Saya Sakakibara performs at Macarthur BMX Track in Camden, Australia on November 8, 2023.
© Brett Hemmings/Red Bull Content Pool
BMX

BMXプロレーサー榊原爽が語る:メンタルにおける日記の重要性

オーストラリア代表BMXレーサーが、恐怖の克服と完全復活に役立ったメンタルテクニックについて語ってくれた。
Written by Chiara Koeck
読み終わるまで:5分Published on
榊原爽にとって、トレーニングの日記を付けることはBMXレーシングキャリアのカギになっている。しかし、このオーストラリア人アスリートがこの習慣の真のメリットに気付いたのは、自分の正と負の感情に向き合わなければならない状況になったときだった。
今の彼女にとって、日記は魔法のようなものだ。なぜなら、強く意識することなく、自分の問題を解決し、自分の感情を消化してくれるからだ。
ポッドキャストMind Set Win』(英語音声)の最新エピソードでは、現在24歳のオーストラリアチャンピオンの彼女が、この気付きまでの経緯についてさらに詳しく語ってくれている。
UCIワールドカップ 2023シーズン序盤、前年に深刻なクラッシュを喫していた榊原は、BMXレーシングとの関係を見直そうとしていた。
開幕戦を落とした彼女はコーチに「ファイナルに進出できなかったことを嬉しく思っているのは悪いことなのでしょうか?」とメールを送り、コーチからは「まぁ、そうだね」と返信が届いた。榊原はこの頃について、レースをしたい気持ちとレースを恐れる気持ちの板挟みだったと振り返っている。
それから数週間後、彼女は前年に深刻なクラッシュを喫したレーストラックでシーズン初勝利を挙げた。「あのレーストラックで勝利できたなんて信じられませんでした。前年クラッシュしたレーストラックでしたが、勝つために戻ったのです」と彼女は振り返る。このブレイクスルーは、彼女が自分を再び信じられるようになったことを示していた。
榊原が競技から身を引こうと思うようになったきっかけは、深刻なクラッシュだけではなかった。2020年に同じくBMXプロライダーだった兄、榊原魁(かい)現役引退に繋がる大怪我を負ったこともそうだった。
魁は6週間昏睡状態となり、家族は魁がどうなるのか分からない不安に悩まされた。最終的に魁は奇跡的に一命を取り留めたあと素晴らしい回復を見せていき、妹は夢を追い続けた。
Saya Sakakibara poses for a portrait at Macarthur BMX Track in Camden, Australia on November 8, 2023.

Saya Sakakibara

© Brett Hemmings/Red Bull Content Pool

怖かったです。何も答えが見つかりませんでした
兄の大事故とその精神的ショックが榊原のキャリアに影響を与え始めたのは、それから2年後、兄妹で目標にしていたイベントの出場を終えたときだった。
「怖かったです。何も答えが見つかりませんでした。自分の中で何ひとつ消化できていなかったんだと思います。あのイベントのあと、すべてが崩壊してしまい、自分が何を失っていたのかが分かりました」
この状況と5回目の深刻な脳しんとうにより、榊原は自分のBMXキャリアを疑問視するようになった。「 “引退しよう” という結論に至りました。ですが、日を追うごとに納得していない気持ちが大きくなっていきました。“まだやりきっていない。今やめるわけにはいかない。これは正しい決断ではない” と思うようになったのです」
今も彼女は日常的に恐怖を感じているが、対処する方法を手にしており、手にできたのは日記のおかげとしている。彼女にとって、日記は恐怖や不安にシステマティックにアプローチする手段なのだ。「日記は魔法のような存在です。自分で意識しなくても、自然に問題を解決できてしまうのです」と彼女は説明している。
しかし、彼女の真の原動力は、レース終了後に得る達成感だ。「自分の感情がどうであろうと、その瞬間にベストを尽くし、レースを完走すれば、素晴らしい達成感が得られます。なぜなら、自分がどのような感情を抱いていて、どれだけ辛い状況なのかを理解しながらもやり遂げたからです」

日記でマインドセットを向上させる方法

ヨーク=ピーターは、日記のメンタルツールとしての万能性を強調している。問いかけることで個人の問題に対応できるのだ。「日記は、誰もが自分の必要に応じて上手く活用することができます」とヨーク=ピーターは語っている。たとえば、「感謝していることを3つ教えてください」という問いかけを用意すれば、自分の人生のポジティブな部分に目を向けることができる。
ポッドキャストの後半では、ホストのリサ・ラムシュカットとスポーツ心理学者のヨーク=ピーターが日記の効果と日常生活におけるその活用方法について解説している。
重要なポイントは、日記は自分の目標や問題に戦略的にアプローチできるところだ。なぜなら、日記では「言葉を選ぶ」必要があるからだ。ヨーク=ピーターは、紙とペンで任意の質問に回答することを推奨している。実際に書くことで作業全体がスローダウンし、完全に集中できるようになるからだ。
「簡単な質問に答えるだけなの時間はかかりませんが、自分の1日に大きな影響を与えます」とヨーク=ピーターは説明している。
榊原爽がゲスト出演したポッドキャスト『Mind Set Win』のエピソードの前半はページ最上部から聴取できる。また、日記の活用方法について解説されているエピソードの後半は上部リンクから聴取できる。
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