トレント・アレクサンダー・アーノルドは、プレミアリーグでプレーする他のサッカー選手とは違う。
天賦の才と鋼の意志、そしてワールドクラスの広い視野を備えているトレントは、モダンサッカーにおけるサイドバックを再定義しながら、新たな歴史を作り続けている。
所属するリヴァプールのプレミアリーグ2019-20シーズン優勝に貢献したトレントは、1シーズンにおけるディフェンダー最多アシスト記録を更新(13)したが、これは前シーズンに自分で打ち立てた記録をさらに更新したことを抜きにしても驚異的な記録だった。
また、トレントはチャンピオンズリーグ優勝、プレミアリーグ優勝、バロンドールノミネート、PFA年間最優秀賞を含むいくつものタイトルも手にしている。少年時代から所属しているローカルクラブから移籍することなくたった22年でこれらすべてを手にしたという事実は、彼をさらに希有な存在にする。
しかし、スティーブン・ジェラードに憧れていたリヴァプールの少年はいかにして新たなローカルヒーローまで成長したのだろうか? アカデミーからファーストチームへ昇格するためにはどのようなメンタルが必要だったのだろうか? そして何よりも重要なことだが、これまでにどのようなトレーニングを積んできたのだろうか?
これらの疑問へのトレント・アレクサンダー・アーノルドの回答をチェックしていこう。
− 普段の練習の頻度と内容を教えてください。
試合時間に合わせて練習します。ですので、たとえば、次の日の16時半に試合が始まるなら、16時半から練習があります。このような日は14時半に集合して19時に解散しています。トレーニングセンターには合計5時間半ほど滞在していますね。
週後半に向けて徐々に練習がきつくなっていきますが、試合前日は戦術確認ですので、ほとんど身体を動かしません。高強度の運動をする代わりに情報を頭に詰め込みます。身体を酷使した週は、練習前にフィジオ(理学療法士)にマッサージをしてもらうときもありますね。週に2〜3試合あるときのスケジュールは試合かリカバリーのどちらかです。
− 練習のスケジュールを管理するトレーナーはいますか?
アシスタントコーチのペピン・リンダースが練習メニューを組んで内容を説明してくれますが、ユルゲン・クロップ監督が全体を見ています。監督は常に現場にいて僕たちをチェックしていますし、必要に応じて指示を出しています。
彼の選手管理方法はメンタルを重視しています。選手をゾーンに入れるために何を言えば良いのかを監督は理解しているのです。選手ごとに伝える内容は異なります。監督は多くを言いませんが、何かを言うときは選手たちは熱心に耳を傾けています。監督は正直に話してくれますし、勉強になることを言ってくれるからです。
− ピッチへ向かう前にウォームアップをしていますか?
ジムで40分ウォームアップしてからピッチへ向かっています。ウエイトは使いません。身体をほぐすことが目的なので、ストレッチなどをしながら全身の筋肉に熱を入れて、足首と関節を十分に緩めてからスパイクを履いています。そのあと、ピッチで1時間半練習します。
自宅ではヨガやストレッチを数多くこなしています。シーズン中は休みなく仕事をしているようなものですし、トレーニングセンターから離れても、リカバリーと睡眠の質を向上させるためにやれることは沢山あります。
− 休息日はどうでしょう? 週何日必要ですか?
休息日は週1日くらいですね。僕は月3日あれば十分です。試合数が多いほど自分には良いですね。僕は試合が好きなので。試合は激しいですし身体への負荷も大きいですが、自分には一番合っています。
クラブには水中トレッドミルやスイミングプール、温水・冷水ジャグジー、アイスバスが完備されているので、リカバリーを促進できます。リカバリーは、アイスバスに10分浸かる選手がいれば、3分だけの選手もいます。冷水ジャグジーに1分、温水ジャグジーに1分のセットを5セット繰り返す選手もいますね。色々試しているんです。
競争が最高の自分を引き出してくれるので、練習でも競争が必要ですね。競争要素がないと、モチベーションを保つのが難しくなります
− 定期的にこなしている練習メニューの中で、あなたのようなサイドバックを目指している人におすすめできるものはありますか?
1対1ですね。自分にとって最大の脅威になる選手をチーム内で見つけて、勝負してもらいましょう。僕の場合は、サディオ(・マネ)ですが、前線の3人(マネ、モハメド・サラー、ロベルト・フィルミーノ)なら誰でもタフな相手になりますね。
平日にサディオを相手にするのは骨が折れますが、誰が相手でも彼ほど大変ではないというメンタルで週末を迎えることができます。1対1はメンタルのブーストも得られるんです。あとはパスとクロスの練習も好きなので、付き合ってくれる選手を見つけて一緒に取り組んでいます。
− フリーキックが上手くなりたい人にアドバイスをお願いします。
まずは自分に合うテクニックとルーティンを見つける必要があります。自分に最適な歩数、ボールを蹴る位置、ボールと自分の距離などを見極めましょう。また、セットプレーは一貫性が重要です。同じアクションを繰り返す必要があります。助走2歩のフリーキックのあとに助走4歩のフリーキックを蹴ることはできません。このようなブレがあると同じボールを蹴れません。
すべてが同じである必要があります。そのルーティンを見つけたあと、実際にボールをコントロールする方法を練習していきます。位置やアングルに分けて練習します。フリーキック練習は1日10本追加するところから始めてみましょう。
− ファーストチームと初めて一緒に練習したときのことを覚えていますか?
大きなステップアップでしたね。強烈な経験でした。こちらの気を良くするようなことは誰も言ってくれません。指示通りにできていなければすぐに指摘されるので、常に指示通りにできている必要があります。
「ファーストチームで練習するなら、ファーストチームのレベルに合わせろ。こちらのレベルを下げるような真似はするな。できる、できないは問わず、こちらのレベルに付き合ってもらうぞ」と言われているようなものです。
モチベーションを保つ方法は、すべてにおいて負けたくない、勝ちたいという競争心を持つことです
− 一番苦手な練習は何ですか?
プレシーズンの練習があまり好きではないですね。サッカーをしたいので、ボールなしで走るのは好きじゃないんです!
フィルジル(・ファン・ダイク)、ヘンド(ジョーダン・ヘンダーソン)、ミル(ジェームズ・ミルナー)、ロボ(アンドリュー・ロバートソン)のような年上の選手たちが、強度が適切かどうか毎日チェックするんです。ミルほどフィットしている選手は見たことがありませんね。彼はプレシーズンの乳酸値テストでよくチームベストの結果を出しています。
− モチベーションを保つ方法を教えてください。
競争が最高の自分を引き出してくれるので、練習でも競争が必要ですね。競争要素がなくて、数やスコアを記録しない練習では、モチベーションを保つのが難しくなってしまいます。
モチベーションを保つ方法は、すべてにおいて負けたくない、勝ちたいという競争心を持つことですね。どんなことでも、誰も気にしていなくても、僕はいつも自分が取り組んでいることにスコアをつけるようにしています。
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