2022年5月、“ニムズダイ” ことニルマル・プルジャが2つの世界記録を更新し、8,000m級登山における “可能性” の限界をさらに遠くへプッシュすることに成功した。
プルジャはたった8日間23時間10分でエベレスト、ローツェ、カンチェンジュンガを無酸素(酸素ボンベを使用せずに)で制覇し、同3座無酸素最速登頂記録を更新した。
同時に、プルジャはエベレストからローツェまでを26時間で無酸素トラバースし、2座間の世界最速無酸素トラバース記録も更新した。
この2つの記録は、8,000m級登山のピークシーズンに相当する5月7日から5月16日の間に達成された。プルジャは自分のチームElite Expedと遠征をリードしていたため、最初から記録更新を狙っていたわけではなかった。そして、さらに素晴らしいことにプルジャの全登頂は無酸素だった。本人はブログで次のように振り返っている。
「遠征を率いていたので、全員が栄養を摂れているか、休めているか、疲れていないかを確認しながら登っていました。私の中で、“サミットプッシュ” とはベースキャンプから山頂へ向かったあと山頂からベースキャンプまで戻ることを意味します」
「これが、私の認めるサミットプッシュです。正しく行われる必要があります。登頂後にヘリコプターでベースキャンプまで戻るのは認められません。登頂できない場合、緊急またはレスキューの場合、または誰かが使用する必要がある場合を除いてヘリコプターの使用は認められません」
また、プルジャは、記録更新は遠征の目標ではなかったと明言している。プルジャとElite Expedは、自分たちよりも経験が浅いクライマーたちの個人目標達成をアシストしながら遠征をガイドしていた。
しかし、だからこそ、今回の偉業はさらに輝きを増す。また、この事実はプルジャたちによる高難度登山の新時代が本格的に訪れていることを示している。
プルジャはブログの中で次のように語っている。
「私が今回の遠征で最高に思えていることのひとつは、最高のシェルパたちと一緒に無酸素で登れたことですが、彼らたちと一緒でも仕切っているのは私です。私がリードしていたのです。私は、優秀なフィットネスを備えているクライアントたちを率いながら記録を更新できました。不可能なことはないのです」
「ネガティブに捉える人はいつも必ず存在します。彼らは想像力が足りず、このような記録は達成不可能と考えるのです。ですが、私たちは彼らとは別の次元にいます。私は、皆さんが夢を叶えるためのインスピレーションになれていることに誇りを持っています」
プルジャは今回の2記録を「登山コミュニティ全体に捧げる」としているが、同時に、母国ネパールの新世代登山家たちに向けてこのような偉業は不可能ではないというメッセージを伝えたいとしている。
「あの14座登頂前は、8,000m級14座を半年で制覇できると信じていた人はいませんでしたが、今は誰もが “自分にもできる” と思うようになっています。私たちからインスピレーションやビジョンを得て、自分たちの目標を達成してください。このような形で皆さんにインスピレーションを与えられることを誇りに思います。不可能はないのです」
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