スキー

ノルディックスキーとクロスカントリースキーの違い

息を呑むような景色の中で素晴らしいエクササイズが楽しめるクラシックなスキースタイル「ノルディック」と「クロスカントリー」の違いを解説!
Written by Natalie Hamingson
読み終わるまで:8分Published on
Participants performing at Red Bull Nordenskioldsloppet in Jokkmokk, Sweden on March 27, 2021.
© Richard Ström/Red Bull Content Pool
レッドブル・アスリートのフリースキーヤー、ミシェル・パーカーはひとつのキャリア目標を定めている。それは、「パウダースノーで恐れを感じない」だ。
「ビッグマウンテンで自信を持ち、快適に滑ることが私の目標です」とパーカーは説明する。
スキーにトライしてみたいが、パーカーが慣れ親しんでいるようなビッグマウンテンに挑む用意はまったくできていない初心者にも選択肢は残されている。ノルディックスキークロスカントリースキーは、あらゆるレベルのスキーヤーに選択肢を提供してくれる。
しかし、ちょっと待ってもらいたい。ノルディックとクロスカントリーは同じではないのか? これら2つが同じ意味で用いられているのを聞いたことがある人もいるだろう。そこで今回は、ノルディックスキーとクロスカントリースキーの違いを明確にするガイドを用意した。
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ノルディックスキーとは?

1:ノルディックスキーの歴史

ノルディックスキーはスキーの最初期形態で、古代の移動手段がその起源だ。ノルディックスキーの原型は、少なくとも、雪深いスカンジナビアの地を横断するために木製の板を用いていた数千年前まで遡る。そして、16世紀初頭のフィンランドで使用されたストックなど、スキー用具が数世紀に渡って進化を続けたことで、雪上移動が簡単になっていった。
18世紀に入ると、スキーは私たちが知る冬のレクリエーションへと姿を変え始める。そして史上初のスキー競技大会が1840年代のノルウェーで開催されると、1920年代を迎える頃には、ノルディックスキーは国際スポーツにおける地位を確実にした。
レッドブル・アスリートのフリースキーヤー、ミシェル・パーカー

レッドブル・アスリートのフリースキーヤー、ミシェル・パーカー

© Aaron Blatt/Red Bull Content Pool

2:現代のノルディックスキー

今日のノルディックスキーは、なだらかな丘陵地帯を滑走する複数のスキー競技を意味している。この包括的な用語は、スキーヤーが斜面を高速で滑降するアルペンスキーやダウンヒルスキーと対比して使用される機会が多い。
ノルディックスキーという用語がクロスカントリースキーと同義で用いられているのを聞いたことがある人もいるだろう。間違いではないのだが、すべてを説明できているとも言えない。
クロスカントリースキーは、ノルディックスキーを構成する3つのスタイルのひとつだ(他の2つはアルペンツーリングテレマークスキー)。クロスカントリースキーのコースは大半が平坦だが、テレマークとアルペンツーリングのコースには上り坂と下り坂が点在している。
これらの用語の違いは簡単には理解できないが、すべてのノルディックスキーに関して確実に言えるのは「美しい自然環境が保証されている」ことだ。
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クロスカントリースキーとは?

クロスカントリースキーは自分のペースで雪の上をハイクできる。クロスカントリースキーはレジャー寄りのスキーとして捉えられる場合が多いが、実際はかなり高い身体能力が求められる。特にクロスカントリーのレースでは、強靭なスタミナが不可欠だ。ちなみに、世界最長クロスカントリーレースの称号は、220kmを走破するスウェーデンのNordenskiöldsloppetが保持している。
ヤコブ・ランゲ

ヤコブ・ランゲ

© Hans Herbig/Red Bull Content Pool

クロスカントリースキーの複数のスタイルを、スキルレベルとアドベンチャーレベルに合わせて紹介しよう。
  • クラシックカントリースキー:ハイクを好むなら、このクラシックなスタイルが向いているだろう。クラシックカントリースキーでは、昔ながらのスキー装備で、整備されたトレイルを蹴り出しと滑走で前進していく。
  • スケートスキー:このクロスカントリースキーの形式はアイススケートに似ており、左右交互にスケーティングしながら前進する。通常、スケートスキーは整備されたコース外のオフピステまたはバックカントリーで行われる。
  • ライトツーリング:整備されたコースから外れた場所を探索したい場合は、ライトツアーが良いだろう。地形が予測できないため、ライトツーリングでは金属製エッジを備えた頑強なスキーが使用される。
  • バックカントリーツーリング:このスタイルは本質的にはライトツーリングのアグレッシブバージョンだ。バックカントリーツーリングでは、オフトレイルを滑りながら起伏に富んでいてよりチャレンジングな地形を目指す。
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ノルディックスキーとバックカントリースキーの違いを理解する

すべてのスタイルのクロスカントリースキーがノルディックスキーに含まれるが、すべてのノルディックスキーがクロスカントリースキーにはならない。しかし、ノルディックスキーとクロスカントリースキーのどちらも、前進するために自分の筋肉を駆使しなければならない複数のスキースタイルが含まれる包括的な用語だ。
両カテゴリーに含まれるどの競技も、トレイルあるいはオフトレイルを問わず、凍てついたカントリーサイドを移動するための独自のテクニックと装備が必要になる。
クリスチャン・イルベス

クリスチャン・イルベス

© Jaanus Ree/Red Bull Content Pool

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ノルディックスキーのメリット

1:テレマークスキーのメリット

ノルウェーのテレマルク地方にちなんで名付けられたテレマークスキーは、クロスカントリースキーとアルペンスキーのハイブリッドだ。専用に設計された用具を装備して平地を進み、急傾斜を登り下りする。アルペンスキーに似たスキーを装着するが、ブーツの踵が固定されない。また、テレマークブーツはスキーを外したあとの快適性が非常に高いと評価されている。
テレマークスキーの大きな特長となっているのが、テレマークターンだ。これは踵を浮かせてダウンヒルの滑り方で、おじぎ、あるいはしゃがんだ姿勢を取る。テレマークレース競技では、次々にやってくるジャンプやゲートをクリアしながらテレマークターンを見せつけるエキスパートたちの姿を確認できる。
たとえプロを目指すつもりがなくとも、テレマークスキーは社交性の高さが有名なため、新しいコミュニティに出会える可能性がある。いずれにせよ、テレマークターンをマスターしたときの自由な感覚は他に比べようがない。また、テレマークスキー以上に優秀なレッグワークアウトはないだろう。
ノルウェー・モセトルトペンで開催された【Red Bull Janteloppet 2019】

ノルウェー・モセトルトペンで開催された【Red Bull Janteloppet 2019】

© Olav Stubberud/Red Bull Content Pool

2:アルペンツーリングのメリット

アルペンツーリングとテレマークスキーは特に地形において近縁関係にある。しかし、アルペンツーリングにはテレマークターンは存在せず、スキーのビンディングに2種類のセッティングがある。アルペンツアーのビンディングは坂を登るときには踵を自由に動かせる一方、ダウンヒルを駆け下りるときにはしっかりと固定できるようになっている。
テレマークターンにトライする用意ができていない場合は、アルペンツーリングが起伏のあるノルディックスキーへの絶好の入口となるかもしれない。
また、アルペンツーリングでもフィジカル / メンタル両面で素晴らしい恩恵に与ることができる。アルペンツーリングは筋力強化に最適で、心臓血管系の健康を増進させる。また、エンドルフィンとアウトドアの組み合わせはストレス解消に最適だ。

3:クロスカントリースキーのメリット

正しいノルディックスキー用ワークアウトに上り坂は必要ない。クロスカントリースキーでも心臓血管系は十分に鍛えられる。一部の専門家は、クロスカントリースキーが最良の心臓血管系ワークアウトとしている。プロフェッショナルなクロスカントリースキーヤーが驚くほど高いVO2レベル(最大酸素消費量)を備えているケースは少なくない。
ヤコブ・ランゲ

ヤコブ・ランゲ

© Jakob Lange performs in Seefeld in Tyrol, Austria on January 23rd 2015

とはいえ、クロスカントリースキーの恩恵に与るのにプロである必要はない。クロスカントリースキーは、関節への負荷を低く抑えながら大量のカロリーを燃焼できる最高の全身ワークアウトで、初心者にも最適だ。
スキーは未体験だが、普段とは違う高負荷の心臓血管系アクティビティでパフォーマンス向上を求めているのなら、クロスカントリースキーは最高のクロストレーニングになるだろう。ストレングスを高め、バランスを向上させながら、最高の冬景色の中で爽快な1日を楽しむことができるのだ。

ノルディックスキー&クロスカントリースキー:地形を問わないアドベンチャー

ノルディックスキーとクロスカントリースキーの微妙な違いを理解できたら、それぞれのスキータイプがもたらしてくれるエキサイティングな体験を探る準備は整ったと言える。
アルペンツーリングでマウンテンサイドを登るにせよ、昔ながらのクロスカントリースキーで小旅行を楽しむにせよ、息を呑むような景色の中で素晴らしいエクササイズが楽しめるはずだ。初心者、あるいはエキスパートを問わず、ノルディックスキーの広大な世界が両手を広げて歓迎してくれる。
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