© Takaki Iwata
ウルトラ ランニング
山岳ランナー史上最も困難な挑戦、ONE STROKEとは?!
富士山を1日に4回走るトレラン史上最も過酷なチャレンジ、ONE STROKE。ここでは、挑戦者の上田瑠偉がプロジェクトの概要を語る!
01
【上田 瑠偉 profile】
ーー上田 瑠偉さんのキャリアスタートは?
上田 瑠偉(以下:瑠偉)中学時代の陸上中距離走です。
ーーその後、駅伝の名門校で活躍されたとか?
瑠偉:佐久長聖高校に進学しましたが、故障を繰り返して思うような記録を残せませんでした。
ーーターニングポイントはどのあたりでしょう?
瑠偉:大学生の頃ですかね。早稲田大学へ進学した当初は箱根駅伝を目指そうとも考えたんですが、自分には“楽しく走る”ということの方が向いていると思い、陸上同好会へ入部しました。10代最後の思い出にと参加したレースで、以前の所属先のスタッフからお声掛けをいただいて、トレイルランニングの世界へ飛び込むきっかけとなりました。
ーーその翌年(2014年)に日本で最も権威のあるレースでトレイルランニング界を騒がす快挙を遂げたと聞きました。
瑠偉:日本山岳耐久レース(通称:ハセツネCUP)を最年少&大会新記録で優勝しました。
ーー海外のレースに積極的に参加されるようになったのはいつ頃からですか? また結果なども教えてください。
瑠偉:2016年の『ウルトラトレイル・デュ・モンブラン CCC(101km)』で2位、『ユース世界選手権』コンバインド種目で優勝、『アジア選手権』でも優勝しました。
ーー2019年にはなんとアジア人初という快挙も。
瑠偉:『MIGU RUN SKYRUNNER WORLD SERIES』で年間世界ランキング1位を達成することができました。
02
【ONE STROKEとは?】
ーーそんな、輝かしい実績を積み重ねてきた瑠偉さんにとって今年一番のビッグモーメントとなるONE STROKEについてお聞かせください。“きっと、とてつもなく凄いこと!” だということは理解できるのですが、具体的な情報がまだどこにもなくていまいち全貌が掴めません。
瑠偉:富士山には山頂に至るまで、吉田ルート、富士宮ルート、須走ルート、御殿場ルートと4つの登山道があるんです。それを全部繋げて一周してくるというプロジェクトです!
ーーONE STROKEは昔からある、山岳ランナーにとっては有名なチャレンジなんですか?
瑠偉:ONE STROKEは今回のプロジェクト名ですが、このようなチャレンジを僕たちの間では富士山一筆書きと読んでいます。こっそり挑戦されている方はいらっしゃると思いますが、新聞などに取り上げられて記録として残っている方は僕が知る限りで2人。無謀すぎてチャレンジする人自体が少ないんです(笑)。
ーーそのお二人が残した記録はどれくらいなのでしょう?
瑠偉:一人は登山で繋げた方で23時間台だったんですが、もう一人は山岳ランナーの方で11時間53分44秒という記録が残っています。
ーー普通は富士山って、1つのルートを1日や2日かけて登るって認識であってますよね? 4つのルートを連続で登って、しかもそれが11時間台だって少し理解できないんですけど……(苦笑)。
瑠偉:一般の方だと、富士山って1回登るだけでいっぱいいっぱいですし、そもそも走るのではなく登る目的で行かれますからね。そこを1日で走るんですから、“ふざけてる”って思われても仕方ありません(笑)。
ーー一体、誰がどう言った目的で始めたんですかね?
瑠偉:それは僕にも分かりませんが、面白いからじゃないですか(笑)。
ーー走行距離はどれくらいになるんですか?
瑠偉:試算の距離は52.1キロです。ただ、これくらいの距離を走るレースはよくありますし、僕は125キロのレースに参加したこともあります。今回は距離ではなく累積標高(登りの合計)が重要になってくるんです。
ーーといいますと?
瑠偉:52.1キロの間でどれだけの高さを稼いだかってことです。正確な数字は現在計測中ですが、それが今回はトータルで約7,000メートルになるって言われています。富士山って3776.12メートルですけど、今回は登っては降り、登っては降りを繰り返す間に約7,000メートルを登ります。世界一の高峰、エベレストの標高が8,848メートル。そう考えるとかなりタフな挑戦だと分かっていただけるかなと。
ーーそれは驚異的なチャレンジですね。さすがに10時間走りっぱなしってことではないですよね?
瑠偉:いわゆるマラソンでいうエイドステーションみたいなものを設けようとは考えています。おそらく各登山口になるのかな。トータル3回ですね。それ以外は走りっぱなしになると思います。
03
【チャレンジへの意気込み】
ーーこのチャレンジの一番の大変さはどこですか?
瑠偉:富士山という土地柄、酸素も薄いですから、低酸素に適応することが難しかったり、ほんとに登りと下りしかないので平坦で休める場所がなく、ペース配分が難しい。場合によっては、低体温症で途中棄権することだって考えられる。あとは、活火山なので溶岩っぽい岩石があったりもするので転んだら痛いでしょうね(苦笑)。
ーー今はどういったトレーニングをされているんですか?
瑠偉:実際には低酸素ルームでランニングしたりだとかですね。また標高が高いところに適応するため、5月下旬からヨーロッパに遠征に行って高地でのトレーニングも行っています。
ーーチャレンジ前に実際にコースを走ったりはするんですか?
瑠偉:富士山の開山日は7月。遠征から帰ってきてプロジェクトの日までに1、2回登れるかどうかというところです。本番と同様に4方向から登ると疲れちゃうので、とりあえず1ルートを登ってを2回くらい行おうかなと。
ーー荷物はどういったものをお持ちになるんですか?
瑠偉:7月とはいえ、標高が高いのでまずは防寒着。あとは万が一のための救急セット。加えて、食料と水分ってところです。
ーー食料と水分はどういったものを?
瑠偉:長時間走るので途中でエネルギー切れにならないようにコンパクトなジェルがメインになると思います。固形物だと消化に時間がかかりますし吸収も悪いので。すぐに吸収されてかつ軽量という小さなジェルは欠かせません。もちろんレッドブルもですね。
ーーなぜ、ここまで過酷なプロジェクトにチャレンジしようと思ったんですか?
瑠偉:こういった世界情勢の中で、山岳ランナーとしての自分が今できることを考えた時、日本を象徴する山で一筆書きという日本特有の手法で行うプロジェクトに挑戦するアイディアが生まれました。ONE STROKEが日本の魅力を発信するという一つのコンテンツになればいいと思っています。もちろん、このプロジェクトをきっかけに山岳ランの楽しさを多くの人に知ってもらいたいとも思っています。
(了)
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─[Information]─
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