サスペンションやフレーム製造技術、ホイールサイズなどMTBの世界ではあらゆるものが進化を遂げているが、ブレーキは依然として最重要コンポーネントであり続けている。なぜなら、先に挙げた技術面の進歩はこれまで想像もできなかったレベルのスピードを可能にしているからだ。スピードが高くなればなるほど、それだけブレーキの重要度も増す。
バイクコントロールにおいて、ブレーキは極めて重要なカギとなるコンポーネントだ。優れたブレーキは、高速ストレートからタイトなターンに進入する際の制動距離を最小限にしてくれる。あるいは、苔むした岩肌に覆われた急峻な斜面を駆け下りる際の繊細なスピードコントロールを可能にしてくれる。
ブレーキ周辺コンポーネントのアップグレード、またはアーレンキーを使った調整を考えているなら、このブレーキ専門用語集を参考にしてもらいたい。
1. 油圧式 vs. 機械式
よほどのレトロバイクファンでない限り、現代のMTBには必ずディスクブレーキが装備されている。金属製のディスク(正確には「ローター」と呼ばれるが、これについては別項で説明する)はホイールの中心部に取り付けられており、キャリパーの間で回転している。ブレーキレバーを引くと、キャリパーに内蔵されたパッドが回転するローターを両側から挟み込み、ホイールの回転速度を落とす仕組みだ。
ブレーキシステムには油圧式と機械式の2通りが存在する。近年一般的になってきた油圧式では、レバーを引くとオイルを介してキャリパーに内蔵されたピストンが押し込まれ、パッドがローターを挟み込む構造となっている。これは一般的な自動車やモーターバイクと同じシステムだ。
機械式では、金属製のケーブルを介してパッドを動作させる。機械式を採用するMTBの数は減少傾向にあり、油圧式と比較すると制動力やブレーキング時のフィーリングは劣る。
2. ピストン
現代の油圧式ブレーキには2ピストン / 4ピストンという2つの主流がある。4ピストンのブレーキは、パッドごとに2つのピストンが備えられているため、強力な制動力を発揮する。4ピストンは急峻な下り坂を高速で走るカテゴリー、つまりダウンヒルやエンデューロに向いている。4ピストンのデメリットとして挙げられるのは、可動パーツが多い点と各パーツがやや重い点だ。
3. レバー
ブレーキレバーはライダーとバイクの間にある数少ないコンタクトポイントのひとつだ。しかし、それ以上に重要なのがブレーキの “フィーリング” だ。メーカーは制動力の高さばかりを売り文句にしているが、効率良くブレーキの強弱を加減できなければ意味がない。
ブレーキのフィーリングのカギになる存在がレバーで、概して言えば高価なパーツであるほど調整可能範囲が広がり、軽量化も実現できる。ハイエンドモデルなら、ライダーの好みに合ったブレーキフィーリングを得ることができ、中にはレバーをどのポイントまで引けばブレーキが効きはじめるか(バイトポイントと呼ばれる)を正確に調整できるものもある。
とはいうものの、パーツメーカーの大半はハイエンドモデルで確立されたテクノロジーを下位モデルにも採用しているため、昨今では年を追うごとにエントリーレベルのコンポーネントも非常に洗練された性能を持つようになっている。
4. ローター
ローターとは、ブレーキディスク本体を指す。ブレーキ周辺の各コンポーネントは別売りになっているので、ブレーキセットにローターが付属してくるとは限らない。ローターには主に140mm / 160mm / 180mm / 200mmという4種類のサイズが存在する(メーカーによってサイズに数mmの違いがある)。
ローターが大きければ大きいほど制動力はアップするが、その分微妙なフィーリングは失われる。最大サイズのローターはあくまでも高速ライディング向けで、現代のトレイル / エンデューロ系のバイクでは160mmや180mmが主流だ。
一切の歪みのない “ストレートな” 状態を維持しながらローターがキャリパーの間で回転していることは、ブレーキパッドの寿命を伸ばすのに不可欠で、不快な異音も防いでくれる。ローターはクラッシュの際はもちろん、普段の持ち運びの際にも変形してしまうことがあるので、取り扱いには十分注意したい。
5. パッド
ブレーキパッドはバイクとライダーの総重量を支えながら減速するという過酷な役割を担っているので、パッドの状態に目を光らせておくことは極めて重要だ。
ブレーキパッドにはオーガニック(レジン)とシンタード(焼結)という2種類の素材が存在する。シンタードのパッドは複数の金属系素材を組み合わせた合金から作られており、オーガニックのパッドはレジン樹脂に繊維やその他有機系素材を混合して作られている。
シンタードのパッドは泥・雨・寒冷などのコンディションでも高い制動力を発揮し、摩耗度も低い(パフォーマンスが低下し始めるポイントに到達するまで余裕がある)。しかし、使い始めの食いつきが悪く、食いつき始めるまで時間がかかる場合があるのが難点だ。オーガニックのパッドは使い始めから制動力を発揮し、制動時の初期フィーリングがより良好だが、磨耗が早いのが難点だ。
気温が下がる冬期は多くのライダーがシンタードを選んでいるが、好みのフィーリングが得られるまで試行錯誤してみる価値は大いにあるだろう。MTBのパッドのコンパウンドを異なる種類に変えてみることはコスト的に最も手軽なアップグレードのひとつだ。
6.ブリーディング(気泡抜き)
ブリーディング(Bleeding)とは本来「出血」という意味の言葉なので、痛そうに聞こえるが、そうなる可能性は十分にある。油圧式ブレーキのブリーディングとは、内部オイルの気泡抜き作業を指すのだが、時間経過と共に内部オイルに気泡が入ってしまうと、レバー操作のフィーリングと制動力の顕著な低下など “痛い” 結果を招くのだ。
ブレーキに気泡が入ってしまっているのではと疑う前に、ブレーキパッドの残量をチェックしてみよう。というのも、ブレーキに気泡が入った時とパッドが摩耗した時のフィーリングは似ているからだ。
気泡を抜く必要があるかどうか確信を持てない時は、信頼できるバイクショップに向かって、プロの手で作業してもらおう。自分でスパナを扱う自信がある人は、メーカーのウェブサイトで気泡を抜く方法を確認し、説明に従って作業を進めよう。
自分で気泡抜きを行う際は、事前にブレーキパッドとホイールを取り外しておこう。パッドやローターにブレーキオイルがかかってしまうと、その表面が劣化してしまう。