今回のサイファーを振り返ってみていかがでしたか?
すごくあったかい空気だったんですけど、自分史上いちばん緊張しましたね。ほかの皆さんが迎え入れてくれたので気持ちも和んでいい感じだったと思います。学生時代から聴いていた方たちだったので、自分のラップをそんなひとたちに聴いてもらっているというのは感慨深さもあり、楽しさもありで。
自分のリリックで気に入っているのは“アカデミアに悔いはないが別れ際は寂しいもんだ/マミーとダディの目にも涙”というライン。これは現在の自分の心境……これから覚悟を決めてラップをやろうとしているけど寂しい部分もあるって気持ちを率直に反映している。加えて、“24”という自分の年齢を入れ込んで“時計の針がゼロになるころから”っていうふうに、時計がひと回りしてまたリフレッシュしてスタートするという気持ちを込めた部分も自分では気に入ってます。
ラップをはじめたきっかけを教えてください。
ラップ自体はずっと好きだったんですが、自分がやるものじゃないし、やったところでどうにもならないと思っていたし、研究者になろうと思っていたので、ずっと聴く専門で。リリックを書くのも時間がかかるし、そこに時間を割くなら勉強したほうがいいんじゃないかって。
でもコロナで自粛期間に入って、大学卒業から大学院入学の時期が半年空いてたのでやってみようかなと。そこから楽曲をSoundCloudにアップしだしたのが最初ですね。2020年の5月でした。結果、ラップするのは楽しかったし、リリックも思ったより早く書けたし、これまで聴いてきたラッパーのフロウも体で覚えてたので、スッとできたんですよね。
これまで発表した楽曲で、自身の代表曲を挙げるなら?
“Period.”じゃないですかね。1stシングルですし、自分が進路で悩んでいたときの葛藤を吐露した曲なので、振り返ってセンチメンタルな気分になりますね。
あと今月リリースされた“Nectar.”もその続編的な意味合いがあって、自分としては2曲でひとつの楽曲というイメージです。
SoundCloudに上げてる曲でいうなら“Floor is Yours”って曲は比較的聴いてもらっている楽曲なんですが、これは酔った勢いで書いた曲でもあるのですこし意外ですね。
自身のラップスタイルの特徴はどんなところですか?
どんなスタイルでもチャレンジしてみたいし、フロウや声の使い方もバリエーションがあると思ってて、曲によって最適な声質やフロウを選び取ってできるんじゃないかなと。
歌にも興味があって。ラップより前に高校のときに路上ライブでOne DirectionやJustin Bieberを歌っていたという経験もあって、その経験のおかげで曲のなかに歌を自然に取り入れられるというのもあります。
影響を受けた人物は?
Tyler, The Creatorは活動の幅を感じるし、いちばんリスペクトしているアーティスト。ラップスキルでいえばJID、変幻自在なラップという意味ではKendrick Lamarがロールモデルですね。最近はDominic Fikeも好きで、すごくエッジがあるんだけどポップで、ラッパーが好きなアーティストというのも納得できるというか。
あと自分は“自分はだれなんだろう?”ってアイデンティティに悩んだ時期があって、そのタイミングで平野啓一郎さんの本を読んで救われたところがあって。彼もアイデンティティをテーマにするんだけど、問い自体はこちらに投げかける感じで書いているから、自分のストーリーとつなぎ合わせて考えることで自分はある種の答えを見出せた。なので平野啓一郎さんにはとても感謝していますね。
今後の予定と将来の展望について教えてください。
とりあえずこの1年は曲をいっぱい出して、そこからもっと幅を広げていろいろな芸術をしていきたいと思ってます。自分が持ってる可能性を自分で狭めたらいけないと思ってるので、やりたいことは全部やりたい。ライブのステージでどんなものを見せたいかというところも含めてプロデュースしていきたいし、映画だって作りたい。
あとは今回のリリックでも言ってますが、いつかグラミーを獲りたいですよね。どうやったら獲れるんだろうって考えているけど、音楽に変わりはないし、大きな夢だけどできないことはないのかなと思ってます。
👉Skaaiインタビュー『研究者への道から一転、覚悟を決めてラップをやろうとしてる今』