マルク・マルケス
© Taku Nagami
MotoGP

【MotoGP in 箱根!?】マルク・マルケスが日本の峠(箱根ターンパイク)を疾走!

MotoGP現役王者がレーシングバイクにまたがって日本の峠道を駆け抜ける。日本のモーターカルチャーとリアルレーシングが交錯する美しき映像作品。
Written by 青木邦敏
読み終わるまで:10分Updated on
**この動画は許可を得た上で道路を閉鎖し、徹底した安全管理のもとで撮影されています。レーシングバイクのイメージ映像となっておりますので、一般道では絶対にマネをしないでください**

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MotoGP in 箱根

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思わず二度見してしまった。
ここは日本を代表する観光スポット「アネスト岩田 箱根ターンパイク」。その料金所手前にレプソル・ホンダ・チームのMotoGPマシンが置かれている。
ゼッケン『93』、間違いなくマルク・マルケスのマシン。そして、驚くことにライダーである本人の姿も確認できる。
マルク・マルケスの偉大さについては、これまで成し遂げた偉業を知ればわかると思う。2010年にロードレース世界選手権125ccクラスでチャンピオン獲得、2012年にMoto2でチャンピオン獲得、そして2013年にはMotoGPクラスに昇格し(レプソル・ホンダ・チーム)、デビューイヤーでシリーズチャンピオンとなる(史上最年少記録更新)。さらには2014年、2016年、2017年にも王座を重ねている現役最強のライダーと言える。

最強王者がまさかの箱根疾走

今回撮影されたのは、走りの聖地である箱根ターンパイクを完全封鎖し、特別な許可を得て、MotoGP現役王者のマルク・マルケスが、ワークスマシンに跨りワインディングを疾走するもの。
頂上の大観山パーキングエリアまでの距離は15.752km。その途中のコーナーで世界が注目する日本のストリートカルチャーを象徴したマシン達と出逢い、日本独自のストリートカルチャーを疑似体験していくというストーリーだ。
ここでは、山のふもとから山頂に向けて徐々に年代が進んでいくように登場する各車両についてご紹介しよう。

【1958年】“人類の脚”、スーパーカブ誕生

1958年から生産されているホンダ・スーパーカブは、世界ナンバー1の最多量産数を誇るオートバイだ。2017年には世界生産累計台数1億台を達成し、2018年の今年は生誕60周年のアニバーサリーを迎えた。
そんなホンダの名車スーパーカブが、お蕎麦屋さん出前仕様でマルケスと並走! これは面白い。確かに、このおかもちスタイルは、海外にはない日本独自のヘビデュティカスタムだ。
そして、この出前に勤しむお蕎麦屋さんの正体に、皆さんはお気づきだろうか?
五百部徳雄

五百部徳雄

© Kunihisa Kobayashi

実は、お蕎麦屋に変装している人物は、かつて日本の最高峰レースだった全日本GP500クラスのウィナーである五百部徳雄選手だった! あまりに自然な演技とハマり過ぎな容姿から、見過ごした方も多かったことだろう。今回は自作のステッカーをヘルメットと割烹着に貼り、特別にサプライズ出演してくれた。(*箱根ターンパイク通常営業時は125cc以下の二輪車の通行はできません。道路を封鎖し許可を得て撮影実施しております)
■INFORMATION
車両:ホンダスーパーカブ90お蕎麦屋仕様
ライダー:五百部徳雄氏

【1970年】和製スポーツの伝説、ハコスカ

日本が世界に誇る名車、日産スカイラインGT-R
日本のモータリゼーションの成長とともに歩み、後にモータースポーツの世界でも数々の栄光を勝ち取ったマシンは、まさに特別なオーラを放っている。
今回登場したモデルはKPGC10。1970年10月にセダンをベースに新開発された2ドアのハードトップモデル、通称ハコスカだ。
このハードトップモデルは、センターピラーがなく、セダンより美しい精悍なエクステリアに注目が集まった。GT-Rは他車との差別化を図り、専用の意匠が施されている。中でも象徴的なのが、後輪ホイールアーチに装備するFRP製オーバーフェンダーだ(リベット6本で締め付け・脱着が可能。市販車でありながらもレース用の幅広タイヤを装着する際の利便性も考慮)。これによって外観の迫力が増すだけでなく、クルマとして特別な存在であることをアピールする。
また、モータースポーツの分野では、1972年の富士グランチャンピオンシリーズにおいて、風雨の悪コンディションの中、高橋国光選手が駆るKPGC10スカイラインGT-Rが、全車を周回遅れにしながら完全優勝を果たした伝説的なレース記録も残っている。
■INFORMATION
車両:日産スカイラインGT-R(KPGC10)
オーナー:小杉庄司氏

【1980年代】まさにアート。デコトラ黄金期

笛のような音を奏でながら走るド派手なトラック。荷台の扉には、美しく着飾った花魁が描かれている。極めて日本的な絵画やイルミネーションで車体を飾り付けたトラック、80年代に流行した「デコトラ」である。
今回登場のトラックは、歌麿会に所属する関野さん所有の「美咲嬢」だ。デコトラ界では、トラックを陸の船に例えて名前を付けることが常識になっている。良く聞くナニナニ丸とか名前を掲げて走っているトラックがいるのも、そんな風潮があるからだ。
美咲嬢のベースになっているのは、1988年登録の日野レンジャー4Eプラス5。船型バンパーを装着し、鱗ステンレス、スパンコールをふんだんに使って見事な飾り付けを施す。これぞデコトラ黄金期80年代の手法である。平成の世にあえて昭和の魅せ方を使って製作している点に、オーナーのコダワリを強く感じる。また、700個以上(!)にも及ぶ電飾メイクにも注目したい。今時なLEDではなく、あえて優しい光を放つ昔ながらの電球にコダワリを持っている。
荷台の運転席側には「不良姉御伝 猪の鹿お蝶」、助手席側には江戸時代の忍者強盗「地雷也」が描かれている。どちらもいかにも日本的な絵図で、素晴らしい作品である。これぞTHEデコトラ、日本が誇るアートトラックだ。
ちなみに、この美咲嬢、ショーモデルのお飾りトラックではなく、実際に仕事で使っているというから凄い! 毎日、茨城県の大洗漁港から魚を積んで千葉、埼玉方面に運搬・配達しているそうだ。
■INFORMATION
車両:美咲嬢(日野レンジャー4Eプラス5)
オーナー:関口和也氏

【1990年代】峠に花開いたレーシング魂、“走り屋”

90年代の初頭、レーサーレプリカのバイクの登場と共に火が付いた峠ブーム。巷のストリートは、チューニングされたバイクで埋め尽くされた。
ここで登場するライダー3人は、全国的にも名の通った神奈川のスペシャリスト達だ。箱根ターンパイクは、言ってみれば自分たちの庭のような場所。路面の段差、うねりのポイントまで細かく把握している。
そんな彼らが全開で必死に食らい付きながら、マルク・マルケスの姿をチラ見すると、彼は片手ハンドルで軽く流している余裕……流石に世界王者の次元の違いを見せつけられ、「撮影中にバトルを挑む無謀さに気付かされた(笑)」と語ったそうだ。
あらためて今回、登場したバイクについて説明する。どれも90年代を代表する走り屋バイクとなっている。
ホンダVFR400R(↑)を駆るBATTLE BOYS所属・BBマックさんのマシンは、速さはもちろん、見た目のレーシーさにもこだわった仕様だ。そのため、エンジンはバクダンKITを装着させてカリカリにイジッている。
ホンダNSR250R(↑)。チームは7110WORKS所属・内藤智和さんのマシンである。ド派手な作りではないが、エンジンはフルHRCで組んでいる。中身はレーサーだが、THE峠の走り屋としての考え尽くしたセットを組んでいる。
ホンダCBR400RR(↑)。妖会 CHR走魔#3所属、のぶくんの愛機だ。昔ながらの4発の音がたまらないと彼は言う。チューニングもやり込んでいて、RVF倒立フォークやMC18用17インチホイール等を装着。片目のゼッケンプレート風の塗り分けが、いかにも走り屋スタイルといった感じである。
どのマシンも外装はアッパーカウルとアンダーカウルのみで、中央のミドルカウルを装着していない。これが90年代当時から続く神奈川の走り屋スタイルの特徴だ。
■INFORMATION
車両:HONDA VFR400R
オーナー:BATTLE BOYS BBマック氏
車両:HONDA CBR400RR
オーナー:妖会CHR走魔♯03のぶくん氏
車両:HONDA NSR250R
オーナー:7110WORKS 内藤智和氏

【1990年代後半】JAPAN チューニングが世界を席巻

気持ちの良い高速ワインディングを走り抜け、ストレートに入ったマルケス。甲高いエキゾースト音と共に、挨拶がわりのウィリーを披露。
そこに佇んでいた人物こそがチューニング界の大御所、「アマさん」こと雨宮勇美氏だ。
雨宮勇美

雨宮勇美

© Taku Nagami

“ロータリーの神様”と呼ばれるアマさんは、チューニングショップ「RE雨宮」代表にして、伝説的な走り屋としても世界的に名が轟く人物。特に超高速ステージの湾岸高速でアマさんに勝てる者など誰もいない。色々な意味で修羅場をくぐり抜け、様々な経験を実績に変えてチューニング界の頂点に登った人物である。
その傍らに佇む一台の青いマツダRX-7に注目。このFD3Sに懐かしさを感じるファン達も多いはずだ。RE雨宮が1989年から製作を開始したコンプリートカー・GReddy(グレッディ)シリーズを覚えているだろうか? 以後2003年のGReddy FAINAL7まで、全10作品が生み出されている。
その中で今回、登場したモデルは、95年の東京オートサロンで発表され高い評価を獲得し、ドレスアップカー部門のグランプリを受賞したGReddy Ⅴである。
基本的にGReddy Ⅴが装着しているエアロパーツは、市販化を前提に作られている。したがってRE雨宮で販売するキットを購入すれば、同じレプリカ仕様を作ることができるが、唯一このGReddy Ⅴがスペシャルな点がある。それは電動ガルウイングを装着していることだ。姿や形だけでなく、ドア開閉動作でも驚かす手法は当時、話題になり、日本国内だけでなく海外メディアも注目した。また、内装もボディと同色の雨宮ブルーの生地にすべて張り替えられている点も、当時はあまり見ない魅せ方で、このGReddy Ⅴの特徴と言える魅力になっている。
■INFORMATION
車両:RE雨宮 GReddy Ⅴ (マツダRX-7)
特別出演:雨宮 勇美

5冠王者マルケス。さらなる頂上を目指して

こうして箱根ターンパイクを走りながら、日本の稀有なモーターストリートカルチャーに触れ合ったマルク・マルケス。
ただ移動するための道具・手段としてクルマやバイクと向き合うのではなく、仕事と趣味の両立であったり、自身のコダワリを主張するため、さらには腕を磨き、スピードを追い求めてチューニングを施したりと、様々なジャンルのマシンと遭遇する中で、日本独自のカスタマイズの楽しさや面白さについて、きっと興味深く感じたハズだ。
そして、マルク・マルケスは美しい秋晴れの箱根ターンパイク山頂まで道のりを一気に駆け登って行った。
最後に——。
撮影直後の週末、ツインリンクもてぎで開催された2018 FIMロードレース世界選手権シリーズ第16戦・日本GPにおいて、マルク・マルケスは見事3年連続・通算5回目のMotoGPクラス・シリーズチャンピオンに輝いた
おめでとう!!
マルク・マルケス@箱根ターンパイク

マルク・マルケス@箱根ターンパイク

© Kunihisa Kobayashi

マルク・マルケス@箱根ターンパイク

マルク・マルケス@箱根ターンパイク

© Kunihisa Kobayashi

マルク・マルケス@箱根ターンパイク

マルク・マルケス@箱根ターンパイク

© Kunihisa Kobayashi

マルク・マルケス@箱根ターンパイク

マルク・マルケス@箱根ターンパイク

© Kunihisa Kobayashi

マルク・マルケス@箱根ターンパイク

マルク・マルケス@箱根ターンパイク

© Kunihisa Kobayashi

マルク・マルケス@箱根ターンパイク

マルク・マルケス@箱根ターンパイク

© Kunihisa Kobayashi