何の知識も持ち合わせていない人のために説明すると、eスポーツ(electronic sports)とは「競技環境でビデオゲームをプレイすること」で、基本的にはプロアマを問わないが、プロシーンを指すときが多い。プロシーンでは毎年何百万ドルという大金が賞金として用意されており、世界中のファンが配信や中継を視聴して推しのプレイヤーやチームを応援している。
このようなeスポーツに飛び込んでみたいなら、少し注意が必要だ。初心者にはラーニングカーブ(学習曲線)が非常に急になる可能性が高く、他のファンと同レベルになるためには相当なコミットメントが必要になる。しかし、努力を厭わなければ、満足感の高い娯楽・趣味になるだろう。
そこで今回は、超初心者のための入門ガイドを用意した。
まずはタイトル(ゲーム)を選ぶ必要がある。開催されているイベントの規模で判断する前に、自分が好きなジャンルを判断しよう。どんなゲームをプレイしたいのか、どんなゲームを理解できるようになりたいのかを考えて、そこから進めていこう。
興味が持てそうなタイトルをいくつかピックアップして試してみよう。プレイ動画の視聴時間が増えて自分でも積極的にプレイするようになれば、それが好きなゲームだ。
格闘ゲームの大半はソロでプレイするが、イベントやトーナメントによってはチーム戦のフォーマットも用意されている。とはいえ、勝敗は個々のプレイヤーの責任になるので、相手プレイヤーまたはキャラクターの性能や自分との相性を理解しておくことが成功のカギを握る。
日本にはウメハラ、ボンちゃん、ガチくん、aMSaをはじめとするトップレベルの格闘ゲームプレイヤーが数多くいるので、彼らの配信やコンテンツをチェックするのも助けになるだろう。
49分Street Fighting -ストリートファイティング-世界最強の格闘ゲームプレイヤーたちが集結する、Red Bull Kumite。『ストリートファイターV』のプレイヤー、Xiao Hai、Daigo、Gamerbee、Tokido、Luffyらが決死の覚悟で大会に備える。
FPSはタイトルごとにかなり内容が異なるが観戦性に優れているものが多く、初心者ファンでも楽しめる。
FPSには、『CS:GO』や『CoD』、『R6S』のような戦争をシミュレートした現実的なタイトルが存在する一方、『OW2』や『VALORANT』のようなSF要素が加えられているカラフルなタイトルも存在する。
参考にできる動画がYouTubeに星の数ほど存在する他、特定のキャラクターやマップ、武器の使用方法や攻略方法を教えてくれているサイトも数多く存在するので、リソース不足に陥ることはないだろう。
MOBAもチーム戦で、マップの両端に配置された2チームがお互いの陣地へ進軍していく。代表的なタイトルは『リーグ・オブ・レジェンド』や『Dota 2』で世界の競技人口は非常に多い。タイトルごとにシステムや目的は異なるが、敵チームの基地(拠点)を破壊すれば勝利となる。 コンピューターが操作するクリーチャー(ミニオン)が敵陣を目指して進軍する中、各プレイヤーがユニークな性能を備えているヒーロー(チャンピオン)を操作して、チームと進軍をアシストしていくのが基本的なゲームプレイだ。
このジャンルのゲームの大半は “基本プレイ無料” なので、コストをかけずに試すことができる。MOBAはマスターするまでが非常に難しいジャンルのひとつなので、この仕様は有り難い。現在最大のシーンを誇るのが『リーグ・オブ・レジェンド』で、日本にもトップチームがいくつか存在する。SNSやストリーミングをチェックしてみよう。
1 時間21 分Against the Odds -大逆転物語-2018年、ビデオゲーム『Dota 2』のプロチームOGは最悪の状態だった。遺恨を残す形で主力が移籍し、シーン最大のトーナメントTI8の予選免除も逃していた。esports史上最高賞金総額を毎年更新しているビッグトーナメントに、傷だらけのまま挑んで栄光を掴んだ彼らのミラクルを追う。(日本語字幕)
CCGは基本的にはシングルプレイヤー同士で対戦するデジタルカードゲームで、相手の手札(デッキ)よりも強いデッキを用意することが非常に重要になる。CCGは、反応スピードやハンドアイコーディネーション(視覚と手の連動性)には自信がないが、熟考して正確な判断を下すのが得意なプレイヤーに特に向いているジャンルと言えるだろう。
世界的な人気を獲得しているタイトルとしては『ハースストーン』、『MTGアリーナ』、『レジェンド・オブ・ルーンテラ』などが挙げられる。非常に長い歴史を持つカードゲーム『マジック:ザ・ギャザリング』のデジタル版『MTGアリーナ』は比較的複雑で難しいため、初心者なら『ハースストーン』や『レジェンド・オブ・ルーンテラ』の方が良いかもしれない。 RTSは、自分と相手のリソースや拠点、軍隊が配置されている鳥瞰視点(見下ろし型)のマップが特徴的なストラテジーゲームの一種だ。eスポーツとして人気のRTSタイトルとしては『StarCraft II』、『Warcraft II』、『Age of Empires II』などが挙げられる。『StarCraft I』は世界初のeスポーツタイトルのひとつで、RTSはMOBAの生みの親としても有名だ。 ひと言にまとめれば、RTSの最大の特徴はターン制ストラテジーとは違い、リアルタイムで常に判断を下していかなければならないところにある。MOBAが台頭したあとはメジャーなジャンルとは言えなくなっているかもしれないが、人気は根強く、プレイを学べるコミュニティも存在する。
今回紹介したジャンル以外にもeスポーツシーンが存在するジャンルはいくつもある。スポーツ、ダンス、レーシング、サードパーソンシューター、バトルロイヤル、RPG、パズルゲームなどもイベントやトーナメントが開催されているので興味がある人はチェックしてみると良いだろう。
好きなゲームが分かったら、あとは参加するだけだ。最近は、年1回開催の大規模なワールドトーナメントから地元で開催されている小規模なローカルイベントまでのありとあらゆるイベントやトーナメントが配信されるようになっている。配信プラットフォームとしてはTwitchが世界的な人気を獲得しているが、YouTubeやMildomなど他のプラットフォームも存在する。
開催中または近日開催のイベントやトーナメントをチェックするためのカレンダーサイトも充実しているので、これらも参考にしてみよう。今回紹介しているタイトルの大半を見つけられるはずだ。但し、人気があまり高くないジャンルの場合は、コミュニティやトッププレイヤーをオンラインでフォローしておく方がベターかもしれない。 とりあえず動画を視聴したいときはTwitchやYouTubeなどの配信プラットフォームで、視聴したいゲームの名前に続けて “トーナメント / Tournament” や “イベント / event” などを入力して検索してみよう。
eスポーツ関連のニュースをフォローしたいなら、こちらも最近は数多くの選択肢が存在する。特定のYouTubeチャンネルやコメンテーター、ニュースサイト、各タイトルのオフィシャルページ、さらにはDiscordチャンネルなどをチェックすれば、最新情報を得たり、他のコミュニティメンバーと交流したりできるだろう。 YouTubeチャンネル【レッドブルプレイ】もチェック!
さて、eスポーツシーンで実際にプレイしたい人は、いくつか知っておくべきことがある。まず、ジャンルによるが、シーズン最大のトーナメントまたはイベントは基本的に “招待制” になっている。つまり、ワールドクラスのプレイヤーでない限り出場できないのだ。
ただし、格闘ゲームのようなグラスルーツにルーツを持つシーンは、誰でも自由に参加できるトーナメントや出場枠が比較的多く用意されている。
初心者に最適な “最初の一歩” は、自分が選んだゲーム内に用意されていることが多い。最近は大半のゲームにオンラインランクマッチ用モードが収録されているので、最初から自分のスキルレベルに近い他のプレイヤーと対戦できるようになっている。もちろん、学校やアーケードなどのチームやクラブに参加したり、オープントーナメントに参加したりするのもグッドアイディアだ。
自分のプレイを向上させるためには数多くの練習をこなし、プロプレイヤーから多くを学ばなければならない。必要に応じて、プレイヤーのスキルアップやネットワーク構築を目的としたスペシャルイベントやトレーニングキャンプも開催されている。
また、eスポーツコーチも存在するので、ストリーミングを視聴したり、余裕がある人は個人・グループレッスンを受けたりするのも良いだろう。自分が上達しているのが感じられて、ランクマッチで定期的に勝利できるようになってきたら、次のレベルへのステップアップを考えていきたい。 ステップアップの準備が整ったら、トーナメントに参加してみよう。ローカルまたはオンライントーナメントで腕試しをすれば、素晴らしい報酬や賞金が獲得できるかもしれない。
COVID-19の影響もあり、オフライントーナメントはやや数が減っているが、オンラインは定期的に開催されているので、時間が許す限り挑戦してみよう。そこから先は自分次第だ。トーナメントでも勝てるようになれば、もう少し上のレベルのトーナメントやプロプレイヤーたちを相手に対戦してみよう。
自分のゲームを選び、下調べを済ませたあと、eスポーツへの興味をどこまで深めるかは自分次第だ。好きなタイトルのカジュアルファンになるのもよし、複数のタイトルをフォローするのもよしだ。カジュアルプレイヤーとして年1〜2回ローカルトーナメントに参加するのも、プロプレイヤーになって賞金を稼ぐのも良いだろう。
たとえ最終的にオンラインランクマッチをプレイするだけ、または配信を視聴するだけになったとしても、他のプレイヤーやファンと同じように価値あるコミュニティメンバーであることに変わりはない。