eスポーツ

グローバルな人気を誇る『ザ・キング・オブ・ファイターズ XIV』

EVO 2016のサイドトーナメントとして開催された『ザ・キング・オブ・ファイターズ XIV』には格闘ゲームコミュニティが持つグローバル性が大いに感じられた。
Written by Heidi Kemps
読み終わるまで:7分Published on
EVO 2016の『KOFXIV』

EVO 2016の『KOFXIV』

© Heidi Kemps

EVOにはあらゆるサイドトーナメントが揃っている。AnimEVOはその好例だ。しかし、EVO 2016最大のサイドトーナメントのひとつはATLUSとSNKの共催イベントだった。長寿シリーズ『ザ・キング・オブ・ファイターズ(以下、『KOF』)』の最新作『ザ・キング・オブ・ファイターズ XIV(以下、『KOFXIV』)のリリースが8月25日に迫る中、この共催イベントは全米各地のメジャートーナメントを回っている。
当然、まだ正規リリースされていないタイトルが各トーナメントのメインステージに採用されるのは難しいが、現在体験版も配信されている『KOFXIV』のサイドトーナメントが開催されることを知ったこのシリーズの数多くのファンが自分たちの愛するゲームをサポートするためにEVO 2016を訪れていた。ブースは週末を通じて盛況で、全キャラクターが使用できるスペシャルバージョンのテストプレイをするためにプレイヤーたちが列を作り、2日目の土曜日には世界各国から48人のプレイヤーが集まって『KOFXIV』最大のトーナメントを戦った。
トーナメントが進むにつれ、ゲームプレイをチェックするために多くの人たちが集まるようになっていった。彼らはこのゲームをサポートする気持ちを表現するために、『餓狼伝説』シリーズのコスチュームや、自分のお気に入りのチームのロゴが入ったTシャツを身にまとっており、中には「KOF IS HERE AGAIN(『KOF』が帰ってきた)」と大きく書かれたシャツを着ているファンもいた。そして、ファイナルがスタートすると、彼らは「KOF! KOF!」と、ホールの端まで届く程大きな声でコールした。結局、トーナメントは小孩(Qanba Douyu)がEl Rosa(El Gallo Negro)を3-1で下して優勝した。

ザ・グローバル

今回のトーナメントで興味深かったのは、トップ3に残ったプレイヤーの出身国が大きく異なっていたことだった。格闘ゲームでは特定の地域が圧倒的な強さを見せることが多い。たとえば、北米は『Mortal Kombat』と『Killer Instinct』に強く、日本は『Guilty Gear Xrd』に強い。しかし、『KOFXIV』は中国、メキシコ、モロッコ出身のプレイヤーがトップ3に入った。
これはネオジオ時代から続く『KOF』の長いアーケードの歴史によるところが大きい。Capcom系格闘ゲームが世界各国で稼働拠点を見つけるのに苦労していた中、SNK系格闘ゲームは遍在しており、どこでも簡単にプレイできた。今回のトーナメントで3位に入ったモロッコ出身のFrionelは「MVS(SNKのゲーム基板MVSを導入した筐体)は安価で手に入れやすかったからね。使うボタンも4つだけだったから、アーケード側は筐体に手を加える手間を省けた。だから、SNKのゲームは世界中で楽しまれたんだよ。簡単にプレイできたのさ」と説明している。
『KOFXIV』のサイドトーナメント

『KOFXIV』のサイドトーナメント

© Heidi Kemps

試遊していたプレイヤーと今回のトーナメントの観客も、トーナメントの結果と同じく多様性に満ちており、中東、南米、東南アジアなどのファンが積極的に参加していた。また、過去のEVOにおける『KOF』のトップ8のプレイヤーたちの出自も同様の多様性を誇っている。真にグローバルな格闘ゲームという意味で『KOF』を上回るゲームはそうない。

フレッシュなスタート

Christopher “Hellpockets” Perry Fieldsは『KOF』シリーズの長年のファンで、様々な格闘ゲームのコメンテーターも担当しているプレイヤーだ。Hellpocketsは第1作の『ザ・キング・オブ・ファイターズ ’94』からプレイを続けている筋金入りの『KOF』ファンで、このシリーズのすべてを愛している彼は、他の『KOF』プレイヤーたちと共に新規プレイヤーを取り込もうと全力で努力している。
Hellpocketsは『KOFXIV』について次のように説明する。「格闘ゲームがキャラクターアーキタイプを見直している今、SNKは新しいアーキタイプを生み出しているんだ。今作のキャラクターは他の格闘ゲームでは出会えないような個性が備わっている」
「『Guilty Gear』が複雑過ぎると感じている人、『ストリートファイターV』が簡単すぎると感じている人は、『KOF』をプレイすべきだね。選択肢のバランスが良いし、学べることも多い。プレイも簡単だしね。このゲームはとにかく選択肢の数が多い。3人のキャラクターをプレイできるから、飽きもこない」
新作のリリースはエキサイティングに思えるが、同時に多少の障壁も感じられる。『KOF』のコミュニティは非常に熱心だが、その多くが1994年からこのシリーズを支持してきたプレイヤーであることを踏まえると、彼らに追いつく労力の多さに辟易してしまう新規プレイヤーが出てくることが考えられる。
しかし、Hellpocketsは新規プレイヤーが心配する必要はないと続ける。「今作は新機能が盛りだくさんなんだ。既にトッププレイヤーに勝っている無名の選手もいるよ。多くの人たちが、今作では前作『ザ・キング・オブ・ファイターズ XIII』のベテランプレイヤーたちが活躍すると思っていたけれど、実際は苦労している。新規プレイヤーは増えているんだ。彼らはこのゲームを気に入っているし、活躍もしているのさ」と説明するHellpocketsは、EVO 2016の前に他のトーナメントで行われていたエキシビションマッチでのNerdJoshの活躍がその証拠だとし、次のように続ける。
「プレイするかどうかで迷う必要なんてないよ。ずっとプレイすることになるはずさ」
パッケージ版の初回特典となるPremium Art Book

パッケージ版の初回特典となるPremium Art Book

© Heidi Kemps

幸運なことに、SNKもコミュニティの重要性に気付いている。世界各地でデモを展開している彼らは、『KOFXIV』のネットコードの安定に全力を注いでいることをファンに約束している。これは現在の格闘ゲームにおいては欠かせない部分だ。
また、Frionelも「『KOF』のコミュニティがゲームを助けている限り、『KOFXIV』は最高のトーナメント対応の格闘ゲームになるはずさ」とコメントしている。

グローバルなコミュニティ

『ストリートファイター』シリーズのシーンを良く知っている人ならば、小孩をトッププレイヤーのひとりとして認識しているはずだが、彼は『KOF』シリーズでもトッププレイヤーのひとりとして活躍している。EVO 2014のメインステージで開催された『KOFXIIII』で優勝した小孩は、EVO 2016のサイドトーナメントとして開催された『KOFXIV』でも優勝した。
トーナメント優勝後に小孩を捕まえてこのゲームの魅力について訊ねると、彼は次のように回答している。「6歳の頃に『KOF ’94』をプレイして以来、ずっとプレイしているんだ」
「『KOF』シリーズで気に入っているのは動きの自由さだね。『ストリートファイター』シリーズはダッシュやジャンプのようなアクションの多くに適切な距離が存在するけど、『KOF』の場合はもっと自由だし、クリエイティビティを発揮できる。自分のスタイルには『KOF』の方が向いている気がするね」
「あとはコミュニティも好きなんだ。トッププレイヤーならばどの国出身でも受け入れてもらえる。あと、今回のトーナメントのトップ8はみんな強かったし、接戦になる対戦は見ていて面白かったね」
『KOFXIV』のサイドトーナメントでの様子を知りたい人は、https://www.twitch.tv/atlususa/profileのアーカイブをチェックしてもらいたい。8月25日にPS4でリリースされる前にこのゲーム(及びトッププレイヤー)を学ぶためのパーフェクトな素材が揃っている。グローバルなコミュニティからサポートされ、エキサイティングな対戦を生み出せる『KOFXIV』は、この先のトーナメントシーンで人気を獲得していくはずだ。