クライミング

デビッド・ラマが語るマッシャーブルム

デビッド・ラマが前人未踏のマッシャーブルムの北東壁に挑んだ。
Written by Josh Sampiero
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マッシャーブルムの北東壁

マッシャーブルムの北東壁

© Martin Hanslmayr/Red Bull Content Pool

デビッド・ラマは簡単なことには挑戦しない。しかし、彼の基準から考えてもマッシャーブルムの北東壁ルートは難しい挑戦となった。ヒマラヤ屈指の難易度を誇るこのルートはこれまでに2パーティーしか挑んでおらず、デビッド・ラマとパートナー、ピーター・オルトナーとハンスヨルグ・アウアーが2014年春に6週間の時間をかけて挑戦を試みたが、結局今も未踏のルートのままだ。今回はデビッド・ラマにこのルートの難しさなどについて説明してもらった。
到達するまでが大変なマッシャーブルム

到達するまでが大変なマッシャーブルム

© Martin Hanslmayr /Red Bull Content Pool

マッシャーブルムはエベレストよりも難しいと言われています。
そうだね。登頂した人がほとんどいない山のひとつだよ。高度や露出度はエベレストと変わらないけれど、登頂にはエベレストよりもテクニックが要求される。これまでに行われた75回の挑戦で成功したのはたった15回なんだ。
北東壁ルートは1度も成功していません。
北東壁ルートはこれまでにアメリカと東欧の2つのグループが挑戦したことがある。でも、あまり上まで登れなかったから、僕たちの準備に必要な情報はないに等しかった。
準備するデビッド・ラマとピーター・オルトナー

準備するデビッド・ラマとピーター・オルトナー

© Martin Hanslmayr /Red Bull Content Pool

あなたが知っている情報について教えてください。
ここは世界最難度のルートのひとつで、アイガーやセロトーレレベルだ。標高4800mからスタートして、7821mが頂上になる。セロトーレの2倍の大きさと高さで、非常に複雑なルートだね。壁を登る時間も長いし、下りは更に難しい。前人未踏のルートだから誰かのミスから学ぶこともできない。ロケーションもかなり遠くて、ベースキャンプから最寄りの村までは4、5日かかる。
ベースキャンプのデビッド・ラマ

ベースキャンプのデビッド・ラマ

© Martin Hanslmayr /Red Bull Content Pool

ベースキャンプでかなりの時間を過ごしましたね。
そうなんだ。滞在中は天気が悪かったから、ベースキャンプで過ごす時間が長かった。だから今回は椅子を持っていった。長時間待たされる時はちゃんと座りたくなるからね(笑)。
デビッド・ラマ、ピーター・オルトナー、ハンスヨルグ・アウアー

デビッド・ラマ、ピーター・オルトナー、ハンスヨルグ・アウアー

© Manuel Ferrigato/Red Bull Content Pool

登頂までにかかる予想時間は? また今回はどこまで登れましたか?
5、6日かかると思う。今回の僕たちはベースキャンプから400mの地点までしか登れなかった。天候が良いと雪が解け始めてしまうので、僕たちのスピードが遅くなってしまった。その場合は装備を軽くしてスピードを上げるしかない。後半は比較的楽に登れるはずだけれど、それでも落氷や落石、なだれなどの危険がある。
装備の重さは?
できるだけ軽くしたよ。ロープやプロテクションを含めてひとり10kgから13kgだね。
クライミングの詳細を教えてください。
中盤は何もないから、氷を登ることになると思う。標高7000m地点から始まるヘッドウォールは非常に難しい。頂上付近はミックスクライミングになると思うよ。
準備するデビッド・ラマ

準備するデビッド・ラマ

© Manuel Ferrigato/Red Bull Content Pool

今回はベースキャンプから出発してから何が起きたのでしょうか?
両サイドで雪崩が起きている中を登っていった。雪が柔らかくて僕たちのスピードが遅かったので、プラン通りに進めず、頂上へ到達するのは不可能だった。このまま登り続ければ命の危険があると思って断念した。
難しい決断でしたか?
勿論諦めるのは難しかったよ。時間と労力を注ぎ込んでいたからね。現地に到着して体を順応させるまでに6週間もかかったのに、実際にクライミングするチャンスがほとんどなかったのは残念だ。でも正しい判断だったと思う。
再挑戦する予定でしょうか?
こういう挑戦はかなりのモチベーションと時間が必要になるし、パキスタンで3年間を費やしたことになるから、次はもう少し小規模な挑戦をしたい。2ヶ月半も費やすような挑戦じゃなくてね。ここ3年間は冬のアイスクライミングからそのままパキスタンやアルゼンチンに挑むという生活が続いていたから、薄着でクライミングを楽しみたいかな。
新しい挑戦についての情報はありますか?
何もないよ。名前も決まっていないし、ルートもない。白紙状態だ。だから面白いんだよ。