Gaming
格闘ゲームプレイヤーたちは各国・地域のシーン / コミュニティから生まれ出てくる。活気溢れるアーケードや、トーナメントを開催できるコーナーが用意されているゲーミングカフェなど、サイズを問わず、このような場所に格闘ゲームコミュニティの “魂” は存在する。
格闘ゲームプレイヤーたちを育んでいるこのような場所は、格闘ゲームへ情熱を注ぐスタートポイントか、その情熱を深化させるきっかけになる可能性があるが、かつてから出入りしてきた人たちにとっては、コミュニティに参加することの意味をあらためて思い出す場所になる。
UYUに所属する『ストリートファイターV』のトッププレイヤー、Leevy “Oil King” Linは、台湾の格闘ゲームコミュニティ出身だ。そして今、レッドブルと組んだ彼は、自分のシーンを助けるもうひとつの方法を手に入れている。
現在36歳のOil Kingは若い頃に格闘ゲームシーンに飛び込んだ。「小学校時代に『ストリートファイターII』を初めてプレイしました」と振り返るOil Kingは、我々全員が共有できる少年・少女時代特有の問題に触れながら話を続ける。「最初は何をやっているのかさっぱり分かりませんでした。そのあとで『King of Fighters』シリーズをプレイするようになりました。本気で格闘ゲームをプレイするようになったのはこの作品からです」
そして、彼の格闘ゲームへの興味はアーケードによってさらに高められた。「かつて台湾ではアーケードの人気が高かったんです。父親に一度連れて行ってもらったのですが、これをきっかけに格闘ゲームのファンになりました。格闘ゲームが僕の人生を通じた興味になったのです」
この興味がOil Kingを『ストリートファイターV』のトップレベルへ導いた。彼のワイルドなプレイスタイルをひと言にまとめるのは難しく、彼と彼のラシードは、長期に渡りシーンの中で恐れられてきた。
この予測不可能性が、Oil Kingが恐怖とされてきた理由だ。彼がどのタイミングでVリバーサルを択に含めた起き攻めを仕掛けてくるのかを読み切ることはできない。彼のプレイに動揺しないのは世界一胆力のあるプレイヤーだけだ。そして、Oil Kingを勢いに乗せてしまえば、あっという間に画面端に追い詰められ、ラウンド終了までひたすら攻められることになる。
このように書くと、Oil Kingが他のトッププレイヤーたちよりも攻め気が強いタイプに思えるかもしれない。しかし、彼のあらゆる選択と決定は緻密な計算の結果だ。この非常にユニークなプレイスタイルは対策を用意するのが難しく、誰もがトーナメントで彼と同じブラケットに入るのを嫌がっている。
結果、Oil Kingは数多くのトーナメントで上位フィニッシュを記録しており、FV Cup 2017、CPT 2018 オンライン東アジア2、TGU x SEA Major Thailand 2019などでは優勝している。
しかし、2020年にオンライン対戦が一般化したことで、Oil Kingをはじめとするトッププレイヤーたちは慣れ親しんできた環境を離れなければならなくなった。あのCapcom Pro Tour(CPT)でさえフォーマットが大きく変更されている。
地域(リージョン)でトーナメントが開催され、その勝者がファイナル出場権を獲得するというフォーマットがCPTに採用されている現状を受けて、Oil Kingは世界と戦える日がいち早く戻ってくることを願っている。「CPTの2020年と2021年はオンラインで開催されています。今年の運営は、去年の経験を活かして大幅に向上している印象です。ですが、僕たちがエントリーできるのは地域トーナメントに限定されていますし、地域に絞っていてもラグが確認されるときがあります」
「ですので、Red Bull Kumite Londonのようなオフライントーナメントが早く再開されることを願っています。今回、Red Bull Kumite Londonに参戦できなかったのは本当に不運でしたが、イベントの配信と各対戦終了後の格闘ゲームコミュニティのコメントからは、格闘ゲームコミュニティが世界中のプレイヤーたちと競い合えるオフライントーナメントを求めていることが分かりました」
パンデミックの影響で世界中のローカルシーンが足留めを食らっているが、Oil Kingのトレーニングはほとんど影響を受けていない。「僕がルーティンとして用意している配信とローカルプレイヤーとの対戦トレーニングはパンデミック中も変わりません。プロプレイヤーですので、毎日のルーティンを維持するように心掛けています」
「実は、台湾で過ごせる時間が増えたので、フィジカルコンディションを高めるためにジム通いも始めました。これがトーナメントでのパフォーマンス向上に繋がることを願っています」
格闘ゲームでは、バフとナーフが加えられることによるメタの変化に伴い、プレイヤーたちのキャラクター選択率が変化していく。たとえば、『ストリートファイターV』のセスは高火力キャラクターとして知られてきたが、最近の調整で多くのプレイヤーがこのキャラクターをロースターから外している。しかし、Oil Kingのセスへの信頼は変わっていない。
「今シーズン序盤のバランス調整でセスが弱体化されましたが、彼の能力とパフォーマンスについては何も疑っていません。セスは今も強キャラクターだと思っています。セスの最大の問題は、体力が900に下げられたことです。これが原因でトーナメントでは苦戦を強いられる可能性がありますね。ですが、そのあとの5月のバランス調整でセスは若干強化されました。ですので、僕はサブキャラクターとして使い続けます」
セスは今も強キャラクターだと思っています
また、彼のメイン、ラシードへの信頼も変わらない。「ラシードも引き続き強キャラクターだと思ってます。ですが、カプコンはかなり大規模なバランス調整を施しているので、強キャラクターが増えています。ですので、ラシードのひとり勝ちとは言えない状況ですね」とOil Kingは語り、ライバルキャラクターについて次のように続けている。「今シーズンはどのキャラクターよりもキャミィがトーナメントで優勝しています。ですので、彼女が話題になるときが多いでしょう」
『ストリートファイターV』へ加えられた変更については、Oil Kingは新たに追加されたVシフトを大いに楽しんでいるようだ。「無敵技がないキャラクターにとって、Vシフトは助けになります。ですが、コマンド投げや択攻めを得意としているキャラクターには不利に働きます。また、Vシフトを発動させるのは簡単ではありませんし、世間が思っているほど使えない可能性も否めません。ですが、キャラクター間のバランスを取るという意味では良い施策だったと思います」
米国のeスポーツチームUYUは以前からOil Kingを支えてきた。本人は次のように説明する。
「UYUは家族のような存在ですね。2018年から僕をサポートしてくれています。彼らの素晴らしいサポートが今の僕を作ってくれました。どんなときも彼らは僕を信じてくれました」と語るOil Kingは、UYUがプロプレイヤーとしての自分の成長を助けてくれたとし、次のように続けている。「僕はUYUの配信チームやデザイナー、マナージャーから色々なことを学んできました。僕は、このような学びのすべてが自分の将来に役立つと信じています」
そして今、Oil Kingは自分だけではなくシーン全体の成長も目指している。
「台湾の格闘ゲームコミュニティに力を貸したいですね」と語る彼は、地元に恩返しをしたいと考えている。「自分のパフォーマンスを大幅に向上させ、さらに注目されるように成長しつつ、ローカルコミュニティに注力していきたいですね。その結果、より多くの人が僕たちと『ストリートファイター』シリーズに興味を持ってくれれば嬉しいですね」
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