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ソーシャルイノベーション
自らの意思で選んだ道を正解にしていく!澤円に学ぶ、これからの時代の生き方
経営者、元日本マイクロソフト業務執行役員、大学教員など様々な顔を持つ澤円。そんな澤氏がRed Bull Basement日本代表にイノベーターとしての心得を、そして今を生きる若者に対してエールを送る!|特別インタビュー
かつて人類が火を獲得し、暗い夜におびえる心配がなくなったようなったように。デバイス一つで、どこにいる誰とでもで繋がる時代になったように…。
「一つのアイデアが、世界を変える。」
Red Bull Basementは、未来を担うイノベーターたちがAIテクノロジーを駆使して、斬新なアイデアを生み出し、羽ばたかせるイベントだ。
2024年11月にはJapan Finalが開催され、日本代表には東京理科大学1年生の文創鉉さんと小田凛太朗さんの「MIGAKO」というアイデアが選ばれた(*1)。同12月にはRed Bull Basement 2024 World Finalにて、世界各国から集まる代表、そして計40アイデアの中から頂点が決定する。
その日本代表の二名を支えるメンターの一人として澤円(さわ・まどか)が着任(*2)。今回はその澤氏に、文さん・小田さんとともに日本代表選出アイデアの率直な感想のほか、二十代のキャリア形成やAIとの共存、人生の目標設定など、様々な観点で今の若者が抱える悩みについて解決のヒントをきく!
*1:日本代表選出アイデア「MIGAKO」
*2:澤円(さわ・まどか)
01
日本代表のメンターを引き受けて
澤氏は現在、自身の会社経営のみならず多数の企業の顧問を務めることでビジネスの最前線で活躍の傍ら、武蔵野大学でも教鞭をとるなど、様々な面を持ち合わせている。そんな澤氏にとってのRed Bull Basementとのかかわり方や日本代表のふたりが生み出したアイデアについて以下のように語る。
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ー 今回、メンターとして最初にふたりのアイデアをきいたときの率直な感想は?
すごく良い!
「いい意味で普遍的なアイデアが出てきたな、と。Red Bullのピッチコンテストだからもっとぶっ飛んだアイデアが来るかなと思っていました(笑)。
ただ、ビジネスの中で重要なポイントは顧客マーケットの大きさ。人類全員がターゲットとなり、貧困地域の健康課題にも転用しうる未来も感じさせますし、世の中を良くしていく意味で非常に良いものだとおもいます」(澤)
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ー 今回Red Bull Basementのメンターを引き受けた理由は?
もっと世の中を面白いと思ってもらいたい
「まず表向きの理由としては、大学で教鞭をとっており、大学生に何かを提供するというのがライフワークに組み込まれているからです。
もう一つプライベートな理由としては、子どもがおらず、将来への投資に近い感覚からですね。二十代くらいの方が今後世界で活躍してくれるお手伝いができることは非常にやりがいがありますし、彼らに『世の中はもっと面白い』と思ってもらいたいなと」(澤)
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02
情報が増え続ける社会で大事なのは「OO」
文さん、小田さんの世代はインターネットが当たり前であり、生活は利便性を増す一方、どこか生きづらさを感じたり自己承認に苦悩することもあるという。そんな現代の若者が生きやすくするためのヒントは意外にも自分自身の中にあると澤氏は語る。
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ー 今の学生にあって、当時学生だった澤さんになかったことは?
圧倒的な情報量
「ある調査レポートで『2013年~2023年で情報量が14.9倍』と示す通り、とにかく情報の量が私の学生時代より間違いなく増えている。ただ、人間の脳みそは変わっていないから、取捨選択がどうしても必要になる。
しかも、判断の物差しも増えたから選択肢が無限に近いレベルで増えたなと思います。例えば昔は『大企業に行く』とか『官僚になる』とかが成功の一つだったけど、今はそれ以外にも成功パターンがいくつもあるから目移りしやすいわけですよね」(澤)
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これを受け、小田さんが将来に対し、何が正解かわらないという心情を吐露してくれた。
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「卒業後の進路について、僕らは理系なので大学院に行く人が多いんですけど、就職や起業をはじめ選択肢がやまほどあるのでやっぱり不安というより、何が正解なのか分からないというのをすごく感じます」(小田)
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ー その情報社会で若者にとって生きる上で大切なことは?
自分の意思で正解と思うこと
「自分の意思、ですね。正解は、その瞬間に決まるもんじゃなくって『正解にする』っていう自分の意思で決まるものだと私は必ず言っています。必要なのはスキルでも能力でも材料でもない。
日本の教育だと、答えがある前提で教育を受けすぎちゃってるから、みんなどうしてもそれを探したくなっちゃう。でも、自分の意思で正解を決め続けていかないと、自分の人生を生きることができなくなっちゃうんですね。
今は選択肢が無限にあるから、若いうちは自分の頭で選んでいくことをやっていったらこけてもすぐにリカバリーができると思います」(澤)
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03
今こそ挑戦のチャンス!その背景は
正解は自ら選んだ道をそう思うことだと語る澤氏。今回のイベントは「AI」がテーマとなっており、日本代表のふたりもそれを題材としたアイデアを生み出している。様々な技術が普遍化するなか、例えば今後AIがどうキャリア選択に影響するか、どう活用するべきか質問を続けてみた。
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ー 生成AIは今後の若者にどう影響を与えますか?
みんなゼロからのスタート
「私はインターネット時代、コロナ時代とふたつの世の中のリセットを味わいました。このとき、誰しもがゼロからのスタートだったんですよ。例えば、それまでは超優秀ってエンジニアもインターネットという真新しい技術の前で誰しもド素人みたいな世界を目の当たりにしました。だからこそ初速がすごく大事。
今回の生成AIもそれと同じだとおもっていて。『正解がなんだろう』ってのは一旦考えずに、まず自分が興味ある体験を面白がってみるのが第一だと思うんですよね」(澤)
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ー 先ほどの「意思」とAIとの関係についてはどうでしょうか?
あなたの行動はあなたにしか生み出せない
「極論になるけど、日本語って別に誰かが開発したものではないですよね。でもプレゼンするときに私は日本語を使ってます。日本語を使うことに疑問を差し挟む余地はないのと一緒で、生成AIがあること、使うことにはもう疑問を持つ必要がないと思う。あとはそれで世の中をどうしたいか、っていう後工程のほうが大事。
『人自身がどう行動して世の中を良くするか』そのものにはAIはきっと別に何もしないですし、あなたの行動はあなたにしか生み出せませんよ、って思ってます。生命体としての活動の選択肢はあなた次第で、そこに対してAIの存在は無縁なんですよ」(澤)
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ー すなわち、過度に恐れる必要はないということですよね?
むしろ時代を作る側になっていくチャンス
「その通り。さっき言った通り、誰かが出してくれる正解を待つんじゃなくて、まずは試してみるのが大事かなと私は思います。みんなゼロベースなので、むしろ時代を作る側になっていくチャンスじゃないかなと。
AIが第四次産業革命なんていわれてますが、日本は第三次(=インターネット)の時に過度に恐れすぎたせいで、『使おうぜ』となり経済が一気に伸びたアメリカ・中国とは大きな差がついてしまった。今回もビビっちゃったら、また日本は負けるよ、って話なんですよ。
で、やっぱりAIってのは言葉の壁だったり様々なバリアを取っ払ったりアイデアをすぐ反映することができるんで、もう今はめちゃくちゃチャンスなんですよね」(澤)
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04
もし夢や目標を持てないときには
先ほど澤氏に語っていただいた現代における「意思」の重要性はAI社会でも変わらないことが分かった。一方で、なかには自分の意思や憧れ、目標をなかなか見つけられずに苦しむ人もいるだろう。そうした「探求者」は何をよりどころにすべきかをきいてみた。
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ー 夢や目標、ロールモデルがいない場合はどうすれば?
この人、好きだなってのを探してみる(リアルでも創作でも)
「まずは『こんな人いいな』ってのを探してみたら?その人をよく観察してごらん、ってよく言ってます。別にリアルじゃなくてもアニメのキャラとかでもいいんですよ。それがなんでかっこいいか、憧れるかを言語化すると自分の情熱だったりとかヒントが転がってるかもしれない」(澤)
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ー 澤さんにもそういうイメージ像にあう人はいたのでしょうか?
「007」シリーズのQ、彼がいなきゃボンドはただの無謀なひと(笑)
「実は私、大学4年でなんとなく決まってた会社の内定をお断りして、年明けから就活をし直したんですよ。何十年も働くイメージが全くわかなくて。
それで遅すぎるタイミングだけど、年明けから再度就活を始めることになり自己分析をしたときに何になりたいんだろうって色々考えました。結果、イメージに一番近いのは『007』シリーズののQでした。彼がいなきゃボンドはただの無謀なスーツのおっさんですからね(笑)。ボンドカーを作るエンジニアライクな姿がかっこよくて私はエンジニアからキャリアを始めた」(澤)
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ー 世の中の先輩のアドバイスが腹落ちできない場合は?
うるせーバ○!って思っとけばいい!
「(短絡的に)昔のやり方を押し付ける人とは距離を取りましょうね、ってのは若者には言いたい。『じゃああなたは』若いころ思いっきりチャレンジしていてものすごい大きなことを成し遂げようとしてたんですかって。
他人が定義した人生を生きるってなるとしばらく経って振り返ると『あれ、俺何やってたんだっけ』ってなるのは不幸ですからね。二十代でコロナ・AIと世界のリセットを体験できたことはすごいことだから、大いに武器になると思っていい。横を見ないで、自分の意思を正解にしていくのがいいと思います」(澤)
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05
それぞれのエナジーの源泉
最後に、自分の道をまっすぐ突き進む3人に、彼ら自身を突き動かす原動力がどこにあるのかきいてみた。
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ー 最後に、みなさんにとってのエナジーの源泉について教えてください。
面白いかどうか
「私の好きな本に『死ぬ瞬間の5つの後悔』という本があって、色々な人に薦めています。好きなことをやらなかったことに対して、すごく人は後悔するんですよ。
一方やった後悔というのは、その瞬間はつらいかもしれないけど時間が経つと何かの形で絶対再利用可能なんですよ。だから私は世の中を面白いか、面白くないかで見てその時点の自分にとって『あ、これ面白い』ってものにどんだけ飛びつくか、もうこれに尽きるかなって感じですね」(澤)
一つ決めたことを突き進める
「僕も澤さんみたいに結局『面白い』と感じたことに飛びついてきたな、と思います。自分自身マルチタスクで色々できるようなタイプではないけれど、一つ決めた目標に対してはガンガン突き進めるその道のりに魅力を感じています」(小田)
アイデアを形にし続けること
「もともと発明家になりたかったから、自分のアイデアが認められることに『嬉しい』と思っています。世界に認められるものでもそうでなくても、今後もそうした活動を続けていくことが僕のやる気の源泉です」(文)
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より世の中を生きやすくするためのヒントはスキルや才能ではなく、自分自身のなかにある。そしてAIやテクノロジーは、その自分が決めたことを突き進むための良きサポートアイテムになりうる、ということがこのインタビューを通して理解できた。
と同時に、澤氏の言葉に聞き入る日本代表ふたりの真っ直ぐな視線に、無限の可能性への応援と嫉妬のようなふたつの感情を抱いた。が、それもこれも彼らが、Red Bull Basementにチャレンジする、といった一歩を踏み出したからこそ勝ちえた特権だ。
あなたが抱えているもやもやを取り払うためには、まずはわずかな小さな一歩でも、進んでみることがいいのかもしれない。その一歩を正解にするのはあなた自身であり、そしてその一歩がきっと、あなたをより「世界って面白い」と思わせてくれるだろう。
◆Information
Red Bull Basement Japan Finalにおいて、ローカルパートナーとして開催をサポートいただいたのが「MATE.BIKE」。
「YOUTH SUPPORT PROGRAM」を始めとする「新しい時代を築いていく次世代の若者たちをサポートしたい」という同社の想いと、Red Bull Basementの理念が共鳴し実現した今回のパートナーシップ。Japan Final優勝者のふたりにはMATE.BIKE製品が贈呈された。