世の中に存在するすべてのブレイカーが自分だけのスタイルを手に入れたいと思っている。本当の自分を余すところなく表現してくれるムーブはダンスフロアに集う彼らのアイデンティティになるからだ。
ブレイキンのワールドチャンピオンに複数回輝いた経験を持ち、現在はRed Bull BC One All Starsのメンバーとしても活動しているB-Boy Mennoは長い時間をかけて自分だけのスタイルを手に入れており、地球上で最もユニークでオリジナリティに溢れるブレイカーのひとりという評価を勝ち取っている。
B-Boy Mennoを知らない人はワールドアーバンゲームズ2019のB-Boy Mennoのクリップ(下)をチェックしてみよう。
5分
ワールドアーバンゲームズ2019:B-Boy Menno vs. B-Boy Bumblebee
B-Boy Mennoが自分のスタイルの発見と創出のプロセスを語りつつ、マイスタイルの発見方法について他のブレイカーへアドバイスを送ってくれた。
− 自分のスタイルを言葉で説明するとどうなるかな?
「トランジション、クリエイティビティ、フォーム、シェイプのコンビネーション」が僕のスタイルの特徴と言えるね。予想外のムーブでフロアを移動する自分のスタイルを僕は “バトル・タクティック” と呼んでいる。
− 自分のスタイルを見つけるまでにどれだけかかった?
自分のブレイキンの方向性を決めるまで少なくとも10年はかかったね。自分のスタイルを見つけるまでは約15年かかった。でも、終わりはないし、自分の身体の声に耳を傾けて、何が自分にとってベストなのかを見極めることが何よりも重要だ。
ブレイキンのスタイルはブレイキンへのアプローチと同義と言える。とにかく時間がかかるんだ。1日で見つけられるものじゃない。
− 自分のスタイルに影響を与えた人物は? 何からインスピレーションを得たのかな?
僕のブレイキンに大きな影響を与えたのはB-Boy Lago、Skill Methodz、Havikoroだね。彼らを見ながら学んでいった。YouTubeでは『Out for Fame』や昔の『Freestyle Sessions』をチェックしていたよ。
僕が一番好きなバトルのひとつは『Out for Fame』のファイナル、HavikoroとSkills Methodzのバトルだ。あの動画は僕に大きな影響を与えたね。Lil Jon、Moy、Flea Roc、Abstrakのようなブレイカーたちは最高だった。
それから、ブレイキンとヒップホップの歴史を学ぶようになり、Maurizio、Swift Rock、Aktuel ForzeのKarim Baroucheなどに影響を受けたけれど、実際に自分の中で形になっていったのはもっとあとの話だ。
そのあとはニュースクールに興味を持つようになるんだけど、僕は常にオールドスクールのフレーバーを入れようとしているよ。
− どうやって新しいムーブを生み出しているの?
新しいムーブを生み出す時のトレーニングアプローチはとにかく自由なんだ。でも、小さなムーブにフォーカスしていく。ムーブをフレームに分解して、ひとつひとつの別バージョンを作っていくんだ。
こうやってひとつのアイディアをどんどん掘り下げていく。なぜなら、トレーニング中に複数のテーマに同時に取り組むのは難しいからさ。
ひとりでトレーニングする時もあるし、ジャズやMiles Davisを聴きながらトレーニングする時もある。こういうトレーニングが僕にクリエイティビティをもたらしてくれる。
あとは、ハードトレーニングではなくてスロートレーニングを意識しているよ。
− 自分のスタイルを生み出そうとする時に自分を見失ってしまった経験は?
生み出そうとして穴にはまってしまったり、ダンスや自分からフィーリングが得られなくなったりした経験はもちろんあるよ。そうなった時は切り替えるんだ。これが大きな助けになってきた。
違う街へ引っ越して、自分の人生を少し変えて、自分のダンスを振り返る。これが大事だ。でも、トレーニングウェアを変えるだけでもフィーリングに違いをもたらせる時がある。
音楽を変えたり、いつもとは違う人たちとトレーニングしてみたりするのも悪くない。同じルーティンにはまらないようにしよう。
こういうちょっとした変化がクリエイティビティに新しいインスピレーションやアイディアをもたらす助けになるんだ。
− ユニークなスタイルを得るためのマインドセットはあるのかな?
マインドセットはとても重要だ。自分に対して冷静かつ批判的な姿勢を保つ必要がある。
なぜなら、色々なブレイカーが色々なムーブをするわけだから、自分に相応しいと思えるムーブを冷静に選び、それらを組み合わせて自分のスタイルを作り上げていかなければならないからさ。
何が流行っているのか、みんなが何をしているのかを細かくチェックして、ハイプに飛びつかないようにしつつ、自分からハイプを生み出そう。自分と同じことをやっている人が多いなと感じたらすぐに変えるべきだね。これは絶対に必要だ。
ユニークでいたいなら、他とは違う存在にならないといけない。他の人がやっていることをやっても面白くないだろ? 他の人に似ているなと思ったらやめるか変えて、それとは完全に異なる何かをやろう。
あとは、自分と同じマインドセットを持っている人たちに囲まれていることも重要だ。ひとつのテーマについて同じ意見や考えを持っている人たちと行動しよう。彼らは自分のスタイルやムーブを正しく批判してくれる。
Hustle Kidzがユニークだったのはここだよ。Funky Stylesの最初の講師もそうだった。バイト(Bite:誰かのマネ)かどうか、他に似ているかどうかについて教えてくれた。
− どうやって自分のスタイルがフレッシュで優れていると判断しているの?
僕は年上のいとこと一緒に本格的にブレイキンを始めたあと、自分のスタイルがユニークだということを理解した。
僕はいとこたちからインスピレーションを得ていたし、彼らは僕よりも断然上手かった。僕はフィジカル的にそこまで恵まれていなかったからね。でも、ドープでユニークなムーブをメイクすることができた。
その頃にいとこたちから「Mennoは自分だけのユニークなブレイクをしてるよな」と言われたのを良く覚えている。これが大きな自信になった。
それからバトルで勝てるようになり、自分のスタイルが優れていることも理解すると、自信がさらに深まった。自分のスタイルが現場で通用することを実感した。
− 自分だけのスタイルを手に入れたいブレイカーにアドバイスを送ってくれるかな?
まずは先輩たちからインスピレーションを得てみよう。MaurizioやKen Swift、Crazy Legs、Storm、Swift Rock、Aktuel Force、New York City BreakersのようなオールドスクールなB-Boyたちをチェックしてみよう。ブレイキンのリアルなエッセンスを感じ取って、そこに自分らしさを加えていこう。
でも、動画を見すぎるのは良くない。影響を受けすぎてしまうからね。だからすべてのバトルを見る必要はない。自分を優先しよう。
あとは流行っているムーブに飛びつかないようにしよう。自分に対して批判的な目を持ちながら、自分に正直でいよう。