League of Legends World Championships(通称:Worlds)はeスポーツシーンのアイコンだ。Riot Gamesが主催するこのトーナメントの名声はもちろんのこと、歴史に肩を並べられるトーナメントは存在しないに等しい。
2024年に14回目の開催を迎えたこの世界的に有名なシーズンフィナーレは、例年通り世界中からトップチームが集まり、誰もが手にしたいと願うサモナーズカップを賭けて実力を競い合った。
Worldsは特別なイベントで、世界中から大きな注目を集めるにもかかわらず、毎年ファンを楽しませてくれる。出場チームやプレイヤーの歴史とストーリーを学んでおけば、さらに楽しめるようになるだろう。そこで今回は、2024年までのすべてのWorldsのハイライトと優勝チームを簡単にまとめてみた。
初のWorldsは、6週間も続く現在のフォーマットからは考えられない程小さなイベントだった。DreamHack Summer 2011(スウェーデン)の一環として開催され、賞金総額もたった10万ドル(約1,085万円)だった。
しかし、ヨーロッパの『リーグ・オブ・レジェンド』ファンにとってシーズン1はハイライトのひとつであり続けるだろう。なぜなら、ヨーロッパのチームが優勝したWorldsは今のところこれだけだからだ。
ファイナルで同じくヨーロッパ出身のagainst All authorityを倒したFnaticが優勝し、3位には北米のTeam SoloMidが入った。今振り返ると、シーズン1はのちのWorldsから比べると非常に小規模だが、当時のesportsシーンの中では最大規模だった。
2回目のWorldsはアジアチーム躍進のきっかけとなった。シーズン1はアジアチームが2チームしか参加しておらず、いずれもトップ4に残れなかったが、シーズン2はアジアチームが大躍進した。
韓国チームが初参戦して好印象を残したことも印象深いが、頂点に立ったのは台湾出身のTaipei Assassinsで、彼らは賞金100万ドル(約1億850万円)を獲得した。
Worldsがビッグトーナメント化したのはこの年からだ。賞金総額が一気に増え、他のイベントやトーナメントとは完全に違う雰囲気が打ち出され、世界最強クラスのチーム同士が激しくしのぎを削り合うようになった。
シーズン2と同じく米国・ロサンゼルスで開催されたシーズン3は、Lee “Faker” Sang-Hyeokが『リーグ・オブ・レジェンド』世界最強プレイヤーだということを世界が知ったトーナメントになった。
韓国が生んだこのスタープレイヤーはSK Telecom T1のメンバーとして中国チームRoyal Clubを倒して世界の頂点に立った。
ヨーロッパチームはFnaticがトップ4に残ったが、アジアチーム、特に韓国チームが北米やヨーロッパのチームよりも伸びを見せているのは誰の目にも明らかだった。
優勝を喜ぶSK Telecom T1(現T1)© Riot Games
韓国チームがWorldsの頂点に立ったあと、同国のシーンが一気にブレイクしたことを知ったデベロッパーのRiot GamesはWorldsの韓国開催を決定し、ファイナルの舞台に収容人数66,000人のソウルワールドカップ競技場を用意した。
結果から言えば、シーズン4も韓国チームが優勝したのだが、チームはSK Telecom T1ではなくSamsung Whiteだった。韓国のファンにとって最高のWorldsとなったシーズン4は、Worldsが秘めているポテンシャルの大きさをあらためて確認するトーナメントになり、66,000人収容のスタジアムが満員御礼となったファイナルは世界中のファンを感動させた。
しかし、同時にヨーロッパ・北米チームがひとつもトップ4に残れなかったことが一部のファンを落胆させた。
シーズン1以来のヨーロッパ開催となった5回目のWorldsは、『リーグ・オブ・レジェンド』史に残る最高のトーナメントのひとつになった。
優勝したのはまたも韓国チームで、FakerとSK Telecom T1が2回目のタイトルを獲得したが、ヨーロッパのFnaticとOrigenがトップ4に残ったため、地元ファンを後半までトーナメントへ引きつけることに成功した。
結果的にシーズン5は大成功に終わり、単独(韓国)開催ではなく複数国開催でも機能することが証明された。
多くのファンがシーズン6をシーズン5とほぼ同じものとして捉えている。ヨーロッパ開催から北米開催へ変わっただけで、SK Telecom T1がまたも優勝し、史上初の連覇を達成したからだ。尚、トップ4に残ったヨーロッパのチームはひとつだけだった。
久々の北米開催となったシーズン6は地元ファンに大歓迎された。なぜなら、前回の北米開催時よりも『リーグ・オブ・レジェンド』の北米での人気が大幅に高まっていたからだ。
アリーナクラスはすべてソールドアウトとなり、数千人がビッグチーム同士の対戦を現地で楽しんだ。
北米チームは活躍できなかったかが、北米の『リーグ・オブ・レジェンド』ファンは世界最強の称号を賭けたトップチーム同士の激しいバトルを存分に楽しんだ。
Worlds連覇を達成したFaker率いるSK Telecom T1© Riot Games
Worlds 2017は大きな節目になった。史上初の中国・北京開催となり、アイコニックなデザインで世界的に有名な国家体育場で開催されたファイナルに集まった大観衆はesportsの歴史に残るハイライトとなった。
Riot Gamesはプロダクションもレベルアップさせ、CGIのドラゴンが登場したオープニングセレモニーは、シーズン7を最も印象的なesportsイベントのひとつにした。
ファイナルはSK Telecom T1とSamsung Galaxyの韓国対決となり、いくつかの素晴らしい瞬間を生み出しながらSamsung Galaxyが優勝した。このファイナルはWorlds史上最高のファイナルのひとつに数えられている。
Worlds 2018は再び韓国で開催された。韓国チームが圧倒的な強さを誇っていることを踏まえると再開催は当然と言えたが、驚いたことに優勝したのは中国チームのInvictus Gamingだった。
Fnaticによってシーズン1以来となるヨーロッパチームのファイナル進出も記録され、期待されていた韓国チームはひとつもトップ4に残れず、G2 EsportsとCloud9が3位と4位に入った。
ヨーロッパチームが長年の努力を経てついに韓国チームと中国チームに追いつきつつあることを示したシーズン8は、ファンのシーズン9への期待をさらに大きくした。
Worlds 2018でセミファイナルまで進出したCloud9 © Riot Games
G2 Esportsは優勝候補としてWorlds 2019に乗り込むと、セミファイナルでSKTに勝利してファイナルへ進出。ここで中国のFunPlus Phoenixと対戦したが、残念ながらパリに集ったホームファンたちの前で0-3で敗退した。
Worlds 2019のファイナルへ進出したG2 Esports© Stephanie Lindgren/Red Bull Content Pool
中国チームが2年連続でWorldsを制して『リーグ・オブ・レジェンド』が新時代へ突入すると、それに相応しい形でWorlds 2020は再び中国で開催された。
パンデミックにもかかわらず、トーナメントは依然として対面方式で実施されたが、上海の浦東足球場で行われるファイナルまでは無観客で行われた。ベトナムを代表する2チーム(Team Flash、GAM Esports)はビザと感染隔離の問題で参加できず、台湾のPSG Talonはプレイイン参加が不可能となった韓国人プレイヤー2人の代役を用意しなければならなかった。
ファイナルではDAMWON Gamingの新世代スターたちが中国のサプライズパッケージSuningを下し、韓国チームが頂点に返り咲いた。
Worlds 2021は前年に続き中国で開催されるはずだったが、渡航の複雑な問題により、2021年初頭にMSIを開催したアイスランド・レイキャビクに開催地が移された。
トーナメントは5ゲームまでもつれ込んだファイナルを含め、終始エキサイティングなゲームとドラマに満ちた展開となった。現在はDWG KIAに改称しているDAMWONが健闘したが、頂点に立ったのは中国で6つの国内タイトル記録を誇るEDward Gamingだった。この名門チームはインターナショナルレベルでも勢いが止まることがなかった。
12回目のWorldsはメキシコと米国で開催され、エキサイティングなゲームや名シーン、そしてエピソードを満載した『リーグ・オブ・レジェンド』史上最高トーナメントの候補のひとつに数えられることになった。
全員の注目を集めた存在がKim “Deft” Hyuk-kyuだった。DeftはFakerと同じ高校に通う同級生だったが、Fakerと肩を並べるには至っていなかった。2013年からプロプレイヤーとして活動し、世界最高のプレイヤーのひとりに数えられながら、WorldsでのDeftは5回もクォーターファイナル敗退を喫しており、そこから先へ進めていなかった。
Deftが所属するDRXは韓国第4シードで、メインイベント出場権を獲得するためにはプレイインを勝ち抜かなければならなかった。しかし、DRXは驚くべき勢いでファイナルまで勝ち上がると、ファイナルではDaftのかつての同級生Faker率いるT1(元SKT)を3-2で破り、Worlds ファイナル屈指の劇的な結末を生み出した。DRXはプレイインから優勝まで勝ち上がった史上唯一のチームとなった。
Worlds 2022ファイナルではDeftとFakerの元同級生対決が見られた© Riot Games
5年間待ちわびたあと、韓国が再びWorlds開催地となった。Worlds 2018でのLCK勢惨敗を受け、韓国のファンたちは自国チームが自国開催のWorldsで再び優勝する姿を目撃することを望んでいた。しかし、韓国勢の行く手を阻んだのは、このシーズンに参戦したすべてのトーナメントでタイトルを手にしていた優勝候補JD Gamingをはじめとする超強力な中国勢だった。
しかし、JD Gamingは韓国が誇るレジェンドチームT1に屈し、ファイナル進出すらできなかった。その後、Faker率いるT1は中国のダークホースWeibo Gamingに3-0で圧勝し、驚異的な4回目のWorlds制覇を成し遂げて会場に詰め掛けていたファンたちを歓喜させた。T1は2016年以来のトロフィーとともに異次元の強さを取り戻した。
SKTから改称したT1は2023年に4回目のWorldsタイトルを獲得© SonStar/Red Bull Content Pool
韓国チームT1が通算5回目のWorlds優勝を記録して『リーグ・オブ・レジェンド』史上最大の功績のひとつを成し遂げた。しかも、2023年と同じロースターでの連覇という偉業だった。
シーズン5とシーズン6に続く2回目のWorlds連覇を達成したT1は、シーズン中は不調に悩まされ、Worldsも第4シードとして出場権を獲得していた状態だったが、またもやここ一番で実力を発揮した。
5回目のWorlds制覇を成し遂げて『LoL』最強チームの称号を維持したT1© Riot Games
ファイナルは非常に緊迫した展開となり、最終5ゲームまでもつれ込んだ。アーリーゲームでBLGがスノーボールしていく一方、T1はヴォイドグラブにフォーカスしてシージとマクロで魅せていく展開が続いたが、最終5ゲームでは、クラッチと一瞬の判断が勝敗を決めた。
Fakerが、これまでに何回もLPL勢を困らせてきたことで知られる【ガリオ】で強烈なプレイを展開すると、サポートのRyu “Keria “ Min-seokも【ポッピー】のアルティメットを【アーリ】に決める天才的なプレイを披露。これを受けてFakerがスカーミッシュでレジェンドプレイを決めてWorlds優勝を決定づけた。 Worlds初制覇から11年後にまたもサモナーズカップを頭上に掲げたFaker© Riot Games