欅坂46
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ミュージック

ロックファンにも強く伝えたい欅坂46、3つの魅力

昨年4月のデビュー以降、急激なスピードで進化し続けるアイドルグループ・欅坂46。ロックファンにはなかなか見えにくい彼女たちの魅力を、ライブという観点から紹介する。
Written by 西廣智一
読み終わるまで:7分公開日:
欅坂46というアイドルグループに、皆さんどういうイメージを持っているだろうか。「乃木坂46の妹分」「大人数」「カワイイ」「カッコイイ」「ダンスが激しい」「あまり笑わない」「センターの子がショートカット」などなど……人によってその印象も異なるはずだ。
特に昨年4月にリリースされたデビューシングル「サイレントマジョリティー」はMVがYouTube公開されるやいなや、まずはアイドルファンを中心に大反響を呼び、そこから普段アイドルに興味がない層にまで浸透していく。それが公開開始から15ヶ月で約6400万回再生(2017年6月21日現在)という圧倒的な数字へとつながったのだ。
現在無数もの大所帯アイドルグループが存在する中で、彼女たちがどうして短期間でここまで人気を獲得することができたのか、そして幅広い層にまで人気を広めることができたのか。その魅力を3つのポイントから紹介していきたい。

①楽曲とリンクしたストーリー性の強いダンス

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欅坂46の魅力のひとつに、ビジュアル面の強さが挙げられる。これは各メンバーのルックスという意味ではなく(いや、もちろんみんなカワイイのだが)、衣装やアートワーク、ミュージックビデオ、そしてその個性的なダンスを指している。先輩格である乃木坂46が結成当初「フランス領の私立女子校」的ビジュアルイメージだったのに対し、その誕生時点で乃木坂46との比較(=戦い)を宿命づけられた欅坂46には「イギリスのモッズ」をイメージしたという。それが彼女たちの、タイトである程度丈のあるモッズコート風の衣装に反映されている。
そういったクールさは歌詞や楽曲、ミュージックビデオの作風にも反映され、その結果デビュー作に「サイレントマジョリティー」という昨今のアイドルのイメージから若干かけ離れたマイナー調の楽曲が選出される。さらに、楽曲の振り付けを手掛けたのはマドンナのワールドツアーに帯同した世界的ダンスアーティストのTAKAHIRO(上野隆博)氏。歌詞に忠実な動き、表現が細かに付けられた「サイレントマジョリティー」が、同曲のミュージックビデオとともに大反響を呼んだのはご存知のとおり。また、この曲調/歌詞/ダンスすべてが、彼女たちに“笑わない”というアイドルらしからぬパブリックイメージを付与することとなった。
以降、欅坂46はTAKAHIRO氏とタッグを組み、「世界には愛しかない」「二人セゾン」「不協和音」など、視覚から歌詞が伝わってくる印象的なダンスパフォーマンスを作り上げていく。時にはコンテンポラリーダンスやバレエなどをフィーチャーし(「二人セゾン」)、時には激しいヘッドバンギングを導入する(「大人は信じてくれない」)など、緩急を付けた表現で観るものを楽しませてくれる。

②“漢字”と“ひらがな”の個性異なる2チーム制

けやき坂46

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現在欅坂46は32人体制で活動中。このうち、シングルの表題曲を歌うのが、センターの平手友梨奈を含む初期メンバー20人に、長濱ねる(結成3ヶ月後に途中加入)を加えた21人からなる「欅坂46(漢字欅)」。音楽番組などメディアに登場する機会が多いのは彼女たちで、「この21人こそが欅坂46」と思っているファンも少なくない。
そしてもう1組が、長濱を中心に結成された「けやき坂46(ひらがなけやき)」。オーディション最終審査を受けずに途中加入した長濱をそのまま漢字欅に入れることができないため、新たなオーディションにより決定した11名とともに、昨年初夏から活動開始。これを受け、長濱は漢字欅とひらがなけやきを兼任する形で両チームにて活躍している。
センターに立つ人間が変われば、そのグループのカラーも変わる。漢字欅が平手が持つカリスマチックでクールな世界観を表現するならば、ひらがなけやきは長濱の持つ柔らかな空気感がそのままグループカラーに反映されている。楽曲面においても、漢字欅が比較的ロック色の強いスタイルならば、ひらがなけやきは可愛く女の子らしい、王道のアイドル路線を極めつつある。同じダンスチューンでも、漢字欅が「語るなら未来を…」で計算されたフォーメーションダンスでバキバキ踊れば、ひらがなけやきは「誰よりも高く跳べ!」で躍動感と多幸感に満ちたダンスで魅せてくれる。ひとつのグループで2つの相反するカラーを楽しめるのも、他のアイドルグループとは一線を画するポイントと言えるだろう。

③息を飲むほどに圧巻のライブ

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①で述べたダンスパフォーマンスが最大限に活かされるのが、彼女たちのライブだ。とはいえ、欅坂46はまだ数えるほどしか単独ライブを行っておらず、初めてワンマンライブを実施したのは昨年12月24、25日の有明コロシアムでの3公演。それまでは握手会でのミニライブや、『TOKYO IDOL FESTIVAL』をはじめとするフェス/イベントでの短いステージだけだった。しかし、12月の有明公演では顔が判別できないほどの暗さの中、ロックバンド並みの大音量で「大人は信じてくれない」からスタートさせるという冒険的な演出で、観客の心を掌握。結果、この日のライブは現在まで伝説的なものとして高く評価されることとなった。
ライブの総合ステージングを担当するのは、先のダンスアーティストTAKAHIRO氏。あくまで“見せる”ことを念頭においたステージングとパフォーマンスは、現在のアイドルシーンにおいても独創的なものと言える。また、TAKAHIRO氏が構成する難易度の高いハードルを、まだ経験の浅い欅坂46のメンバーが毎回超えていく姿にも感動を覚える。
昨年12月末にはロックフェス『COUNTDOWN JAPAN 16/17』にも初出演。ロックファン、J-POPリスナーを前に圧巻のダンスで観るものを虜にし、これらの反響が今年夏の『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2107』や『SUMMER SONIC 2017』への初出演につながった。おそらく当日は漢字欅がパフォーマンスすることになると予想されるが、まだ彼女たちのライブを観たことがないというロックリスナーは、ぜひこれらのフェス会場でその鬼気迫るステージに触れてほしい。
一方、ひらがなけやきもこの春から本格的なライブ活動を展開。3月にはZepp Tokyoで2日間にわたる初ワンマンライブを敢行し、両日とも大盛況となった。この単独公演ではひらがなけやきのオリジナル曲に加え、漢字欅の楽曲カバーやTHE JACKSON 5「ABC」のカバーなどをフィーチャーした、クールで攻めの漢字欅とは一線を画するステージが繰り広げられた。
特に、ひらがなけやき版の「サイレントマジョリティー」や「世界には愛しかない」はオリジナルに忠実ながらも、ひらがなけやきのピースフルな空気感がにじみ出ることで、漢字欅のパフォーマンスとはひと味もふた味も異なるものへと昇華。「二人セゾン」では曲後半で平手が踊る激しくも幻想的なソロダンスを、ひらがなけやきでもっともダンスが苦手な井口眞緒が担当。ぎこちないながらも真剣な表情で踊るその姿には、感動の涙を禁じえない。
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このZepp Tokyo公演を皮切りに、ひらがなけやきは漢字欅よりも先に初の全国ツアーを開催。5月末にはZepp Nambaでライブを行い、この模様は全国4都市でライブビューイングも実施され、多くのファンが彼女たちのステージを目撃した。なお、次の公演は7月6日にZepp Nagoyaで予定されており、今後も続々と各地でライブが開催されていく。
今年4月6日に国立代々木第一体育館で行われたデビュー1周年記念ライブでは、漢字欅およびひらがなけやきの総勢32人で、これまでに発表した4枚のシングルに収められた全26曲を披露。会場に集まった1万2000人の観客を熱狂されたばかりだ。次に漢字欅、ひらがなけやきが一堂に会する単独ライブの予定は決まっていないが、まずはそれぞれが出演するライブやイベントを通じて、この異色のアイドルグループが持つ人気の秘密に迫ってみてはどうだろう。
欅坂46&けやき坂46

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