ダンス
『ブレイキン・シーンをさらに飛躍させる次なる一手とは?!』AmiとB-Boy/B-Girlによる座談会!
金メダリストのAmi (湯浅 亜実)と3人のB-Boy/B-Girlがブレイキンについて話す特別企画の最終章
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- 本対談もついに最終章。これからのシーンを見据えて『ブレイキン・シーンをより飛躍させる次なる一手とは』をテーマに、どうすればさらに盛り上がるのかを考えていただきました。そこから見えてきたのはブレイキン・カルチャーの強みと弱み。どうすればブレイキンは、ストリートカルチャーとしての良さを失わずに市民権を得ることができるのか。ポジティブで未来志向なディスカッションをお楽しみください!
01
ハイレベルな即興芸術をいかに外向けに発信するか
ーープレイヤー側のみなさんにお聞きしたいことがあるんですが、今後ブレイキンって世界大会も増えて今より注目されると思うんです。ブレイキンを盛り上げるためにどうすれば良いと思いますか?
Ami ブレイキンが好きだから盛り上がることには全面的に賛成なんですけど、現時点では大衆に広まってほしいというより、まずはブレイキン本来の楽しさが伝わってほしいという感じですね。その過程で“ブレイキン=ヘッドスピン”みたいな偏見が変わってくれたり、かっこいい人たちがたくさんいるっていうのが伝われば一番嬉しいです。
Gandhi 一気にマス化すると変な印象のまま行っちゃいそうな気もする。意外とラッパーやアーティストみたいな感度の高い人たちの中にもブレイキンをよく知らないっていう人が少なくないので、近しいカルチャーの人たちを巻き込んでいきながら大きくなっていければいいのかな。やっぱりブレイキン・シーンにはかっこよくあってほしいので、間違った広まり方をしてほしくないって気持ちはあります。僕の作品がブレイキンの魅力を伝える媒体になれれば良いなと思ってます。
Miharu 私もブレイキンの写真を撮り続けてるのは、別のカルチャーの人たちにこのシーンのコアな部分を知ってもらいたいと思ってるからだったりします。
ーーそういう作品を発表したりしてるんですか?
Miharu Zineを作ったりしてますね。ブレイキンにスポット当てた写真展はやったことがないので、今後撮り溜めていつか形にできればと思ってます。
Gandhi クリエイティブな方面から間口が拡がっていくと面白くなるんじゃないかな。
ーー今までブレイカーは雑誌やメディアへの露出がそれほど多くないじゃないですか。それってなんでだと思いますか?
Kose 作品を作る文化があんまりないからだと思いますね。これが自分達の代表作ですっていうものがないんですよ。どうしてもブレイキンの映像ってバトルがメインなんです。僕の会社はプロダクションをやってるからダンサーに出演してもらうクリエイティブも作るんですけど、候補ダンサーをクライアントに見せる時に素材がないんです。「このバトルの何分何秒から踊っている人です」っていう素材しかない状態だと、なかなか露出する仕事に繋がっていかないっていうのはあると思います。
ーー制作現場を知る人ならではの目線ですね。
Kose 好きな音楽、ファッション、世界観を詰め込んだ作品を多くのダンサーが作るようになれば、その世界観を買いたくなるメディアも増えると思いますよ。絶対かっこいいですから。今ダンスはそこまで手が届いてない。でも逆にそれがなかった分、即興芸術としての部分が研ぎ澄まされて、バトルシーンがとんでもないレベルに到達したんだと思ってます。
ーーアートフォームとして完成された今、外向けの見せ方が求められてるって感じですね。
Kose 少しずつそういう動きが増えてきてるんですよ。B-Boyが自分達の映像作品を作って、映画館を貸し切って上映を行うクルーが出てきたり。その映像を見た他の業界の人が反応しだしていて、面白いムーブメントが起こり始めてます。やっとそういう時代が来てるなと感じますね。
ーーこれまでそういう人はいなかったんですか?
Kose 昔はVHSとか売ってたりしたこともありましたけどね。
Gandhi アメリカのクルーのやつとかね。日本のクルーではリズムスニーカーズのVHSもあった。
Kose 海外のビデオはアニメーションが入ってたりしてかっこよかったんですよ。でも日本のB-Boyが作った作品自体の数はあまり多くなかったですね。
Gandhi だから作品を作る人が増えてきたのは嬉しいですよ。ブレイキンに関する知識や情報が作品を通じて伝わりますから。昔はB-Boyパークとか、シーンを跨いだ横のつながりがありましたけど、今はそれぞれのカルチャーが進化して先鋭化してるからあんまりボーダーを跨いだイベントが少なくなって、ラッパーやDJっていうお隣のカルチャーにすらブレイキンを伝えられてない気がします。今後どう発信していくのかは頭の使い所ですね。でも最近はAmiちゃんとかMiharuちゃんみたいなプレイヤーがメディアに取り上げられるようになってるから、感度の高い人たちから順にやがてじわじわ届いていくんじゃないかな。
02
飛躍の鍵はジャンルを超えたつながりにあり!?
ーーやっぱり、たくさんの人が繋がれる場所って大事だと思うんです。それはブレイキンだとやはりイベントってことになるんでしょうか。
Ami たくさんのB-Boyが集まるのはイベントになりますよね。日本中から集まってくるから。
Kose そうですね。でもそれってひとつ足りないところがあって、イベントっていつもそこにあるものじゃないんですよ。
Miharu 確かに。長くても1日2日ですもんね。足を運べばいつでも人が集まってるっていう場所じゃない。
ーー言われてみればその通りですね。
Gandhi スケートボードにとってのスケートショップみたいな、いわゆる溜まり場的なものがあるじゃないですか。そういうものがブレイキンにはあまりない。練習場所には仲間しか来ないことが多いし。
Kose 専門ショップ的なものってないですもんね。昔は渋谷に老舗のB-Boyショップがあったんですよ。海外のVHSとかDVDとかヘッドスピン用のヘルメットとか売ってましたよね。
ーーなんでブレイキンの専門ショップって少ないんですか?
Kose ブレイキンの良いところでもあるんですけど、単純に道具があんまり必要じゃないんですよ。それが逆に足を引っ張っちゃってる。必需品っていうものがないですからね。
Ami パッと思いつくのってTシャツとか? あとは最近だとスピンニットとか。スピンニットはキッズがよく被ってますよね。
Gandhi Amiちゃんはスピンニット使わないの?
Ami ヘッドスピンしますって宣言してるみたいだから被らないようにしてます。バレちゃうじゃないですか(笑)。
ーー専門ショップをビジネスとして成立させるのは難しそうですけど、ある意味チャンスにも見えますね。誰もやってないっていうなら、そういう場所を作る人が出てきてもおかしくない気がしますけど。SNS全盛期の今なら押せば拡がりそうです。
Kose ショップみたいな場所ができないのにはひとつ理由があって、ブレイキンのシーンって圧倒的にプレイヤーが多くて、作り手側に回る人が少ないっていうのもある。
Gandhi 練習で忙しくて暇がないからね。みんなストイックだし。
Kose DJですら少ないですからね。どのイベントでもおなじみのDJが曲かけてるっていうのはダンスイベントに行ってる人ならわかってくれるんじゃないかな。まあ単純にブレイキンのバトルDJってすごく難しいから、玄人レベルの人が少なくて毎回同じ人に頼むことになるのはある意味必然でもあるんですけど。
Gandhi B-Boyと掛け算するクリエイティブ側の人たちがもっと増えたら面白くなりそうですよね。身内でなんでも完結できちゃうのはブレイキンのすごいところだと思うけど、もっと外とコラボレーションしていければもっと飛躍できそう。
ーーそういう外部とのコラボレーションの例とかありますか?
Kose それこそAmiちゃんとかは案件がたくさんありますよね。
Ami 10年前には、MIU MIUの服着て(ファッション雑誌の)GQに出るなんて思いもしてなかったです。
Miharu あれはかっこよかった。結構話題にもなってたし。
Kose レッドブルだと、ダンサーのSorakiくん(THE D SoraKi)も良い仕事をたくさんしてるよね。良いクリエイターと仕事してシーンが盛り上がっていく感じがします。Amiちゃんもブレイキンを押し上げてるけど、そういう企画を考えた人や作った人もブレイキンを押し上げてることになるんだよね。これからは世のクリエイターたちにもブレイキンの魅力を届けて、一緒に盛り上げていこうぜって言いたいですね。
03
ハイクオリティな大会が多くの人を惹きつける
ーー大きなブレイキンの大会も増えたじゃないですか。大会の様子が配信されたりしてますけど、シーンの盛り上がりを後押ししてると思いますか?
Gandhi 思います。大きな大会の配信がきっかけでブレイキンを知ってくれる人も多いみたいですからね。
ーーもしブレイキンのバトルを観たいっていう人がいたら、おすすめの大会とかってありますか?
Gandhi バトルを見るんだったらレベルが高いやつがいいですよね。競技大会という感じの大会ではなくてブレイキン・カルチャーを感じられるようなものであればなお良い。
Kose 宣伝するわけじゃないですけど、Red Bull BC Oneとかは最適なんじゃないですか。歴史もあるし、単なる競技ダンスではなくてスタイルバトルの要素も残ってるし。僕が好きなのはRed Bull BC Oneの時間の感じですね。2時間以内にコンテンツが凝縮されていて、配信で観てるのに温度感が現場そのままなのがすごい。現場以外であの長尺のバトルってなかなか観続けられないんですけど、この大会はすごく進行がうまいので一本丸々観れちゃうんですよね。クリエイティブもいいし。
Miharu 会場もかっこいいですよね。絶対にブレイキンのことをわかってる人が作ってますよ。
ーー他の大会で、とりあえず押さえておけばいい大会ってありますか?
Kose レッドブルの回し者ってわけじゃないんですけど、本当に他の大会を通しで観ることはないですね(笑)。ダンサー単体で観るっていうのはありますけど。Amiちゃん、Red Bull BC Oneに出てる側としてはどうなんですか?
Ami 「もう出番!?」って感じで時間がすごくタイトで大変です(笑)。そんな冗談はさておき、魅力はどのダンサーも完璧に仕上がってて、最高にかっこいい状態でバトルするから他のイベントより盛り上がるってところですかね。他の大会とは熱量が違います。
Gandhi 世界大会が用意されていて、そこには上り詰めた人しか出場できないっていうのもあるかもね。選手側が特別感を感じてるというか、選ばれし者だけが上がれるステージ、みたいな。選手のやる気が違うのは感じます。
Ami 優勝とかじゃなくて、あのステージ立つために頑張ってますよね。ステージに登るだけで価値がある。
ーーじゃあ、配信で観るんじゃなくて実際に現地参加して楽しいイベントだったら何がおすすめですか?
Miharu Radical Forze Jamは特別じゃないですか。
Gandhi あれは楽しい。
ーーどんなイベントなんですか?
Gandhi シンガポールで開催されるダンスのフェスみたいなイベントですね。
Kose 数日間ぶっ通しでやるんだよね、確か。
Gandhi ガチのバトルの後、最高に綺麗なビーチでアフターパーティーがあるんですよ。ビーチでサイファーしたりするんですけど、本線で予選落ちしちゃうとアフターパーティーを心の底から楽しめないという。
Miharu それは割り切って楽しんでくださいよ(笑)。
Ami ビーチバトルはみんなぐちゃぐちゃになって踊ってますよね(笑)。
ーーそれは楽しそうですね。ブレイキンのポジティブなパワーを感じられそうです。みなさんはこれから何かブレイキンを盛り上げる活動を予定していたりしますか?
Gandhi イベントで言うと、年末あたりにバトルイベントを企画しようかなと思ってます。
Miharu そうですね。結構、面白くなりそうなんですよ。
Kose 僕は逆に、ブレイキンを知らない人の物差しで作られた「そんなブレイキンの切り取り方があるんだ」みたいなクリエイティブを見たいですね。ラグジュアリーブランドのモデルにB-Boyがかっこいいポーズで出てるみたいな。具体的な予定はないけど、そんな見せ方があったんだみたいな作品を作れたら良いなとは思ってます。
Ami 私はプレイヤー側なので大会に向けてベストを尽くすことに集中してます。全力で楽しんだ上でイベントで勝てたら嬉しいし、それがメディアを通じてブレイキンを知らない人たちを感動させたり、かっこいいって思ってもらうことにつながると思う。やっぱり楽しんでる姿を見てもらいたい。そうじゃないとブレイキンの魅力も伝わらないと思うんですよ。
《取材メモ》
シーンを一層飛躍させるためにどのような打ち手があるか、という漠然とした難しい問いかけでしたが、「なんとなく広く知られるのは違う」という冷静な意見から「ブレイキンという即興芸術を作品化してネクストレベルに」という提案まで飛び出し、そのために必要なのは「クリエイターとのつながり」という具体的なアイデアに帰着した本対談。今後のヒントになりうる話が盛りだくさんで、これからのブレイキン・シーンの成長が楽しみになりました。
ブレイキンのことをほんの少しでも気になるという人。ぜひRed Bull BC Oneをチェックして、ブレイキンの迫力とかっこよさに触れてみてください!
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【News】Red Bull BC Oneの開催決定&情報解禁!
世界最高峰の1 on 1ブレイキンバトルイベント『Red Bull BC One』の日本大会が今年も開催。
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