どのスポーツのプロフェッショナルも同じことを言うはずだが、特定の瞬間を振り返ることがプロフェッショナルとしての自分の成長と発展に繋がる。
eスポーツも同じで、すべての勝利と敗退が学習と祝福の機会になる。また、その中には、自分のプレイスタイルの象徴となり、ファンたちに長年話題にし続けるトピックを提供しながら、プレイヤーの記憶に一生残るものもある。
世界に衝撃を与えたeスポーツトッププレイヤーのプレイや、彼らの人生を変えた特別なプレイにフォーカスしたシリーズ【eスポーツ 名プレイ録】では、そのような瞬間に光を当てながら、そこを深く探っていく。張本人との会話を通じて、そのプレイを詳しく振り返りながら、そのときの彼らにどのような感情が生まれていたのかを掘り下げていく。
今回は、G2 Esportsの『リーグ・オブ・レジェンド』チームの主力として活躍しているRasmus “Caps” Wintherをゲストに迎え、彼の代表的なプレイのひとつを振り返ってもらった。現在22歳のミッドレーナーはキャリアを通じて素晴らしい勝利をいくつか記録しており、2シーズン連続MVPも記録しているが、ここでは2019シーズンのMSI(Mid-Season Invitational)対SK Telecom T1戦で記録されたレジェンドプレイにフォーカスする。
01
追い詰められたG2
MSI 2019で強豪T1戦を迎えたG2 Esportsは1ゲームを先取され、しかもイーブンに戻せる見通しはついていなかった。『リーグ・オブ・レジェンド』のeスポーツ史に永遠に名を残すはずの韓国代表T1はMSI 2019で好調を維持していたが、G2はG2で、グループステージで2回の番狂わせを演じており、この対戦へのファンの注目度は非常に高かった。
ゲーム1は、G2のあらゆるプレイにカウンターを当てたT1が取った。BO5(3勝勝ち抜け)で有利な先勝を手にして勢いに乗るT1にG2は完全に飲まれていた。「僕たちは少し変化を加えて、自分たちに流れを引き寄せる必要があると感じていました」とCapsは振り返る。
そして、その変化を自分で加えなければならないことを理解していたCapsは、ゲーム2で【アカリ】をピック。「アカリを選んだことでほとんど捕まらなくなった」と振り返るCapsは、危険な状況をテレポートとジャンプで回避できるチャンピオンをピックしたことで難所を上手く乗り越えてアドバンテージを得られるようになるはずだと感じていた。
ゲーム2のG2 Esportsはファーストブラッドを獲得できたが、サーバーのトラブルで対戦が一時中断されてしまった。このアクシデントでG2は掴みかけていた流れを再び失う恐れがあったが、彼らは冷静さを失わず、Capsが犠牲になって複数のキルとタワー1本を手にすると、再びリードを奪った。
02
ノーガードの殴り合い
この時点で、G2はすでにT1のベースへ侵入しており、T1のジャングラーはリスポーン待ちだった。ゲーム2の開始から30分以上が経過していた。Capsはここが勝負時だと感じ取っていた。やるなら今だった。
しかし、T1はT1で策を用意しており、Kim “Khan” Dong-HaがベースでG2を急襲。G2はCho “Mata” Se-Hyeong、Park “Teddy” Jin-Seong、そして上から来たLee “Faker” Sang-Hyeokによってトップコーナーに追い詰められてしまう。ここから先はすべてのアクションがそこに集まり、両チームがノーガードで殴り合った。
素晴らしいことに、Khanに奇襲されたにもかかわらず、Marcin “Jankos” JankowskiとMihael “Mikyx” Mehleが揺らぐことはなかった。この2人が落ち着いていたおかげでCapsは戻ってFakerとKhanをパーフェクトに仕留めることができた。そしてCapsはさらにMataに狙いを定めて数秒で片付けると、Teddyもキルしてクアッドキルを成し遂げた。
この時点でG2はネクサスへ進行してゲーム2を奪い、スコアをイーブンに戻すこともできた。しかし、彼らはさらに大きなアイディアを用意しており、それを実行に移したいと思っていた。Capsは「T1の心を折ろうとしたんです」と振り返っている。
03
心を折るペンタキル
CapsとG2は自分たちがペンタキルを成し遂げたらT1が絶対に立ち直れなくなることが分かっていたため、速やかに実行に移した。そして、Kim “Clid” Tea-Minをベースのコーナーへ追い込んだCapsとJankosは泉の階段の上でClidに猛攻撃を仕掛け、最高の形でゲーム2を取った。
CapsはこのプレイがG2のT1戦勝利と次のファイナルでのTeam Liquid戦勝利およびMSI 2019優勝に繋がったと考えている。
「あれはとても大きな勝利でしたね。自分たちを信じることの重要性と、どのチームが相手でも勝てる可能性があることを、自分たちだけではなくヨーロッパの全チームにも示せたという意味で、とても大きな意味を持っていました」
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