Ida Mathilde, Red Bull athlete, in action at the Hyrox World Championship in Nice, France, on 7th June 2024.
© Baptiste Fauchille/Red Bull Content Pool
フィットネス

【HYROXとは?】ジムトレーニングとの違いを比較!

世界で人気急上昇中のフィットネスレースHYROXはジムトレーニングよりも優れているのだろうか? 違いと共通点を解説する。
Written by Agata Strausa
読み終わるまで:10分Published on
フィットネスを鍛えるようとするときに、ひとつの疑問が必ず生まれる:HYROX(ハイロックス)の方が伝統的なジムトレーニングよりも優れた運動能力が手に入るのだろうか?
この疑問の答えはシンプルではない。というのも、運動能力はひとつにまとめられるものではないからだ。運動によって求められる運動能力が異なる。というわけで、本記事では「答えが簡単に出せない理由」「HYROXとジムトレーニングの違いと特徴」について解説していく。
「ワールドシリーズ・オブ・フィットネス・レーシング / World Series of Fitness Racing」というサブタイトルが付けられているHYROXは、ランニングとファンクショナルトレーニングを組み合わせてレースフォーマットに落とし込んでいる競技プラットフォームで、持久力、筋力、スタミナを競い合う。
一方、長年親しまれてきたジムトレーニングは、筋力アップ、減量、健康促進などそれぞれのフィットネスゴールに合わせて個人でルーティンを組める自由度の高いトレーニング環境だ。
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HYROX vs. ジムトレーニング

ジムトレーニングには、フィジカルフィットネス、ストレングス、健康を高めるための多種多様なエクササイズとワークアウトが用意されている。
HYROX世界選手権に出場したジェイク・ディアデン

HYROX世界選手権に出場したジェイク・ディアデン

© Baptiste Fauchille/Red Bull Content Pool

通常は、フリーウエイト、マシン、心臓血管系キットなどジムの設備を使用して行う。ジムトレーニングのルーティンは自由に設定できるので、筋肉の増量、心肺の強化、柔軟性の向上など個人の目的にフォーカスできる。
ピークパフォーマンスへの到達、運動能力の長期的向上、健康の維持には正しいフィットネスプランの選択が重要になるが、ジムトレーニングとHYROXはどこがどう異なっているのだろうか?
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HYROXとは?

HYROXとはファンクショナルトレーニングとランニングを組み合わせたフィットネスレースだ。筋力、持久力、フィットネスを共通フォーマットで競い合うため、異なるイベントやロケーション間でパフォーマンスを比較・評価することができる。
HYROXは参加のハードルが低く、多くのジムファンが取り組んでいるが、誤解は禁物だ。このフィットネスレースには優れたフィットネス念入りな準備が必要になる。
2017年にドイツで誕生したHYROXは、当時から「あらゆるレベルのアスリートが参加できる共通フォーマットでのフィットネス競技」を目指してきた。HYROXダブルス部門のワールドチャンピオン、ジェイク・ディアデンは次のように語っている。
エントリーレベルは非常に低いです。なぜなら、他のスポーツのように特殊あるいは専用のスキルをあまり必要としないからです。ジムファン、HYROXアスリートを問わず、誰でも参加できます」
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HYROXのワークアウトは?

HYROXのレースイベントには8種類のファンクショナルトレーニングメニューが含まれており、各メニューの前に1kmのランニングを行う。レースプログラムは以下のようになっている:
  • ランニング 1km
  • スキーエルゴ 1km
  • ランニング 1km
  • スレッドプッシュ 50m
  • ランニング 1km
  • スレッドプル 50m
  • ランニング 1km
  • バーピーブロードジャンプ 80m
  • ランニング 1km
  • ローイング 1km
  • ランニング 1km
  • ファーマーズキャリー 200m
  • ランニング 1km
  • ランジ 100m
  • ランニング 1km
  • ウォールボール 75または100回(部門によって異なる)
HYROXには複数の部門が存在し、年齢やフィットネスレベルによって細かく分かれている。
  • オープン:大半の参加者が参加する
  • プロ:ウエイトが重くなり、強度が増す
  • ダブルス:2人チームで参加する
近年、HYROXは世界的な人気を獲得しており、ヨーロッパはもちろん、北米やアジアでも楽しまれている。多様な国や地域の人たちが参加して、年1回開催されるHYROXワールドチャンピオンシップ(世界選手権)を目指している。
HYROX World Championship 2024

HYROX World Championship 2024

© Baptiste Fauchille/Red Bull Content Pool

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ジムトレーニングとは?

ジムトレーニングは、ストレングス、持久力、柔軟性、健康を向上させるためにジムまたはフィットネス施設で様々な用具を使って行われるワークアウトとエクササイズを指す。典型的なジムトレーニングには以下が含まれる:
体幹を鍛えるローラ・ホルバート

体幹を鍛えるローラ・ホルバート

© Leo Rosas/Red Bull Content Pool

ストレングス:ダンベルやバーベル、マシンを使ったスクワット、デッドリフト、ベンチプレス、ローイングなどのトレーニング。
カーディオ:トレッドミル、エリプティカルマシン、エアロバイクなどを使用して心肺と持久力を向上させるトレーニング。
柔軟性 / 可動性:ストレッチやヨガなど、柔軟性を高めたり、筋肉の張りをほぐしたり、関節の可動性を高めたりするためのトレーニング(別名:フレキシビリティ / モビリティ)。
ファンクショナル:特定のスポーツの動きを真似た動作で筋肉のバランスや協調性、コントロールを向上させるトレーニング。
コア / バランス:プランク、クランチ、レッグレイズなどの腹筋や背筋を鍛えて体幹の強化や姿勢の改善を目指すトレーニング。
ジムトレーニングには共通フォーマットの競技は存在しない。なぜなら、ジムトレーニングは他人と自分のパフォーマンスを比較するためではなく、個人のフィットネスゴールにフォーカスするためのものだからだ。また、ジムトレーニングは、マラソンなどの他のスポーツのためのフィジカルの調整・準備としても活用される。
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比較

では、どちらが優れているのだろうか? 答えは簡単には出ない。HYROXとジムトレーニングは、フィットネスの向上という目的とメニューの豊富さは共通しているが、構成環境競技性が大きく異なっている。
HYROXはファンクショナルトレーニングとカーディオトレーニングを上手く組み合わせており、全身のストレングスメンタルを鍛えることができる。競い合うことが好きで、トレーニングよりはアドベンチャーを好み、全身を鍛えたい人には魅力的なチャレンジになるだろう。ディアデンが話を続ける。
トレッドミルで持久力向上に取り組むローラ・ホルバート

トレッドミルで持久力向上に取り組むローラ・ホルバート

© Balazs Palfi/Red Bull Content Pool

「HYROXはフィットネスとストレングスを鍛えられますが、全身の筋肉群をカバーしています。また、レースでは持久力も鍛えることができます。また、一部のメニューはかなり高難度ですし、良いタイムを記録するためには効率を高める必要があります」
「というわけで、レースに含まれているトレーニングメニューを事前に練習しつつ、レースに向けてプログラムを組み、弱点を克服していくことが、タイム向上の一番の近道です」
一方、通常のジムトレーニングは、特定の目的にフォーカスするための高い自由度と、管理されている環境ならではの快適さが特徴で、着実かつ体系的に成長できる点も多くの人が魅力的に感じている。
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必要な用具

HYROXは競技性が高いため、トレーニングにはレースをシミュレートしたメニューと、ストレングスと持久力にフォーカスしたメニューが多く含まれる。
たとえば、HYROXのトレーニングには、スキーエルゴのインターバルトレーニングや、ウォールボールとランジを交互に行うトレーニングなどが含まれている。通常、HYROXのトレーニングは、レースに必要なパワーと持久力の強化が目的に設定されている。
スレッドプルに取り組むイダ・マティルデ・スティーンガード

スレッドプルに取り組むイダ・マティルデ・スティーンガード

© Baptiste Fauchille/Red Bull Content Pool

一方、ジムトレーニングは非常にパーソナルで、パワーリフティングとスクワットラックに取り組む人がいれば、ピラティスやエアロバイクなどのグループトレーニングだけに取り組む人もいる。フィットネスゴール次第で、ジムトレーニングは厳しくもなり、軽くもなる。
HYROXのレースシミュレーショントレーニングでは、特定のエクササイズのために特定の用具が必要になる。たとえば、色々とアレンジはできるとはいえ、レースに向けたトレーニングをしたいなら、インドアならトレッドミルラン、アウトドアならトラックランが必要になる。
また、スキーエルゴ、ウエイトを乗せたスレッド(ソリ)、プル用のロープ、ローイングマシン、ファーマーズキャリー用のケトルベル、ランジ用のサンドバッグまたはウエイト、ターゲットや壁に向けて投げるためのウォールボールも必要だ。
ジムトレーニングでは、フィットネスゴールや好み、トレーニングプランによって使う用具が変わってくる。プランクなどの体幹を鍛えるメニューのためにマット1枚だけが必要なときがあれば、ストレングス強化のためにダンベルバーベルが必要なときもある。
自重だけでストレングスを鍛えたいなら、初心者用キャリステニクスワークアウトメニューをチェック!
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トレーニングの内容

HYROXは持久系トレーニングとファンクショナルトレーニングを組み合わせており、レースにはランニングやスレッドプッシュ、ローイング、バーピーブロードジャンプなどのエクササイズが含まれる。
スレッドプルに取り組むジェイク・ディアデン

スレッドプルに取り組むジェイク・ディアデン

© Baptiste Fauchille/Red Bull Content Pool

このようなレースに向けては、代謝の調整(メタボリック・コンディショニング)ファンクショナルトレーニング、スレッドプッシュやウォールボールなどの特定のエクササイズのためのスキルトレーニングが大きなウエイトを占める。
ジムトレーニングは多様で、フィットネスゴールによって異なるストレングス、カーディオ、柔軟性のトレーニングメニューを行っていく。メニューの例としては、ウエイトリフティングHIIT自重系トレーニング心肺系トレーニングなどが挙げられる。
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結論

HYROXとジムトレーニングのどちらを選ぶべきなのかは、個人のフィットネスゴール選択(競技と成長のどちらを重視するのか)パフォーマンスとスキルの好みなどによって変わってくる。身体を鍛え始めたばかりの初心者、ジムのベテランを問わず、誰でも両方から恩恵を得ることができる
トレーニングルーティンに変化を加えたい、または自分の限界をプッシュする新しい方法を探している人なら、HYROXがゲームチェンジャーになる可能性がある。一貫したリズムで個人に合わせたアプローチを好むなら、ジムトレーニングが良いだろう。
ジムトレーニングに取り組むB-Boy Lil Zoo

ジムトレーニングに取り組むB-Boy Lil Zoo

© Markus Berger/Red Bull Content Pool

あるいは、両方組み合わせてみるのも悪くないはずだ。HYROXでファンクショナルトレーニングと持久系トレーニングを楽しみながら、ジムで個人目標に取り組むことは不可能ではない。究極のフィットネストレーニングルーティンは、両方をパーフェクトに組み合わせたものなのかもしれない。
というわけで、ランニングシューズに紐を通し、バーベルを手にして、フィットネスの新しい地平線へ駆け出してみよう。HYROXでも、ジムでも、トレーニングの先には最高の自分が待っている!
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自分に合っている方を選択しよう

HYROXはランニングとファンクショナルトレーニングを競技として組み合わせているハイブリッドフィットネスレースで、通常のジムトレーニングとは完全に異なる。一方、ジムトレーニングは特定の筋肉群や健康機能にフォーカスしたい人に向いている。
HYROXとジムトレーニングのどちらを選ぶべきなのかは、自分のフィットネスゴールトレーニングの好みライフスタイルによって決まってくる。
トレーニングルーティンの自由度が高く、特定の筋肉を鍛えられて、メニューが豊富に揃っている方が好きならジムトレーニングを選ぶべきだろう。
競技や高負荷が好きで、包括的なフィットネスの向上を目指していて、構造化されているトレーニングルーティンが好きなら、HYROXを選ぶべきだろう。
どちらも効果的で大きなやり甲斐が得られるので、自分のフィットネスゴールとモチベーションに合っている方を選べばOKだ。
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