How to start riding motocross with tips from Ben Watson
© Ray Archer/KTM/Red Bull Content Pool
モトクロス

モトクロスを始めよう!

比較的簡単に始められるモータースポーツとして世界中で愛されているモトクロスに興味を持っている人のためのスタートガイド!
Written by On-Track Off-Road
読み終わるまで:10分Published on
娯楽としてのモトクロスは、最もピュアなモーターサイクルが楽しめる。モトクロスの世界に存在するのはバイク、ライダー、トレイル、そしてスロットルだけで、交通ルールや渋滞、歩行者は存在しない。
一方、スポーツとしてのモトクロスはやや複雑で、フィジカル、メンタル、テクニック、バランス、ガッツが高いレベルで求められる。モトクロスのトップライダーの多くは、しっかりと組まれたトレーニングスケジュールとプロフェッショナルからのアシストを取り入れており、F1ドライバーやツール・ド・フランスのライダーと並び、スポーツ界を代表する強靭なフィットネスを手にしている。
しかし、有り難いことにモトクロスを始めるのはそこまで難しくはない。モーターサイクルの世界に興味を持っている人なら、あの “デコボコタイヤ” が装着されたモトクロスバイク(モトクロッサー)に乗って数ラップするだけでモトクロスの魅力に取りつかれ、このスポーツを自分の生活に取り入れるようになるはずだ。
そこで今回はモトクロスを始めたいと考えている人たちのために、現在モトクロス世界選手権のMX2クラスにHitachi KTMチームから参戦している英国のトップライダー、ベン・ワトソンからのアドバイスを交えながら、モトクロスを始めるために必要な準備と心構えを7項目に分けて紹介する。

1:BMXかMTBを手に入れてダートを走る感覚に慣れる

How to start riding motocross with tips from Ben Watson

MTBはライン攻略に役立つ

© Jan Kasl/Red Bull Content Pool

地元のトレイルや森を自転車で走れば、モトクロスに必要不可欠なホイールがラフに揺れる感覚やオフロード独特のスローペース(とはいえ、テクニックが不要なわけではない)を理解できる。また、小さなジャンプでエアの感覚を掴むことも可能だ。そして、BMXのパンプトラックでライディングすればジャンプをもう少し上のレベルまで引き上げられる。パンプトラックのジャンプではタイミングとスピード、度胸を組み合わせることが必要になるので、モトクロスライダーがどのような感覚を得ているのかを覗き見ることが可能だ。
MTBダウンヒルのトップライダーもモトクロスに乗っているよ。彼らのライディングのレベルはかなり高いんだ
ベン・ワトソン
モトクロスのプロライダーの多くはMTBとBMXをトレーニングに取り入れたり、息抜きとして楽しんだりしている。ベン・ワトソンは次のように説明している。「MTBやBMXのコントロールとテクニックにはモトクロスと共通している部分があるんだ。たとえば、MTBダウンヒルでは集中力を切らさずにベストラインを辿る必要があるよね。実はジー・アサートンのようなMTBダウンヒルのトップライダーもモトクロスに乗っているよ。彼らのライディングのレベルはかなり高いんだ」

2:モトクロッサーを購入する

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Make sure your new bike is up to the job

© Nathan Gallagher/Red Bull Content Pool

最近のモトクロッサーはハイテクマシンで、KTM、Husqvarna、Yamaha、Kawasaki、Suzuki、Hondaなどが販売している最新の4ストロークエンジンモデルには、数々の電子機器とトラクションコントロールが組み込まれている。また、メーカーによっては軽量でメンテナンスも楽な(ただし挙動はやや不安定)な2ストロークエンジンモデルも販売しており、汎用性が高く地球環境にやさしい(ただし高価)電動モトクロッサー(E-Bike)も存在する。エンデューロレーサーはスピードを重視していないので重量があり、ライトやセットアップもオフロード専用に設定されているが、公道走行の条件を満たしているモデルも販売されているので、興味がある人はチェックしてみよう。
各メーカーが定期的に最新のテクノロジーを導入しているおかげで、型落ちの中古車も数多く出回っているが、中古車の購入時にはダメージチェックを怠らないようにしたい。また、レース仕様のモトクロッサーを手に入れても、自分の車や友人の車のトランクが狭い場合は、公道輸送用トレーラーの購入が必要になるので、この点も注意しよう。

3:最寄りのモトクロス用レーストラックを見つける

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ローカルトラックに通い詰めよう

© Nathan Gallagher/Red Bull Content Pool

自宅近辺にモトクロス用レーストラックがあるかどうかチェックしてみよう。モトクロス用レーストラックは走行音が大きいので、最近は見つけるのが難しくなっており、各レーストラックは使用ルールを厳しく定めている。広大な土地を持っていて、隣人も文句を言わないという幸運な人は、そこにレーストラックを造成すれば良いが、まずは知名度が高くて信頼できるレーストラックでライディングしてみよう。その中には複数のコースレイアウトや難易度を備えているものや、ジュニア用のレーストラックを備えているものもある。ベン・ワトソンは次のように振り返る。「僕には兄貴たちがいたから、歩き始めた頃からモトクロスに乗っていた。幸運なことに僕たちには庭と周囲にスペースやトラックがあった。だから放課後にYamaha PW50で数時間ライディングするのが日課だったんだ。それで歳を重ねて上手くなるにつれ、本格的なレーストラックやいつもとは違うレーストラックでライディングするようになったのさ」
「最初は兄貴たちがレースをしている横でミニバイクのレーストラックをライディングしていた。基本的にはハードパック(固い路面)の方がライディングは簡単だね。最近、僕の友人がベルギーに向かってロンメルの砂地でライディングしたんだけど、上手くできなかったってこぼしてたよ」
尚、冬季用のインドアレーストラックも存在するが、ヨーロッパのモトクロスライダーの間では、スペインやイタリアなど、ヨーロッパ南部でのウィンターライディングがメジャーになってきている。

4:バイクスクールに通う

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プロライダーからのアドバイスを得よう

© Mirco Lazzari/Red Bull Content Pool

バイクスクールは、モトクロスビギナーにとってはやや高額に感じられるものなのかもしれないが、バイクスクールには3つのメリットがある。ひとつ目は、複数のモデルを試せるという点で、ふたつ目はあらゆるライダーを想定してレーストラックと施設が用意されているので、自分に合ったライディングを早く見つけることができるという点だ。そして最後のメリットが講師陣だ。バイクスクールでは元プロライダーやトップライダーがライディングを向上させるヒントを教えてくれる。スクールのスケジュールをチェックして彼らが特別講習をしてくれる日をチェックしてみよう。

5:地元のクラブでレースに参加する

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Motocross has a clear route to the top level

© Jaanus Ree/Red Bull Content Pool

毎日のようにライディングをしていれば、やがて付近のレースやイベントに参加できるようになる。レースやイベントを主催するクラブが登録料金やエントリー料金を設定している場合も多いが、有料のイベントやレースは安全面を管理してくれるので安心だ。
英国の場合、ジュニアやユースレベルは年齢別のカテゴリーやクラス、選手権からスタートする。そして、その中で才能とスピードに恵まれているライダーが、ヨーロッパ選手権(65cc・85cc・125cc)や、Yamaha YZ125 CupやHonda European 150などのワンメイクレースに出場するようになる。ヨーロッパ選手権は分かりやすい昇格システムが用意されており、若手ライダーたちはEMX250を経てMX2クラスのグランプリを目指していく。
英国を代表するジュニアライダーとして活躍し、現在も英国屈指のトップライダーとしてレースを重ねているベン・ワトソンは「僕たちが住んでいたミッドランズ(編注:イングランド中部)では色々なレースが開催されていて、その中から選ぶことができた。レース会場に向かったあとは、登録作業を済ませてレースウィークエンド限定のライセンスを発行してもらっていた。あとは、Red Bull Pro NationalsやMasterkidsのようなイベントにも参加したね。Masterkidsは英国代表として他の14~15人のジュニアライダーとベルギーでレースをするイベントだ。付近で開催されているレースは割と簡単に見つけられるはずだけれど、英国の場合は、住んでいる場所によって状況が異なってくるね。僕の場合はど真ん中に住んでいたから、東西南北のイベントに参加できたよ」と振り返っている。

6:正しいギア(ヘルメットとブーツは特に重要)を購入する

How to start riding motocross with tips from Ben Watson

正しいギアで身を守ろう

© Nathan Gallagher/Red Bull Content Pool

モトクロスのギアへの出費は、当然ながらバイクや輸送への出費に比べると軽視されている。しかし、ライダーの安全面の確保はモトクロスに欠かせない要素だ。最近のウェアは非常に軽量だが、Alpinestars、Fly、Answerなどのメーカーが販売している製品は耐久性の高い素材を使用している。そして、ヘルメットやグローブの他に身を守ってくれるギアとしてはブーツも重視しておきたい。また、胸や背中にしっかりとしたプロテクションを装着しておけば、ダートトラックから弾丸のようなスピードで跳ね上がる小石から身を守ってくれる。膝をひねって痛める心配が少なくなるニーブレースや、LeattやAtlasが販売しているネックブレースも絶対に用意しておきたいギアだ。モトクロスではクラッシュが不可避なので、プロテクション周りは全て揃えておこう。
更にScottや100%が販売している強力なゴーグルにティアオフやロールオフのフィルムを貼り付けておけば、レース中の視界が確保できる。ベン・ワトソンはギアについて次のように意見を述べている。「僕にとって一番重要なギアはブーツだね。これは経験から言っているんだ。2012年に自宅でミニバイクに乗ってウィリーを試していた時に横転してしまったんだけど、バイクが僕の上にのしかかってきて、僕の足首の下あたりに穴を開いてしまったんだ。結局、僕は14針も縫うことになり、重要なレースを欠場してしまった。ブーツを装着していたらこんなことにはならなかったということを手痛く学んだのさ」

7:練習を重ねる!

How to start riding motocross with tips from Ben Watson

ライディングを重ねることが上達の近道

© Olaf Pignataro/Red Bull Content Pool

ベン・ワトソンは1シーズンの中でグランプリ19戦と英国選手権8戦、そして複数のスポンサー主催の海外イベントに参加しながら、フィットネスとマシンテストのためのライディングをこなしている。彼の週末のスケジュールは非常にタフなのだ。しかも、他のプロモトクロスライダーと同じように、平日もライディングをこなしてトレーニングに励んでいる。言ってしまえば、モトクロスライダーほどライディングしている時間が長いプロモーターサイクリストはいないのだ。
モトクロスは多種多様なコンディションでのライディングが求められるスポーツなので、アマチュアライダーにとっては、いかにフィットネスとテクニックを鍛えながらライディングを成長させて次のレースに備えていくかが非常に重要になってくる。ベン・ワトソンは次のように説明する。「ライディングが最高のトレーニングだよ。なぜなら、モトクロスに必要な全ての筋肉を使うからね。心拍数モニターを装着すれば、30分のライディングがジムでのトレーニングとは比べられないほどハードだということが理解できるはずさ。アドレナリンが放出されるから、通常以上に体を動かすことになるんだ。いずれにせよ、ジムでマシン相手にトレーニングしているよりライディングしている方が楽しいし、新しいスキルを学んだり、弱点を克服したりすることもできるよね」

モトクロスを始めたくなった? 以下にモトクロスの始め方を箇条書きにしてまとめておくので興味を持った人はメモしておこう!

  1. BMXかMTBを手に入れてダートを走る感覚に慣れる
  2. 最寄りのモトクロス用レーストラックを見つける
  3. バイクスクールに通う
  4. 地元のクラブでレースに参加する
  5. 正しいギア(ヘルメットとブーツは特に重要)を購入する
  6. 練習を重ねる!