Gaming
過去数年で私たちが学んだことがあるとすれば、人生はオンラインミーティングに振り回されるのには短すぎるということだ。夢や希望を後回しにする日々は過ぎ去った。また目標に向かって進むときがやってきたのだ。
その目標がプロゲーマーなら、これまで経験したことがない試練に直面することになるだろう。プロゲーマーになるためには、ハードワーク、才能、幸運はもちろん、Red Bull Gaming Sphere Tokyoのようなワールドクラスの施設が必要になるときもある。しかし、不可能な目標ではない。
そこで今回は、プロゲーマーとして成功を収めるためのアドバイスをまとめてみることにした。まずは基本の確認から始めよう。
プロゲーマーとは? 必要なスキルは?
プロゲーマーとはeスポーツのメジャーイベントやトーナメントに出場しているプレイヤー(eスポーツプレイヤー)で、プロサッカー選手やプロテニス選手と同じように結果を出すための準備を念入りかつ本格的に進めている。
基本的に、プロゲーマーは専門にしているジャンルを持っており、同ジャンル内の複数タイトルを掛け持ちしたり、切り替えたりしているプレイヤーがいる一方、ひとつのタイトルに絞っているプレイヤーもいる。
たとえば、レッドブル・プレイヤーのAdel “Big Bird” Anoucheの専門ジャンルは格闘ゲームで、『Dragon Ball FighterZ』をプレイしたこともあるが、基本的には『ストリートファイター』シリーズにフォーカスしており、【Red Bull Kumite 2023】優勝などこれまでにいくつもの好成績を収めている。
また、トップレベルのプロゲーマーの多くがeスポーツオーガニゼーション(organisation)に所属している。
eスポーツオーガニゼーションとはオンラインランキングやLANトーナメント、配信などで活躍しているトッププレイヤーたちを抱えている組織・団体で、強豪オーガニゼーションはタイトルごとにチームやプレイヤーを用意している(例:米国のCloud9は『VALORANT』チーム、『リーグ・オブ・レジェンド』チーム、『鉄拳』プレイヤーなどを抱えている)。
しかし、“他のプレイヤーとは一線を画すプレイヤーになり、トップレベルの成績を収める” のは「言うは易く行うは難し」だ。トップに立つためには長時間の練習が必要になるだけではなく、天賦の才能が求められるときも少なくない。さらには知性やプレッシャーに耐えられる強靭なメンタル、試合の流れを読む力、超高速の反応時間なども欠かせない。
プロシーンの競争は厳しいのか?
プロシーンの競争は非常に厳しい。プロプレイヤーたちは、高額の賞金が用意されているトーナメントの準備に追われていないときはYouTubeやTwitchのチャンネル登録者用にコンテンツを制作したり、新しいプレイや戦術を開発したりしている。超一流のプレイヤーでも複数の活動を切り替えながらライバルたちに差を付けようとしているのだ。
また、プロゲーマーの引退平均年齢は26歳で、長いキャリアが築ける保証もない。ある程度年齢を重ねているプレイヤーがプロになるのも不可能ではないが、eスポーツでは体力とスピードが問われる。
というわけで、プロシーンは簡単ではなく、ライフスパンも短いが、信じられないミラクルが起きるときがある。
2019年に公開されたRed Bull TVのドキュメンタリー『Against All Odds』は、苦境に立たされた『Dota 2』のプロチームOGがドン底から這い上がってシーン最大・世界最大のトーナメント “The International 18”を制して優勝賞金1,400万ユーロを勝ち取るまでを追っている。
1 時間21 分
Against the Odds -大逆転物語-
2018年、ビデオゲーム『Dota 2』のプロチームOGは最悪の状態だった。遺恨を残す形で主力が移籍し、シーン最大のトーナメントTI8の予選免除も逃していた。esports史上最高賞金総額を毎年更新しているビッグトーナメントに、傷だらけのまま挑んで栄光を掴んだ彼らのミラクルを追う。(日本語字幕)
プロゲーマーの収入は?
プロゲーマーの収入はシーンの規模やプレイヤーの人気によって大きく変わってくる。先述した『Dota 2』シーン最大・世界最大のトーナメント “The International” は賞金総額3,000万ユーロ(約47億4,000万円)が用意されるが、レーシングゲームのトーナメントの賞金総額は高くても3万ユーロ(約470万円)ほどだ。
このような格差があるため、多くのトッププロゲーマーたちはスポンサー契約、ブランド契約、マーチャンダイズ(グッズ)販売、配信の広告収入などからも収入を得ている。
さて、基本を確認したあとはプロゲーマーになるためのアドバイスをチェックしていこう…。
01
情熱を注ぐ
自分は何が得意だろうか? どのタイトルが好きだろうか? 賞金や名声などは一旦忘れよう。これらはあと回しにしても問題ない。何よりも先にやるべきことは、自分の情熱を注いで自分の才能を発揮できるタイトルを見つけることだ。
プロになるためには熱心に取り組み、親指の感覚がなくなるまで毎日プレイしなければならないので、努力を継続できるタイトルを見つけることが何よりも重要なのだ。また、タイトルを見つけたあとはキャラクターも見つけなければならない。Big Birdは格闘ゲームでは好きなキャラクターを見つけてそのキャラクターを使い続けることが重要だと指摘している。
02
生活のバランスを取る
プロゲーマーになるという目標に自分のすべてを賭けてしまうのは良くない。ある程度強いアマプレイヤーからワールドタイトルに挑戦できるトッププロプレイヤーになれる可能性は非常に低い。そこで最初はプレイ時間を増やすことから始めよう。
対戦数をできる限り増やし、YouTubeやTwitchでチュートリアルや攻略方法を学び、ライバルたちからフィードバックをもらい、弱点を補強していくことで最強を超えていくのだ。
ゲーミングを自分の生活に上手く組み込んでいければ、ブンデスリーガRBライプツィヒに所属するレナ・グルデンフェニヒのように昼間はプロサッカー選手として活躍し、夜は同クラブのeスポーツチームのメンバーとしてプレイする生活が送れるようになるかもしれない。
対戦前に瞑想して自分の周りの雑音を消しています。ストレッチもします
03
配信で注目される
先述した通り、プロゲーマーの収入源はトーナメントやイベントへの出場だけではない。YouTubeやTwitchのようなプラットフォームでの配信に力を入れれば熱心なファンを獲得して、チャンネル登録だけでかなりの金額を稼げるようになる。
トップレベルの配信者たちは視聴者を引きつけ、彼らと上手く接点を持ちながら親交を深めている。たとえるなら、誰もが参加して楽しめる “デジタルキャンプファイヤー” を開催しているのだ。視聴者が配信を楽しみ、配信者が視聴者との関係を深めて恩恵を得られれば、ウィン=ウィンの関係になる。
また、配信はコミュニティの創出にも適している。自分のゲーミングエクスペリエンスを他人と共有すれば、「自分のプレイを他人に見られる」感覚を学べるが、誰かがいることでモチベーションが低下したときにもプレイしようと思えるようになる。
04
オンラインでランクを上げる
「セルフプロモーション」に敵うものはない。周囲に自分の存在を気付いてもらいたいなら練習あるのみだ。トップに登り詰めることができれば、プロへの道が開ける可能性が高まる。
『FIFA』シリーズのeスポーツシーンでは【ウィークエンドリーグ】で好成績を収めたことでプロになったプレイヤーが少なくない。自分の好きなタイトルのオンライン対戦でランクを上げていけば、知らない間に立派な “履歴書” が手に入るというわけだ。
『コール オブ デューティ』シリーズのトッププレイヤーJukeyzのターニングポイントはプレステージの最上ランク到達だった。最上ランクに到達したことで彼はトーナメントSyndicate Sundays出場権を得ると同時にソーシャルメディアでの人気も獲得した。このときをキャリア最高のハイライトとしている彼は次のように振り返る。
「『Warzone』最初のメジャートーナメントだったSyndicate Sundaysで優勝したとき、僕のチームはかなりの格下に見られていました。他のどのチームもプロプレイヤーを用意していた中、アマチュアだった僕たちは不可能を可能にしたのです」
「このときの僕のプレイを誰もが知っているTom Syndicate(Syndicate創設者)が見ていたことで、トーナメント終了後に多くのファンを獲得することができたのです。優勝する前から僕の配信はある程度の人気があったのですが、あの瞬間からすごい勢いで成長していきました」
05
近所のイベントやトーナメントを見つける
プレイの自信が深まっていったら、近所でイベントやトーナメントが開催されていないか調べてみよう。イベントやトーナメントで得られる経験と露出の大きさは桁違いだ。また、プレッシャーを感じながら観客の前でプレイするというのがどのようなものなのかをより具体的に理解できる。
さて、ここでFPSをプレイしたいと思っている人に朗報がある。世界50カ国・300以上の学校が参加する『VALORANT』トーナメント【Red Bull Campus Clutch】が日本でも開催されるのだ。この学生専用トーナメントを勝ち抜いてワールドファイナル出場権を獲得すれば、プロプレイヤーたちと同レベルのビッグステージでプレイできる。
06
植物を育てる
高い集中力を誇るプロゲーマーになるためにはどうしたら良いのだろうか? 答えは “植物を育てる” だ。『リーグ・オブ・レジェンド』のレジェンドプレイヤーFakerは成功の秘訣について訊ねられたとき、「観葉植物を育てること」という誰も予想しなかった回答をした。
Fakerは「観葉植物をよく見える場所に置いて、水やりを忘れないようにしています。観葉植物は目の癒しになりますし、メンタルを落ち着かせてくれます。緑色には落ち着かせる効果があるんです」と続けているが、彼の発言は正しい。観葉植物は集中力を高め、脳に良い影響を与えることが証明されている。
ゲーミングが自宅中心の活動であることを踏まえれば、観葉植物を自宅に置けばゲーミングのパフォーマンスが上昇することが期待できる。尚、Fakerはメンタルを調整するために瞑想も取り入れている。
「僕はプレッシャーがかかる状況でプレイすることに慣れています。なぜなら、冷静を保つメソッドを開発したからです。僕は対戦前に瞑想して自分の周りの雑音を消しているのです。あとはストレッチもしますね」
07
メタを理解・活用する
メタ、つまりそのときのシーンの流行・傾向を理解することが勝利に繋がる。新作、修正パッチ、アップデートがリリースされるや否や、メタはソニック・ザ・ヘッジホッグよりも高速で変化する。できるだけ早く対策を用意できれば、ランキングを駆け上がってトップレベルと対戦できるようになるだろう。
自信が得られれば、誰が相手でも勝てる、最低でも互角の勝負ができると思えるようになります
08
しっかり寝る
スポーツ科学を学び、現在はプロスポーツコーチとして活躍しているバリー・ブリッジズはたった瞬き40回がeスポーツトーナメントでの優勝と早期敗退を分ける可能性があると指摘し、次のように続けている。
「睡眠はゲーミングに不可欠な長期記憶を回復する助けになります。対戦を繰り返しながら新しいスキルを学んでいくときに長期記憶は非常に重要です。正しく眠れば消化器官が規則正しく機能するようになり、燃え尽き症候群や疲労感を回避できるようになります」
「また、反応時間とハンドアイコーディネーション(手と目の協調)も高まります。これらすべてがプロゲーマーには不可欠です」
09
マンネリを避ける
「ゲーマーは実家暮らしをしている」という往年のイメージはとっくになくなっているかもしれないが、トップに立つつもりなら、ひとつの場所で多くの時間を過ごしがちになる。しかし、同じ場所に留まっているとメンタルが疲労してくるので、Red Bull Gaming Sphere Tokyoのような練習したり、新しいプレイヤーに出会えたりする別の場所を探すようにしよう。
ちなみにRed Bull Gaming Sphere は東京、ロンドンをはじめ世界各地に存在している。中でも2023年にデンマーク・オーフスにオープンしたばかりのRed Bull Gaming Sphere Aarhusは最大級でゲーミングPC160台、eスポーツアリーナ、配信ルーム、コンソールルーム、レーシングシミュレーター、スナックバーが用意されている。
10
自信を深める
チャンピオンのように考えることができれば、チャンピオンになれる。実際はそこまで簡単ではないかもしれないが、自信を得て、相手を威圧するような歩きで対戦台へ向かったり、窮地に追い詰められても逆転できたりすれば大きなプラスになる。
『CS:GO』のトーナメント【Red Bull Flick 2020】を制したF1REPOWERに所属するプロプレイヤーSekiroは「自信がとにかく重要です。自分より上手いプレイヤーと対戦すれば、負けるかもしれないと思うかもしれません。ですが、自信があればそう思わなくなります。誰が相手でも勝てる、最低でも互角の勝負ができると思えるようになるのです」と語っている。
11
よくある質問
1. プロゲーマーの収入は?
プロゲーマーの収入は個人差が大きい。年収が数百万ユーロを超えるプレイヤーがいれば、数万ユーロのプレイヤーもいる。また、なんとかやりくりしているプレイヤーもいる。
しかし、稼げるという理由だけでeスポーツでのキャリアを選べば成功できないだろう。金銭だけを求めて平均的なプレイヤーからトップレベルに辿り着ける確率はゼロに近い。
2. どこから始めれば良いのか?
まず、自分が情熱を注げるタイトルにeスポーツシーンが存在するかどうかを確認しよう。シーンが存在してトーナメントも積極的に開催されているようなら、次は賞金や報酬を確認だ。
そのあとでトーナメントの出場条件や開催場所を確認したら、今回の記事を参考にしながらハードワークを重ねてトップを目指していこう。
3. 誰でもプロゲーマーになれるのか?
もちろん!
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