Fernanda Maciel performs during the recording of Se Prepara series in Lapinha da Serra, Brazil on June 13, 2019.
© Marcelo Maragni/Red Bull Content Pool
ランニング
ランニング:夏季トレーニング用ヒント&アドバイス 10選
万全な暑熱対策で夏を乗り切ろう! トップランナーたちが高温多湿のコンディションでも走り続けるためのヒントとアドバイスを授けてくれた。
Written by Nutan Shinde-Pawar
読み終わるまで:10分Published on
夏が近づき気温が上がっていくにつれて、ランニングは耐久力テストの様相を呈してくる。今秋以降のビッグレースに向けて準備をしているなら、暑さがトレーニングやパフォーマンスに悪影響を与えないようにしたい。
高温多湿下でのランニングは簡単ではない。しかし、正しい心構えと準備をしておけば、問題なく走りきれるようになる。
冬季のランニングと同じように、夏季のランニングにもメリットがある。発汗機能が調整されて、極端な天候に素早く対応できるようになるので、走る場所ごとにパフォーマンスが振り回されなくなるのだ。
そこで今回は、複数のトップアスリートたちから証明済みの夏季トレーニング方法を教えてもらった。世界記録更新の実績を持ち、酷暑でのレース経験がある彼らのアドバイスとヒントを早速チェックしていこう!
01

順応化に取り組む

高温多湿下でのランニングは非常にタフだ。気温が上がれば体温を下げるために汗が大量に出るようになるが、湿度が高いときはまるでサウナの中を走っているような感覚を得る。汗が効果的に蒸発しないので、いつまでも体温が下がらず、呼吸が苦しくなっていく。
その結果、当然ながらペースが落ちてしまう。20℃でのペースが保てなくなる。30℃ではまず不可能だ。37℃まで上がれば、太陽の上でダッシュをしている感覚に陥るだろう。
うだるような暑さの中でのレースで好結果を出すためには、8日〜14日をかけて徐々に身体を慣らしていく必要がある。
ウルトラランナーのトム・エヴァンスは夏季トレーニングをマスターしている
ウルトラランナーのトム・エヴァンスは夏季トレーニングをマスターしている© Ian Corless/Red Bull Content Pool
ウルトラランナーのトム・エヴァンスは、身体の冷却機能を最大限まで高めるため(最大限まで高まれば汗をかきすぎないようになる)、つまり、身体の中核温度が高くても平温時と同じパワーを出力できるようになるためには、そのようなアクリマタイゼーション(順応化)が不可欠だとしている。
順応化の第一歩は、ランニングの時間を長短組み合わせることだ。日中は短時間で終わらせ、気温が比較的低い朝夕に長めのランニングをしよう。順応できていくにつれて、日中の時間を延ばせるようになっていく。
自分のアクリマタイゼーションレベルを知る方法について、トライアスロンのワールドチャンピオン、ルーシー・チャールズ=バークレーは次のようにヒントを教えてくれている。「身体を動かしていないときに身体が冷えていると感じるようになれば、順応できている証拠です」
02

身体の声を聞く

ランニングは楽しくなければ意味がないので、たとえペースが落ちたとしてもプロセスを楽しもう。
トレーニングをエキサイティングで効果的にするためには、自分の身体について戦略的に考える必要がある。オーバートレーニングは疲労や怪我、熱中症や脱水症状に繋がってしまうので、“楽しい” からかけ離れてしまう。そこで、自分の身体を理解しておこう。
ライアン・サンデスは身体の声に耳を傾けている
ライアン・サンデスは身体の声に耳を傾けている© Craig Kolesky/Red Bull Content Pool
いくつもの記録を樹立したベテランウルトラランナーのライアン・サンデスは次のように語っている。
「約2年前まではトレーニングは最初の10日間を乗り越えることが重要だと思っていました。10日乗り切ればあとは大丈夫と思っていたのです。ですのでそのあといきなりロングランに取り組んで、怪我をしそうになったときもありました。今は考えを変えて、もっと時間をかけて身体を慣らしています」
自分の発汗率を調べて、自分に合った水分補給方法を理解し、さらには熱中症の症状が出ていないか細かくチェックしよう。辛くなってきたら無理せずトレーニングを中断して助けを求めよう。
身体の声を聞いて身体を作り上げよう。無理はNGだ。
03

走りながら身体を冷やす

強烈な日差しを受けながら滝汗をかいて走っているときにどうやって身体を冷やせば良いのだろうか?
トレーニング後にリカバリーするライアン・サンデス
トレーニング後にリカバリーするライアン・サンデス© Graeme Murray/Red Bull Content Pool
まず、氷を詰めた(あるいは凍らせた)バンダナを首に巻いたり、アイスパックを身体に装着したりすれば身体を冷やす助けになる。次に、普通のキャップやハットの代わりに冷却効果のある素材のキャップやハットを被っても身体を冷やせるだろう。
スウェーデン人トライアスリートのアニー・トーレンは「キャップを定期的に濡らして頭部を冷やすのが効果的です」とアドバイスを送っている。
休憩や小休止のタイミングで顔と頭に水をかけよう。ランニングを終えたあとはアイスバスに入るかスイミングプールに飛び込んで中核温を下げるようにしよう。
04

走る時間帯を考える

どの時間帯に走るかが暑さの感じ方に大きな違いをもたらす。一番涼しい時間帯は日の出前だ。早朝に起床するのが苦手なら、日中は避けて日没後に走るようにしよう。日中のランニングはできる限り避けたい。
日の出前にランニングを済ませておきたい
日の出前にランニングを済ませておきたい© Wouter Kingma for Wings for Life World Run
日中にランニングをする必要がある場合は、日陰がなるべく多いルートを選択するようにしよう。トーレンは「都市部では建物の間に熱が籠もりやすく、そのようなルートはかなりきついので、都市や公道よりも公園や森林を走るようにしています」と語っている。
05

正しい水分補給をする

ランニングの前・中・後の正しい水分補給がパフォーマンスの維持に繋がる。熱帯夜明けは特にだが、毎日起床後に睡眠中の発汗で失われた水分を補給しておきたい。
スポーツ栄養士のウィル・ガーリングは次のように説明している。「ランナーに必要な水分補給量は個人の発汗率によって異なります。また、気温湿度トレーニングの強度の影響も受けますが、基本的には1時間あたり400〜800mlを飲めば問題ないでしょう」
水分補給が夏季トレーニングのカギになる
水分補給が夏季トレーニングのカギになる© Daniel Tengs/Red Bull Content Pool
大量の発汗は大量の電解質の喪失に繋がり、識別障害を引き起こす可能性があるが、塩または電解質を水に加えるだけでこれを防ぐ助けになる。トーレンは次のようにアドバイスを送っている。
「夏はいつもより汗をかくので、電解質タブレットを多めに入れましょう。また、ただの水は避けて、スポーツドリンクにするか、水とスポーツドリンクと混ぜて塩分を補給してください」
ガーリングはランニング後の牛乳も勧めている。「牛乳には電解質炭水化物4〜5gが含まれているので、水よりも水分補給用ドリンクとして優秀なことが証明されています」
トーレンは「ランニングは夏のスポーツとしては最も過酷な部類に入ります。一気に長距離を走るのは健全ではありません。走り始める前に水分補給プランを用意しておくことが重要です」と語り、ロングランをショートランに分けるべきと続ける。「たとえば、21kmを走るつもりなら、7kmを3回走り、1回ごとに水分補給をしてください」
しかし、水分の取り過ぎはNGだ。水分を取り過ぎてしまうと体内の電解質が薄まってしまい、低ナトリウム血症を引き起こす可能性がある。
06

正しい栄養補給をする

パフォーマンスを向上させるのは難しいことではない。適切な栄養補給をするだけで良い。トレーニング中のアスリートの栄養補給は、健康な一般人のそれと似ているが、トレーニングの強度や長さ、頻度によって少しアレンジを加える必要がある。
トレーニングでレース当日の栄養補給を試していこう。トム・エヴァンスは「栄養補給は私のトレーニングの大きな一部を占めていて、レース当日に向けて綿密なプログラムが組まれています」と語っている。
ランニング後は速やかに栄養補給をしたい。走り終えてから90分以内に炭水化物とタンパク質が大量に含まれている食事でリカバリーしよう。たとえば、ピーナッツバターを塗った全粒ベーグルにフルーツとヨーグルトを加えて食べるのはグッドアイディアだ。
また、夏季のランニング前はカフェインをなるべく避けよう。利尿作用があるため、大量の汗だけではなく尿からも水分を失うことになれば、それだけ水分補給の回数と量を増やさなければならなくなる。尚、アイアンマンのようなロングレースに挑むトライアスリートたちは序盤ではなく最終盤にカフェインを摂取している。
07

足をケアする

夏季のランニングは足が痛みやすい。正しいルーティンを用意して足を守り、水ぶくれを避けよう。
まず、夏季は冬季よりも足がむくみやすいので、快適にフィットしていて通気性に優れている素材のランニングシューズを選ぼう。そのようなシューズを見つけたら、同じシューズを複数購入してローテーションで履こう。こうすることでシューズが長持ちする。
自分に合ったシューズを複数購入しておくのはグッドアイディア© Craig Kolesky/Red Bull Content Pool
シンプルにするために、私はトレーニングとレースで同じシューズを履いています
コートニー・アトキンソン
オーストラリア人トライアスリートのコートニー・アトキンソンは「シンプルにするために、私はトレーニングとレースで同じシューズを履いています」と語っている。
ウルトラランナーの多くは長距離を快適に走れるサポート力の高いシューズを好んでいる。ソックスは通気性が良い製品を選び、靴擦れが起きないようにしよう。ワセリンなどを塗っておくことも勧めておきたい。また、可能なら休憩中はソックスとシューズを脱いで汗と熱を取り除くようにしよう。
ランニング後はソックスやシューズを速やかに脱いで足が呼吸できる状況を作ることを意識したい。
08

クールなウェアを用意する

さて、次はクールなウェアについて話をしていこう。まず、黒色はNGだ。黒は熱を吸収してしまう。その代わりに明るい色で、軽量で、通気性に優れていて、速乾性にも優れているウェアを選んで身体を冷やそう。ウェアもショーツも紫外線をカットしてくれる素材がベストだ。
トム・エヴァンスの夏季トレーニング用コーディネート
トム・エヴァンスの夏季トレーニング用コーディネート© Stefan Voitl/Red Bull Content Pool
また、SPF30以上・UVA4つ星以上の日焼け止めランニングの30分前に塗り、2時間おきに塗り直そう。発汗量が多い人は2時間よりも短い間隔で塗り直そう。
顔と目はキャップ大型のサングラスでしっかり保護しよう。さらに、スマートウォッチで心拍数や水分補給をトラッキングすれば万全だ。
トム・エヴァンスは、可能ならば複数のウェアを購入してレース前に試すことを勧めている。このような準備をしておけば、レース当日のコンディションに振り回されることはない。
09

しっかり休む

休息に十分な時間を充てなければ、フルポテンシャルを発揮できない。オーバートレーニングは怪我に繋がる。休むことでトレーニングの効果が高まることを理解しておこう。
「リカバリーのアドバイスを求められるときが多いのですが、睡眠が重要と回答しています」とトム・エヴァンスは語っている。また、ドイツ人トライアスリートのセバスチャン・キーンレも「睡眠は素晴らしい回復テクニックです」と同意している。
睡眠の他にはストレッチヨガフォームロールで身体をケアすることもリカバリー速度を高めてくれる。
休息日を設ければ身体から感謝されるはずだ。
10

メンタルを鍛える

「世界最高のトレーニングを用意しても、それを完了させるためには高い集中力が必要になります」とエヴァンスは語っている。
過酷なコンディションでは脳が最も重要な “筋肉” になる。強靭なメンタルが目標達成の秘訣だ。オーストリア人トライアスリートのミハエル・ストラッサーは「メンタルを鍛える必要があります。自分のマインドセットをステップバイステップで用意するのです」と説明している。
ライアン・サンデスは走り始めた理由を思い出すようにしている
ライアン・サンデスは走り始めた理由を思い出すようにしている© Craig Kolesky/Red Bull Content Pool
夏季のランニング中にひとつでもネガティブな考えが生まれれば、パフォーマンスが崩れてしまうが、ポジティブなマインドセットがあればその考えを打ち消せる。気持ちが上がってこないときは「なぜ走っているのか?」とあらためて自問してみよう。ライアン・サンデスは次のようにアドバイスを送っている。
「私は、少し身体がだるいと感じた程度でもランニングを始めた理由を思い返しています。私は単純に楽しいから始めました。レースに勝ちたいから始めたわけではありません。山の中を走りながら自分に挑む感覚に魅了されたのです。ですが、もちろん言うは易く行うは難しですし、限界を超えて追い込むことはできません。追い込みすぎれば代償を払うことになります」
さあ、夏に挑む準備はできただろうか? 正しい暑熱対策を用意して、自信とともに夏を走りきろう!
▶︎RedBull.comでは世界から発信される記事を毎週更新中! トップページからチェック!
関連コンテンツ

トム・エヴァンス

コースレコードと表彰台フィニッシュを定期的に手にしている英国人エリートウルトラランナー

イギリスイギリス

ライアン・サンデス

グレート・ヒマラヤ・トレイルのFKTを保持し、4 Desertsの4大砂漠レース全制覇を達成したベテランウルトラランナー

南アフリカ南アフリカ
ランニング
ウルトラ ランニング
マウンテンランニング
陸上競技
マラソン

人気のストーリー