映画『ビッグ・リボウスキ』の主人公デュードのように、パンクロックのファッションも変わらない。
パンクロックのファッションと言えば、ケバケバしい色に染め上げたモヒカンヘアのストリートパンクスか、スーパースキニーな上下に身を包んだポップパンクキッズをイメージする人が多いだろう。
しかし、パンクロックのサブジャンルの数は非常に多く、カウパンク、スカパンク、サイコビリー、セルティックパンク、オイパンクなどが存在し、それぞれが独自のファッションスタイルを用意している。しかし、基本的にはそのどれもが今回紹介する5つのスタイルのどれかから派生している。
というわけで、今回はパンクファッションの歴史を簡単に振り返っていこう。
グラム
1950年代のテディーボーイブームが去ったあと、1960年代後半から1970年代前半にかけて、パンクファッションのプロトタイプが生まれた。
反体制を押し出したMC5、Iggy Pop、The Stoogesのようなガレージパンクバンドは、自分たちのライフスタイルを表現するために、花柄模様のサイケロックファッションをうち捨て、汚くてダークで乱れた衣服を身に着けた。
スキニージーンズとレザージャケット、両性具有感が特徴だった彼らのファッションはやがてグラムパンクに姿を変え、逆立てた髪、派手な化粧、鮮やかなヘアカラー、性別を無視した衣服を好むNew York Dollsのようなバンドが次々と登場した。
彼らのファッションは、当時の音楽業界を席巻していたごく普通のロックバンドへのアンチテーゼだった。
CBGB
おそらく、世界初のUSパンクオフィシャルファッションは、ニューヨークの伝説のライブハウスCBGBを中心に活躍していたパンクバンドたちが好んでいた服装だ。
The Ramones、Patti Smith、Blondie、Television、Richard Hellなどは、汚くてシンプルな非物質主義的ファッションを好み、ジーンズ、Tシャツ、レザージャケット、古着のスーツ&ワイシャツ、そしてコンバースとドクターマーチンを身に着けていた。
The Ramonesのような労働者階級出身のパンクスにとって、このようなチープファッションは好みというよりは自然発生的なものだったが、いずれにせよ、彼らの音楽はひとつの世代を定義付けることになり、結果的にベッドから抜け出てきたかのような彼らのファッションは今も愛されている。
キングスロード
Richard Hellのズタボロで汚いファッションとNew York Dollsの意図的な両性具有感に感化されたSex Pistolsの仕掛け人Malcolm McLarenとファッションデザイナーのVivienne Westwoodは、1976年、自分たちがロンドンのキングスロードに構えていたショップ “SEX” からUKパンクスに新しいファッションを発信した。
このショップの常連だったSex Pistols、Adam Ant、Siouxsie Siouxや他のパンクファンたちは、卑猥で不敬で反抗的なメッセージが書かれたボロボロのTシャツやSM用ボンデージウェア、映画『時計仕掛けのオレンジ』に触発された衣装などを好んだ。
彼らのファッションは「世間にショックと不快感を与えること」が目的だったが、その目的は見事に実現された。
尚、The Clashなどの他のUKパンクスは、社会情勢に臨機応変に対応したメッセージをマーカーで書き殴ったTシャツなど、よりDIY的なファッションを打ち出した。
アナーキー
アナーキーはキングスロードの系譜上に位置するスタイルだが、Crass、Subhumans、Dischargeなどが打ち出したこのファッションは、キングスロードよりもハード&ミリタリーだった。
ブラックを好み、アナーキーなシンボルを多用した彼らのスタイルは、派手に逆立てたカラフルなモヒカンやリバティースパイク、バンドや政治的メッセージが書かれたTシャツ、スキニージーンズ、ブーツが定番アイテムだった。
クラストパンクやヨーロッパ圏内のストリートパンクのファッション的な共通点が多い、"ザ・パンクス" とも言える彼らは、武闘派ビーガンや反資本主義者が多く、本革やいかがわしいブランドを忌避している。
スケート
1970年代後半から1980年代前半にかけてワシントンD.C.と南カリフォルニアで活動していたハードコアパンクスたちは功利主義者で、どこにでも売られているファッションを好み、基本的には近所のドラッグストアやガソリンスタンドで働いているキッズと同じ格好をしていた。
彼らが奇をてらうことはなく、身に着けているのはジーンズかショーツ、ノープリントのTシャツかロングスリーブTシャツ、スニーカーかドクターマーチンだけだった。
Minor ThreatやBlack Flagのようなバンドや彼らのファンたちが重視していたのはルックスよりも暴れ回れる機能性で、髪型も坊主に近く、モッシュでの怪我を避けるために貴金属類は避けられた。
彼らから派生したのがスケートパンクで、LagwagonやNOFXが、ベージュのワークパンツ、膝下までのバギーパンツ、チェーン付きウォレットなどを持ち込んだ。Green DayやBlink 182などのポップパンクも似たようなファッションを好んだ。