不法占拠生活をするロンドンのメッセンジャー
© Kosuke Aoki
フィックスギア

不法占拠生活をすると或るメッセンジャー in ロンドン

メッセンジャーを生業としながらもフォトグラファーとして活躍するKosuke Aoki。 彼が撮らえたリアルでディープな自転車の世界とは?東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」
Written by Kosuke Aoki
読み終わるまで:5分公開日:

“イーストロンドンで過ごす週末”

東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

© Kosuke Aoki

パリでアコスというロンドンのメッセンジャーと出会った。タケコプター付きのカラフルなサイクルキャップをかぶり、見るからにクレイジーな男。飲みすぎていたのか、会話も支離滅裂でサッパリ理解できなかった。 その後ロンドンっ子らしいぶっ飛んだ雰囲気が気になり、時間のあったとある週末の3日間を、ロンドンにあるアコス宅で過ごすことに決めた。3000円もしない夜行バスに乗ること8時間。早朝4時ごろにロンドンへ到着した。
東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

© Kosuke Aoki

バッキンガム宮殿の公園に寝袋を広げ仮眠をとり、アコスのアジトへと向かう。
東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

© Kosuke Aoki

ギャラリーやアートスタジオなどが多く入っている、迷路のような広いビルの一室がアコスの住処だった。アコス曰くこの居住区に住めるのは、アート活動をしている者のみらしく、入居審査の時に彼は「俺の芸術はポルノだ!!」と、管理会社を説得して審査に通ったらしい。冗談も本気も真顔で話す“ぶっ飛んだ”奴なので、話半分で聞くことにしたが、ご近所さんもみんなそれに負けないファンキーな人物が多かった。金曜日なので、多くの部屋が爆音で音楽をかけてたパーティー状態で、開けっぱなしの入り口から見える様子は、移民的な人もいたりした。
東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

© Kosuke Aoki

東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

© Kosuke Aoki

このスタジオの歴史について熱く語るアコス。どうやらスクワッター(不法占拠者)などが住み着いた時代もあり、中には移民なども多くいるとのことだった。
現在はそれなりに家賃がかかり、日本でいう1LDKの部屋で14.15万程度で安くはない家賃だった。
東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

© Kosuke Aoki

この一角も過去に不法占拠されていて、最上階には”バンクシーも住んでいた”と、アコスは言う、、、。
東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

© Kosuke Aoki

迷路のようなビルの中を案内してもらう。こんなに人がこなそうな迷路の奥に自転車屋さんがあったりしてとても興味深かった。

“ブリックレーンの溜まり場”

金曜日の夕方、仕事帰りのメッセンジャーが集まる、ブリックレーンにある自転車屋”Fullcity”で時を過ごした。

“スクワッター生活のメッセンジャー”

東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

© Kosuke Aoki

日曜の昼下がり、メッセンジャーのジョーダンが、滞在しているスタジオ内に捨てられた鉄パイプを拾いにきた。
不法占拠した家屋に住むことをスクワットといい、彼は、彼の恋人や、友人らとともに、一軒家を占拠して生活するスクワッターだ。どうやら、昨日警察が来て入り口のドアを蹴破られそうになったので、補強が必要らしい。
日本ではありえないことだが、周りの人たちは当たり前のような顔で会話をし、みんなで入り口を守れそうな鉄パイプを運んだ。ロンドンらしいレンガでできた立派な一軒家に到着すると、ドアではなく家の塀ををよじ登るように自宅に入る。中にはジョーダンの彼女や、ルームメート達がかなり“ご機嫌な”様子で暴れていた。
東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

© Kosuke Aoki

オーストラリア、日本、ロンドンのメッセンジャーで鉄パイプを運ぶ。
東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

© Kosuke Aoki

ジョーダン自慢のオムニウムのカーゴバイクはスクワッターには完璧だ。
東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

© Kosuke Aoki

  正面はドアは完全に封鎖してあり、サイドの塀をよじ登り家に入る。
東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

© Kosuke Aoki

全ての窓がしっかりガードされている。
東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

© Kosuke Aoki

ご機嫌なルームメート達。
東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

© Kosuke Aoki

ドアの補強工事のワンシーン。
東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

© Kosuke Aoki

ロンドンらしく、雰囲気と歴史のある一軒家。
  
近年スクワットに対する取り締まりが厳しくなったイギリス。こういったスクワッターとして生活をする人達は、移民やホームレスなどの社会的弱者で住む場所がない人達や、反体制の社会的な理由で自らそういった生き方を提示する者などがいる。
ジョーダンや、その仲間達はその後者の方であろう。富裕層が投資をするために、手にした空き家の数は、100万軒近くにのぼるイギリス。
そしてイギリスの路上生活者の数は約10万人。
社会的なしくみを含めて、個人や国の理由が混在している側面の中で、簡単にその良し悪しを語ることはできない。
ただ、ジョーダンや仲間達の笑顔はとてもピュアで、美しいものであった。メッセンジャーの文化は、カウンターカルチャー的な要素が非常にあり、生き方で表現される、それぞれの持つ哲学的な部分にとても惹かれるのである。
東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

© Kosuke Aoki

明日も取り締まりが来るのも忘れて、ハッピーな3人。
東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

東京メッセンジャーが送る旅紀行Vol.10 「スクワッターメッセンジャー」

© Kosuke Aoki

ジョーダン2016年の夏の出来事。先日連絡したが、ここで現在もスクワットを続けているとのこと。
  
■記事協力
最新のバイシクルカルチャー発信する『LOOP MAGAZINE
  
■過去記事
  
■Profile
Kosuke Aoki
ニューヨークでミクストメディアアート、ノイズバンドの活動を経て、帰国後2007年より東京にてメッセンジャーとなる。同時に東京のメッセンジャーシーンをはじめ、様々なアンダーグラウンドカルチャーの撮影を開始し、フォトグラファーとしてのキャリアをスタート。現在は活動の幅を広げ、世界各地のメッセンジャーやそれにリンクするカルチャーの取材を精力的に続けている。
【Instagram】toydog88