休むことなく21kmを一気に走るにはどうすれば良いのだろうか? その答えは「プロから正しいアドバイスを授かる」だ。というわけで、プロが教えるハーフマラソン完走法を紹介する。
トレーニングランに励むライアン・サンデス

トレーニングランに励むライアン・サンデス

© Craig Kolesky/Red Bull Content Pool

ハーフマラソンは自分にとって特別なスポーツイベントになる。その当日のすべてをスムーズに進ませるためには、自分とフィジカルをベストの状態に仕上げる必要がある。そこまでのプロセスは単純にできる限りランニングを積み上げておくよりも遙かに複雑だが、基本から進めていけば問題ない
今回は、レジェンドトライアスリートのセバスチャン・キーンレがアドバイスを授けてくれた。
01

現実的な目標を設定する

すべてのプロセスは目標設定から始まる。ハーフマラソンデビューも同じだ。最初に《今の自分がどこにいて、そこからどこへ向かいたいのか》を確認してみよう。ランニングだけではなく複数の種目の練習を数十年続けてきたキーンレは次のようにアドバイスを送っている。
「自分の “現在地” を知るためには、目指している距離をひとまず完走することが助けになります。ペースは理想より遅くて構いません。ゆっくりでOKです。歩いて完走しても良いでしょう。大事なのは “とにかく21kmを移動して、その感覚を得ることと自分のフィットネスレベルを理解すること” です」
21.0975km完走に向けての自分の現在地(自分がどこにいるのか)と理想のタイムとペース(どこへ向かいたいのか)を把握できれば、目標をより具体的に設定できるようになり、適したトレーニングメニューも組めるようになるが、何よりもまず、自分に最適なランニングシューズを手に入れることが重要だ。
02

自分に合ったランニングシューズを手に入れる

「自分は自分に最適なランニングシューズを持っているだろうか?」― 大抵の場合、この疑問に対する答えは「ノー」だ! ランニングシューズを購入するときに時間をかけて自分に最適なモデルを選んでいる人は非常に少ない。これは大きな間違いだ。
「一番重要なポイントは、自分にパーフェクトにフィットしていて水ぶくれやしびれが起きないランニングシューズを選ぶことです」とキーンレは強調している。
当然の話に聞こえるかもしれないが、多くのランニングファンはランニングシューズのカラーやスタイルを選択基準にしている。しかし、実際のランニングシューズ購入で選択基準にするべきは《快適さ》《パフォーマンス》だけだ。
アイアンマン世界選手権前のセバスチャン・キーンレ

アイアンマン世界選手権前のセバスチャン・キーンレ

© Pushing Limits

キーンレは正しいランニングシューズを選ぶためには専門ショップを訪れるのがベストだと考えている。
「最初に足のデータを取ってもらいましょう。データを見ればどこに注意すべきなのかが分かり、自分に合ったシューズで怪我を防げるようになります。そのあとは “論より証拠” です。できる限り多くのモデルを試着して見極めていきましょう。走りたい距離と地形も考慮すると良いでしょう」
「近年はランニングシューズの進化が目覚ましいです」とキーンレは続けているが、テクノロジーとクッション性能が優れている方がベターとも言い切れない。
反発力に優れたミッドソールカーボンファイバープレートを備えている最新モデルは多くをもたらしてくれますが、全員に合うわけではありません」とキーンレは続け、どのモデルをどのタイミングで使うべきかを理解することが重要だとしている。
カーボンファイバー搭載シューズでももちろん走れるが、このようなシューズはレースもしくはトレーニングの高速テンポランのときだけに履くべきだ。そのため、キーンレは「通常のトレーニングやランニング用のシューズを常にもう1ペア用意しておくべきです」とアドバイスを送っている。
2014年のアイアンマン世界選手権を制しているキーンレは、ビギナーランナーたちにもうひとつのアドバイスを送っている。「自分にパーフェクトにフィットするランニングシューズを見つけたあとは、同じシューズを2〜3ペア用意して、ローテーションで履きましょう。こうすることで各ペアを均等に使えるようになります」
03

多様な目標と内容のトレーニングを用意する

ハーフマラソンデビューを目指しているなら、トレーニングの内容はできる限り多様にするべきだ。これはビギナーランナーなら特に意識したいポイントだ。水泳サイクリングヨガなどランニングのトレーニング以外の運動も取り入れていきたい。
トレーニング中のキーンレ

トレーニング中のキーンレ

© Pushing Limits

キーンレは次のように説明している。「心臓や血管は、トレーニングを始めた直後は “激しい運動に対応する必要性” を理解できていません。ですので、機能させるように慣らしていく必要があります」
言い換えるなら、ランニング、サイクリング、水泳などの様々なトレーニングによって基礎持久力を作り上げていくのだ。また、このようにランニング以外の運動を取り入れれば、ビギナーランナーがオーバートレーニングで負いがちなランナー特有の怪我を回避できるようにもなる。
04

3ヶ月のトレーニングプランを組む

「フィットネスレベルをある程度高めることができたら、ハーフマラソンデビューに向けた本格的なランニングトレーニングをスタートさせましょう」とキーンレはアドバイスを送っている。理想的には3〜4週間を1ブロックとして、3ヶ月で合計3ブロックを消化していきたい。
「たとえば、1週間目に合計30kmを走り、2週間目に合計40km、3週間目に合計50kmと増やしていきましょう」とキーンレは続けている。4週間目は休息に充てて、サイクリングや水泳、ヨガなどに取り組み、身体を動かしながら回復していく(アクティブリカバリー)。
ランニングは素晴らしい景色を見せてくれる

ランニングは素晴らしい景色を見せてくれる

© Kelvin Trautman/Red Bull Content Pool

3週間続けるランニングトレーニングでは、スピードや距離、地形に幅を持たせるようにしよう。理想的には1週間に以下のメニューを組み込み、週3〜4回は走りたい。
  • 1日目:テンポチェンジラン(高強度・短距離)
  • 2日目・3日目:有酸素ラン / リカバリーラン(低強度・中距離)
  • 4日目:持久ラン(中強度 / 長距離)
05

ストレングストレーニングで補強する

安定性を高めるインナーマッスル系トレーニングを含むストレングストレーニングでの補強を4週間目のアクティブリカバリーに取り入れることで、ランナーとして大きく成長できる。
このようなストレングストレーニングには、プランクサイドプランクプッシュアップスクワットランジグルートブリッジなどが含まれる。キーンレは次のようにアドバイスを送っている。
強靭な体幹はレースに役立つ

強靭な体幹はレースに役立つ

© Lucas Cartaxo / Red Bull Content Pool

「ビギナーのハーフマラソン用3ヶ月トレーニングにウエイトを使うような本格的なストレングストレーニングを組み込む必要はありません。このような本格的なストレングストレーニングはハーフマラソンデビューを終えたあと、再びランニングトレーニングを始めるタイミングで取り入れてみてください」
06

水分補給を日頃から意識する

運動をするときは最初にしっかりと水分補給をしておくことが重要だ。高温下では特にだが、水分補給はランニングに欠かせない。十分な水分補給をしておかなければ高確率で脱水症状に陥ってしまう。正常な身体機能に必要な水分量は事前から補給しておく必要があるのだ。レース中では間に合わない。
脱水症状はパフォーマンスを低下させる上に、意識や反応も鈍らせるため、事故に遭う確率も高めてしまう。水分補給はついつい「できている」と思ってしまったり、忘れてしまったりしがちなので、普段から意識的に水分を摂るようにしよう。
07

ランニング中に水分・栄養補給を行う

トレーニングとレースで最大限の結果を得るためには、10〜20分おきに少量の水分を補給しておきたい。これは体内の電解質を切らさないようにすることが目的だが、飲料によって成分が大きく異なるので注意が必要だ。用意する飲料には電解質・カルシウム・マグネシウムが含まれているべきだ。
また、成功を手に入れるためには栄養補給も重要だ。ランニング前に炭水化物を十分に摂取してエナジーを補給しておきたい。ランニング後はプロテインを摂取して筋肉を修復・強化しよう。もちろん、炭水化物も再補給しておく必要がある。
長距離のトレーニングランではどのタイプの炭水化物が自分に最適なのかを見極めておくのはグッドアイディアだ。特別なフードを好む人がいれば、エナジードリンクやスポーツジェルを好む人もいる。バナナやドライフルーツ、チョコレートバーが好みの人もいる。
キーンレは「レッドブル・エナジードリンクのようなカフェインと糖類の組み合わせも良いですね。私はいつもレースの終盤で助けてもらっています」とコメントしている。
いずれにせよ、自分のバッテリーを効果的に充電できる方法を事前に見つけておくことが重要だ。レース当日に新たに試用・試飲するのは大きな間違いだ。
08

パートナーを見つけてモチベーションを維持する

仲間を見つけるのはグッドアイディアだ。しかも、正しいランニングパートナーはモチベーションも高めてくれる。筋肉痛を抱えているときもお互いを励まし合ってトレーニングを続けられるのだ。キーンレは次のように説明している。
フロリアン・ノイシュヴァンダー(左)とコンラッド・アベルツハウザー(右)

フロリアン・ノイシュヴァンダー(左)とコンラッド・アベルツハウザー(右)

© Phil Pham/Red Bull Content Pool

「自分の経験から言えることですが、パートナーやグループと事前に走る約束をしておくことは大きな助けになります。寒い日や雨の日は誰も走りたくないですが、約束をしておけば、走るしかなくなります(笑)」
Wings for Life World Runは犬と一緒でも参加OK

Wings for Life World Runは犬と一緒でも参加OK

© Adrian Pop for Wings for Life World Run

パートナーやグループと事前に走る約束をしておくことは大きな助けになります
セバスチャン・キーンレ
自分に合ったパートナーを探すときは、家族から友人、さらには同僚近所の住人ランニングクラブへと検索範囲を拡大していくのが良いだろう。
最近はランニンググループやソーシャルメディアでのランイベントなどが人気だ。FacebookやInstagramなどでランニングクラブを探しても良いだろう。上手くいけば、自分の目標と合致しているクラブを見つけられる。
誰かと一緒にランニングするのは効果的だが、キーンレは次のアドバイスも送っている。「常に誰かと一緒に走る必要はありません。ひとりなら自分だけに集中できますし、競争心を無駄に煽られることもありません」
09

中間目標とさらに大きな目標を設定する

ハーフマラソンデビューを飾ると決めた時点で最初の一歩は踏み出せている。また、自分の現在地と目標達成の方法も見出せているので、次の一歩も踏み出せている。
その次の一歩として、4週間のトレーニングブロックの最後にレース的なトレーニングを用意しよう。こうすることでモチベーションをキープできるようになる。
キーンレからのプロ実証済みアドバイスは次の通りだ。「すでに目標を達成しているときは特にですが、夢とも言えるようなさらに大きな目標を持つことが非常に重要になってきます。ニューヨークマラソン出場など、最初は非現実的に思えるもので構いません。このような非現実的な目標が自分をハングリーな状態にしてくれるのです」
10

睡眠と休息を最適化する

休息日は軽視されがちだが、キツい持久ランと同じくらい重要なものとして扱うべきだ。トレーニングに取り組めば、身体はストレスに晒される。休息することで身体は筋力を取り戻し、さらに強くなれるのだ。
休息は非常に重要

休息は非常に重要

© Graeme Murray / Red Bull Content Pool

身体が回復する時間を用意しなければ、身体のフルポテンシャルを引き出せなくなる。最悪の場合、オーバートレーニング状態になって怪我を負ってしまうだろう。「少なく効果的に」が基本的な考え方なので、休息日を取り入れよう。リカバリーあってこそのトレーニングなのだ。
また、キーンレは「睡眠は非常に優秀な回復ブースターです」と語っている。だからこそ、最適化が重要だ。
睡眠の最適化のプロセスは「リズムの確立」から始まる。毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きるようにするのだ。また、寝室の室温も一定にしたい(18度が理想的)。さらには、寝る前のルーティンの確立も助けになる。少し前からスマートフォンを見ないようにしつつ、アルコールと夜間のハードトレーニングを回避してみよう。
11

積み重ねてきた練習を信じる

数ヶ月に渡ってトレーニングを重ねてきた目標、つまりレース当日(および前夜の興奮)は最大限楽しむべきだ。
長距離走は孤独との戦い

長距離走は孤独との戦い

© Zandy Mangold

12

前夜の準備・早起き・朝食で自分を整える

レース前日に整理整頓と準備をしておくことがベストパフォーマンスに繋がる。ランニングウェアとシューズとゼッケンをバッグに入れたあとは、しっかりと夕食を摂っておこう。このプロセスをルーティン化できれば気持ちがリラックスすると同時にやる気がみなぎってくる。
水分・栄養補給が成功のカギ

水分・栄養補給が成功のカギ

© Pavel Sukhorukov/Red Bull Content Pool

また、前夜に済ませておくべきことがもうひとつある。それが《カーボローディング》だ。これはつまり、レース前に炭水化物(カーボンハイドレート)を大量に摂取しておくことを意味する。レース前夜の夕食からレース当日の朝食までは《カーボローディング》の時間だ。ただし、“食事” はレーススタートの2時間前までに済ませて、そのあとは軽食程度に留めておきたい。
また、レース当日は早めに会場入りして、レースウェアに着替えたり、スタート地点や他のランナーを確認したりしてストレスを軽減させておこう。スタート時間が迫れば迫るほど冷静を保てているのが理想的なので、上手くいったトレーニングを思い出して緊張をほぐそう。
13

焦らずに自分のペースで走る

スタートしたら、焦らずにゆっくりと着実に自分のリズムを掴み、そこから徐々にレースペースへペースアップしていこう。スタート直後のオーバーペースほど回避したいことはない!
セバスチャン・キーンレ

セバスチャン・キーンレ

© James Mitchell/Red Bull Content Pool

自分のペースを掴んだら、そのペースをキープしよう。この日に向けてトレーニングを重ねきたことを思い出して、思い切り楽しもう。
デビューレースの後半に入ったら、自分が何を感じているのかに意識を向けつつ、水分・栄養が十分補給できているかどうかを確認して、必要に応じてエナジージェルなどを摂取しよう。飲料やジェルはトレーニングでテスト済みの製品を持ち込むべきだ。
プロテインシェイクをボウルに注ぐ

プロテインシェイクをボウルに注ぐ

© Roy Schott

ラスト3〜5kmはかなり厳しくなるだろう。しかし、だからこそ、思い切り楽しみたい。そこを乗り越えればあとはゴールだ。歯を食いしばってプッシュし続けよう。ハーフマラソンを完走すれば称賛と拍手が待っている!
キーンレは次のアドバイスを最後に送っている。「レース終了後は炭水化物とプロテインをなるべく早く補給しましょう。私はレース直後に炭水化物とプロテインが入ったシェイクを飲んでいます。理想の割合は炭水化物2、プロテイン1です。これを飲めば急速にリカバリーできます」
▶︎RedBull.comでは世界から発信される記事を毎週更新中! トップページからチェック!

関連コンテンツ

Wings for Life World Run

毎年世界中から約10万人以上のランナーが参加する、最大規模のチャリティーランイベント『Wings for Life World Run』の2024年大会が開催。

イベントをチェック