© Peter Salzmann and Joerg Mitter/Red Bull Content Pool
ウイングスーツ
【ウィングスーツ・フォイル誕生!】ウィングスーツの世界最長飛行記録更新!
スイスの雪山からジャンプしたオーストリア人ウィングスーツ・パイロットが革新的な新技術で人類飛行の限界をプッシュ!
オーストリア人ウィングスーツパイロットのペーター・ザルツマンが、エアリアル・アドベンチャーの限界を再定義するフライトを成功させて人類飛行の歴史にその名を刻んだ。
2024年10月24日、ザルツマンは革新的なウイングスーツ・フォイルを装備して、冠雪したスイス・ユングフラウの標高4,063m地点の崖からジャンプした。ジャンプ直後に最高速度200kmをマークした彼は、そのままエンジンの力を借りることなく約6分間で驚異の12.5kmをフライトしたあと、パラシュートを展開してラウターブルンネンとインターラーケン間に無事着地した。
ザルツマンのフライトは、ベースジャンプ最長飛行時間(5分56秒)とベースジャンプ最長飛行距離(12.5km)を更新し、さらにはベースジャンプ最大標高差(3,402m)も更新した。
今回新たに採用されたウイングスーツ・フォイルは、ザルツマンとウイングスーツ・フォイル開発者アンドレアス・ポドリプニク、そしてF1と空力において多くの知見を持ち合わせているレッドブル・アドバンスト・テクノロジーズのサポートによって、3年という長い時間をかけて開発された。
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夢を現実に
ザルツマンは歴史を塗りかえただけではなく、長時間飛行して鳥や気流と一体化するという長年の夢も叶えた。
今回のフライトはまさに驚嘆の結果で、ザルツマンはエクストリームスポーツの存在を知った幼少時からずっと重ねてきた努力が報われたように感じている。
「子供の頃からジャッキー・チェンが好きで、スタントマンになりたいと思っていました。ですので、友人と私でスタントに挑んでいました。ジャンプだけではなく、バランスを含むあらゆるフィジカルチャレンジに挑んでいました」とザルツマンは振り返っている。
当時は典型的な子供の夢に思えた。ザルツマンの周囲には、パラグライダー、飛行機、スカイダイビングの経験者がひとりもいなかった。しかし、彼は20m、25m、30mと徐々にジャンプの長さを延ばし、さらには走行中の自動車から飛び出す、または自動車に引きずられるなどのトリックにも取り組んでいった。
現在37歳のこのオーストリア人は有数のウイングスーツ・パイロットとして名を馳せており、次から次へとアドベンチャーに繰り出している。「地上にいるときは常に空へ思いを馳せています。誰にでも情熱はあります。私の場合は空を飛ぶことでした」
知らない人のために説明すると、ウィングスーツとは、自由落下中のアスリートがパフォーマンスとコントロールを向上させるために着用するサポート用ジャンプウェアだ。両腕と両脚の間、そして両足の間に膜のようなウイングが張られており、これらに空気を注入して水平移動をアシストする。
誰にでも情熱はあります。私の場合は空を飛ぶことでした
ザルツマンは、ジャンプの前は集中しているので考える時間はほとんどない。
「ゾーンに入っているので、意識が後ろを振り向くことはありません」と彼は語る。メンタルの準備(すべてのアングルを確認し、様々なビジュアライゼーションのテクニックを活用する)は、ジャンプの現場に到着する前から始まっている。「頭の中ですべてがスムーズに進めば、すべての準備が完了していることになります」
ベースジャンプは危険なスポーツだ。ザルツマンはジャンプ前に「ちょっと待て。今日は適していないかもしれない。止めた方がよさそうだ」と思うこともあるとし、次のように続ける。
「難しいジャンプでは、事前にデータを計測します。そしてその結果が良好でも、ジャンプ前に自分の感覚で確認します。自分の感覚が正しくないと伝えてくるなら、勇気を持って中止し、下山する必要があります」
状況を正しく判断できなければ、悲劇に終わる可能性がある。ベースジャンプとウイングスーツのコミュニティでは、少なくない人数が命を落としてきた。
ザルツマンの周りにも、コンディションが良くなかったにもかかわらず、ベテランジャンパーと同じ高さから飛んで彼らと同じクールな存在になろうとした若いジャンパーがいた。ザルツマンと友人たちはジャンプを中止するように説得を試みたが、結局その若いジャンパーは挑戦し、命を落としてしまった。
「あれは大きな出来事でした。彼が命を落としていくのをただ見ることしかできなかった。あのような出来事を経験し、そこから学ぶことで、自分の感覚がより研ぎ澄まされていくのです」
もはや自分の中でアドレナリンは重要ではないとザルツマンは明かし、次のように続ける。
「ジャンプ前の私はとにかく非常に高いレベルで集中します。集中しているがゆえに、自分を客観視できるようになります。自分が飛んでいる姿をイメージできるのです。全身が緊張していますが、その緊張と恐怖は関係ありません。恐怖は警告のサインです。愚かな行動を取らないように教えてくれるのです」
相当なレベルで集中しているので、パラシュートを正しくパッキングしたかなど、何かしらの疑念が生まれれば、完全に集中が切れてしまいます
事前に下調べをして、インターネットで予定しているジャンプに関連する画像や動画を集め、現地に行く前にシミュレーションをしておくことがザルツマンの役に立っている。
ウィングスーツ・フォイルを使用した今回のプロジェクトでも、スイス・インターラーケン最高峰ユングフラウの北側に位置する標高4,063mの崖をジャンプポイントに定める前に、様々なジャンプポイントを調査した。
「最後に頭の中でジャンプのリハーサルをしたあと、集中した状態でジャンプポイントへ向かいます。相当なレベルで集中しているので、パラシュートを正しくパッキングしたかなど、何かしらの疑念が生まれれば、完全に集中が切れてしまいます。少しではなく、完全に切れてしまうのです。ですが、基本的に切れることはありません。自分自身と装備を信じることで集中を維持しています」
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ウィングスーツ・フォイルは記録のための革新ではない
ザルツマンは、革新を生み出そうとする気持ちがあることでこのスポーツをフレッシュに捉えられており、成功も得られていると語る。「私は進化が好きです。現状に満足せず、常に改良を続けていきたいと思っています」
今回のウィングスーツ・フォイルでは、ザルツマンはデザイナーのポドリプニクと直接やり取りをしながら、より遠くまでフライトできる電動ウィングスーツを開発した。
「これは素晴らしいプロダクトですよ。超軽量ですがパワーがありますし、手元でコントロールできるスロットルも備わっています。また、鳥のように静かで、ほぼ無音でフライトできます」
ザルツマンは、今回の新型ウィングスーツ・フォイルによって完全に新しいフライトラインと山を選択できるようになったとしている。
「私はもっと遠くへ飛べるようになりたいと思っていました。記録は特に意識していません。私が興味を持っているのは革新です。新しい装備を開発したいのです。メディアに “レッドブルとペーター・ザルツマンが、フライトパフォーマンスを大きく向上させる飛行装置を開発” などと取り上げてもらえれば最高ですね」
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ミッション・コンプリート
今後について、ザルツマンは「“続けない” という選択は難しい」とし、ウィングスーツではないかもしれないが、80歳でもパラグライディングは続けているだろうと回答している。そして、複数日のハイク、気候順応、標高6,000mでの睡眠を含むヒマラヤをはじめとする高山からのベースジャンプも大きな目標のひとつだ。ザルツマンは「(ヒマラヤでのジャンプは)大きな目標ですし、自分の情熱です」と続ける。
ザルツマンにとって成功とは「頭の中に思い描いていたことを安全に、そして気持ち良く現実にすること」だが、言い換えれば、これはザルツマンがすべてのフライトで成し遂げてきたことだ。
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すべての問題を解決するウイングスーツ・フォイル
ウィングスーツとは? その仕組み
ウィングスーツはリップストップナイロン製で、3枚の翼(ウィング)が備わっている。2枚は両脇、そして1枚は両足の間に張られている。これらが揚力を発生することで、パイロットは下降する代わりに水平飛行できるようになる。
ウィングスーツの形状とデザインがパイロットの表面積を大きくするため、揚力が発生しやすくなり、安定したフライトが可能になる。パイロットはウィングスーツの角度と形状を変えることでフライトの方向とスピードを調整することができる。
ウィングスーツ・フォイルとは? その仕組み
ウィングスーツ・フォイルのウィングスパン(翼長)は2.1mで、フォームコアと3Dプリンタ製コンポーネントによるサンドウィッチ構造になっている。パイロットの上半身前面に装着される。このアイディアは、ウィングフォイリングとハイドロフォイリングからヒントを得て生み出された。
ウィングスーツ・フォイルは、ペーター・ザルツマン、ウィングスーツ・フォイル開発者アンドレアス・ポドリプニク、そしてレッドブル・アドバンスト・テクノロジーが3年をかけて開発した。開発期間中に6種類のプロトタイプが製造・テストされ、実地テスト前にスウェーデン・ストックホルムの施設で風洞テストが行われた。
ウィングスーツ・フォイルの開発
ウィングスーツ・フォイルの前代未聞のテクノロジーは、ザルツマンとウィングスーツ・フォイル開発者アンドレアス・ポドリプニク、レッドブル・アドバンスト・テクノロジーズのコラボレーションの結果だ。
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ペーター・ザルツマン
ペーター・ザルツマンはワールドクラスのウィングスーツ・パイロットで、世界中でビッグフライトを成功させてきた。また、空中カメラオペレーターとしても優秀なスキルを持ち合わせており、テクノロジーを活用した人類飛行の限界を押し広げることに情熱を注いでいる。
実家のバルコニーから地面に置いたクッションへジャンプしていた子供の頃からスタントに興味を持っていたザルツマンは、20歳でスカイダイビングとベースジャンプに取り組み始めた。クロアチアの高さ110mの橋からのジャンプからイタリアの標高1,000mの岩山からのジャンプまで、ザルツマンは世界各地で合計500回のジャンプを成功させた。
その後、ウィングスーツに興味を持った彼は、天候パターン、空力、地理の知識を組み合わせて新しいフライトパスを見つけることに情熱を注いでおり、その情熱はこのスポーツの急成長に大きく寄与してきた。
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